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8. 日本人は、大事なものは奥に置いて隠したがる【終】

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「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン5 )」全8回シリーズはいよいよ最終回。西洋建築と日本建築の違いから、日本人が大切なものをどのように表現するのかに迫ります。そして早くもシーズン6の開催が決定!最後まで飛び交う“奥が深い”議論にぜひご注目あれ!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 ダイヤモンド・スポンサーのノバセル にサポート頂きました。


【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICCサミット FUKUOKA 2021
Session 2C
大人の教養シリーズ
人間を理解するとは何か?(シーズン5)
Supported by ノバセル

(スピーカー)

石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事

井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO

北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員CDO(チーフデータオフィサー)グローバルデータ統括部 ディレクター

福田 真嗣
株式会社メタジェン
代表取締役社長CEO

(モデレーター)

深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役

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最初の記事
1. 人気シリーズ第5弾!今回の人間の理解は「ワクワク」の探究から!

1つ前の記事
7. 和歌に見る日本文化と「否定の受容」のかっこよさ

本編

日本人は本当に大事なことをどう表現するのか?

公益財団法人Well-being for Planet Earth 代表理事 石川 善樹さん

石川 ここまで「否定(の受容)がかっこいい」という話をしてきましたが、肯定すべき本当に大事なものを、日本人はどう表現してきたのだろうか、というのが次のポイントです。

僕は建築が好きなのですが、ブルーノ・タウトという人が昔「世界には2つのすごい建築がある」と言いました。

その2つとは、パルテノン神殿と伊勢神宮です。

見ての通り、この2つの建築物は全然違います。

山の頂上にものすごく不自然に立つ石の構造物であるパルテノン神殿と、自然の中に溶け込み、石ではなく木で造られた伊勢神宮。

不自然なものと自然なものが2大建築だと言われているのは、素晴らしいと思います。

石川 日本人はこのように、伝統的に自然を愛でてきました。

山が御神体であることが多いですが、日本人は山、つまり自然に入る際に鳥居という入口から橋を渡ります。

その「橋」とは「箸」でもあります。

まず、箸を横向きに置くのは日本人くらいです。

アジアの他の国では、箸を縦に置きます。

ですから、箸の置き方を見ると、日本人か他のアジアの国の人か分かります。

ではなぜ日本人は箸を横に置くかというと、箸は結界だからです。

井上 ほう。

石川 人間と、食べ物つまり自然界を分かつものなのです。

福田 境目ということですか?

石川 そうです。この結界、つまり箸を取り上げて、自然界に入っていくわけです。

食事とは、自然界に足を踏み入れる儀式なのです。

井上 スペースの問題ではなかったのですね。

石川 そしてこれは、自然を畏むということです。

本当に大事な肯定すべき自然に対して、畏まっているのです。

日本人に根付く「奥の思想」

石川 この写真をぱっと見て、日本人なら、何となく「ああ、神社かな」と感じると思います。

でも他の文化圏の人なら、ただの自然なのかなと思うでしょう。

神社はたいてい、このように自然を分け入っていく造りになっています。

これは鳥取県の有名な神社で、今度、拓也(北川さん)と行く予定になっているんですけれど(笑)。

これがどうしたかというと、道がまっすぐ造られていないんですよ。

どうせ森を切り開いてるのだからまっすぐ造る方が効率的なのに、あえて見えないようにしているのです。

進まないと先が分からないようにしている。

井上 いやあ、ずるいね。

石川 これを評して、有名な建築家の槇文彦先生は「日本建築には、『奥の思想』がある」と言われたのです。

『見えがくれする都市―江戸から東京へ』(槇文彦 他/著)

西洋建築は「頂の思想」であり、上へ上へと伸ばしたがります。

でも日本建築は、奥に行かせたがるのです。

日本には、高さよりも奥行きを重視する文化があるということです。

「奥様」や「奥の手」など、奥にまつわる言葉がいっぱいありますよね。

福田 腸内細菌も、奥の方にありますしね。

一同 (笑)。

石川 そうなんです(笑)。

日本人は、大事なものは奥に置いて隠したがる

石川 つまり、日本人は本当に大事なものは奥の方に置いて隠したがるのです。

奥の間などもありますが、大きい屋敷だと、ふすまを開けて開けて開けて、奥の方に行きますよね。

井上 そうだね(笑)。

石川 「だったら最初から開けておけよ!」と思いますよね(笑)!?

