6.ビジネスにも応用できる、予防医学の「ポピュレーション戦略」とは

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トップ経営者が、尊敬する偉人の業績を思い入れたっぷりに語る「世界の偉人伝シリーズもついにシーズン3! 全8回シリーズの⑥は、石川 善樹さんが紹介するジェフリー・ローズの「ポピュレーション戦略」が、予防医学のみならず他にも置き換えて考えられる原理であるかを考えます。みんなが信じている根本原理は、果たして正しいのかを問う偉人の姿勢は、読めばきっと刺激を受けること間違いなし。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2022 プレミアム・スポンサーのリブ・コンサルティングにサポート頂きました。


【登壇者情報】
2022年2月14〜17日開催
ICCサミット FUKUOKA 2022
Session 10E
世界の偉人伝 (シーズン3)
Supported by リブ・コンサルティング

(スピーカー)

北川 拓也
楽天グループ株式会社
常務執行役員 CDO(チーフデータオフィサー) グローバルデータ統括部 ディレクター
(登壇当時)

山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役社長

石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事

深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役

(モデレーター)

井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
パートナー

「世界の偉人伝 (シーズン3)」の配信済み記事一覧


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5.「患者は低リスクの集団から発生する」という原理を発見したジェフリー・ローズ

本編

ジェフリー・ローズの功績

石川 ここからがジェフリー・ローズの功績になるのですが、血圧が高いと脳卒中になります。

「85mmHg以上は高血圧」というふうになぜしているのかというときに、左のグラフのように、血圧が85を越えた瞬間に、脳卒中のリスクがパーンと跳ね上がるのであれば、85でいいじゃないですか。

ところが実際は、右にあるように、緩やかにリスクが上がっていくのです。

だから、「血圧が低くてもリスクがゼロではない」というところがポイントです。

ちなみに左側は、例を挙げるとすると「花粉症」です。

あるところまではたまっても大丈夫で、ある閾値(いきち:境界となる値)を越えて花粉を摂取すると、ボンと花粉症になるというゼロイチの世界のものもあるのですが、血圧と脳卒中はそうなっていないのですね。

この血圧の分布と脳卒中リスクを組み合わせたところが、ジェフリー・ローズのすごさなんです。

(山内さんが言ったように)イノベーションは、組み合わせから起こると(Part.4参照)。

山内 なるほど。

正常血圧が低い人も脳卒中リスクがゼロではない

石川 こうやって見ると、高血圧の人は、脳卒中のリスクが確かに高いのです。

正常血圧の人は、脳卒中のリスクは低いけれどもゼロではないですね。

ではこれを使って、脳卒中患者はどこから発生するのかを見てみると、ちょっと見にくい図ですが、全部で1,000人の人がいて、100人が高血圧、残り900人は健康というか正常血圧だとします。

脳卒中リスクは、正常血圧が低い人も当然ゼロではないです。

そして、中から高血圧になるにつれて、脳卒中リスクが上がるとします。

人数とリスクを掛け合わせると脳卒中の患者数なのですが、計算すると、分かりますか?

高血圧の人から80人の脳卒中患者が発生していますが、健康な人から発生する脳卒中患者は、足すと420人なんです。

山内 「中」が8割いる。

石川 そうなんです。

これは恐るべきことを言っていて、社会全体で見ると脳卒中患者は高血圧の人ではなくて、正常血圧の人から発生しているのです。だから健康診断して…。

山内 普通のほうが危ないの?

石川 そう! 普通のほうが危ないんですよ(笑)。

山内 「中」にいるほうが危ないと。

石川 健康診断で健康と診断されたら、「あんた危ないよ」ということに、本当はなるのです!

