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9. 「本屋B&B」を作った嶋さんが勧める、「効果効能を求めない読書」の愉しみ【終】

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「大人の教養シリーズ『読書』〜ビジネスパーソンこそ本を読め!(シーズン2 )」全9回シリーズの最終回は、ホストである博報堂ケトル嶋 浩一郎さんの読書を紹介。自分が読まないジャンルの本も必ず読み、時々の「当たり」に喜ぶ嶋さんがおすすめする1冊とは? もっと本が読みたくなる読書セッション、最後までぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2021は、2021年2月15日〜2月18日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

ICCサミット KYOTO 2020のプレミアム・スポンサーとして、Lexus International Co.様に本セッションをサポート頂きました。


【登壇者情報】
2020年9月1〜3日開催
ICCサミット KYOTO 2020
大人の教養シリーズ「読書」〜ビジネスパーソンこそ本を読め!(シーズン2 / 90分拡大版)
Supported by Lexus International Co.

(スピーカー)
嶋 浩一郎
株式会社博報堂 執行役員/株式会社博報堂ケトル エグゼクティブクリエイティブディレクター

渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー / 慶應義塾大学SFC特別招聘教授

(ゲスト)

川上(全龍)隆史
宗教法人 春光院
副住職

琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)

高田 修太
一般社団法人HLAB/株式会社エイチラボ
共同創設者COO / プロマジシャン

丸 幸弘
株式会社リバネス
代表取締役 グループCEO

大人の教養シリーズ「読書」〜ビジネスパーソンこそ本を読め!(シーズン2)の配信済み記事一覧


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最初の記事
ビジネスパーソンにとっての読書とは? シーズン2も本を語り尽くす!

1つ前の記事
「見えるものだけが真実ではない」春光院 川上(全龍)隆史 さん、HLAB高田さんが想像する文章の背景

本編

「効果効能を求めない読書が最高」博報堂ケトル嶋さん

博報堂 執行役員 / 博報堂ケトル エグゼクティブクリエイティブディレクター 嶋 浩一郎さん

 私は、広告のクリエイティブディレクターをしつつ、雑誌の編集者をしています。

出版業界に関しては少し思い入れがあり、2004年に本屋大賞を立ち上げました。

現在も本屋大賞の実行委員会理事をしていて、賞を授与したり、8年前には自ら本屋(本屋B&B)を開業したりもしました。

読書に関しては、基本的に「やる必要のないことの全て」と音楽家のブライアン・イーノが言っていますが、そもそも“必要のないこと”ぐらいの認識です。

先ほども言いましたが、それは広告も悪いのです。「泣ける映画です」や、「アイデアが湧く本です」なんていうキャッチコピーで本を消費財として売ったりするから。

それは、よろしくないなあと思うのです。

基本的に、読むまで何が起きるか分からないくらいの、効果効能を求めない読書が最高だと思っています。

先ほど併読するという話も出ていましたが(※)、基本的に、乱読と併読です。

▶編集注:Part6で、琴坂さんが紹介した自分の読書のポイント「特に小説は複数並行で読み進めろ」のこと。

読むテーマはバラバラで、今は、ホッキョクグマについての本と、昔京都にいた「配膳さん」という人の本を読んでいます。

配膳さんというのは、お茶席や宴会、結婚式のしつらえをする仕事をする人のことで、昭和時代までは祇園に200人ほどいたそうです。

あとは、なぜか昔の小説、それも川端康成の作品などを読み返していたり。

主要作品目録(公益財団法人 川端康成 記念會)

読むジャンルはバラバラですが、必ず3~5冊くらい読むと、必ず同じようなことが出てくるんですよね。それに出くわしたときの感じがたまらなくて。

ウディ・アレンの著書に、長く彼のパートナーだった女優のミア・ファローについて書かれていると思ったらフランク・シナトラの本に、彼がそのミア・ファローと付き合っていたことが出てくるといったように、本の中で人生と人生が錯綜することがあるとすごく嬉しいですね。

その他に、ガーデニングの本や、自分が絶対に読まないジャンルの本を必ずどこかで読むことにしています。

高田 本屋に行って、バッと手に取る感じですか?

 今はありませんが、昔、阿佐ヶ谷に「書原」という本屋があって、「一体誰がこの本を買うのだろう?」という本がレジ横に置いてあったんですよ。

校正記号の使い方や、何かの運転の仕方や、メダカの飼い方などの本です。

「この本は俺が買ってあげないと、誰にも買ってもらえない」と思って、そこで“救済”をしていたのです。

ところが、先ほどのブックオフの話と同じで、時々すごい当たりがあるのです。

琴坂 私もたまに、全く関係のないジャンルでテーマ設定をすることがあります。例えば、「徳川慶喜」と検索して出てきたものを全部買うとか。

渡邉 全買い!

