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「世界中のトップエリートが集う禅の教室」の著者でもある春光院の副住職 川上(全龍)隆史 氏に、生い立ちからアメリカ留学、そして英語での坐禅プログラムの誕生秘話を伺いました。「瞑想」「マインドフルネス」の解説をいただきました。ぜひご覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。参加者の募集を開始しました。
登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016 登壇者 特別インタビュー
(語り手)
川上(全龍)隆史
宗教法人 春光院 副住職
1978年生まれ、高校卒業後に渡米、アリゾナ州立大学にて宗教学、主に宗教紛争について学ぶ。7年半の米国での生活の後、2004年に帰国。2005年より宮城県・瑞巌寺専門道場にて修行を行う。2006年に実家である春光院に戻り、その春より英語による坐禅会を開始。2007年に同院の副住職に就任。また2008年より米日財団主催の米日リーダーシッププログラムのメンバーとしても活躍。現在では、年間約5,000から5,500人の訪日外国人に坐禅や禅哲学をいかに日常生活に取り込むかを脳科学や心理学を交えながら国内だけでなく海外でも指導を行う。また米国を中心とした様々な大学とサマープログラムなどを春光院で共催。Campus for HのMYALOやJINS MEMEのZENなどのマインドフルネスアプリの監修を行なう。企業やHBS、IESE、やSloanなどのビジネススクールに「一如 (OnenessまたはInterdependency)の考え方」や「おもてなしの精神」を経営などにいかに活用するかなども指導している。そして、2010年ごろより、LGBTの権利の支持のため、同性同士の仏式結婚式や葬儀(埋葬)などを英語と日本語で行っている。著書「世界中のトップエリートの集う禅の教室」協力 石川善樹博士 角川書店
(聞き手)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役
*2016年5月17日 春光院においてインタビューを行いました
小林雅氏(以下、小林) 今回、ICCカンファレンス KYOTO 2016の登壇した春光院 副住職 川上(全龍)隆史にお話を伺います。よろしくお願い致します。
川上さんと言えば「世界中のトップエリートが集う禅の教室」の著者でもあります。
川上(全龍)隆史氏(以下、川上) よろしくお願い致します。
小林 早速ですが、川上さんがそもそもどんな方なのかというのを、生い立ちから教えていただけますか?
川上 私は、今、副住職を務めさせていただいております、妙心寺春光院というお寺の5代目として生まれました。5代目としてお寺で育つのですが、父の方針でお寺関係のことはまるきり致しませんでした。
もちろんお盆やお彼岸など、そういう行事がある時には手伝わされるのですが、(父は)興味がないことを無理やりやらせるというタイプではなかったので、そういう理由で、高校生まで仏教というものに触れる機会がなかったんですよね。
妙心寺の花園高校に進学して、そこで初めてお経の本を手に取りました。
小林 なるほど。それは珍しいのですか?(お寺に生まれると)普通は子供の時から何かやっているようなイメージがあるのですが。
川上 そうですよね。
小さい時からお経を読むようにとか、字が書けないと駄目だから書道をやっておけとか、そういうことがありがちですけれども、そういうところがまるきりなかったですね。
父自身も、坊さんになる前は酒造の、お酒の卸などをやっていたので、多分そういう風に、自分もやる気が出るまで継がなかったというところもあり、そういう形で現在に至っております。
その後、アメリカの大学に行きまして、最初は社会心理学をやっていたんですけれども、ちょうど9.11が起きて、宗教というものが政治や経済など色々なものにとても影響を与えるということを身をもって体験したので、せっかくお寺で育ったのだから宗教学というものを学んでみようと思いました。
そこから、今まで育ってきてまるきり興味を持たなかった仏教というものに興味を持ち始めまして、アメリカに7年半留学していたのですが、それで日本に戻って来ました。
小林 なぜアメリカに留学しよう、アメリカの大学に行こうと思われたのですか?
