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トップリーダーたちが、尊敬する”MY偉人”についてプレゼンする「世界の偉人伝」、前回の大好評を得て、シーズン2の書き起こし記事の登場です。全8回シリーズの(その6)は引き続き「渋沢 栄一」ですが、プレゼンターが石川善樹さんにバトンタッチ。その先見の明と、産業への功績を熱く語り、来場者たちへ学問への投資を呼びかけます。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2022は、2022年2月14日〜2月17日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット KYOTO 2021 ダイアモンド・スポンサーの<ノバセルにサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2021年9月6〜9日開催
ICCサミット KYOTO 2021
Session 10C
世界の偉人伝 (シーズン2)
Supported by ノバセル
(スピーカー)
朝倉 祐介
シニフィアン株式会社
共同代表
石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事
出雲 充
株式会社ユーグレナ
代表取締役社長
高田 修太
一般社団法人HLAB/株式会社エイチラボ
共同創設者COO / プロマジシャン
丸 幸弘
株式会社リバネス
代表取締役 グループCEO
(モデレーター)
井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
パートナー
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最初の記事
1. 経営者が「偉人」を語る好評シリーズ第2弾!
1つ前の記事
5.約500の会社設立に関わり、約600の公共事業に尽力した渋沢 栄一の思想とは
石川 善樹さんが力説、渋沢 栄一の功績
石川 では、まいりましょう。
まず、時代はどうやって創られるのかという問いがあった際、まず学問ができて、それが産業になり、産業が栄えてくると色々な人が集まるので文化が生まれると思います。
そしてこの学問、産業、文化が良いサイクルで回っているのが文明なのだろうと僕は思っています。
勿論こうではない流れもあると思いますが、こういう太い流れがあるので、私は学問が大事だと思います。
日露戦争後、重工業を国の産業として位置付け
石川 日本が勝ったと言われていますが、実際は引き分けた日露戦争。
戦争の後は、それまでたくさん作っていたものが突然売れなくなったりするので、たいてい不況に陥ります。
つまり、反動不況というものが起こります。
イギリスで産業革命が起こり、綿を製造する軽工業が興り、当時の日本も軽工業が中心でした。
イギリスからだいぶ遅れてスタートしましたが、綿の製造と輸出で、日本は一気に世界一に上り詰めました。
しかしそれもなかなかうまくいかなくなり、「これから日本でいかなる産業が可能か」という会議を率いたのが、渋沢 栄一なのです。
生産調査会という国の会議で、1910年のことでした。
▶生産調査会官制・御署名原本・明治四十三年・勅令第二十八(国立公文書館)
井上 すごい問いですね。
石川 まさにこの、ICCサミットのようなものです。
2年間議論をし、重工業だろうという結論が出ました。
だからこそ、彼は王子製紙の工場を見てほしかったのでしょう(前Part参照)。
軽工業ではなく重工業の時代がどうなるのかは、見ないと分かりません。
そして次の産業は重工業と決めましたが、それをどうやって進めるかという話になりました。
理化学研究所の設立に尽力した高峰 譲吉
石川 そこで助けを求めたのが高峰 譲吉(1854~1922)でした。
▶三つの「顔」を持つ偉人真のグローバル・パーソン 高峰譲吉博士(NPO法人 高峰譲吉博士研究会)
皆さんご存知のアドレナリンを発見した方です。
初代の三共(現在の第一三共)の社長でもあります。
彼は「重工業の中でも、理化学だ。日本が理化学で国を興すなら、基礎となる純正理化学の研究所を設立する必要がある」ということでできたのが、理化学研究所です。
▶創立までの歩み(理化学研究所)
丸 その通りですね。
石川 理研です。
「大」がつく会社がたいてい大阪出身なのと同様、「理」から始まる会社はたいてい理研出身です。
リコー(理研感光紙株式会社)とか…。
丸 イノベーティブな研究学問から入った会社ですね。
公益財団法人Well-being for Planet Earth 代表理事 石川 善樹さん
石川 ちなみに、田中 角栄は10代の頃、理研で働いており、色々な科学技術を見ていたので、戦後どのような産業が興るか、手に取るように分かっていたのです(※)。
