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1. 新しい資本主義の実現へ、日本が目指すべき「Beyond GDP先進国」とは?

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ICC KYOTO 2023のセッション「Well-being産業の今後(シーズン3)-」、全5回の①は、モデレーターの住友生命 藤本 宏樹さんによる過去回のサマリーからスタート。それを踏まえたうえで、Well-being for Planet Earthの石川 善樹さんが、Well-beingの定義や測定法について紹介します。日本が狙うべき「Beyond GDP先進国」とは? ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは住友生命保険です。


【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 8E
Well-being産業の今後(シーズン3)
Supported by 住友生命保険

(スピーカー)

石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事

石山 洸
エクサウィザーズ
Chief AI innovator

深井 龍之介
COTEN
代表取締役 CEO

(モデレーター)

藤本 宏樹
住友生命保険相互会社 上席執行役員兼新規ビジネス企画部長 / SUMISEI INNOVATION FUND事業共創責任者

「Session 8E-Well-being産業の今後(シーズン3)」の配信済み記事一覧


豪華スピーカー陣を迎えてWell-beingを語るシーズン3!

藤本 宏樹さん(以下、藤本) 「Well-being産業の今後(シーズン3)」ということで、ようやくシーズン3まで無事にたどりつきました。


藤本 宏樹
住友生命保険相互会社 上席執行役員兼新規ビジネス企画部長 / SUMISEI INNOVATION FUND事業共創責任者

1988年住友生命入社。通商産業省(現経済産業省)出向、秘書室長、経営総務室長等を経て、2011年ブランドコミュニケーション部を新規に立ち上げ、住友生命のリブランディングプロジェクトをリード。インナーブランディング、CXプロジェクトを展開すると共に、アウターブランディングでは1UPの統合プロモーションでACCグランプリ等を受賞。健康増進型保険Vitalityの日本ローンチに合わせてCSVプロジェクトを手がけた後、2019年に新規ビジネス企画部を新設。責任者としてWaaS(Well-being as a Service)構想の実現とデジタル保険の展開をテーマにオープンイノベーションを推進。2020年11月にCVCを設立し、スタートアップ企業への出資等も進めている。兵庫県出身。

【一挙公開】Well-being産業の今後(全6回)
【一挙公開】Well-being産業の今後(シーズン2)(全5回)

最初にお聞きしたいのですが、シーズン1とシーズン2の両方を聴いて頂いた方は、いらっしゃいますか?

(会場挙手)

ありがとうございます。

今回初めてという方は、いらっしゃいますか?

(会場挙手)

ありがとうございます。

半分ぐらいの方が今回初めてということですが、最初にいくつか私のほうで、これまでの振り返りをさせて頂きたいと思います。

先ほど、セッション前に映像が流れて、最後に「みんなで行きましょう!」みたいなシーンで終わりましたが、ちょっと説明させていただきます。

こちらは住友生命保険の新しい東京本社ビルで、社内にウォーキングコースがあり、ちょっと変わっています。

その中にデジタルサイネージがあって、いろいろなビデオが流れていますが、先ほどの映像も、社内向けにいつも流れています。

Well-beingは我々の経営戦略のど真ん中にあるのですが、社内でも「よくわからない」「Well-beingって何なの?」という声が非常によく聞かれるため、会社で作ったビデオです。

そのぐらい非常にわかりづらいWell-beingをテーマに扱う本セッションですが、毎回すごい方々にスピーカーとして来ていただいています。

初回から毎回ずっとご参加頂いている、まさにWell-being界の巨人、石川 善樹さんと、今回はみんな大好きCOTEN RADIOの深井 龍之介さん、それから、「現代の空海」の異名をとるエクサウィザーズの石山 洸さんということで、今回もすごい偉人、天才の皆さんをお迎えして進めていきます。

AIによる社会課題解決に魅せられた「現代の空海」たち(Forbes JAPAN)

かつ、「Well-beingって何だろう?」「Well-being産業って何だろう?」というわからないものの今後をテーマに語るセッションなものですから、最初に過去のシーズンでどういう議論があったか、振り返りをさせて頂きます。

シーズン1、2のWell-beingキーワードを振り返り

藤本 まず最初に、ICCサミット主催者の小林 雅さんからこのテーマを頂いた時に、Well-beingも、Well-being産業も何かわからないので、ちゃんと定義をしよう、かつWell-being度をどうやって測るか議論をしようと決まり、シーズン1、2を通してテーマ設定をしました。

これでいきなりシーズン1をやりましたが、シーズン1の「あっと、わっと、ばっと」は、まるでタイの寺院の名前のようですね。

これはスピーカーの丸 幸弘さんから出た、Well-beingは実はどこかで誰かが始めていて、この原理や心理に「あっ」と気づいたら「わっ」と広まって「ばっ」と産業ができるんだという「あっと、わっと、ばっと」理論(シーズン1)です。

