ソーシャルビジネスの提供者が幸せでなければ、事業は続かない | 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

2. ソーシャルビジネスの提供者が幸せでなければ、事業は続かない

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「ソーシャルグッド社会の実現に向けて」(シーズン2)、全5回シリーズの(その2)は、ソーシャルビジネスをいかにサステイナブルなものにするかという議論。オーナーであるMobility Technologies川鍋さんが、カタパルトを見て感じたソーシャルビジネスをいかにサステイナブルなものにするかという問題提起や、話題を集めた獺祭の意見広告について議論が進みます。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2022は、2022年2月14日〜2月17日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2021 プレミアム・スポンサーのベクトル にサポート頂きました。


【登壇者情報】
ICCサミット KYOTO 2021
Session 12A
ソーシャルグッド社会の実現に向けて(シーズン2)
Supported by ベクトル

(スピーカー)

川鍋 一朗
株式会社Mobility Technologies
代表取締役会長

小助川 将
Go Visions株式会社
代表取締役

櫻井 一宏
旭酒造株式会社
代表取締役

松田 文登
株式会社ヘラルボニー
代表取締役副社長

山崎 大祐
株式会社マザーハウス
代表取締役副社長

(モデレーター)

三輪 開人
認定NPO法人 e-Education 代表理事 / 株式会社e-Education 代表取締役

「ソーシャルグッド社会の実現に向けて(シーズン2)」の配信済み記事一覧


連載を最初から読みたい方はこちら

1つ前の記事
1. ソーシャルグッド事業に携わる6人が集結! その取り組みを語る

本編

三輪 さて、僕は普段、途上国で教育支援の仕事をしています。

ソーシャルグッドな社会を思い浮かべる時、Go Visionsと同様、子供たちの夢が叶った瞬間というものが、最初に思い浮かんでいました。

ただ、川鍋さんが話してからここにたどり着くまでの間に感じたことがありました。

例えば自分のパートナーが子どもを産むとなったとき、陣痛タクシーを使ってめでたく出産ができた、獺祭を飲めたとして、パートナーに贈るものがヘラルボニーやマザーハウスの商品だったら、それはどれだけ幸せなのだろうと感じたのです。

顔が浮かぶんですよ。「陣痛タクシー」は川鍋さんなくして存在しないし、獺祭は櫻井さんや櫻井さんの親や祖父母世代がいなければ絶対この世に存在しなかったということが分かっています。

景色は変わっていないけれど、ソーシャルグッドな形になった気がします。

皆さんもそうかもしれませんが、プレゼンテーションを聞きながら、ソーシャルグッドな社会の解像度がどんどん上がりました。

さて、登壇者の皆さんから小助川さんに聞きたいこと、言いたいこともたくさんありそうですし、カタパルトのプレゼンを聞いて変わったこと、変わらなかったことについてお聞かせください。

審査員として参加されている方は、ソーシャルグッドの実践者以外にはあり得ません。

ですからそんな皆さんがプレゼンを見て、ご自身の中で何か変化があったとしたら、それを教えて頂きたいです。

ソーシャルビジネスに、どういうエンジンを回すか

Mobility Technologies 代表取締役会長 川鍋 一朗さん

川鍋 変化ではないですが、12人のプレゼンには、ビジネス寄りでマネタイズができそうなものと、もう少し社会福祉寄りのものがありました。

これはグラデーションのようなもので、きっちりは分けられません。

ムハマド・ユヌス的に言うと、真ん中がソーシャルビジネスになると思いますが、どんなビジネスもソーシャルだし、長期的にはサステイナブルにはならないです。

ユヌス・ソーシャル・ビジネスとは – ムハマド・ユヌス博士について (ユヌス・ジャパン)