(一同笑)

ここが難しさなんですよ。

山内 全然安心できないですね(笑)。

「ポピュレーション戦略」で脳卒中死亡者が年間1万人減る

石川 これが最後のスライドですが、ここで予防戦略には2つあるということになったのです。

1つは、「ハイリスク戦略」です。

高血圧の人たちを高リスクと呼んで、高リスクの人たちに対処します。

これは個人で見ると利益は大きいのですが、社会で見るとインパクトは非常に小さいのです。

山内 なるほど、全体のインパクトですね。

石川 ただ、僕らは、予防とはハイリスク戦略だと思い込んでいたのですよ。

社会全体を考えたときの予防戦略とは何かと、ジェフリー・ローズが考えたのが「ポピュレーション戦略」というのですが、分布自体を動かしてしまえという話なのです。

社会全体の血圧の分布を2mmHg、Hgは水銀で、血圧は水銀で測るのですが、もし社会全体の血圧の平均値をたった2下げることができると、これは個人からすると利益が少なくて、自分の血圧が2下がったところで意味がないのですが、社会全体で見るとインパクトが大きいのです。

ちなみに日本国民で見ると、平均血圧が2下がると、脳卒中死亡者が年間1万人減るのです。

もちろん脳卒中だけでなく、循環器、血圧系ですね、約2万人の死亡が予防可能です。

山内 非常に大きいですね。

石川 そうなんです。

今、皆さんが話を理解できたか分かりませんが、この話は医学にどっぷり浸かってきた人からすると全然理解できなくて、つまずくところなんですね。

ちなみに、日本は国としてポピュレーション戦略を採用し始めたのが、2000年になってからです。

市町村向け指導マニュアル ~ポピュレーションアプローチを中心に~(岡山県)
「ポピュレーションアプローチ」事例 (平成17年度 保健師中央研修会)

山内 えっ、そんな最近なんですか?

石川 そうなんです。

それまでずっとハイリスク戦略だったのです。

でも社会全体で予防するためには、ポピュレーション戦略だというので、2下げるには例えば物理的環境を充実させて、もっとみんなが歩けるようにしましょうとか。

日本人全員が高血圧の薬を飲みましょう、ということではないです。

たった2でいいのです。

でも色々なポピュレーション戦略があって、これを見事にやり遂げた国家がフィンランドですが(※)、その話をすると長くなるので、またどこかで(笑)。

▶編集注:PDF4ページ目より、フィンランドにおける世界初、虚血性心疾患の死亡を減らすための地域介入プロジェクトNorth Karelia Projectを紹介。健康づくりにおけるポピュレーション戦略の重要性と国際的動向(月刊地域医学 Vol.30 201603)

病気は「リスク×人数」の掛け算

井上 さっきのジェフリー・ローズの言葉に戻っていただいてもいいですか?

これで意味が分かった気がします。

石川 これですね。

「ほとんどの患者は高リスクの患者からではなく、低リスクの集団から発生する」

山内 なるほど。低リスクの集団とは、さっきの「中」のところですね。

石川 そう。これはほとんどの場合であてはまり、皆さんの会社でストレスチェックをやっていると思いますし、社会全体で見てもそうですが、実はストレスチェックで問題のない人から休職者やうつ病の方が発生しています。これは自殺もそうです。

結局、病気というのは「リスク×人数」の掛け算であるという、これが予防の場の根本原理なのですが、そんなことにすら人類はずっと気づかずに頑張って予防していたというので、ジェフリー・ローズはパラダイムシフトを起こした人です。

井上 非常にメタ認知ですね。マクロビューです。

石川 小学生でも本当は分かる話を1990年代になるまで人類は気づいていなかったって、すごくないですか?この話(笑)。

井上 すごい。

ポピュレーション戦略はビジネスに活用できる

北川 (石川)善樹さんは、役に立たない話をすることで有名なのですが、役に立てちゃっていいですか?

石川 いいですよ。

北川 たぶんこのポピュレーション戦略の話は、皆さんのビジネスの商材のコンバージョンレートに同じことが言えるんですね。

皆さんのお客さんは、コンバージョンレートが高いお客さんから生まれているのか、UX改善をして全体のコンバージョンレートを1%シフトしたほうがいいのか、それともクーポンを発行して、コンバージョンレートの高い人たちを刈り取ったほうがいいのかというのは、よく考えたほうがいいということですね?

井上 そういうことですね。

石川 コンバージョンレートが高い人たちだけを狙うのか、分布自体を動かしてしまうのか。

北川 それはもう全体のUXのデザインを変えたほうがいいということですね。

井上 確かに、非常に大きな学びがありましたね。

北川 (笑)。

石川 根本原理から考えることで、人生を1秒も無駄にせずに生きられますよという有難い偉人の言葉でした。

(一同笑)

北川 有難い!

(続)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/星野 由香里/戸田 秀成/小林 弘美

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