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5.約500の会社設立に関わり、約600の公共事業に尽力した渋沢 栄一の思想とは

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トップリーダーたちが、尊敬する”MY偉人”についてプレゼンする「世界の偉人伝」、前回の大好評を得て、シーズン2の書き起こし記事の登場です。全8回シリーズの(その5)は、引き続きシニフィアン朝倉さんが語る「渋沢 栄一」。シリアルアントレプレナーでベンチャーキャピタリスト、そしてインフルエンサーという、ICCに集う経営者たちも驚く渋沢翁のビジネスマンの側面を解き明かします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2022は、2022年2月14日〜2月17日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2021 ダイアモンド・スポンサーの<ノバセルにサポート頂きました。


【登壇者情報】
2021年9月6〜9日開催
ICCサミット KYOTO 2021
Session 10C
世界の偉人伝 (シーズン2)
Supported by ノバセル

(スピーカー)

朝倉 祐介
シニフィアン株式会社
共同代表

石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事

出雲 充
株式会社ユーグレナ
代表取締役社長

高田 修太
一般社団法人HLAB/株式会社エイチラボ
共同創設者COO / プロマジシャン

丸 幸弘
株式会社リバネス
代表取締役 グループCEO

(モデレーター)

井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
パートナー

「 世界の偉人伝 (シーズン2)」の配信済み記事一覧


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最初の記事
1. 経営者が「偉人」を語る好評シリーズ第2弾!

1つ前の記事
4.シニフィアン 朝倉さんが解説する「渋沢 栄一」3つの魅力

渋沢 栄一の魅力②連続起業家でベンチャーキャピタリスト

朝倉 2点目は簡単に触れようと思いますが、連続起業家、ベンチャーキャピタリストとしての渋沢 栄一です。

▶編集注:朝倉さんは前Partで、渋沢 栄一の魅力を大きく3つに分け、その1点目として「振れ幅の大きい人生」を挙げました。

石川 これはやばいですね(笑)。

朝倉 これでも相当抜粋しました(笑)。

でも、いちいち名前がすごいでしょ?

金融機関を見ると、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、りそな銀行と、メガバンクがずらっと並んでいて、渋沢 栄一が何らかの形で設立に関わっているということです。

電気・ガスのインフラ系もそうですし、鉄道・バスも主だった鉄道会社名が揃っていると思います。

一つ一つ読み上げることはしませんが、錚々たる会社が揃っていますよね。

これはまだ1ページ目で、2ページ目もあります。

結構幅広いですよね。

インフラ系もあれば、帝国ホテルや京都ホテルなどのホテル、「その他」と括っているところもすごくて、電通や博報堂などが並んでいます。

社会公共事業で言うと、日銀や経団連、今で言うNHK、一橋大学や日本女子大学などにも関わっています。

石川 普通、会社を創ると、その会社を盛り立てたいじゃないですか。

しかし渋沢 栄一は会社を創ると、そのライバル会社も自分で創ってしまうところが、すごいと思います(笑)。

無茶苦茶ですよね(笑)。

ライバル会社を創って、「あいつらに勝つぞー!」と言っている…もう視座が他の人とは違いすぎます(笑)。

(会場笑)

公益財団法人Well-being for Planet Earth 代表理事 石川 善樹さん

朝倉 あまり執着がないのですよね。

石川 そうそう。

朝倉 ですから、どちらかと言うと自分で独り占めしたい岩崎 弥太郎(1835~1885)との対比がよく挙げられますね。

まあ、やり方の違いだとは思いますが、もっとオープンにやろうよというのが渋沢 栄一です。

関わり度合いに違いがあるかもしれませんが、約500の会社の設立に何らかの形で携わり、かつ、約600の社会公共事業にも尽力をしたのです。

これは本当の意味で、500 Startups(※アメリカのベンチャーキャピタル)ですよね。

(会場笑)

1人 500 Startupsです。

石川 すごい(笑)。

朝倉 35歳頃に、第一国立銀行の総監役になっています。

第一国立銀行とは(コトバンク)

すごいですよね。

石川 そりゃ、ドラッカーも渋沢 栄一を尊敬しますよね。

あのドラッカー絶賛「渋沢栄一」が凄い真の理由(東洋経済オンライン)

写真左から、シニフィアン朝倉さん、石川 善樹さん

朝倉 本田 宗一郎は何をした人かと聞かれると、本田技研工業を創った素晴らしい人だと言えますが、渋沢 栄一が何をした人かと聞かれても、これだけ多いので、よく分からなくなってしまうのですよね。

ビール会社も銀行も創っていますから。

なかなか捉えどころがありません。

大河ドラマ『青天を衝け』では、まだここまで描かれていないので、ここから2カ月でどう描くだろうと思っています。

これから、500の会社と600の事業団体を創らないといけないので。

井上 ある意味、1人コングロマリット・ディスカウントを起こしているわけですね。

コングロマリット・ディスカウントとは 多角化の評価難しく(日本経済新聞)

