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5. 生成AIは、いかに社会のWell-beingに貢献するのか【終】

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ICC KYOTO 2023のセッション「Well-being産業の今後(シーズン3)-」、全5回の最終回は、エクサウィザーズ石山 洸さんが登場。生成AIのプロフェッショナルとして、技術がWell-beingに貢献する側面を解説します。石川 善樹さんによるWell-beingが少し上がるTIPSも含めて、最後までぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2024は、2024年2月19日〜 2月22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは住友生命保険です。


【登壇者情報】
2023年9月4〜7日開催
ICC KYOTO 2023
Session 8E
Well-being産業の今後(シーズン3)
Supported by 住友生命保険

「Session 8E-Well-being産業の今後(シーズン3)」の配信済み記事一覧


藤本 石山さんが口を開かれたので、このままプレゼンして頂きますか。

石川 いきましょう!

藤本 すごいテーマですね。

生成AIが社会会計を変える

石山 空海の話だけして帰ると、AIの話をしろと言われてリコールになることがあります(笑)。

(一同笑)

ちゃんとAIの話をしないといけないというのが最近の常でして、生成AIの話に関連して話してみます。

まず1つ目です。

先ほどの新しい資本主義ですが、岸田首相は池田 勇人(元内閣総理大臣 1899年〜1965年)をよくイメージしていると思うのですが、池田 勇人のブレーンに下村 治(経済学者、元大蔵官僚 1910年〜1989年)さんという人がいて、乗数効果をケインズより先に見つけたのではないかという話があったりします。

最近の日本の研究者でも、面白くて経済学で使えそうな、今日のWell-beingにも関係するような話で、GDPの計算というところでいうと、「交換代数」という簿記の抽象化をやっている出口 弘先生という方がいます。

例えばりんごを買うと、普通は資産にりんご100円が登録されて現金が100円出ていくみたいな話ですが、同時に環境が100ダメージを受けたとか、りんごを食べてちょっと健康になったとか、そういう環境やWell-beingみたいなものも含めて、1回のトランザクションに対して、GDPとそれ以外のものを整合的に計算するような新しい代数理論が出てきています。

こういったものは、先ほどの石川先生の話を聞くと、今後活用されていく可能性があるかなと思います。

出口先生はすごい方で、小澤 正直という方を知っていますか?

小澤先生はハイゼンベルクの不確定性原理に、補正項を足したという「小澤の不等式」を作ったすごい先生ですが、その小澤先生と科学哲学の分野で共著の論文も書いている出口先生が作っている理論なので、これから面白いことが起きることをちょっと期待しています。

ハイゼンベルクの不確定性原理を破った! 小澤の不等式を実験実証(日経サイエンス)

先ほど、石川先生が話していたIndeedは、もうすごいですよね。

国連やWorld Economic Forum、オックスフォード大学のWellbeing Research CentreなどはみんなIndeedのデータをWell-beingの判定に活用しています。

Indeedがリクルートだとすると(※Indeedの日本法人はリクルートグループ)、日本でも数少ないDXの成功事例みたいな形で、リクルートは言われていましたが、今どちらかというと、もうWell-being Transformationの成功事例になり始めるみたいなことも目指しているのかなと思います。

Data for Goodの活動ですが、こういった活動はこれからも増えていったほうがいいのでしょうか。

Workplace Wellbeing and Firm Performance(Wellbeing Research Centre, Oxford)

石川 こちらはアメリカのデータで、2,000万人弱のデータです。

藤本 すごいですね。

石川 2,000万人弱のWell-beingデータをもとに、それがいかに財務パフォーマンスやストックマーケットパフォーマンスと関連があるのかをエビデンスとして示したものですね。

生成AIによってWell-beingのシミュレーションが可能に

石山 そんなデータをうまく使っていく、実世界からIndeedのようなデータを取ってきますというのが左下です。

それに先ほどの交換代数みたいなものを食わせると、GDPとその他のWell-beingも含めた指標を同時に計算することができるのですが、そこでできたデータを生成AIの仮想世界に投げます。

簡単に言うと、1億2,000万人分のChatGPTがいて、それをバーッとコラボレーションさせることによって、日本をそのまま再現するみたいなことが、多分これから技術的にできるようになると思います。

生成AIの仮想世界でシミュレーションして、例えばこういうWell-being Transformationがこういうふうに起きたら、実際にWell-beingやGDPの値がどのように変化するのかを先にシミュレーションして、最後に実世界で介入するような動きが、これからもっとテクノロジーでできるようになるのかなと思います。