川上 高校2年の時に陸上部の交歓試合のような形で2週間ワシントン州のスポケーン(Spokane)とシアトル(Seattle)に行っていたんですよね。
その時に、英語もろくにできないんですけれども、何だかこう、感覚で、ここは合う!と思ったんですよ。ここの方がいいかもと勝手に思って。
高校の先生なんかに、「お前、英語の成績が3のくせに何言ってるんだ。」といったようなことを言われたんですけれども、行けば何とかなるだろうという感覚で行きましたね。
父親からはアメリカに行ったらいいのではないかと言われましたね。違うものを見たほうがいいのではないかと。
特に私が一人っ子というのもあったので、違う文化に一人で放り込まれる、一人で生活するということをやったほうが絶対いいということで、父も家族も全員賛成してくれていました。
小林 アメリカの大学はどちらに行かれたのですか?
川上 最初はライス大学というところで語学を学んで、そこからアリゾナ州立大学ですね。
社会心理学で、マーケティングで有名なロバート・チャルディーニ(Robert Cialdini)という教授がいたので、その人の下で勉強したいなと思ったのですが、ちょうど9.11が分岐点になりました。
小林 社会心理学に興味を持ったきっかけは何だったのですか?
川上 その時、宗教というものに矛盾を感じていたんですよね。存在自体に疑問を持っていて、心理学というのが21世紀の宗教と考えていたので。
実際に人を幸せにするということを考えた時に、心理学の方がいいのではないかと考えまして、それで行ったんですよね。
小林 そうすると、人を幸せにするということをやりたいなと思われたのは、子供の時からでしょうか?
川上 そうですね。
やはり、私の職業というか、職業になる前なんですけれども、昔はお寺でお葬式をされることがやはり多かったんですよね。
人の死に接する、遺族へのその後の対応がある意味重要なのかなということで、特別な環境で育ったということもあると思うのですが、常に人の死というものを小さい時から見ているというのがあって、やはり何か人間として、どこかで人を幸せにしていくことが大切なのかなというようなことを感じましたね。
小林 それは宗教ではないのではないかと思われて、社会心理学を学ばれて、9.11で宗教学に変わったと。
川上 はい。
小林 ちなみに、宗教学とは仏教を研究されたのですか?
川上 いえ。宗教学というのは、日本にはほぼないんですよね。
宗教学というのは、宗教を第三者の目線で分析していく学問なので、日本では仏教学とか神学、あとは神道系のものもありますけれども、どちらかというと、内部の人間が自分達の歴史や教えを学んでいくという形なんですよね。
それだと結構バイアスが入ってしまうんです。
宗教学では、バイアスなしで、無神論者がキリスト教や仏教などを研究していくということになります。
そういう目線があるからこそ、悪いところも強調できるし、いいところも強調できるというところがあると思うんですよね。あるがままのものをそのまま見ることができるので。
やはり仏教なんて右肩下がりのような業界なので、そこをてこ入れするにはやはり第三者的な目線が絶対重要になってくると思うんです。
小林 宗教学はどちらの大学で学ばれたのですか?
川上 アリゾナ州立大学です。
小林 宗教学という学問の中で、リサーチの対象は何になるのでしょうか? キリスト教などあらゆるものが対象なのですか?
川上 あらゆるものが対象なのですが、私の専門は宗教紛争だったんですよね。
私はチベット関係をやっていたんですけれども、宗教紛争を(テーマに研究を)すると、どうしてもイスラエルなどの問題も入ってくるので、やはりキリスト教、ユダヤ教、イスラム教。
アメリカに行った時に思ったのが、やはり、宗教というのが人間の日常生活にとても影響を与えているなということです。
日曜日だから教会に行くとかそういうレベルではなくて、例えば、善悪の判断において、キリスト教の国は白黒をはっきりさせたがるんですよね。
日本はグレーゾーンというものを結構寛容に認めますよね。
そういところで、例えば警察の少年犯罪に対する対応の仕方などにも、すごく違いがあったりします。
特に、最初はテキサス州のヒューストンにいて、バプティストという保守的なキリスト教の強いところだったので、それ(宗教観)が分かったら何となくアメリカ人の考え方が分かってくるのではないかという感覚で、まず勉強してみようというのもありまして。
そういう、宗教紛争とはあまり関係のない方向もちょっとやっていましたね。
小林 大学とか大学院だけでアメリカに7年半いらっしゃったのでしょうか?
川上 ではなかったです。
小林 働いておられたのですか?
