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5. HAiK山内さんが元上司から言われた「3,000冊読書」の真意とは

「新・大人の教養シリーズ「読書」〜ビジネスパーソンこそ本を読め!」9回シリーズ(その5)は、HAiKの山内さんが、新卒で入った会社で「本を読め」と言われたエピソードからスタート。15年かけて3,000冊を読破した先に、山内さんがつかんだものとは?「山川の世界史・日本史」をまだお持ちの方は、再読したくなりそうです。ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2020は2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

ICCサミット FUKUOKA 2020のプレミアム・スポンサーとして、Lexus International Co.様に本セッションをサポート頂きました。


【登壇者情報】
2020年2月18〜20日開催
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 11D
新・大人の教養シリーズ「読書」〜ビジネスパーソンこそ本を読め!
Supported by Lexus International Co.

(ホスト)
嶋 浩一郎
株式会社博報堂 執行役員 /
株式会社博報堂ケトル エグゼクティブクリエイティブディレクター

(ゲスト)
天沼 聰
株式会社エアークローゼット
代表取締役社長 兼 CEO

井上 大輔
ヤフー株式会社
マーケティングソリューションズ統括本部 マーケティング本部長(肩書は登壇時当時のものです)

蛯原 健
リブライトパートナーズ 株式会社
代表パートナー

山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役社長

渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー /
慶應義塾大学SFC特別招聘教授


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最初の記事
1. 6人の「本読み」が集結! 自分にとっての1冊&読書遍歴を熱く語る!

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4. ビジネスのための読書にこそ、文学的な読み方を取り入れよう!

本編

 次に行ってみましょう。山内さん。

山内 HAiKの山内です。よろしくお願いします。


山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役社長

1975年大阪にて自営業の家に生まれる。東京大学法学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)入社。2000年ドリームインキュベータ(DI)の創業に参画、2006年東証一部上場。執行役員として、IT・通信・メディア・コンテンツ・金融・商社・流通等の業界を中心に戦略コンサルティング・実行支援を行うと共に、スタートアップ企業へのプリンシパル投資・戦略構築・組織構築を手掛け8社のIPOを達成。15年以上に渡り一貫して「競争優位性の構築と成長の実現」を追求してきた。投資先であるアイペット損害保険株式会社代表取締役社長(日本損害保険協会理事を兼任)を経て、2016年株式会社HAiKを設立、現在に至る。

パートナーになるには「本を読め」

山内 僕はもともと大学を出てボストンコンサルティング(BCG)という会社に入りまして、その後ドリームインキュベータという会社でコンサルティングとベンチャーへの投資支援をやっていました。

数年前に独立して会社を作り、今はAIのコンサルティングやアルゴリズムの構築といったようなことをやっています。そんな経歴です。

このスライドの上に「3000=10×300」と書いてあるのですが、大学を出てBCGに入ったときに、当時新卒で入社する人間はあまりおらず、周りの人がバンバン首になっていたんです。

中途、新卒構わずバンバン首になるような組織でして、「これ、入ったは良いけどどうしようかな」と思いまして、「どうやったらこの会社でちゃんとやっていけるんですか」ということを上の人に聞きに行ったんです。

最初に聞きに行ったのは、当時BCGの東京の代表をやっていた堀 紘一さんで、YJキャピタルの代表取締役社長、堀 新一郎さんの親父さんです。

その堀さんと一緒にランチをする会、というのがありましたので、そこでダイレクトに聞いてみたんです。

そうしたら「肉を食え」と言われまして、「えっ」と思ったのですが、よくよく話を聞くと、経営者に最も必要なものは闘争心である、なのでコンサルタントはそれを上回る闘争心がないとダメだ、と言われまして、「これは無理だからちょっと辞めようかな」と思いました(笑)。

これは完全に余談なのですが、非常に気前のいい方なので、堀さんはお肉とか食事によく連れて行ってくださるんですね。

そこでサシが入りまくっているお肉を、ほぼ湯がかずにしゃぶしゃぶなどで召し上がるんです。

 ほぼ生食ということですか。

山内 生食ですね。博多ラーメンでいうと「粉落とし」という状態です。

それを見て、僕は入る業界間違えたな、無理だなと思いまして、当時の上司がパートナーでしたので、その方に「どうやったらパートナーとかになれるんでしょうか」と同じ質問をしたんです。

そうしたら、「本を読め」と言われたんです。

 「肉」と「本」なんですね。

山内 「肉を食え」と言われて「これはちょっとまずいな」と思っていたら、「本を読みなさい」と言われたんです。

渡邉 本は「血肉となる」と言いますもんね。

山内 あ、うまいですね!うまいこと言いますね(笑)。

3,000冊を15年で読破

(中央)Takram コンテクストデザイナー / 慶應義塾大学SFC特別招聘教授 渡邉 康太郎さん / (右)株式会社博報堂 執行役員 / 株式会社博報堂ケトル エグゼクティブクリエイティブディレクター 嶋 浩一郎さん