オノマトペがたくさん出てきました。私は凡人ですので、Well-beingの定義を何とか見つけようと凡人として精一杯の問いかけをしたのですが、天才の皆さんからはこういう話が多かったです。

2つ目は、善樹さんから出た「Well-beingは北極星」という言葉です。

Well-being産業の定義をしようと思ったのですが、「いや違う」と。

全ての産業がWell-beingに向かうのだという話(シーズン1)がありました。

それから、Well-beingをどうやって測るのかという話では、Well-beingはそもそも測る必要があるのか? 高い低いで比べるものではなく、色、グラデーションで表そうという議論(シーズン1)があったのがシーズン1でした。

シーズン2では定義をするのは諦めて、もう好きに話しましょうということでやりました。「WX(Well-being Transformation)」も、善樹さんからのテーマですね。

シーズン1の「Well-beingは北極星」から進化して、全ての産業がWell-being Transformationでアップデートするという話がありました(シーズン2)。

さらに「Well-being道」は、小林 正忠さんからの、楽天で言う「三間(仲間、空間、時間の3つの間のこと) 」の間にある余白が大事だという話(シーズン2)で、Well-beingは高めるより深めていくものだよねという話(シーズン1)がありました。

藤本さんによるシーズン1、2のまとめ

藤本 それを受けて、自分なりにこれまでの話をまとめてみました。

一番上の、「物事が世の中に広がるには①概念と②作法と③道具が必要」は、善樹さんから出た、物事が世の中に広がるには、概念と作法と道具が必要だという話(シーズン1)です。

例えば茶道であれば、まずわびさびの概念があって、所作があって、茶道具があって、こういうものが揃ったときに広まっていくので、ではWell-being産業が広まっていくには何が必要かというと、1つは概念としてのWell-being Transformationがあるのではないかということでした。

そして、日本全体がWell-beingの視点で進化していくWell-being Transformationで、日本の産業全体がWell-being産業になっていくのではないか、と。

特に、善樹さんからは、自社の顧客を生活者(Human Being)へと視点をアップデートすることで、Well-being Transformationができるという話(シーズン2)をしていただきました。

例えば病院であれば、今までは自分たちの顧客を「患者」だと思っていたけれども、顧客を「生活者」と捉え直したら、病院の中だけではなく、普段の病院外でのサービスなどに広がる。このように生活者という視点でアップデートすることで、Well-being Transformationするのだという話がありました。

作法のところは、「Well-being道」のような話が出て、先ほどご紹介した正忠さんからの「三間」の話があったり、赤瀬川 原平さんの『老人力』にある「年を取ると力が無くなるけれども肩の力を抜く力がつく」といった話にも何か共通するところがあるねという話にもなりました(シーズン2)。

また、リバネス井上 浄さんからは「ポジティヴヘルス」という考え方が紹介されました。これは健康になる、高めるということではなく、問題に直面した時に健康について考えることができる能力のことでした(シーズン2)。

こういう一人ひとりが深めていくようなWell-being道みたいなものがあるのかな?というところが作法の部分で、道具の部分はWell-being Tech(シーズン1)と言われている分野で、例えば時間・空間とつながる技術(シーズン1)みたいなものがあるのかなというのが、これまでの振り返りです。

ということで凡人なりにまとめてみましたが、今回はこれを忘れてしまおうと思います。

これだけのすごい方々が3名来られているので、それぞれ好きなことをお話しくださいとお願いしています。まとめをいったん捨てて、今日はWell-being産業の今後について自由に議論をしていきたいと思います。

それでは善樹さん、Well-being界の巨人として最初に投げ込みをお願いしたいと思います。

Well-beingの定義は多様でよいが、測定法は1つ

石川 善樹さん(以下、石川) はい。僕がこのWell-beingのセッションでいつも気をつけているのは、持論を述べないということです。


石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事

予防医学研究者、博士(医学)。1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。公益財団法人Wellbeing for Planet Earth代表理事。「人がよく生きる(Good Life)とは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学、概念工学など。近著は、『フルライフ』(NewsPicks Publishing)、『考え続ける力』(ちくま新書)など。

あくまでも、世の中でこういうコンセンサスがありますという話をします。

ですから、これからWell-being産業やWell-being Transformationを考える上での礎となるものの話をしていきますが、Well-beingに関しては重要なコンセンサスがあります。

3つ先に言っておくと、「Well-beingとは何かということは多様でいいのだ」というのがまずコンセンサス1で、ゆえに「Well-beingとは何ですか?」と尋ねたら、一人ひとり違うことが返ってきていいのです。

2つ目、Well-beingかどうかはどうやって測定するのかということに関しては、明確なコンセンサスがあります。

それは、「自分の生活を自己評価するやり方」です。

「幸せですか?」とか、そういうふわっとした話ではなくて、めちゃくちゃ具体的な自分の生活というものに対する自己評価をWell-beingの測定方法にしましょうというのが、グローバルのコンセンサスです。