▶編集注:当時の田中角栄については、理研所長の経歴に詳しい。大河内正敏|偉人列伝(Tactical Media)
彼はのちに、「自分の人生を考えると、2つの経験が重要だった。1つは理研での経験、もう1つはヨーロッパでの視察経験である」と言っています。
ヨーロッパでは国中に道路が張り巡らされているのを見たそうで、日本列島改造論と、理化学を中心とした産業振興が可能だったわけですね。
丸 まさに、研究所が未来(の産業を見るようなもの)ですからね。
石川 未来ですね。
世界の大富豪ロックフェラーが投資したもの
石川 渋沢 栄一のように、アメリカで学問を興した人がいます。
ジョン・ロックフェラー(1839~1937)です。
ロックフェラーはビジネスパーソンなので、非効率な病院や学校、公益事業に寄付することなどは大嫌いでした。
▶石油王「ロックフェラー」の偉大なる一生。成功する3つの秘訣とは?(ZUU online)
彼には、「誰よりも稼ぎ、誰よりも倹約して、誰よりも使う」という、ロックフェラー信条がありました。
引退後、ロックフェラー財団という財団を創りましたが、巨額の資産を持っていたわけです。
今で言うと、ビル・ゲイツとウォーレン・バフェットを足して2倍すると、当時のロックフェラーになると言われています(笑)。
未だに破られることのない、世界最高の金持ちです。
そのお金を何に使えばいいかということで、彼の出した結論は、学問への投資でした。
私とも関係する予防医学(公衆衛生)は、実はロックフェラーが創った学問です。
当時は医者の学問である治療医学が興ってきた時期でしたが、病気になってから治療しても遅いだろうという先見の明が彼にはあって、予防医学(公衆衛生)という学問を創りました。
もう一つ、彼が創った学問があって、それは人工知能です。
人工知能という分野に最初に投資したのが、ロックフェラーなのです。
▶数学的に定義した「創造性」の実力を、人工知能が考えた「フレンチ風すき焼き」に見た:石川善樹・寄稿(WIRED)
その後、ある程度芽が出てきたので国や企業が投資をし始めたのですが、ロックフェラーがいなければ、人工知能の発達はもっと遅れていた可能性すらあります。
ロックフェラーは、「財を成した後、人は何をすべきか。それは学問への貢献である」という範を示したのです。
学問に投資するビジネス界の成功者たち
石川 自動車界にはフォードがいますが、フォード財団は、マーケティングという学問を創りました。
その流れは未だに続いていて、例えばビル・ゲイツ(左上写真)は、莫大な財産を築いた30代の頃から、ロックフェラーの人生について研究を始めました。
それでゲイツ財団は、グローバルヘルスという分野の学問に投資をするわけですね。
ビル・ゲイツの右にいる、既に亡くなられたマイクロソフト共同創業者のポール・アレン(1953~2018)は、アレン脳科学研究所を設立し、脳科学に投資をしました。
▶「脳の地図」を公開 米MS共同創業者アレン氏の研究所 2011年4月13日(日本経済新聞)
マーク・ザッカーバーグ(左下写真)はパートナーと一緒に、バイオロジーに投資しており、体の細胞の地図を作るというとんでもないプロジェクトを行っています。
▶ヒトの細胞37兆個をカタログ化する壮大な計画が、医学にもたらす大きなインパクト(WIRED)
右下の彼は有名な投資家で、数学などに投資をしています。
▶ジム・シモンズ 最高峰のクオンツファンドを創業した数学教授(経済メディア アクシオン)
財を成した後に学問に投資をするということが、最もインパクトを生み出すという流れを作ったのがロックフェラーです。
国が税金を使って投資をするにはリスキーすぎる学問分野が、たくさんあります。
ある意味、財団はベンチャーキャピタルのようなもので、財団だからこそ投資ができる学問分野があり、そこから次の産業が生まれてくるサイクルがあるのです。
渋沢 栄一は「学問を創った人」
石川 これを日本で行ったのが渋沢 栄一で、それ以降、続いた人はあまりいないのではないかと思っています。
渋沢 栄一は産業を創った人、あるいは様々な公共事業を行った人という認識がありますが、彼は学問を創った人だという認識を改めて持ってもらえると嬉しいですね。
僕からは以上です。
朝倉 これがサイクルになっているということですよね。
次の産業が生まれて、そこから財団が生まれて…。
石川 そうなんです。
だから皆さんには是非、とんでもなく成功したら財団を創って、次の学問に投資して頂きたいということです。
井上 渋沢 栄一をきちんと理解する、とても良いきっかけでしたね。
我々ICCチームが渋沢 栄一1人に勝てるのかというのも良い問いだと思いました。
朝倉 500ですからね。
丸 まあ余裕でしょうね。
井上 渋沢 栄一に続く人がいないという善樹さんの言葉がありましたが…。
写真左から、リバネス丸さん、ベイン・アンド・カンパニー井上さん
丸 まあ皆さん、間違いなく僕のことを話していると思いますよね。
あれ、全然反応がないけど…(笑)?