山内 そのとき、「どんな本を何冊くらい読んだら良いでしょうか」と、続けて聞いてみたら「3,000冊読め」と言われたんです。

3,000冊、まじかよ!と思って、「漫画を入れても良いですか」と聞いたら「絶対ダメだ」と。きちんとした本を3,000冊読みなさい、上下巻は入れても良いけど、と言われまして。

 上下巻は2冊でカウントできますか?(笑)

山内 それは2冊分で大丈夫です (笑)。とにかくまともな本を読みなさいと言われました。

「どんな分野を読んだらいいでしょうか」と聞いたら、「手当たり次第色々な分野を読め」と言われたんですよ。

「MBAに行くと読む本とか、いわゆるビジネス書とかなんでしょうか」という聞き方をしたら、「そういうのも読んでいいけど、そうでない本こそ読め」と言われたんですよね。

この3,000冊というのは、10冊×300分野の因数分解だったということなんです。

1分野10冊というのは、たいてい10冊ほどまともな本を読むと、その分野がどういうものなのかだいたい分かるということだからそうです。

幅広く知っておくことが重要なのは、クライアントが社長だからである、と。

「CEOアジェンダ」というのですが、CEOというのは、それこそマーケティングやシステム、開発、営業など全てのことを色々聞いて、最終意思決定をしないといけないですよね。

今はもう少しポピュラーになっていますが、当時の戦略コンサルティングというのは非常にニッチなビジネスで、たまに少し変わったオーナー社長が雇ってくれるような、そんなビジネスだったんです。

「CEOアジェンダ」に対応するにはそのくらい幅広く知っておかないと話になりませんので、「ひたすら1日1冊ずつ読んで、10年間それを続けろ」と言われたんです。

残業時間などが異様に長い業界ですので、1日1冊は難しいのですが、15年ほどかけて達成しました。

歴史を読むと、未来を予測できるようになる

山内 何故「ちゃんとした本を読みなさい」というのか。今AIなどをやっているのでそこをベースに理解すると、アルゴリズムなんですよね。

情報には「断片的な情報」と、当時そのパートナーの方が表現していた「体系的な情報」と2つがあります。

医学だったら医学、法学だったら法学の体系というのがありますよね。物理学だったら物理学、その体系をそれぞれある程度身につけなさい、ということをどうもおっしゃっていたということがあとあと分かりました。それが前段の話になります。

300分野については、これは何でも良いのですが、特に文系理系にこだわらず読んだ方がいいと思うのですが、1つだけ最強の分野は何か、とよく言われるんですね。

統計学が最強だとか、今アートはすごく勢いありますので、アートこそ学べ、とか様々諸説、諸流派あるのですが、僕の感覚だと歴史なんです。

おそらく歴史が最強で、事実(ファクト)を縦に取って、時系列に読んでいくというのがけっこう重要です。

何故かというと、経営者の悩みというのはほとんど時系列に関するものなんですよね。

「来期下方修正したらどうしよう」とか、「5年後に当たるベンチャービジネスは何だ」とか、「うちの10年後を見据えてビジョンを」とか、そんな話ばかりです。

なので、時間軸に関するものというのはけっこう重視した方がよくて、めちゃくちゃベタなのですが、おそらく皆さんが高校卒業とともに捨てたと思われるこの”山川の世界史”『詳説世界史研究』ですね。あと日本史では『詳説日本史研究』。

1冊と言われたところ2冊お勧めしてしまったのですが、世界史と日本史はおそらくセットで読んだ方が理解が3倍、4倍になるはずです。

 歴史は茶道と同じように、経済の話も、文化の話も、全てが入り交じっていて総合芸術ですよね。

山内 そうなんですよね。これはちょっと読むときに気をつけていただきたいのは、こういった日本の歴史の教科書は、政治史に偏っているんです。

江戸幕府が出来て、とか、あとは軍事史のようなものですよね。それに寄っているんです。

本当は経済史や思想史、科学史などの別の歴史、『テクノロジー思考』は必読だと思っているのですが、そういったものをぜひ縦に読んでいってほしいということです。

そうやって縦に読んでいくと、特にこの直近数百年分ほど読むと、今後数百年はだいたいこんな感じになるんだろうなというのがだいたい分かってくるんです。

歴史はあくまでも過去の出来事ですので、その通りにはならないのですが、だいたいこの辺のレンジに入ってくるだろうなというのがあるので、純粋に教養というわけではないのですが、実用と教養の間くらいでお勧めしています、という感じです。

縦軸、横軸で読む歴史の面白さ

 歴史は、何か点と点が繋がっていく瞬間があります。

例えばルターが免罪符をドイツで売ったのに、カソリック派が反発してフェリペ2世というスペインの王様がイエズス会を作って、世界にカソリックを増やすぞ、と言って宣教師をどんどん世界へ送り込んで、インド、マカオに来て、ザビエルが日本に来たときに唐辛子を持ってきて、その唐辛子を朝鮮出兵の時に秀吉が朝鮮半島に伝えたから、辛子明太子が出来るようになった、みたいな。

(一同笑)

山内 めちゃめちゃマニアックなことをご存じで!