どうやって持続するか、山崎さんのおっしゃるように、働く人のやる気だけで駆動するモードだと、長続きしません。

例えば、年収が200万円で男性が結婚して退職するという介護業界のような世界観では、続かないと思います。

そこにいかにきちんと値付けをするか、ということです。

昨日、LURRA°というイタリアンのお店に行きましたが、ワインのペアリングなど全て込みで32,000円でした。

オーナーと話すと、従業員の手取りは毎月最低28万円で、3カ月の間に1週間は必ず休むということでした。

ソーシャルビジネスの提供者である我々が幸せでなければ、事業は続きません。

どういうエンジンを回すか、です。

それがビジネスエンジンであればベターですし、場合によっては、カタパルトであった人工透析(ORANGE Kitchen)やホームレスによる農業(農スクール)など、社会福祉寄りのものもあります。

それぞれに適切なエンジンをつける、つまりマネタイズモデルを生み出すのが、持続させるためにはすごく大事だと思います。

「自分だったら、これは行政に頼むかな」など思いながら、カタパルトを聞いていました。

全部必要で、尊いですよね。

「なぜそこに、それほど情熱を持てるのですか?」という人を、周りがどれだけサポートできるか。

多くの人はそこまでではないので、一人の教祖様にどれだけ寄り添えるか。

そういう仕組みを作りたいですね。

獺祭の意見広告への反響

三輪 歴史を作ってきた櫻井さんは、今日のプレゼンを聞いて何を感じたのか、僕はすごく気になっています。

旭酒造株式会社 代表取締役 櫻井 一宏さん

櫻井 200年の歴史がある酒蔵だと紹介して頂きましたが、父親の代まではどちらかと言えば、「酔う」という機能をメインに、主に普通酒を造って売っていた会社で、ソーシャルグッドな会社かどうかは微妙でした。

しかし父が獺祭を造り、徐々に成長させていく間に、第二段階として、「美味しい酒で人を幸せにする、人に幸せを提供する」という価値観を持つようになったのです。

最近ようやくそうなって、周りの農家の誇りや、飲食店、社会に対して何ができるかを考え始めるようになったのは、この5年、10年のことです。

例えば、獺祭の売上は寄付しています。

ようやくそこにたどり着いたというか、自分たちの商売が何とかなって初めて、そこに目を向けられるようになりました。

今日いらっしゃった12人の皆さんが、「社会をこう変えるんだ!」などの問題意識から始めたという点については、正直、「羨ましい、悔しい」という感覚がありますね。

山崎 旭酒造の新聞広告は、すごく話題になりましたよね。

旭酒造が飲食店営業時間制限策に意見広告、賛同の声集まる(アドタイ)

エッジが効いたことを発信されていて、すごく勇気ある行動だと思いました。

5年、10年前は違ったということですが、想いがなかったらやらないと思いますし、業界の人でもやらないであろうことをやれるようになったのは、どうしてですか?

櫻井 「美味しいもので幸せにする」という価値観を持ったところで、お客様たち、仲間が増えてきて、ソーシャルグッドに興味のある方たちが増えてきて、私たちに影響を与えてくれたのだろうと思っています。

ですから、周りの人を大切にしないといけないと思います。

あの広告を出してよかったなぁと思ったのは、あの広告は、直接、飲食店の方に何かできるわけではありません。

しかしあの広告を見て、それについてのSNSの書き込みを見て、飲食店は泣くのです。

感染症対策をしているからこそ苦しいという自分たちの状況を、みんなに認めてもらえた、飲食店は存在してもいいと感じられたからと言って頂きました。

先日、「飲食店のトイレに飾ってスタッフに見せる新聞広告No.1」だと言って頂き、とても嬉しかったです。

三輪 おお!

