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5. 最初につくった「よなよなエール」から全国展開を見据えていた

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「よなよなエール」は、全国展開を見据えたプロダクト設計を最初から行っていたといいます。創業社長の想い、楽天との出会い、地ビールとしての戦略を取らないなど、”てんちょ”井手さんが、現代の暮らしに合わせた売り方に加え、経営者自身の成長や設備投資など事業拡大に必要なステップを詳細に明かします。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2026は、2026年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは中小企業基盤整備機構です。


【登壇者情報】
2026年3月2〜5日開催
ICC FUKUOKA 2026
Session 7D 
地方から強いブランドを創るには?(ローカル・コネクテッド連動企画)
Sponsored by EVeM

(スピーカー)

石川 勤
石川樹脂工業
専務取締役

井手 直行
ヤッホーブルーイング
代表取締役社長

門田クニヒコ
五島つばき蒸溜所
代表取締役

宮本 吾一
GOODNEWS
ファウンダー取締役CCO

(モデレーター)

岩田 真吾
三星グループ
代表

各務 亮
電通
クリエイティブ プロジェクト ディレクター

『地方から強いブランドを創るには?(ローカル・コネクテッド連動企画)』の配信済み記事一覧


現代の暮らしに合ったプロダクト、製造、売り方であるのが重要

各務 石川さん、続きをお願いします。

石川 もう一つ、売り方も工夫はしなくてはいけないです。

僕はめちゃくちゃAIが好きなので、AIを使ったマーケティングということでMetaを駆使しています。

現代の暮らしに合った提案の仕方があると思うので、プロダクトを考えるレイヤー、作るレイヤー、売るレイヤーの3つともを現代の暮らしに翻訳し直すことが大事だったと思います。

各務 ありがとうございます。

先ほどの井手さんのコメント、気になりますね。ためていましたが……。

岩田 あそこでためるのは、よっぽど自信があるのかなと(笑)。

よなよなエールは最初から全国展開を見据えていた

井手 我々は、今日登壇されている方に比べて、圧倒的に長くビジネスをしています。

1997年からなので期間が長いし、期間が長い分ボリュームも大きいので、皆さんとは毛色の違う話になるかなと思います。

我々の看板商品である「よなよなエール」は、最初につくったクラフトビールの一つです。

最初から全国展開を構想していたのです。

私は創業メンバーで2代目の社長です。

創業時の社長は星野で、彼が最初から「全国に展開しよう」と。

お世話になっている楽天の三木谷(浩史)さんが初期に言っていた言葉で、すごく感銘を受けたものがあります。

正式なフレーズは忘れましたが、「人類は大昔に月に行っているが、飛行機の延長線上では月に行けない。月に行こうと思ったから行ける。」と。

これが結構衝撃でした。

飛行機は確かに、どれだけ突き詰めていっても月には行けないのです。

そういう考えがあったので、最初から全国展開を見据え、クラフトビールを日本中、世界中に届けたいと思っていたのです。

ブランドを作る上で、マーケティングに携わっている方だとご存知の方も多いと思いますが、昔からある4Pというマーケティング用語があります。

その4Pの1つ、プロダクト、つまり缶の製品を作ったのですが、今は、缶製品は普通ですよね。

皆さんのご両親の世代にはビールはビンが主流で、97年の創業時は、ようやく日本中の家庭消費の商品が、ビンから缶に切り替わってきたという時期でした。

キリンや大手も同じです。僕が子どもの頃は、父はビンで飲んでいましたね。

キリンビール、キリンラガーを家で飲んでいました。

でも僕らがビールをつくり出した時、缶製品が全体の半分を占めるかどうかくらいでした。

最初から全国の家庭で飲んでほしいと考えていたので、我々は当時、日本で初めて地ビールを缶で流通させた会社なのです。

それを狙っていました。

発売時、よなよなエールは税抜248円で、その後少し値上げして、今も税抜200円台です。

当時は日本で一番安かったですし、今も一番安いかもしれません。

薄利多売のビジネスなので低価格を実現し、流通も地元だけではなく、発売時から東京の問屋さんにも卸していました。

地ビールとしての戦略は取っていない

プロモーションについても、発売時から長野県でテレビCMを出稿しました。

今もSNSを含め、いろんな拠点を設けて活動しています。

プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションの4P全てについて、地域に限定しない発想を最初からしていました。

