▶カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Twitterをぜひご覧ください!
▶新着記事を公式LINEで配信しています。友だち申請はこちらから!
▶過去のカタパルトライブ中継のアーカイブも見られます! ICCのYouTubeチャンネルはこちらから!
ICC KYOTO 2023のセッション「Well-being産業の今後(シーズン3)-」、全5回の②は、石川 善樹さんによるWell-beingを取り巻く状況の解説です。2024年に開催予定の国連未来サミットでは、より具体的な「Beyond GDP」の指標が定められるといいます。それに先行した2023年の「骨太の方針」に、Well-beingが入っていたことを知っていますか? 日本がWell-being先進国になっていくための取り組みとは? ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは住友生命保険です。
▼
【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 8E
Well-being産業の今後(シーズン3)
Supported by 住友生命保険
▲
▶「Session 8E-Well-being産業の今後(シーズン3)」の配信済み記事一覧
「Beyond GDP」を議論する2024年国連未来サミット
石川 では、なぜサステナビリティとWell-beingなのかというと、背景にはBeyond GDPが絡んできています。
そもそもGDPだけを見ていればよかった時代から、それだけ見ているといろいろ負のことが起きてくる時代になったので、SDGsの原型となる「Sustainable Development」が最初に登場して、これは1987年に国連が作りました。
次に、Well-beingがどう登場しようとしているかというと、来年(2024年)9月の国連未来サミットに向けて、グテーレス国連事務総長のイニシアチブで、ちょうど「Our Common Agenda」というものが動いています。
▶SDGsの次を議論する国連未来サミット~ウェルビーイングが次のグローバル・アジェンダに~(第一生命経済研究所)
この中のメインの活動の1つがBeyond GDPの指標作成で、Beyond GDPはこれまで言葉だけでしたが、ちゃんと指標を作ることになりました。
この背景にはSDGsの進みが遅すぎることがあって、なぜ遅いかというと、17分野、200以上の指標があるので、それでは進まないだろうということです(笑)。
200も指標があったら、それは進まないから優先順位を絞ろうという中で、ポストSDGsも睨んでですが、2024年9月にBeyond GDPとは何かという指標が国連で決議されます。
藤本 もう2024年9月に決まるのですか?
石川 はい、決議されます。その原型は来2024年2月に出ます。
Beyond GDPの指標の中身が何なのかというと、大きく3本柱です。
1つはWell-being、2つ目がサステナビリティ、3つ目がDE&I(Diversity, Equity & Inclusion)ですね。
国際社会が、自分たちの社会は前進しているのか後退しているのかを見る時の指標として、GDP単独で見ていましたが、これからBeyond GDPになっていくので、ようやくWell-beingがこれから整備されていく感じですね。
藤本 GDPプラス、Well-beingとサステナビリティとDE&Iの3つですね。
石川 はい。
これはもう当たり前の話で、言うまでもないかもしれませんが、環境を破壊してもGDPは成長するので、サステナビリティへの配慮が今、求められています。
これはGreen Transformationというものですね。
GDPとWell-beingの関係性が変化
石川 一方で、GDPとWell-beingの関係はどうなのかというのがこちらのスライドで、これは非常に重要なスライドです。
2つグラフがありますが、左は世界全体の1人当たりGDP、右が世界全体のWell-being度の推移です。
GDPは右肩上がりですが、Well-being度が右肩下がりというのが、この15年の現状です。
20世紀はこうではなかったのです。
20世紀はGDPが伸びればWell-beingも伸びていたので、GDPだけ見ていればよかったのです。
でも21世紀に入ってから、特に2008年のリーマンショック後、Well-beingの構造が変わりました。
GDPが伸びるだけでは、自分の収入が上がるだけでは、Well-beingに貢献しづらくなってきているので、Well-beingというものを特に出す必要があるというのが、現状になってきます。
世界的にWell-being分野をリードしている日本
石川 今の日本国政府としてこれからやろうとしていることについていったん整理しますが、短期的な投資という観点からは、もう日本は絶対勝てないのです。
なぜならマクロで見ると、成長していないからです。
けれども、中長期的に日本が投資を呼び込むためには、長い目で見るとしっかり儲けられるということを出す必要があって、それでいくと正直サステナビリティ分野に関しては、もう日本は、特に北欧中心に枠組みを作られてしまったので、勝っていくことは難しいかもしれません。
一番僕が悔しいのが、「SDGsウォッシュ」(※SDGsに配慮しているように見せかけること)という言葉があるのですが、あれは基準を作った国だとSDGsウォッシュと言われないのです。
なぜかというと、自分たちが普通にやっていることがSDGsであるというふうに定義したからで、だからルールメイキングした人は強いのです。
ルールメイキングをできなかった人たちは、自分たちが普通にやっていることをSDGsと主張できなくて、無理やりくっつけると「ウォッシュ」という言われ方をしてしまうのです。
Well-being分野に関してはそうならないようにしたい、そして幸いなことに今産官政学民が実は世界的に取り組みをリードしているのです。
国連はじめグローバル基準を作っていく時には、関与だけではなくて本当はリードしなければいけないので、日本がこれから勝っていくために、あるいは負けないために、Well-beingが政府方針として重要になってきています。
その証拠に、これは皆様ご存知の通りですが、今の政治、政府というのは毎年6月に出る骨太方針に基づいて1年回ります。
2023年はすごい文言が出ました。
岸田政権が言っている「成長と分配の好循環」です。
▶経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~(令和5年6月16日閣議決定)
これはどういう意味かというと、先ほどのグラフのように、今は分配が株主に偏りすぎているので、株主を大事にすることはもちろんですが、他にもステークホルダーがいて、そこに対する分配を増やそうという意味での「成長と分配の好循環」です。
それがちゃんと起きているかどうかモニタリングすることが、経団連の十倉 雅和会長の強い提案もあって決まりました。
Beyond GDPの先進国としてGDPとWell-beingを同時に指標化
石川 すごいのが、成長の指標が2つ決まったことです。
1人当たり実質GDPとWell-beingです。
今、四半期に1回GDPが出ていますよね。
これから四半期に1回、GDPと同時にWell-beingが成長の指標として出てきます。
藤本 ほう!