ふすま何枚あるのよ、と(笑)。

そしてせっかくたどり着いても、すだれみたいなものがかかっていて…。

井上 その先にはまた、謎の扉がある。

写真左から、Well-being for Planet Earth 石川さん、リバネス井上さん

石川 頭を下げなければいけなくて、顔を見てはいけないとかね(笑)。

つまり、肯定すべき本当に大事なものは、奥に置いて、謎にしておくということです。

逆に、奥の反対の概念は口、つまり入口です。

入口では否定を受容して、それをかっこいいということにしておく。

否定を入口にして本当に肯定すべきものは奥に置いて、なぞなぞにしておくのが日本人の癖なのです。

北川 いやー、奥が深い(笑)!

石川 深いでしょ(笑)!

一同 (笑)。

井上 でも、何でこうなったんですかね。深井さん、歴史的な背景があるのでしょうか?

深井 おそらく、外敵があまりいなかったからだと思います。

攻められることが少ないから、脅威の対象は人間ではなく自然のみになりますよね。

でも自然は完全に制御不可能です。

ですから、コントロールできないものを恐れる人の精神が、結果的にこうさせたのかなと思います。

写真左から、メタジェン福田さん、COTEN深井さん

井上 へえ~。

石川 高みを目指すのに対して、奥深さ、奥みを目指す。

井上 奥みを目指す。

石川 奥というキーワードはぜひ、つかんで帰っていただきたいです。

僕は「奥様」という言葉がよく分からなかったのですが、奥の思想から考えると、奥様の深み、有り難さを感じます。

井上 大事なものなんですよね。

石川 迂闊に見てはいけないんだなと(笑)。

一同 (笑)。

石川 僕はもう、そういうことにしました(笑)。

写真左から、Well-being for Planet Earth 石川さん、リバネス井上さん

シーズン6決定!次回は人間を理解できるか!?

深井 ありがとうございます、ちょうど…。

井上 お時間ですね(笑)。

株式会社COTEN 代表取締役 深井 龍之介さん

深井 今日、皆さんが話していた内容は、相当リンクしていましたね。

切り口は違いましたが、それぞれ重なるところがたくさんありました。

北川 人間を理解しようとした時、そこにあるなぞなぞは共通しているのではないでしょうか。

井上 まあ、奥でつながっているのでしょうね!

石川 このシリーズは結局、奥を見せないことがテーマになってくるかと思います。

井上 最終的には見せない(笑)。

福田 奥にあると、結局たどり着かない気もしますね。謎が続き、ワクワクも続いていく。

深井 そうですね。ですから次回は、またその謎をつなげていって…。

石川 (小林)雅さん、いいですかね(笑)? あ、オッケーね!

井上 オッケー出ました(笑)!シーズン6に突入!

北川 このセッションの準備をする際、自分の中でまだ解けてない問いを考えます。

そして、それを解きながら資料を作るというのがプロセスです(笑)。

株式会社メタジェン 代表取締役社長CEO 福田 真嗣さん

福田 でも、それこそが本質な気がします。

我々人間は、分からないことを分かろうとするために前に進む。

分からないことが原動力である。

井上 知的好奇心が止まらないんですよね。

北川 分かっていることを話していたら、100回は続けられないですからね。

井上 無理無理。

北川 我々自身がワクワクする、分からないことを考えるからこそ、このセッションは100回続けられる。

写真左から、Well-being for Planet Earth 石川さん、リバネス井上さん、楽天北川さん

福田 登壇するにあたり、これが結論になりそうだという答えを一応持ってきますよね。

でも話しているうちに、やっぱりこれは結論じゃないな、と次の謎が生まれる。

このサイクルが大事ですね。

石川 そうなりますね。ぜひ、わびさび菌を見つけていただいて…。

福田 見つけます!

井上 まずは、我々から採取ですね(笑)。

福田 ICCサミット参加者には、ワクワク菌やわびさび菌を持っている人が多そうだから、提供してもらって、外国人に入れたら…。

石川 みんな日本人みたいになってしまいますね(笑)。

井上 いいですね(笑)。

深井 それでは、これで終わりたいと思います。

皆さん、本日はありがとうございました!

(終)

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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