なおかつ、よなよなエールのネーミングにもデザインにも、地域性を出していません。

下の方に「KARUIZAWA NAGANO」と書いていますが、これはアイデンティティとして使っています。

いわゆる、昔の地ビールとしての戦略は取っていないのです。

今もですが、「各地域の地ビール」というスタイルを取っている商品が多いと思います。

昔の名残でもあると思いますが。

岩田 お土産として消費されていたということでしょうか。

井手 そうです、そうです。もともと地ビールは、そういう成り立ちなので。

でも僕らは家庭で飲んでもらいたいと考えていました。

ですので、大手が造る、のどごし重視でキレのあるラガービールではなく、当時はまだなかった、味わい深い、コクや香りのあるエールビールというスタイルを取りました。

毎晩飲んでほしいから「夜な夜な」、ラガービールではない「エールビール」ということで、創業者の思いを込め、「よなよなエール」という名前にしました。

デザインも、花札をモチーフにしていて、懐かしさを感じ、ゆったりした気分で飲んでもらいたいという考えで作られていて、あえて地域性を出していません。

ブランド力だけでなく、経営者の成長と設備も必要

井手 また、初代社長の星野の、楽天との出会いがすごく大きかったです。

今、最前列に、楽天の共同創業者でICCでもお馴染みの小林正忠さんがいらっしゃいますが……。

岩田 きちんと、「楽天」と書いたTシャツを着ていますね。

井手 星野は、今はもっとすごくなってしまいましたが、昔からすごかったのです。

こういう言い方は失礼ですが、彼は昔から頭が良かったのです。

(会場笑)

井手 こちらがカチンと来るくらい、頭が良くて。

でも、彼から学んだことがすごく多かったです。

彼が社長だった時のビール事業はほぼ赤字で、僕が引き継いでから黒字になって急成長したんですけど……。

(会場笑)

彼がフェードアウトしていくのと入れ替わりで、三木谷さんの月の逸話や(小林)正忠さんを含めた楽天の皆さんと出会って、こんなすごい会社があるのかと。

正忠さんとは昨日もCo-Creation Nightで一緒でしたし、たまにディスカッションをしますが、昔は雲の上の存在でした。

今も尊敬はしていますが、当時も、たくさんの学びを頂きました。

先ほど地方ビジネスの強みについて話しましたが、やはり難しいところがたくさんありました。

製品のブランド力だけで何とかなる地方ビジネスの事例は、たくさんあると思います。

きちんと調査してはいないのですが、軽井沢で人気の商品はいろいろありますが、全国に展開しているのは、僕らだけではないかと思います。

やはり経営者の成長がないと、なかなか難しいと思っています。

あとは設備ですね。

この4Pを実現するためには、低価格製品なので大量に作らなければ成り立たないため、売上における損益分岐点が異様に高いのです。

具体的な金額は言いませんが、当時、軽井沢に2つしかなかった、長野県の人も知らないような老舗の小さなホテルの年商の半分くらいを投資してビール製造の設備を作りました。

当時は日本一大きいクラフトビールの製造設備で、29年経った今も、900以上ある日本のクラフトビールの会社の中で一番大きいです。

星野は当時若かったから、今ではそんなことは絶対にやらないということでもやったのでしょうね。

そんな危険なこと、今なら彼は絶対にしないですが、それくらい最初からリスクを取っていました。

岩田 既に星野さんが投資していたのですね。

井手 そうです、最初から、安く大量製造することを念頭に置いていたということです。

でも、創業から8年は赤字で本当につぶれそうだったので、本当にギリギリでしたね。

全国展開でいかなるステップを踏んできたか

岩田 ありがとうございます、2つ質問します。

まず、スタートアップでは、小さく生んで大きく育てる、最初から戦線を広げすぎると手が回らなくなるので、きちんと育てれば育つはずだったものが死んでしまうみたいな話を聞きます。

全国と言っても、首都圏から攻めたのか、最初は全流通ではなくECを切り口にしたのか、つまり、本当に一気に戦線を全て広げたのかどうか、ステップを教えてください。

大きい目標を持ちつつ、順番に攻めたのでしょうか?

