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メルカリのブランディングを凄腕クリエイティブディレクターたちが徹底議論!【F17-7C #7】

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「凄腕クリエイティブディレクターと考えるブランディング戦略」【F17-7C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その7)は、ブランディングを行う価値と、その意思決定プロセス等を議論しました。ぜひ御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2017年2月21〜23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 7C
凄腕クリエイティブディレクターと考えるブランディング戦略

(スピーカー)
小泉 文明
株式会社メルカリ
取締役(当時)

齋藤 太郎
株式会社dof
CEO/Communication Designer/Founder

志伯 健太郎
GLIDER
クリエイティブディレクター

戸田 宏一郎
CC INC.
Founder & CEO/Creative Director/Art Director

(モデレーター)
彌野 泰弘
株式会社Bloom&Co.
代表取締役

「凄腕クリエイティブディレクターが考えるブランディング戦略」の配信済み記事一覧

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【本編】

彌野 今「エンターテイメント」に触れられましたが、ビジネスには大きく2つあって、問題解決のビジネス、例えば医者や弁護士なんかがそうですけれども、マイナスをゼロにしてあげるというビジネスと、ゼロをプラスにするというビジネスがあって、後者はエンターテイメントに近いんですよね。

何か嬉しい楽しい気持ちにさせてくれるような。

メルカリが問題解決のサービスなのか、エンターテイメントのサービスなのか、人によっては問題解決で使っている人もいるだろうし、エンターテイメントで使っている人もいるかもしれない。

いずれにしても、その両面でブランドを構築してあげると、もっともっと使う理由や使い続ける理由が増えるのではないかと思うんですよね。

戸田 (ビジネスとエンターテイメントの両面を)分ける方法もあるし、例えば断捨離を楽しくするといったように、メルカリは、ファンクションとエモーションが両方入るものとして実はまだまだ可能性があると思っています。

断捨離という機能の話だけではなくて、それすらもエンターテイメントとして演出していく方法というのがあってもいいかなと思い、そういう仕事をやっていきたいです。

ブランドの軸を透けて見せられるか

彌野 確かに。

小泉 今おっしゃっていたことは、ずっと社内で言っていたことですね。

その常識は追わないといけないと思っています。

齋藤 断捨離というのは、やはり社会問題の解決だと思うんですよね。

一人だけだったら断捨離だけれど、それをもっと大きく見せていったら、もっともっとできることがあると思うし、それが気づきになると思うんですよ。

自分一人が要らないコップを売ろうとかそういう感じなのかもしれないけれども、これを膨らませていって、その先に断捨離という言葉があって、それを組織や学校や会社がメルカリを使ったらどうなるのだろうくらいまで膨らませていくと、メルカリってこんなことまでできてしまうのだということに繋がりますよね。

多分、今は、ここにあるコップや、要らなくなったCDなど、周りにあるものをちょこっと売ろうかなといった話なのだけれども、Googleなんてその辺を膨らませて上手にやっていると思うんですよ。

小泉 そうですね。

齋藤 その検索エンジンによって、見えなかった世界が見えてくるとか、Appleも、コマーシャルで、iPhoneはただのスマートフォンではなくて、そこで人との繋がりがこういう風に変わっていくよねといったことを上手に見せています。

それがブランドの軸なんですよね。

「ほら、あなたも儲かりますよ」と言っているブランドは、「ほら、俺らも儲かるよ」という風に聞こえてきますよね。

彌野 そうですね。

齋藤 でも、私達があなた達の生活を豊かにしたいんだ、幸せにしたいんだところが透けて見える会社というのは、本当にブランドがしっかりしているのだと思います。

「ダサくて暗い」問題解決をカッコよくする

彌野 でも、エンターテイメント系のビジネスに対して、問題解決系のビジネスというのは、問題が解決するまで在り続けるので、結構長いんですよね。

エンターテイメント系のビジネスは飽きられると終わりなので、実はビジネス的には問題解決の方が本質的にはいいのではないか思っているのが一つと、たぶん、断捨離のような話は問題解決に寄せられるのですけれども、問題解決の話って「ダサい」んですよ。

暗いんですよね。

僕はそのダサい暗いものを、先ほどおっしゃっていたようにエンターテイメント風に見せられてクールでカッコいいものにできると、実はビジネス的に一番都合が良くて、ブランド的にも都合が良いと思っています。