(会場笑)
石川 あそこにサクラが1人いますが、反応がちょっと遅れましたね(笑)。
丸 学問に一番投資しているのは私でございます、リバネスユニバーシティーも創りましたし。
500じゃなくて、5,000くらいいこうと思っています。
まあ、死んでからですよ。
有名になるのは死んでからですから、20年後くらいですかね。
世界各国の財団の投資先を見れば、次に来る産業が分かる
石川 次の産業がどういうところから興るかと考えたとき、世界各国の財団がどういう研究に投資しているかを見ると、それが分かることがあります。
丸 確かに国が投資できないような長期的なものに、個人の思想で投資されるのはすごく面白いですね。
個人の情熱と思想からの投資です。
石川 財団の中では、ガバナンスなんて全く効いてないですからね。
丸 全くないですね、「俺の趣味」という雰囲気ですから。
もしかしたら、財団で生まれるのは、集団で考える集団調和型の産業ではなく、すごく尖っていて、かつ未来に繋がっていく産業で、そんな産業がポンと出てきて、ビッグチャンスになっていく気がします。
先ほども出ましたが、個人的な思想が新しい学問を生んでいるのではないかと僕は思いますね。
石川 多分、ベンチャーキャピタリストや投資家にとっても、本当に新しい会社への投資はそういう感じなのではないでしょうか。
理屈では投資できないけれど、自分が支援したいから投資をするという。
丸 ファンドだと、リターンを考えないといけないですからね。
財団にとってのリターンはとにかく学問が生まれることなので、積み上げたお金をそこに投下できることは財団の魅力かもしれないです。
石川 イーロン・マスクはまだですが、シリコンバレーでも、みんな財団を創っています。
財団が何をしているかには注目して頂きたいですね。
井上 そうですね。
日本では、それがまさに理研がそうだったわけですが、そういうものが今の日本にあるのか?ということだと思います。
丸 現代の理研としては、リバネスがあります。
井上 ああ。
石川 そうなんですよ(笑)。
丸 出雲さんが話したくて仕方ない状況になっているようですが…。
出雲 実際、リバネスはそうですよね。
だから、リバネスが何をどれくらいしているかを、もう少し分かりやすく説明しないとスルーされてしまいますよ。
写真左から、ユーグレナ出雲さん、HLAB高田さん、リバネス丸さん
丸 今、ダメ出しを受けています。
出雲 渋沢 栄一は500ですよね。
そこで「リバネスは5,000」とだけ言っても、「この人、何言っているの? 頭悪い人だなあ」で終わってしまうのです。
石川 すみません、そのダメ出しは後で話してもらっていいですか(笑)?
出雲 東南アジアで最初にインキュベーションを実施し、今後の人口や産業成長を考えると、その5,000は…。
丸 嘘じゃないです。
出雲 本当に5,000まで実現できると思って、今ASEANに投資しているというところまでセットで話さないと。
丸 僕が最初に東南アジアでインキュベーションして、6億5,000万人と1億人を接続する初めての会社を経営しているって、みんな知らないの?
出雲 だから、そういうことを説明しないと。
丸 説明していないね、そうか。
▶リバネスグループ、初の海外インキュベーション研究所をマレーシア工科大学-MJIITと開所、日本からユーグレナ社・メタジェン社を招へい(リバネス)
出雲 ボディがないから。
石川 じゃあシーズン3では、誰かが丸さんについて語ればいいのでは?
丸 まだ死なないから(笑)。
▶編集注:丸さんは、偉人を「亡くなった後にも世の中にインパクトを与え続け、人生観などを大きく増幅させた人」と定義し、存命中は偉人とは呼べないとしています。
石川 (笑)。
丸 では、そろそろ出雲さん、いきましょう。アジアの話が出てきましたし。
出雲 いい繋がりですね。
井上 渋沢 栄一とちょっと繋がるんですね。
石川 ちなみに、全国の養護施設を作ったのも渋沢 栄一ですからね。
▶病院の歴史(東京都健康長寿医療センター)
(続)
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続きは 7.ユーグレナ出雲さんが選んだ偉人は「ムハマド・ユヌス博士」 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸
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