井手 まず、地元の長野県は軽井沢を含めて観光地なので、比較的、初期から話題になって売れたのです。

東京については、先ほど話したようにいきなり卸の力を借りましたが、1年くらいでもう売れなくなりました。

それは、地ビールブームが一気に来て一気に終わってしまったからです。

ですので、3年目が売上のピークで、そこから5年間、売上は下がりっぱなしでした。

創業から8年間ずっと赤字で潰れそうになったので、東京はすぐに撤退しました。

東京の事業所も早い段階で作り、私が責任者でしたが、1、2年で撤退しましたね。

ですので、東京では、あっという間に売る場がなくなりました。

その時、地元の軽井沢を中心に、潰れそうなのにギリギリ首の皮一枚をつないだのが観光地でした。

そこでのベースの売上はありましたが、地元の人は誰も飲まない。

でも、地元でもだんだん売れなくなってきて、やばいと思いながらいろいろ対策をとり、最後に、自分の特性に合わない、一番苦手で、「これをやるのか……」と思って始めたのが、楽天市場での販売でした。

インターネットに興味がなく、パソコンも使ったことがなかったので…でも、誰も買ってくれないですし、売り場はだんだんなくなっていって、あと1、2年くらいで会社が絶対に潰れるなと思っていたので、楽天市場で売るという取り組みしか残っていなかったのです。

それで、楽天の言うがまま、教えられるがままに始めたら、インターネット上で火がついて、だんだん「インターネットで話題のビール」になって、東京の酒屋やスーパーでの取り扱いが少しずつ増えていきました。

こんな流れですね、初期は本当に大変でした。

岩田 ありがとうございます。

これがICCの面白がり方だということを皆さんに伝えたくて、あえて話しますが、先ほど、休憩時間中に会場のホワイエで、今クラフトビール業界では、BREWDOGという、世界的な超有名クラフトビール会社が身売りをしていることが話題だと聞きました。

僕は業界の外にいますが、面白いからその理由を聞いたのですが、「過剰設備投資だと思う」と言っていました。

しかも、ローカル性から切り離した設備投資をしてしまったのではないかと言っていました。

先ほど石川さんが言っていた通り、設備投資は、長期の投資になります。

もちろん、適切なリスクは取っていくべきですが、本来であれば100年は続いたであろうブランドがダメになってしまう可能性もある怖さにも、同時に向き合う必要があると思っています。

今の話でなるほどと思ったのは、地元のおかげで首の皮一枚でつながって、次の一手が打てたことがすごく大事な学びですよね。

この論点については、最後に時間があればもう一度戻ってこようと思います。

ICCの面白みは、ICCではいろんなセッションが同時に開催されていて、いろんな業界の面白い人たちが周辺にいるので、それぞれの話を結びつけられることです。

ちょっとしたコラムでした(笑)。

井手 僕は星野から経営を引き継いだわけですが、結果的に大きい設備投資がありがたかった面もありましたが、それでも経営はやばかったので、それ以来大きい設備投資は一度もしていないです。

製造量は当時の何倍にも大きくなっていますが、設備投資は一切せず、いろんなパートナーと付き合い、彼らに投資してもらって僕らが運営するようにしています。

時間があれば後で話しますが、リスクを極限まで減らした運営によって急成長しています。

今なら、星野でもあの設備投資はしなかったと思いますし、僕も、もう一度するかと言ったらしません。

岩田 なるほど、このテーマはめちゃくちゃ深いので、別シーズン決定ですね。

(一同笑)

(続)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

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