石川 これはコングロマリットを超えていますよね、もう国ですよ(笑)。

 ある種、多動というか。すごいなあ。

朝倉 すごいですよね。

オープンイノベーション的な発想の持ち主

朝倉 こちらは今の王子ホールディングス、つまり王子製紙で、これを創ったのも渋沢 栄一です。

面白いなと思うのが、銀行を創った後にこの製紙会社を創ったことです。

当時は西洋風の紙(洋紙)を大量生産できない時代で、R&Dにかなり時間がかかったようです。

紙と言えば、新聞や雑誌など、今で言うコミュニケーションのインフラですから、インターネットサービスプロバイダを作っているようなものだったと思います。

加えて、王子の地はみんなが知っている便利な場所だから、できるなら工場を世の中にオープンにし、近代的な工場はこういうものだと知って帰ってほしいと考えていたようです。

青天を歩け!王子の地、抄紙会社(NHK)

今で言う、非常にオープンイノベーション的な発想の持ち主だったということですね。

ICCサミットのコンセプト「ともに学び、ともに産業を創る」を一番初めに実践したのが、渋沢 栄一だったのではないかと思っています。

井上 『未だ眠りより目覚めざる工業思想を鼓舞奨励したい』とは、すごいですね。

朝倉 かっこいいですよね。

渋沢 栄一の魅力③高い発信力

朝倉 では最後、3点目です。

おそらく皆さん、『論語と算盤』は、読んだことはないかもしれませんが、タイトルはご存知だと思います。

渋沢 栄一という人は、事業を創ることをどんどん実践していっただけではなく、その時々で起こりうる出来事に対し、能動的に発信をしている人物ということです。

その集大成がある意味、『論語と算盤』です。

例えば、日露戦争が起こった際、民間の視点からそれをどう捉えるかについての意見を発信していました。

また、疑獄事件である大日本製糖問題が起こった際、彼はそれを非難しながらも、当時相談役だった彼は解決に奔走していましたが、同時に、、積極的に意見を発信していました。

日本製糖汚職事件(Wikipedia)

この問題は今風の言い方をすれば、「大炎上」していたものです。

ICCサミットに集まる方々には、発信力の高い方が多いと思いますが、今の日本の大企業の経営者の方々で、経営に携わりながら自分の意見を自分の言葉で発信する人が、どれだけいるのかなと思うと、学ぶ点があると思います。

渋沢 栄一の人材、貧富、ガバナンスへの考え方

シニフィアン株式会社 共同代表 朝倉 祐介さん

朝倉 最後に『論語と算盤』の要点を挙げたいと思います。

これは実業についての本ですが、「道徳を基盤として富を築いていきましょう」という主張が書かれています。

渋沢 栄一は道徳心の高い方で、これは素晴らしいことですが、ともすると、競争はやめようとか、平和主義、儲けを求めずにコツコツやって状況を良くしていこうという清貧主義をとる方だと、誤解されがちです。

本の中で論語が強調されすぎていることも、誤解される要因かもしれません。

しかし渋沢 栄一は、結構過激な発言をしていて、一見、新自由主義っぽい物言いをされている点があるので、これを意識して頂きたいです。

例えば「オープンさと自由競争に関する言及」と書かれていますが、良い人材がいれば自分たちのところに囲ってしまえと思いがちだが、自分たちの組織にいる良い人材こそ世の中の正しい場所にいてほしいという意見です。

人材は、ある種、天下の回りものだということです。

そういう発想の持ち主です。

その過程において、国家や商工業、会社、個人が健全な競争をすることはものすごく大事だと述べています。

また、イメージと違うところが、貧富の格差に言及している点です。

貧富の格差は、程度の差はあれど、なくすことは不可能だという主張です。

『論語と算盤』は道徳が先行するイメージがあると思うので、この主張はそのイメージとは異なるのではないでしょうか。

富を築こうと一生懸命競争をすると貧富の差が起こるのは仕方ない、でもその築かれた富を分配していかなければならないという発想です。

そして、これはガバナンスに関する言及です。

経営者が会社のお金を自分のものだと勘違いして利益誘導するのはダメだとか、会社の取締役や監査役を、暇つぶしの手段、虚栄心のための重役として、実質的に機能しない人を雇うのは欺瞞であると言っています。

それから、株式相場を意図的に吊り上げようとしてはいけないと書かれています。

昨今ESGとして謳われることを明治時代に既に主張しているので、非常に先見の明がある方ですし、今なお我々は学ぶところの多い方だと思います。

ここで、石川さんにバトンタッチします。

石川 素晴らしいですね。

井上 ガバナンスや実力主義など、今の企業に全部あてはまりますね。

石川 だからこそ、ドラッカーが『マネジメント』という本の初めに、この本は渋沢 栄一に関する本であると書いています。

あのドラッカーも認めた明治の大実業家・渋沢栄一の自伝(ダイヤモンドオンライン)

そして、企業の責任とは何か、これについて最も考え実践したのが渋沢 栄一であると述べていますね。

 あの本、読まないと。

井上 読みましょう。手触り感があるレベルで、すごく具体的に書いてあるんですよ。

もっとふわっとした本だというイメージがありましたが…。

朝倉 自己啓発的な内容も多分に含まれていますが、結構具体的なことが書かれているので、是非手に取ってみてください。

石川 一方、プライベートはめちゃくちゃで、当時でいう『FRIDAY』や『FLASH』に載りまくるような人でした(笑)。

大河ドラマ『青天を衝け』で身重の愛人が…橋本愛演じる妻・千代“烈女”の実像「命も捨てようと」(文春オンライン)

そんなチャーミングな一面もあります(笑)。

(続)

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続きは 6.渋沢栄一も実践、学問への投資が、次の産業を生む をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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