実際にちょっとやってみますと、これはもともとまさにサステナブル領域でIMFなどがよく使っていた応用一般均衡モデル(※)ですが、ChatGPTのCode Interpreter(現在はAdvanced Data Analysis)を使いますと、簡単にサクサク解いてくれますので、例えば応用一般均衡モデルベースでシミュレーションするようなことはだいぶできるようになっています。

▼編集注:代表的な経済分野での数理モデルの1つで、応用例としては、温暖化対策のための経済活動と温室効果ガス排出削減の相互影響を評価することなどができる。

次に、これは、森林火災シミュレーションみたいなものです。

ChatGPTのCode Interpreterでもセル・オートマトン(離散的計算モデル)を使って、先ほどの応用一般均衡モデルはすごく解析的に数学的に解かなければいけないのですが、もうちょっと柔らかいような領域についても、いろいろなシミュレーションが簡単にできるようになってきている感じですね。

さらに、「AgentGPT」というものが、今出てきています。

ChatGPTをグルグル何回も回すことによって複雑なタスクをこなしてくれるのですが、仕事に使うだけではなく、AgentGPTを1個の経済主体だというふうに捉えて、それ同士の相互作用の中から社会がどのように変わっていくのかをシミュレーションに使っていくことが、これから多分できるはずです。

「マルチ・エージェント・シミュレーション」と専門用語で言うのですが、そういうタイプのシミュレーションができることが増えていくかなと思っています。

ポイントは、先ほどの選択肢の話ともちょっと関係するのですが、今まで個々人の効用関数は経済学だと同じものを想定しなければいけませんでしたが、AgentGPTみたいなものを使うと、解析的にも解けないような複雑な効用関数みたいなものも取り扱うことができます。

効用関数(コトバンク)

それによって、今までできなかったようなシミュレーションができるようになっていくことが、これからの大きな変化かなと思っています。

歴史上の偉人とWell-beingの議論が可能になる未来

石山 わかりやすく言うと、先ほど(Part.4参照)のいろいろな人、ルソー(1712〜1778)とブッダ(紀元前624年~紀元前595年、諸説あり)と王陽明(1472〜1529)は、全然違う効用関数を当然持っているわけですが、そういったものも実際にシミュレーションしていくことが、これからできるようになっていくのではないかと思います。

最後に、ICCサミットにはいろいろなベンチャー企業の方が来ていると思いますが、実際にWell-being産業という意味でいうと、Well-being産業の中でも生成AIはたくさん使っていくと思います。

そういったプロダクト、AlphaGoを開発したDeepMindの例では、今は囲碁だけではなく、創薬をやっていたりとか、環境問題、エネルギーの領域で、AIをかなり使っています。

ディープマインド、既知の「ほぼすべて」のタンパク質構造を予測(MIT Technology Review)

生成AIのプロダクト自体が市場に普及することによって、いろいろな選択肢が増えていって、Well-being Transformationが実現されていくことは、まさにICCサミットに来ている産業界の皆様がこれから期待されているところかなと思っていまして、ざっとですが共有させて頂きました。

藤本 ルソーと王陽明とブッダは時代が違うから、相互にコミュニケーションして議論できないじゃないですか。

それが、AgentGPTを使うと議論できるということですか?

石山 できるわけですね。

藤本 では、新しいこのWell-beingの概念みたいな、BC500年ぐらいに「知の爆発」があって、孔子とブッダと…

深井 アリストテレスや。

AgentGPTを個々人と見立てて、それぞれに、しかも別の属性で世界のシミュレーションをするというのは、これはもう神の視点ですよね。

だから、僕たちの世界も神からそうされているかもしれないというのが「シミュレーション仮説(※) 」ですよね、あれと同じだなと(笑)。

▶編集注:人類が生活しているこの世界は、すべてシミュレーテッドリアリティであるとする仮説(Wikipediaより)。

藤本 ホモ・デウス(神のヒト)みたいな。

(一同笑)

石山 今、日本の人口は1億2,000万人で、そのうち1,000万人のパラメーターを変えてルソー派にしてみると、どんな感じになるのかみたいな(笑)。

これは「ポピュレーション・ダイナミクス」と言われている理論で、全員がルソーでなくてもいいのですが、ルソーっぽい価値観に1,000万人がもしなったら、例えば、GDPやWell-beingがどういうふうに変化していくのかみたいなことはシミュレーションできるという形です。

藤本 今現実にできるのですか?

