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「クラウド x IoT(センサー通信)の進化とビジネス・チャンス」【K16-2B】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!7回シリーズ(その4)は、ファームノート小林さんに、創業の理念やクラウド×IoTを活用した牛群管理システムについてお話し頂きました。ぜひ御覧ください。
ノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016
Session 2B
「クラウド x IoT(センサー/通信)の進化とビジネス・チャンス」
(スピーカー)
青木 俊介
ユカイ工学株式会社
代表
川原 圭博
東京大学
准教授
小林 晋也
株式会社ファームノート
代表取締役
玉川 憲
株式会社ソラコム
代表取締役社長
(モデレーター)
尾原 和啓
Fringe81株式会社
執行役員
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▶「クラウド x IoTの進化とビジネス・チャンス」の配信済み記事一覧
【前の記事】
【本編】
小林晋也 氏(以下、小林) 皆さん初めまして。
北海道帯広市から参りました、ファームノートの小林と申します。
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小林 晋也
株式会社ファームノート
代表取締役
北海道帯広市出身。機械部品の商社で営業を担当し、2004年株式会社スカイアークを創業、代表取締役に就任。日本シェアNo.1 CMS「Movable Type」の拡販を行い、160社の大企業顧客開拓と1000社を超える製品販売実績を達成(代表取締役は現任)。2014年に株式会社ファームノートを立ち上げ、代表取締役に就任。
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おこがましく、「ようこそ、農業イノベーションへ」と書いてしまいましたが。
世界の農業の頭脳になりたい
我々は、北海道帯広市が本社で、世界の農業の頭脳になりたいと考えています。
とにかく生産データだけをひたすら集め、そこから知恵を産出し、極端な話、僕が明日から農業をやってもできてしまうといったそんな世界を作りたいと思っています。
我が北海道は、都道府県の中でも農生産がトップで、中でも、我が十勝の牛の総数が日本全体の10パーセント、生乳生産も15パーセントを占めるという大農業地帯です。
我が十勝平野はこんなに広く、本当に効率の良い農業を行っている場所なのです。
広すぎてこういう看板も。
(会場笑)
北海道にお越しの際には、是非駐車場4,000台のスケールを感じて頂きたいと思います。
青木 110キロということは、北海道換算すると、どれくらいの時間がかかるのですか?
小林 大体、2時間弱くらいですね。
人によっては1時間かもしれません(笑)。
Internet of Animalsとは?
小林 日本には今390万頭の牛がいるのですが、実はこの牛の数が農家の数とともに減っていっており、現在では生産高が1.4兆円になり、牛の産業が米の産業と並びました。
日本では米作と酪農は重要な農業なのですが、ここが今不安定になってきています。
皆さんはIoTと仰っていますが、僕達は牛をインターネットに繋げて解析をし、データとして人に返すという、「Internet of Animals」を行っています。
我々は、「Farmnote Color」という製品を提供しています。
牛というのは、動いたり、ご飯を食べたり、食べたご飯を口に戻して反芻したり、寝たりします。
可愛いですよね、この寝方。
ものすごい数の牛を飼っていますので、牛を監視しようとしても、人間の目で確認するのは現実的ではない。
そこで、この「Color」と呼ばれるセンサーを
首に取り付けて牛の監視をします。
牛は、この発情行動の後に排卵をします。
排卵のタイミングの前に人工授精をすることで、妊娠して、分娩した時から牛乳を出してくれます。
この発情行動が、実は非常に重要なのです。
今、生乳生産高が約8,000億円あるのですが、そのうち約560億円は、発情見逃しによる潜在的な損失だと考えられています。
ですからこの発情行動が起きた時にスマートフォンに通知してあげて、発情期が来たということ
を教えてあげるのです。
尾原 なぜここが重要なのかは分かりにくいと思うのですが、牛というのは1回に1頭しか生まないのです。
当たり前なのですけれども、皆さんが飲んでいる牛乳というのは、牛が受胎して出産するから出るんですよね。