櫻井 お客様や周りの人が、徐々にそういうところまで引っ張ってくれたと思っています。

そういう社会になってほしいと思っていたのが、周りに仲間が集まって、私たちを引っ張ってくれたのだろうと思います。

オーナーの突撃精神こそがベンチャーの貴重なバリュー

川鍋 でもあれは、オーナー企業でなければできない広告ですよね。

三輪 その話も聞きたいですね。

ご存知の方もいると思いますが、川鍋さんは3代目社長で、櫻井さんは4代目蔵元です。

受け継いできたものを思い切り転換するのはそうそうできないと思うのですが、お二人は既に実践されていて、とても尊敬しています。

オーナー企業だからこそ、ソーシャルグッドのみならず、描きたい社会の実現に向けて、一手、二手を先に打てるのでしょうか。

川鍋 3代目だと、基本的にはバトンを渡す走者だと思っています。

子供が3人いるので、30年後に誰かに渡すことを考えると、今年のP&Lはもうあまり関係なくなります。

今日より明日、明日より30年後で、常に30年後を見据えていますし、それがオーナー企業の強さだと思います。

例えばビジネス的にも、11年前にアプリを始めて、5年ほど前から営業利益の半分くらいを投資して、バンバン燃やしています。

そしてトヨタやドコモと協業し、最大のライバルだったDeNAのMOVとも最終的には合併しました。

モビリティDXを推し進めるMobility Technologies、NTTドコモを含む3社との資本業務提携により2020年の累計調達額が最大266.25億円*に(PR TIMES)
タクシーの日本交通とトヨタが組んだワケ(WEDGE Infinity)
日本交通とDeNAがタクシー配車で事業統合 業界の課題に挑む(日経クロストレンド)

営業利益の半分を新規事業に投資なんて、できないですよね。

だけど、お金が必要ない、設備投資型ではない、キャッシュフローの良いタクシー事業だったから、できたのです。

アプリ会社の場合、タクシー事業によるキャッシュフローの流れ、リズムだと賄いきれないのです。

だから我々は外部資本に頼り、成長できて、ここまで良かったと思っています。

しかし、面倒なこともあります。どう考えてもやった方がいいことでも、comply or explain(準拠または説明)なので、いちいち説明しないといけないのです。

でも、世の中全てについてexplainできないですよね。

例えば15年前の時点で、マザーハウスがうまくいくことを論理的に説明しろと言われていたとしても、絶対無理でしたよね。

こういうことを言うと、「あの人はやっぱり右脳系だから」と言われて終わってしまいます。

オーナーの突撃精神こそがベンチャーの貴重なバリューであって、それに寄り添いながらも怪我はしないようにするのがコンプライアンスだと、僕は思っています。

そういう難しさはあります。

だから旭酒造のあの広告を見て、皆さん、胸のすく思いだったのではないでしょうか。

コンプライアンス重視の人たちからも、拍手喝采だったと思います。

できることを一歩一歩やっていくと、数年で社会に広がる

認定NPO法人 e-Education 代表理事 / 株式会社e-Education 代表取締役 三輪 開人さん

三輪 今回、登壇いただくにあたって、川鍋さんや櫻井さんの経歴を改めて拝見し、歴史を感じました。

逆に、社会課題を解決することからスタートしたのが松田さん、小助川さんです。

松田さんには、小助川さんをはじめ、ある意味同志たちのプレゼンは、どう映っていたのでしょうか。

株式会社ヘラルボニー 代表取締役副社長 松田 文登さん

松田 前提として、小助川さんの事業は必要だと思っていました。

僕は障害のある方、特に知的障害のある方を中心にした事業を行っていますが、彼らの将来に関して、障害者雇用の枠組みについて考えます。

「数合わせ」が定着を阻む障害者雇用の実態。「みなし雇用」は社会にとって有益なのか?(日本財団ジャーナル)

法定雇用率ばかりが上昇し、身体障害や精神障害の方は仕事を得られやすいですが、知的障害の方が働くのは実際のところハードルが高く、障害者雇用を促進している人材派遣会社でも、なかなかその枠が埋まりません。

ですから、うちはまだまだ一部ですし、もっと知的障害のある方が働ける現場を作るために何ができるかと考えます。

それは教育なのか、新しい枠組みを作ることなのか……。

最終的には得意なことを活かせる社会に行き着くとは思いますが、プレゼンを聞きながら、そういうことを感じていました。

三輪 小助川さんは今日、1回の参加でグランプリを獲得した松田さんの、パワーアップしたプレゼンをご覧になりました。

最近のパラリンピックまで含めた話をされていましたが、あれを見てどう感じましたか?