琴坂 そうすると、本によって描く角度が全く違うので、歴史の多面性が分かりすごく面白いんです。

 ウィキペディアのランダム表示や、ローテーションでずっとぐるぐる回っていてほしいです。

ランダムボタンはあるけれど、ひたすらそれだけをやってほしいなんて思うんですよね。

『浄瑠璃を読もう』でわかる近松門左衛門のビジネスセンス

 私が最後に選んだ本は、『浄瑠璃を読もう』です。

私は著者の橋本 治さんがすごく好きです。彼は古典芸能についてたくさんの本を書いています。

古典の中では、歌舞伎や文楽が好きで、そこに描かれている人間関係、恋愛、上司との関係などはもう圧倒的です。『半沢直樹』のようなドラマや今の恋愛映画にあることは、だいたい全部、文楽や歌舞伎の中にあります。

「全部のプロットは昔の人がすでに考えている」「自分が表現をする時のアイデアも全て昔の人が考えている」と思ったら、もうすいませんでしたという感じです。

 でも人間ですから、生命科学的にはすでに考えられていても当たり前な気がします。

 そうですね。皆さんがご覧になったことがあるかは分かりませんが、文楽は、三味線弾きがいて、太夫が語り、人形遣いが人形を遣うという古典芸能です。

近松門左衛門という、文楽の床本(ゆかほん)、つまり台本を書いた人がいるのですが、彼はスーパービジネスマンなんですよ。

それまで文楽というと、『義経千本桜』など武士の主従関係を描いた歴史ものしかありませんでした。

でもそれを若い女の子に見せようということで、「この前心中事件があったから、それをワイドショーのように伝えてしまおう」ということで『曾根崎心中』が書かれたのです。

曽根崎心中 演目 主な演目 世話物(文楽への誘い)

渡邉 時事ネタを持ち込む。

 それで「世話物」というジャンルができたのです。

歌舞伎や文楽の世話物は、江戸時代の“ワイドショー”とも言えます。若い子が来やすいように、劇場の入場料を安くしようなんてこともあったようです。

それから、近松門左衛門の床本には、字余りや字足らずがすごく多いのです。ですから当時の人が太夫の語りを聞いている時は、今で言うと桑田佳祐さんの歌を聞いているのに近かったかもしれません。

このような実験をたくさんしていて、近松門左衛門は今だと、秋元康さんのような人なんだろうなと思ったりもして、色々と学ぶところがあります。

古典を通して人間の嫉妬や恋愛などについて考えることができるという点では、古事記や日本書紀などを読んでもすごく面白いだろうなと思います。

琴坂 『浄瑠璃を読もう』はあと2冊あるようです。

渡邉 今アマゾンで「浄瑠璃を読もう」「橋本 治」と検索したら、そのすぐ下に『もう少し浄瑠璃を読もう』という本もありましたよ。

(一同笑)

琴坂 続編まで!

渡邉 「もう少し」が謙虚でいいですね(笑)。

川上 浄瑠璃では、キャラクターの白黒はっきりしているのですか?

 はっきりしていますよ。基本的に、世話物に出てくる男は皆“ダメ男”です。でも女の人はきちんとしています。

恐らく大阪の旦那衆が見に行って、ダメな男がたくさん登場するから、逆に自信を持って帰っていくというような類の芝居だったのではないかと思います。

川上 そんな感じだったのですね。

 ほとんどの筋書きが、借金して心中や不倫をするという、こんなダメ男がいるのかというくらい、男がダメな設定になっています。

読書とは、行間にある問いを探す旅に出ることである

 そろそろ締めに入りましょうか。

渡邉 これ全部読んでいる時間ないかな?(と手元のメモを見る)

皆さんの名言をたくさんメモしましたが、すでに時間がオーバーしているので、独断と偏見で1つだけ、僕の心に刺さった丸さんの言葉をリフレインします。

「読書とは、行間にある問いを探す旅に出ること。あなたは本をタオルにくるんで寝たことがありますか?」

(一同笑)

 ありがとうございます!

みんな、寝たことないの!? 全然駄目だ(笑)。

 はい、時間ですから、これで締めますか?

琴坂 確か、node hotelで「読書」をテーマにする部屋(※)がありますよね。

▶編集注:ICCサミット KYOTO 2020 DAY2の特別プログラム「Co-Creation Night」のこと。会場のnode hotelでは、各客室の「ホスト」がテーマを設定し、夜中まで語り合う機会が設けられた。

高田 そうですね。

琴坂 そこに「読書」の部屋があるそうなので、もし時間のある方はいらっしゃってください。そこでまた議論できますね。

渡邉 そうですね。議論しましょう。

 では、どうもありがとうございました。

渡邉 ありがとうございました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成/フローゼ 祥子

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