石川 つまり日本はBeyond GDPの先進国として、世界で初めてGDPとWell-beingを同時に見ていくんだという国に、もうなったのです。
藤本 それは国際基準のWell-beingですか?
石川 そうです。
分配に関しては、1人当たりの賃金・俸給や中間所得層の構成割合などということで、ここはまだこれから整備があるのだろうなとは思いますが、国の方針として、まずWell-beingが入ったということですね。
科学技術・イノベーションは石山さんの領域ですが、日本は「科学技術・イノベーション基本計画」に基づいて、定期的に回しています。
2021年の閣議決定で日本の科学技術の方針、イノベーションの方針が決まりましたが、それはWell-beingを北極星として目指すということです。
▶科学技術・イノベーション基本計画(令和3年3月26日 閣議決定)
そのために、次の5年間で30兆円の政府研究開発投資をWell-beingのためにするし、官民合わせて120兆円の研究開発投資をしていくとあります。
つまりWell-beingに関しては、基幹技術を日本が取っていくぞということなのです。
新聞や学校を通じWell-beingの認知が進む
石川 日本は、かつてはサステナビリティ領域で環境技術立国としてすごい力があったのですが、残念ながら化石燃料に立脚した環境技術だったので、今完全に制覇できていないのです。
その反省も踏まえて、Well-beingでは科学技術に取り組んでいこうということであったり、メディアも、日本経済新聞や朝日新聞をはじめ、今盛んにWell-beingへの取り組みが始まっています。
ちなみに日本経済新聞社は、世界で初めてGDPとWell-beingを同時に出すというメディアになっていますね。
▶日本版Well-being Initiative始動(PR TIMES)
藤本 そうなんですね。
石川 ええ。
その成果もあって、例えば新聞だけで見ても、Well-beingというキーワードが記事の中に登場する回数が爆増しています。
SDGsと比べるとすごくよくわかりますが、2015年にSDGsができて、去年は全国の新聞記事で37,000回、SDGsという言葉が出ているので、国民の8割以上がもう理解しているような状況です。
Well-beingは6,000回なのでちょうどこの辺りで、正直SDGsよりも早く動いていますので、あと3年、2025年ぐらいには国民の8割程度がWell-beingを認知・理解すると思います。
SDGsが広がったのは、教育現場で教えられたことも大きいです。
Well-beingは2024年から教育現場で教えられていきます。
藤本 教育現場で!
石川 はい。教育振興基本計画の中でWell-beingを教えるぞということになったので、そういう意味を含めて、Well-beingは2025年頃にはもう相当広まっているだろうなと思います。
Well-beingに取り組む企業が優遇・評価される
石川 地方自治体でも取り組みが続々始まっていて、最初に始めたのは福岡市の髙島 宗一郎市長です。
髙島市長は、大企業のみならず中小企業も対象とした福岡市Well-being&SDGs登録制度で、2022年4月に260社を認めて、660社近くまで(2024年1月現在)いっています。
▶福岡市Well-being&SDGs登録制度 登録事業者一覧(福岡市)
地元の地銀とも連動して、Well-beingにしっかり取り組んでいる企業に対しては、例えば西日本シティ銀行などは融資をする際の手数料を引き下げるという金銭的なインセンティブとセットで行っています。
さらに言うと、会社の格付けをする際にWell-beingへの取り組みが組み込まれることが、地方自治体や地銀の中でも出てきています。
(続)
▶カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Twitterをぜひご覧ください!
▶新着記事を公式LINEで配信しています。友だち申請はこちらから!
▶過去のカタパルトライブ中継のアーカイブも見られます! ICCのYouTubeチャンネルはこちらから!
編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成