川上 少し働いていたんですけれど、留学というか、最初に語学学校に行っていた時というのは、まともに勉強せずに人と話している方が多かったというか、たまたまライス大学が結構いい大学でしたので、色々な面白い教授もいらっしゃって、勝手にクラスにもぐりこんで話を聴いたり、そういう時に色々な教授と友達になったりして、人と話すことで色々と学んでいました。
そういうことをずっとやっていた感じですよね。
小林 なるほど。それで7年半おられて日本に戻られたと。
川上 はい。
小林 日本に戻って何をされたんですか?
英語の「坐禅」の誕生秘話
川上 日本に戻ってまず1年間修行に行きましたね。
宮城県の瑞巌寺というところの修行道場に行きまして、そこで和尚になる資格を取りました。
(資格を)取った理由というのが、その後大学院に戻ってまた宗教学をやろうと思っていて、その時に僧籍を持っていた方が有利だからでした。
ただ、ちょうど修行が終わって戻って来た時に、海外の友人にロサンゼルス・カウンティーミュージアム(Los Angeles County Museum of Art)の日本館(Pavilion for Japanese Art)の館長がいて、その人がお客さんを連れて来るから英語で座禅を教えてくれないかと(依頼がありました)。
まあ、英語もできるし、修行に行ったばかりだからまあできるだろうということで、いいよと言ったんですよね。
そこから英語で座禅を教えだしたのですが、最初に来られた人が、マックス・パレフスキー(Max Palevsky)だったんですよね。
ゼロックスの元会長で、インテルの最初のインベスターです。彼が家族を連れて来られて、それで座禅指導をしました。
小林 ここ(春光院)ですか?
川上 ここ(春光院)です。
小林 すごいですね。それは何年前ですか?
川上 ちょうど2006年ですね。本当に京都に戻ってきてすぐでした。
2005年に日本に戻ってきて、2006年に修行道場から戻ってきて、その夏にそういう話が来たので。
意外と面白い人にお会いできるのかなと思い始めて、それならばアメリカに戻って博士号を取る必要はないと思いました。逆にここにいた方が、色々と刺激を与えていただける方にお会いできるので、その方が楽しいなという感覚になりまして。
そこからこう、口コミでどんどん広がっていったんですよね。
特に京都で英語で、しかも団体ではなくて座禅や禅の話ができる場所で、しかも和尚と直接話せる場所ってないんです。
そういう背景もあったので、口コミでどんどん広がっていって、色々な方が来られるようになって、2009年、2010年あたりになってくると、段々、心理学者や脳科学者が大勢来られるようになりました。
「マインドフルネス」というのが、アメリカの学者の間で段々と広がってくるんです。
小林 学者というと、何学の学者になるのですか?
川上 心理学、宗教学、脳科学者が一番増えていきましたね。あとは、数学者も多いです。
そこからこう、自分のそういうものに興味を持ちだして、元々心理学をやっていたので、納得いかないものを教えても仕方がないと思ったんですよね。
宗教的に良いことだからそうしてくださいという言い方ができるのですが、基本としては、やはり、何がいいのかとか、どうしていいのかを伝えることが大切だと考えています。
結局、今の日本の宗教というのは、日常生活と合致していないことを痛感したんです。
日常生活がここにあるけれど、少し離れた場所で話をしている感じなんですよね。
結局のところ一番重要になってくるのは、ここのお寺で体験していただいたことを、一歩出たすぐのところで使えるかどうかということなんです。
そうするためにはどうしたらいいかと考えた時に、やはり、科学的に説明しないと今の人には理解してもらえないし、納得してもらえないんだということになりまして。
その頃には、一般にも少しずつ「マインドフルネス」等が出回るようになってきていましたので、自分でも脳科学の研究データなどを勉強し始めました。
小林 すごいですね。
川上 いやもう、自分の好奇心だけでしたね。
小林 その「マインドフルネス」や「瞑想」を、科学的にどのように説明されているのですか?