 ルターが免罪符を売らないと、辛子明太子がなかったということをここ福岡の地で、敢えて言ってみました。

山内 すごいですね。

 今、歴史をコンテクストデザインしてるでしょ?(笑)

渡邉 してますね(笑)。まさか桶屋が儲かるとは思わなかったですね(笑)。

さらに、この同じフェリペ2世が、The Philippines(フィリピン)という国の語源になったという。

山内 そうですよね、なんだか国名を変えたいとも言っていますね(笑)。

フィリピン大統領 「国名をいつか『マハルリカ』に」(日本経済新聞)

渡邉 これは本当に面白いですね、色々なものに波及していく。ルターをきっかけとして。

山内 はい、ですので、ぜひ歴史を学ぶ時間を取っていただけるといいかななんて思っています。

渡邉 これは今、山内さんが歴史、ファクトの羅列を縦に読む重要性を語ってくださったんですが、歴史を横に読むというのも面白いなと思っています。

山内 そうですね、縦にも横にも。

渡邉 絶版になってしまっているのですが、NTT出版から出ている松岡正剛さんの『情報の歴史』という本があります。

 あれは名著ですね。(一同頷く)

渡邉 芸術、政治、科学、文化、などといった軸で全世界で何が起こったのかというのを、石器時代から現代まで横串でばーっとまとめている書籍があります。地域別になってしまいがちな歴史を、同時多発性で読み解ける。

なるほど、信長とエリザベス一世はほぼ同い年か、といったようなことが見えてくるんです。

けっこう気持ちいいですね。

山内 ぜひ、縦にも横にも読んでいただければ。

 関係ないけど、結局関係あるんですよね。

日本で戦国武将がガンガン戦っていたときにシェイクスピアが戯曲を書いていたというようなことは、一見全然関係ないけど、関係あるみたいなことなんですよね。

「科学技術から歴史に迫る」が熱い

山内 「歴史」というと、これぞ文系というか、社会のセンター試験の科目のようなイメージがありますが、今歴史で熱いのは「科学技術から歴史に迫ってみよう」というものなんです。

例えば天候、気候ですね。戦国時代は飢饉が多くて、米が取れない。

そうするとその土地を攻めていって奪うしかない、ということになるわけです。

例えば源平合戦の時も、西国は飢饉なんです。東はけっこうちゃんとお米は獲れているんですね。

それで平家が戦争に負けて力を失っていく、とかですね。

天候や気候というのは地層や木の年輪を調べていくと分かったりするらしいんですね。

そういう理系的な理解と文系的な理解を合わせると、より立体的に物事が見えてくるというように、すごく面白いんです。

井上 そういう意味ですとベタですけど、『サピエンス全史』。

山内 あ、それはすごくいいですね。

井上 山内さんがご紹介されたのは3,000年ほどの歴史ですが、その前に人間の歴史は5万年ほどあるよ、という話ですね。

読んだ方も沢山いらっしゃるとは思うのですが、『サピエンス全史』は、ホモサピエンスの歴史で、世界史・日本史は3,000年、その5万年前から人間としてのサピエンスの歴史を描いています。

もともと人間は狩猟民族で、色々なところを動き回っていたわけですよね。今でも我々が甘いものや脂っこいものを食べたいというのは、めったに手に入らないから甘いものを見たら摂っておかないと、というのが未だに、5万年経っても残っているというような話です。

戦争の起源も『サピエンス全史』によると、農耕が始まってから戦争が始まったらしいですね。

狩猟時代に皆あまり争いをしなかったというのは、なぜならば他の人が来たら別の所へ行ってしまえばよかったのに対し、農耕が始まると農地を守らねばならなくなるから軍隊が出来て、戦争が始まったといいます。

その意味でいうと、歴史の3,000年の中の一つの点が今と繋がっているという、その更に5万年くらい前まで遡れたりするんですよね。

山内 ぜひ、縦に縦に見ていただくと明日の悩みが少しだけ軽くなると思います。

 はい、これだけで終わってしまいそうですが(笑)、渡邉くん。

(続)

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続きは 6. Takram渡邉さんが考える本とは「完成していて未完成、かつ演奏を待つ楽譜」である をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/フローゼ 祥子/道下 千帆/戸田 秀成

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