ヘラルボニー公式Facebook– パラリンピック閉会式の作品投影の写真など

Go Visions株式会社 代表取締役 小助川 将さん

小助川 私の前職はLITALICOという、障害福祉の会社です。不登校や発達障害のお子さん向けのプログラミング事業も行っている会社でした。

障害者就労支援や児童発達支援についても、日本ではトップランナーとして行っている会社でしたので、ヘラルボニー創業時は、社内でも本当に話題になりました。

松田 ありがとうございます。

小助川 私がヘラルボニーの取り組みを知ったのは2015か2016年頃で、素敵だなと思っていましたが、前回の福岡でのカタパルト、そして今日のプレゼンを拝見し、すごいなと思いました。

できることをしっかり、一歩一歩やっていると、数年で、これほど社会に、世界に広がっていくのだと感じました。

私たちも10月から日本で、オンラインのオルタナティブスクール事業を始めますが、背中を押してもらいましたし、すごく勇気をもらいました。

松田 ありがとうございます。

目指す社会の実現に向けて、何が足りていないのか

三輪 今日参加された皆さんも感じたと思いますが、今日のソーシャルグッド・カタパルト、ソーシャルグッド社会の実現に向けて王手をかけられたのか、チェックメイトできたのでしょうか。

もしかしたら、まだ歩を動かした一手目かもしれませんし、登山であれば何合目なのだろうという問いを持っています。

LITALICOの長谷川社長が上場した直後の講演会でおっしゃっていたのは、「やっと社会の課題を変えるスタートラインに立つことができました。今まで我慢しかしてきませんでしたが、これでようやく本気で社会を変えに行けます。」でした。

それを聞いて僕自身、背筋が伸びました。

ゲームに例えられていて、「ひのきの棒で、布の皮の服で、ラスボスを倒しに行こうとする人が多すぎる」とも言っていました。

ラスボスを倒しに行こうとした結果、傷ついて最終的に倒れてしまう起業家の様子を、後世に伝えてはいけないと思ったそうです。

だからこそ、スタートラインはどこなのか、ソーシャルグッド社会の実現に向けて何が足りていないのかを皆さん、探してください。

カタパルトの審査員は、めちゃくちゃ考えながら審査票を入れています。

票を入れた人ではなく、入れなかった人に対しても何かしら思うところがあって、票を入れられなかったはずなので、それを聞きたいです。

株式会社マザーハウス 代表取締役副社長 山崎 大祐さん

山崎 僕も全く同じ問題意識を持っています。

僕が起業したのは15年前で、それから10年ほどの間に起業した人たちに比べると、今日のカタパルトでプレゼンをした人たちは圧倒的にレベルが高いです。

そしてそれは、キラキラした世界でしかないのです。

しかし、経営はすごくリアルです。

ICCサミットに来るといつも、自分の入口を思い出させられるし、美しい人生物語で、感動もします。

それは頑張るモチベーションとして重要ですが、リアルはそうではないので、これに踊らされてはいけないと思います。

三輪 前回、「1週間経った時、あのセッションで感極まった自分は、果たして正しかったのだろうかと思った」という、審査員の方の感想を見ました。

小助川さんにとっても、審査員として参加した方の気持ちを1時間後に聞ける場はなかなかないと思いますし、是非感想を聞かせてください。

もっとこうしたらいいのではなど仮説を持って審査されていたと思いますし、どんな気持ちで審査をしたのか、教えてください。

小助川 聞きたいですね。

(続)

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続きは 3. ICCサミットのソーシャルグッド・カタパルト、審査員の評価軸は? をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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