川上 やはり、人間の考え方がいつ変わったかとか、行動がいつ変わったかという哲学的な形から入っていきます。
西洋文明が基準になるのですが、大体18世紀に啓蒙思想が出てきます。
それまでは、絶対王政があったり、教会は絶対的存在で彼らの言うことは絶対的真理だったわけですよね。
それに対して人間が、一般の人達が疑問を持ち始めて、本当はどうなんだろうと考えだしたのが18世紀の啓蒙思想の頃で、その後に近代科学ができるわけじゃないですか。
そこから人間の考え方がすごく変わっているんですよね。
今まででしたら、「これは絶対だから言うことを聞きなさい。」「はい、分かりました。」という世界が、「これは違うんじゃないか?」となるわけです。
自分で、どういうことが起こっているのかを理解したい。まず考えてから行動する人間を作り出そうとするわけですよね。
今の教育ってそうじゃないですか。やはり、良いからやってくださいと言われても、意味がないということを分かりだしたわけです。
やはり理由が分からないと人は行動しない。
小林 なるほど。「Why」から始めるゴールデン・サークルですよね。
川上 ですね。そういう形で始めようと思いました。
「瞑想」の良い点
小林 既にいろいろとお話されていると思いますが、瞑想が良いというのを科学的に説明すると、どういうことなのでしょうか?
川上 例えば、瞑想をすることで、まず、ストレスが減るということですよね。
ストレスが減ると何故いいかというと、もちろん体に良くて免疫力が上がるということもあるのですが、自己認知力も上がるんです。
結局、ストレスが溜まった状態というのは、自分というものが理解できないような状況であって、自分が理解できない人間というのは、他人も理解できない訳ですし、自分がどういう状況にあるかということが分からないと、感情のコントロールもできない。
そして、ストレスが溜まった状況では、自分の主観的な見方にすごく偏ってくるんですよね。
自分がもう限界状態にある訳ですから、疲れてエネルギーもどんどん失なわれているし、そういう状況になると、今度は自分の都合のいいところだけ情報を集めようとして、どんどんバイアスがきつくなっていきます。
バイアスがきつくなってくる上に、習慣や固定概念にはまりやすくなるんですよね。
習慣や固定概念というのは、結局のところ、エネルギーや時間をセーブするためのものですから、そういうものにどんどんはまりやすくなる。
結局、物事をそのまま見られなくなってくるんですよね。感情的にもなりやすくなる。
小林 それはストレスが溜まるからそうなるのか、そういう状況になっていることをストレスが溜まっていると言うのか、どちらなんでしょうか?
川上 両方だと思います。言ってみれば、負の循環ですよね。負の循環を作り出してしまうと思います。
やはりそういう心理状態になっているとストレスも溜まりやすい、ストレスが溜まっているから更にそういう心理状態に陥りやすい、という負の循環になってくると思うんです。
そういう状態から抜け出すためには、やはりまずストレスを減らして、そして今度はメタ認知的な見解、つまり、あるがままに物事を見ることです。
その時に、感情を排除しようというのではなくて、感情というものを理解しようとすることです。
自分がどういう感情を持っていて、何を感じているかなど、そういうものを理解することによって、メタ認知、つまり自己認知も上がりますし、自己認知が上がると他人も理解しやすくなるんですよね。
結局のところ、同じ脳の部分を使っているのでそうなるのですが、他人を理解するための共感力が上がると、Compassion(慈悲)も生まれます。
「慈悲」と言うと、宗教的だとか、また坊さんが喋ってるよと思われるかもしれませんが、面白い話、慈悲の心や哀れみの心によって人を幸せにしようと思うだけで、人間は幸せになれるんです。
それだけでドーパミンが頭の中に出てくるので。
小林 なるほど。そういうものなのですね。それは科学的に説明されているのですね。
川上 そうなんです。
今、色々な起業家の方とお話する機会をいただいていて、そういうところで、今の起業家の方は、共感力の高さと、Compassion=慈悲の心を持ち合わせておられて、自己実現とは言っても、「自分が、自分が」ではないんですよね。
皆さん、自己実現というものがあるんですけれども、その自己実現は何のためかというと、社会を良くしようとか、周りを幸せにするためという方が非常に多いと思うんですよね。
そういう方は特に成功されていると思います。
逆に、俺様主義のようなタイプの人は、どこかで、「あれ?消えちゃったよね。」と言われるようなところがあると思うんですよね。
結局、人間の根本、人間の幸せというものを考えた時に、人間は幸せでないとパフォーマンスも落ちるということです。
(続)
続きはこちら:川上全龍氏が世界中のトップエリートに説く瞑想・マインドフルネスの効果
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編集チーム:小林 雅/Froese 祥子/榎戸 貴史/戸田 秀成
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