ハイボールも、本質的にはダサかったと思うんですよ。

おじさんが飲んでいるウイスキーのソーダ割りですからね。

ウイスキーをソーダで割っているだけじゃないですか。

だけど、あれを何となくクールなものに見せたのが、やはりクリエイティブだったと思っています。

僕がいつもやる仕事としては、まず何が課題で何をどうしたらいいのかという、beforeとafterを決めて「このbeforeとafterにしたいのだけど」とクリエイティブの方に言うと、それをすごくいいアイディアに落としてくれて、「めちゃめちゃカッコいいね!」となるんですよね。

だから先ほどおっしゃっていたことは、そこに繋がる気がしますね。

戸田 問題解決という仕事の仕方はあると思うのですが、我々は意外と、特に僕なんかは、問題解決のもう一つ前の、問題を提起する話の方を魅力的に感じています。

今の断捨離の話からリユースの話やシェアの話という風に、やはりメルカリさんがやろうとしていることによって、社会に対して何を問うのか、価値観としてこういう提案ができるよというところへやることに可能性を感じています。

断捨離してお金が儲かるよ、自分のものを整理してお金が儲かったよということ以外にも、お金ではない部分の提案を含めて、もう少し別の階層で作れそうだなというチャンスを結構感じるので、そこが僕の言うエンターテイメントです。

そこを暗く喋るか、重々しく喋るか、楽しく喋るか。

それこそ、そういう時にタレントやお姉さんが出てくる方がいいという話であれば、そこはいくらでもできるかなと思うんですよね。

そういう風にタレントを使っていけばよいけれども、使い方がそもそも間違っているし、テレビの使い方もちょっと怪しいぞということを結構感じています。

そういう意味では、そこはいくらでもできるかなと思うんですよね。

彌野 小泉さん、何かヒントになりそうなことはありますか?

小泉 いやもう、とても参考になりますね。

社内でもちょうど同じような議論をしながら、それをテレビのCMに求めるもの、PRの方で考えていくもの、あとは番組などを含めてもう少し踏み込んだものと言った風に、色々なコミュニケーションのポイントがあるので、その全体をどう設計するのかというのを話しているところです。

僕が一番おいしい、役得なポジションだと思いますね。(笑)

彌野 大丈夫ですよ、後で請求書が届きますから。

(一同 笑)

ブランディングの意思決定を誰が行うか?

戸田 そういう問題を大きく広い目で見て解決していきたいところですが、社内でやる時にはそのレベルのビジョンを共有できる人というのは、なかなかいなくないですか?

小泉 スタートアップでの「あるある」なのですが、結局、誰がこのブランディングに対して責任を取るんだというところですね。

基本的には社長がやるものなのかもしれませんが、弊社の場合、見ているのが完全に僕なんですよ。

ですから、社長の山田でさえ、テレビCMが放送される直前くらいまで知らないです。

やはり頭が複数いると世界観やトーンなど全てブレていくので、僕としては、まずはなるべく僕だけの世界観で統一していきたいなと思うのです。

それでどこまでいけるかかな、という風に思っています。

彌野 先ほども申し上げましたが、ブランドというのは中長期で一貫性を持って全社的にやり切らなければならないものなので、会社の判断として意思決定をして、全社に対して実行のリードをとれる人が必要で、そうでないと、いくら設計しても本当に形にならないんですよね。

通常は社長さんやCMOと言われる人ですが、今はメルカリさんのように小泉さんがそこをやっているのだったら小泉さんだし、とにかく、コミットがあるということがすごく大事です。一貫性を持った実行能力がとても大切だと思っています。

あと、ブランドが強い会社というのは、そもそも社長がブランドを大事だと思っているんですよね。

資生堂然り、そして元々僕がいたP&Gでも結構「ブランド、ブランド」と言いますが、社長が「ブランド、ブランド」と言っていて、マーケティングの人だけがブランド、ブランドと言っている訳ではなくて、会社としてブランドが大事だと思っている訳です。

サントリーもそうなのではないかと思います。

確かに、ブランドって、うっかりするとふわっと「綺麗でカッコいい感じにする」となりがちですが、本当はそうではありません。

なんでもかんでも綺麗でカッコよければ売れるものではないので。

(続)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/Froese 祥子

【編集部コメント】

問題解決は、「ダサくて暗い」という彌野さんのコメントが印象的でした。問題解決は、解決されてもしくは解決の一途が見えて、初めて記事やテレビの特集になるため華やかですが、それまでのプロセスは本当に「ダサくて暗い」ものだなと思います(榎戸)

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