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「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン5 )」全8回シリーズの(その2)は、リバネス井上浄さんらの研究で明らかになった「ワクワク感」と「行動」の関係に迫ります。井上さんが命名した「自分主人公感」とは、一体どのようなものなのか。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 ダイヤモンド・スポンサーのノバセル にサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICCサミット FUKUOKA 2021
Session 2C
大人の教養シリーズ
人間を理解するとは何か?(シーズン5)
Supported by ノバセル
(スピーカー)
石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事
井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO
北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員CDO(チーフデータオフィサー)グローバルデータ統括部 ディレクター
福田 真嗣
株式会社メタジェン
代表取締役社長CEO
(モデレーター)
深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役
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▶「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン5)」の配信済み記事一覧
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1つ前の記事
1. 人気シリーズ第5弾!今回の人間の理解は「ワクワク」の探究から!
本編
研究で分かった「ワクワク感」と「行動」の関係性
井上 ではどんな研究をしたかと言うと、まず「ワクワクが、主体的な行動の連続を促しているのではないか」という仮説を立てました。
この仮説に基づいて、「興味関心」「没頭」「知的欲求」「持続性」といった事柄についてアンケートをとっていきました。
これが、研究のコンセプトです。
この図のように、学習者の行動を「知る」→「関心を持つ」→「ワクワクする」→「簡単な行動」→「外向的行動」のプロセスに分解します。
この中で「外向的行動」が一番分かりやすい評価項目なので、これを指標にしました。
そして、ワクワク感と行動の促進因子・抑制要因もアンケートで調べてみました。
その結果、例えば「神経症傾向」がある高校生は、行動が促進されことが分かりました。
興味深いのが高校の「学年」が上がると行動が抑制される点です。
もっと面白いことに「協調性」のある人も行動が抑制されることが分かりました。
北川 まわりに合わせようとするからですかね。
井上 同様に「勤勉性」もワクワク感をやや抑制します。
逆に、「拡散的好奇心」や「効力感・統制感」「受容感」はワクワク感を促進します。
線(ー)を引いているところは、有意差なしという結果でした。
そして一番下が先ほどの話につながるのですが、ワクワク感を持つ人は、行動が“強く促進”されていることが分かったのです。
つまり、中から湧き上がるものがある人は、実際に行動に移していることが分かりました。
よって、やはりワクワク感が人間の動力源だということです。
北川 ワクワクした時にどんな行動をするのかも気になりますね。
例えばワクワクした時、メッセンジャーで人に伝えたくなる人もいれば、違う形で表現しようとする人もいるはずです。
井上 そうですね。
こういう状況(新型コロナウイルスの流行)で行動の種類は変わってきているかもしれませんが、「人間はワクワク感をもとに行動を起こしている」という本質は変わっていないと思います。
ビジョン・ミッションより「謎」を掲げよ
井上 人間がワクワク感を動力源に新しいことを興していると分かったので、次に我々は、ワクワク感の正体を掴もうと思いました。
ワクワク感と関連の高い指標を調べると、高校生の場合では「知的欲求」が一番関連していることが分かりました。
“もっと知りたい、先が気になる”という感情が、ワクワク感の原点になっているということです。
これは「没頭感」や「価値認識」よりも関連度が高く出ました。
皆さんもご自身のことを考えていただければ分かると思うのですが、“もっと知りたい、先が気になる”の感情が、行動をドライブしているのではないでしょうか。
石川 “なぞなぞ”がある方がいいということですね。なぞなぞがワクワクを呼んでくる。
北川 まさに「人間とは何か?」。
井上 そうです。そうした問いが、知的欲求、ひいてはワクワク感につながっているのではないかということです。
というわけで結論がもう出ましたね。
人間とはワクワク感だと!
一同 (笑)。
石川 ビジョンやミッションではなく、謎を掲げることが大事なのでしょうね。
井上 そう、これからはビジョンじゃなくて謎を掲げる。
この「人間を理解するとは何か?」のセッションも、解くべき謎があるからこそ100回以上続いていくわけです。
▶編集注:2021年9月開催のICCサミット KYOTO 2021では、当セッションのシーズン6が決定しています!