石山 もうできますね。

ただ、1億2,000万人分を動かそうとすると、マシンパワーがすごく必要です。

藤本 量子コンピューティング?

石山 やり始めている人たちは、出始めています。

深井 これはヤバいなあ。

言語力が上がるとWell-beingで長生きするという研究

石川 ちょっと先の話というか、近々起こるだろうなと思っていることですが、今Well-being測定は本人にアンケートで丸を付けてもらうやり方ですが、これから何になっていくのかというと、多分僕らがしゃべっているこの言語、自然言語処理で、その人のWell-beingを見てくことになっていくと思うのです。

そうすると何が良いかというと、人は言葉を覚えれば覚えるほど世界に対する解像度が上がって、Well-beingになっていくのです。

例えば、ネガティブ感情が一番わかりやすいかもしれないです。

ネガティブ感情は嫌だと、普通思うじゃないですか。

でも、ネガティブ感情にも価値があるんだ、意味があるんだと思えるためには、その価値を知覚する言葉が必要です。

すごくわかりやすく言うと、今から20年以上前ですかね、歌舞伎役者の奥さんになった女優の三田 寛子さんの嫁ぎ先の生活に密着したテレビ番組があったのです。

それを見ていたら、三田さんが3歳の男の子が泣いている時に、「そんなにさめざめと泣かないの」と注意したのです。

泣くということに対して、「さめざめと」という言葉を覚えると、ちょっと自分で客観視できるようになって、コントロールできるようになります。

感情に対する言葉をたくさん知っている人は、Well-beingで長生きするという研究があります。

京都に行った時で例えると、わびさびという言葉を知っている人は古臭いものを見ても「わびさびなのかな」と、何かちょっと豊かになるのですが、知らないと単なる古いものだなとしか思いません。

自然言語でWell-beingを推定できるようになると何が良いかというと、あなたの今の言葉の世界だと、次にこういう言葉を覚えると世界がまた変わって見えますよという、言葉のレコメンデーションが来るのです。

そうすると、例えば、あなたの場合はわびさびですよと言われたら、「じゃあわびさびを体験しに行こうか」というので、そうやってWell-beingになっていくことができます。

今のWell-beingのアンケートだと測定しておしまいですが、言語情報でWell-being測定ができるようになると、介入も同時にできるようになるから、そこが多分次のWell-being×生成AI的なところのフロンティアの1つだと言われています。

石山 これは言語力が上がると、選択肢の認知や切り取り方も変わってくるということですか?

石川 変わります。

例えば、トヨタのテストドライバーは、車の調子がどうだということを表現する言葉をたくさん持っているのです。

だから、ドライブしていても楽しいはずです、知覚できるから。

テストドライバーから、今のこの車の状況を言葉で表すとこういう言葉なんですということを、隣の助手席に座っている人が学ぶと、ドライブしていても楽しさが増すのです。

Well-beingの話はまだまだ尽きず

藤本 なるほど。

話は尽きなくて、こんな感じでさめざめと話をしてきたのですが、残念ながら時間が来てしまって。

(一同笑)

石川 はんなりと。

藤本 はんなりと終わらないと。

石川 いとおかしく。よろしきかなと(笑)。

藤本 まとめる時間も無かったですが、今日は全然話し足りなかったので、もし次回があれば、続きを議論できればと思います。

石川 福岡で? いや、ないんじゃないですか、もう(笑)。

(一同笑)

それも皆さんのアンケート次第ですから。

藤本 皆さんがさめざめといい評価をしていただけると(笑)。

石川 さめざめと(笑)。

藤本 続きができるかと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

すみません、ちょっと今日は時間切れで、まとめもなかったです。

石川 深井さん、最後に何かありますか?

藤本 ありますか?

深井 いや、もう全部…、やはり仏教…、次回は仏教とWell-beingを。

藤本 仏教ですね(笑)。

では、Well-being産業の今後の話が仏教になるということで、次回を楽しみに、もし続けばやりたいと思います。

深井 善樹さんは神道、石山さんは仏教、僕はキリスト教で行こうかな(笑)? 石山さんは密教ね。

(一同笑)

藤本 ということで、終わらせて頂きたいと思います。

本日は皆さん、どうもありがとうございました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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