ですから、酪農というのは、ずっと牛を妊娠させ続けるという、そういうビジネスでもある訳です。
Farmnote で開発する牛群管理システムの仕組み
小林 このように、1日の間にどのような行動をしたかという行動分類もします。
例えばこの日は、緑色に分類された活動が増えているのが分かります。
発情行動時には牛が非常に動き回るので、ここが発情行動のタイミングだということが分かる訳です。
「Color」が牛の活動量を採り、クラウドで解析し、それをユーザーに通知するという、まさに「ザ・IoA」ですね。
皆さん、IoTなんて流行りで言われているのかもしれませんが、僕らは牛の糞にまみれながらこうやって牛のセンサーを取り付けているのですよ。
フィールドに出ていった弊社のエンジニアがよく、「これこそ究極のフルスタックエンジニアだ!」なんて言っていますけれども(笑)、このような現場でIoTを活用しています。
更に、その「Color」のデータを受信する「Farmnote Air Gateway」というものを開発しています。
これ自身が、「Color」とBLE(Bluetooth Low Energy)で通信し、データを受信します。
今はBLEなのですが、920MHzだとかWi-Fiだとか、データの受信ができる汎用的なLinuxゲートウェイを作っていまして、それで色々なデータを受信しようとしています。
農業の全領域に応用する
小林 僕達は牛に特化していると思われがちですが、農業の全領域に応用したいと思っているためです。
テクノロジーですが、牛だけではなくて、トラクターや色々なセンサーを「Farmnote Air Gateway」経由で受信し、それを「SORACOM Air」で飛ばして、マニアックにSparkなんかを牛の裏で使っているのですけれども、これが解析した結果をFarmnoteに飛ばす仕組みになっています。
僕達は、農業分野は牛以外のところでもどんどん知識をつけていこうということで、最近、「Farmnote Lab」という研究部隊も立ち上げました。
そのLabの中で先ほどのSORACOMさんの「LoRaWAN」ですね、「LoRa Gateway」から牛の動きをGPS(Global Positioning System)で撮り、搾乳の時間になると牛を搾乳舎に移動させるといった実験も、SORACOMさんのご協力を得て行っています。
データが数キロくらい余裕で飛んで、結構実用的に使えそうな感触です。
また、ドローンを飛ばし、その「圃場(ほじょう)」(作物を栽培する田畑、農園のこと)のマルチスペクトラムのカメラで生育状況を撮ったりしています。
このようなことをDrone Japanさんと一緒に取り組んだりしながら、とにかく少しでも多くのデータを採り、それを人に知恵として返してあげる、そのようなことに取り組んでいる会社です。
よろしくお願いします。
尾原 今回のカタパルト(ICCカンファレンス KYOTO 2016 スタートアップ・コンテスト)に出場された会社さんもそうなのですが、インターネットのビジネスというのは、今まで埋められなかったものを埋めましょうとか、これから人工知能の得意なところというのは、最適化できなかったところを最適化しましょうということなのですよね。
今は広告が最も分かり易い最適化の領域なので、そこが最適化されている訳ですが、インターネットの広告の規模というのは、たかだか1兆円なのですよ。
IoTで全てのものが繋がってくると、一番地面に近いビジネスの方が、最適化された時の余地が大きい訳ですよね。
結局、どこが最適化された場合のビジネスインパクトが大きいのか。
最適化するために、技術として何を足さなければならないのか。
入力は何なのか。
最適化のための計算は何なのか。
出力として、最後に牛なら牛に戻してあげるものは一体何なのかというところを考えることが大事になってきています。
やはり僕達には、牛の発情期をコントロールするだけで800億円近く儲かるなんて分からないじゃないですか。
そういう着眼点がすごく大事になってくる時代なのかなと思うのです。
(続)
続きは IoTビジネスの鍵は「データを受け取る側のゴールから定義する」 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子
【編集部コメント】
続編(その5)では、本格的な議論として、ファームノートのビジネスを足がかりに、IoTビジネスを作る上で重要となる考え方について議論しました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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