つまり、Well-beingの定義は多様ですが、測定法は一義的に決まっています。

最後の3つ目は、「どうやってWell-beingに貢献するのか」で、これがあまりにも多様になると、困っちゃいますよね。

最後のほうでお話ししますが、Well-beingへの貢献の仕方も無数にあるのではなくて、「少数の確かな方法がある」のです。

その上で、これからお話ししたいと思います。

新しいキーワード「Beyond GDP先進国」とは

石川 日本のみならず、これからグローバルで出てくるキーワードは、「Beyond GDP」というキーワードです。

「Beyond GDP先進国」というものに日本はなっていこうではないか、というのが、一番重要なポイントです。

東京大学の小宮山 宏 元総長が、「日本は課題先進国」とフレーミングしたことがありましたが、人によっては日本をそのように表現するのはあまりにネガティブじゃないかという意見もあります。

そうではなくて、これから世界はGDPはもちろんですが、プラスアルファという意味で、これは「Beyond」がポイントで、「ポスト」だとGDPを否定してしまうからなのです。

「Beyond」は、GDPも含めて大事にしていくのです。

日本はこのBeyond GDPの実は先進国だったのではないかということと、これからそうなっていくのではないかということについてお話しします。

そして、それはどんな国なのかというと、副題の「ひとり一人が自らの意思で自身のキャリアや生き方を選択できる日本」へということですが、なぜそうなのかという話は後でします。

この大きな背景には、実際今の政権の思惑等もあるのですが、新しい資本主義が切に求められています。

これは、株主資本主義からステークホルダー資本主義ということですし、ファイナンシャルインパクトだけではなくてソーシャルインパクトも重視する資本主義になっていこうではないかということです。

この新しい資本主義の実現のために、国内外がBeyond GDPというコンセプトでこれから動いていきますが、ここの世界において、日本の勝ち筋にしていくことがすごく求められていて、そのためのWell-being Transformationです。

投資に値する魅力的な市場ではない日本のチャンスとは

石川 まず背景についてお話ししますが、スライドの左側は日本の株式市場の現状です。

企業から投資家に還元した総額が過去25年間右肩上がりで、2022年は企業から株主への還元が27兆円ありました(赤い線)。

一方で投資家がどれだけ日本企業や日本の株式市場に投資をしているのかというと、1兆円ぐらいで横ばいです(青い線)。

つまり、もはや日本の株式市場は投資に値する魅力的な市場ではない一方で、回収するには魅力的な市場なのです。

皆さんもよくご存知だと思いますが、投資家はもはや回収屋として機能しているというのが日本の株式市場の現状です。

では、回収している株主と言われる人たちは誰なのかというのが右側の図で、3〜4割ぐらいが今外国法人です。

この外国法人は日本の株式市場から回収して、それを日本ではない別の成長市場に投資しているわけです。

せっかく僕らがどれだけ頑張ったとしても、国富の多くが一方的に外国に流れていってしまっています。

これを問題視したのが、岸田首相の新しい資本主義ということなのです。

岸田内閣の主要政策 01/新しい資本主義(首相官邸)

ちなみに左側の図は、赤い線と青い線でワニが口を開けているように見えるので、通称ワニの口と呼ばれています。

こういう日本の現状があります。

石川 では、どこにチャンスがあるのかということですが、東インド会社という世界初の株式会社ができて以来、投資の原則はリスク&リターンでした。

最近はそれに加えて、インパクトも重視する流れが出てきています。

なぜかというと、リスク&リターンだけで見てみると、負の外部性というか、地球環境に代表されるようなことがあるので、それを短期的には見逃して放っておけという話になるかもしれませんが、長い目で見るともちません。

つまり本当に長い目でしっかり儲かる投資を考えると、リスク&リターンに加えてインパクトをちゃんと重視しようとする流れになってきています。

インパクトについて今国際的に整備しているのが、IMPと呼ばれるImpact Management Platformというところで、IMPが最近、インパクトとは、サステナビリティとWell-beingへの貢献であると定義したのです。

環境という意味でのサステナビリティですね。

サステナビリティは概念が誕生してから30年以上経ちますし、具体的にそれがどういうことなのかは気候変動や生物多様性で、いろいろ整備が進んでいます。

一方でWell-beingはまだ出たばかりで、今のSDGsやサステナビリティでいうと多分1980年代ぐらいの状況なので、今から30年ぐらい経つと、Well-beingとは何かについてはもう超コンセンサスになっていると思いますが、今はまだまだ黎明期というのが現状です。

ただ、いずれにせよ言いたいのが、今のリスク&リターン&インパクトであったり、インパクト投資ということがこれから言われてくると思いますが、インパクトはサステナビリティとWell-beingへの貢献であるというのが、これからグローバルなコンセンサスとして出てきます。

だから、全ての産業はサステナビリティとWell-beingへの貢献というものの説明責任が出てくるわけです。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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