「やってみなはれ」が外向きの行動を促進する
井上 次に、学校間の違いです。
先ほどは学年が上がると行動が抑制されるという結果を示しましたが、こちらはA校、B校、C校の比較です。
上の段を見ていただくと、学年が違っても変化のないA校と、学年とともに行動が抑制されてゆくB校とC校があります。
行動が抑制される要因は、どう考えても受験です。
一方で外向行動、つまり中から湧き出した行動については各校間で若干違っています。
下の段に示すように、C校は行動自体は減っていくものの、外向行動は逆に増えているのが分かると思います。
石川 どんどん増えていますね。
写真左から、Well-being for Planet Earth 石川さん、リバネス井上さん
井上 例えばこういう高校には、とんでもなく熱い先生がいらっしゃることが分かりました。
学校の環境として「いいからやってみなさい」と、ナイストライを許す環境があるのです。
こういう違いが見えたので、これからの学校は学習者の成績だけではなく、ワクワク感や外向行動も見ていかないといけないのでは?と関係者に伝えています。
石川 サントリーの「やってみなはれ」ですね。「40余年赤字が続いていても、ビール事業をやってみなはれ」と。
▶やってみなはれ精神が生み出したフロンティア製品(サントリー)
井上 そうです。
このように分解すると、色々な事象があって、色々なチャレンジがあります。
B校が悪いというわけではないのですが、教育環境において新しい評価系を作る必要があると感じました。
主体的な行動には「自分主人公感」が必要
井上 そして、これがしばらく研究してみた上での僕なりの結論です。
「ワクワク感と自分主人公感」。
ワクワクから実際に行動に移るまでにどんな要素が関連しているのか、アンケートから相関を調べてみました。
まずは左上の「心理的安全性」がとても重要であることが分かりました。
石川 まさに「やってみなはれ」ですね。
井上 そう。そして「環境の可変性・開放性」、つまり失敗が許される環境です。
しかし、こうした土壌があれば「主体的な行動」が起きるかというとそうではありません。
大事なものとして見つかったのは「自己肯定感・自己効力感」で、これらを僕なりの言葉に置き換えたのが「自分主人公感」です。
例えば、漫画の主人公は最後にうまくいく前に、絶対に敵にやられますよね?
石川 やられますね。
井上 傷つきますよね? 絶対、へこみますよね? あれが僕らの人生に刻まれていると思うのです。
自分主人公感は、内から外に何かを出していく際に最も重要な要素なのです。
自己肯定感・自己効力感なしに“しめしめワクワク”していると、折れてしまう。
▶編集注:Part1では、大人が抱くワクワク感として「これは儲かるかもしれんな、しめしめ」という“しめしめワクワク感”があることが解説されました。
でも、自分主人公感を持って動く人は強い。
どんなに傷ついても最後に勝つ姿、「オラ、ワクワクすっぞ!」の精神が刷り込まれているからです。
北川 『ドラコンボール』ですね。
井上 そう!だから心理的安全性、環境の可変性・開放性を担保した上で、あなたが主人公だと働きかける。
もちろん、開放性などが主体的行動につながっているのも確かですですが、このラインが重要だというのが、これまでの研究で出てきた結論です。
つまり自分主人公感を持つ人間こそが、内から外に出る激しい感情をうまくコントロールし、表現し、行動しているのです。
ですから「人間を理解するとは何か?」に対する僕の答えは「自分主人公感」だということです!
(一同頷く)
うんうんと納得されると、ちょっとやりづらいのですが(笑)。
最高峰のAIは「しめしめ」×「ワクワク」のAI
石川 つまり、人間をしめしめ的に捉える人と、なぞなぞ的に捉える人がいて、我々はなぞなぞ側でありたいということですよね。
井上 その通りです!
北川 最近のAI(人工知能)の発展においては革命が起きていますよね。AlphaGoが…。
石川 MuZero(ミューゼロ)になりましたね。
楽天株式会社 常務執行役員CDO グローバルデータ統括部 ディレクター 北川 拓也さん
北川 そう、MuZeroになりました。
▶最強AI「MuZero」とは ルールを知らないのにゲームで勝ちまくる(日経クロストレンド)
AlphaGoの時代には、AIはAtariのアーケードゲームの30個ぐらいはうまくできましたが、残り20個はできませんでした。
当時のAIの仕組みは、リワード(報酬)をベースにしたものでした。
井上 “しめしめ”ですね。
北川 そうです。“しめしめ”をベースにロボットをつくろうとしていました。
そこに、ワクワクドリブンなAIを組み込むと、残りの20個が解けるようになりました、ということなんです。
井上 ワクワクドリブンなAI、すごく興味ある!
石川 Curiosity、つまり好奇心ですよね。
ゲームの最後に、途中わざわざ寄り道をして手に入れた鍵を使うストーリーがあって、みたいな。
北川 そう、そういったサブゴールがある場合、CuriosityドリブンなAIが必要になります。
ですから現在AIの最高峰は、「リワード」と「ワクワク」の両方を組み込むとうまくいくと言われています。
井上 似たような事例を見たことがあります。
『スーパーマリオ』のようなゲームを思い浮かべていただきたいのですが、最速でゴールするための道を進んで行くことで報酬を受けるAIと、これまでにない面白い動きをすることで報酬を受けるAIの両方を、同時にスタートさせます。
すると、最終的には後者、つまりチャレンジをしているAIの方が早くゴールするらしいのです。
先ほどの高校生を対象とした研究でも、自分主人公感を持ってワクワク感を動力源に動くことが外向行動につながることが分かりました。
この事実を大人に向けても活用したいですね。
石川 素晴らしいですね。
(続)
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続きは 3. ビル・ゲイツはなぜ環境保全に取り組むのか? “ゾーン”に入った人間はここが違う をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸
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