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「デジタルマーケティングやプロモーションは今後どのように変わっていくのか?」【F17-4B】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その3)は、登壇者がマーケティングの文脈において注目するテクノロジートレンドについてお話し頂きました。技術から考えるマーケティング進化論です。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2017年2月21〜23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 4B
「デジタルマーケティングやプロモーションは今後どのように変わっていくのか?」
(スピーカー)
佐藤 裕介
株式会社フリークアウト・ホールディングス
代表取締役社長
東後 澄人
freee株式会社
取締役
濱野 幸介
プリズマティクス株式会社
代表取締役
逸見 光次郎
オムニチャネルコンサルタント
(モデレーター)
須藤 憲司
Kaizen Platform, Inc.
Co-founder & CEO
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連載を前から読みたい方はこちら
最初の記事
【新】マーケティングは今後どのように変わっていくのか?【F17-4B #1】
1つ前の記事
「値引きクソ野郎と言われた」マーケターたちが語る”しくじり”武勇伝【F17-4B #2】
本編
須藤 自己紹介を聞いただけでも何となくお分かりいただけると思いますが、濱野さんと逸見さんがオムニチャネル、そしてこちら側3人(佐藤氏、東後氏、須藤氏)がデジタル系という感じです。
そこで、皆さんにそれぞれ聞いてみたいのですが、最近注目しているテック・トレンドや企業などがありましたら、教えてください。
こういうことについては佐藤さんに尋ねたら、何かいい話が聞けるのではないかということで、佐藤さんお願いします。
佐藤 (スマホを見ながら)すみません、今Kaizen Platformのサイトがどれくらいひどいのか見ていて、ちょっと油断していました。
字が多すぎて、これは確かにひどいなと(笑)。
▶︎編集注:前の記事で須藤さんの「恥ずかしいしくじり」として、サイトの改善を行うKaizen Platformの自社サイトが分かりにくいという話をしていただきました。
須藤 見てたんですか!やめて!見ないで!(笑)
(会場笑)
マーケター注目のテックトレンドとは?
佐藤 すみません、注目しているテック・トレンド、企業でしたよね。
マーケティングにある程度絡めて話すと、大きな変革というのは、入力のインターフェースが変わるタイミングで起こることが多いなと思っています。
そういう意味では、音声認識ですよね。
弊社内でもいろいろと実験していますし、注目しています。
今日このセッションで個人的にも楽しみにしていたのは、オフラインのテクノロジーですね。
センサーと画像認識の部分は、機械学習で大きく進化したテーマですね。
音声と、特に画像は機械学習のおかげで劇的にコストが下がりましたので、そういうものを通じて、オフラインの、とりわけアナリティクスなどの部分に非常に興味を持っています。
そういう意味では流通小売り、オフラインのプロであるお二人にいろいろと質問ができるので、今日は楽しみにしながら参加させていただいています。
須藤 逸見さん、音声認識のところで大きく頷かれていましたが?
逸見 音声にはやはり注目しています。
オムニチャネルというと、何かとデジタルが取り上げられますが、特に高齢化などが進展する中、正直なところ60代・70代の人がスマホをバリバリ操作してオーダーするかというと、恐らくしませんよね。
そうだとしたら、スマートフォンの電話としての機能、もしくは音声を拾う機能にむしろ注目しています。
これからAmazon Echoなども当然入ってくると思いますが、とにかく音声入力での認識が普及していくだろうと考えています。
マーケティング的には、写真画像にしても音声にしても「非構造化データの構造化」などと難しく言われますが、やはり人が使いやすい道具として音声入力というものがもっともっと出てくるのかなと思っています。
Shazamさん(音楽認識アプリ)のように音声を拾って分析するというような話もありますが、それはあくまでも周辺のテクノロジー的な話です。
人間の声で普通にオーダーができる、それに対してbotだけでなくて、ビデオチャットなどで生身の人が、ちゃんと対応してくれるという方向へ進んでいくのではないでしょうか。
今まではとにかく新しいものをどんどんやっていくと更に便利になっていったということでしたが、うまく落ち着いてきて、基本的には「枯れた技術」だけれども、そんな使い方があるのか!というようになっていくように思います。
私は行けませんでしたが、レポートを聞いたら、今回のCES(Consumer Electronics Show)でも、音声認識が非常に注目されていて、(音声で)車とつながる、家電とつながるという話ですよね。
ここが非常に面白いと思いますね。
須藤 なるほど。
濱野さんはその辺り、どのように見ていますか?
濱野 皆さん仰るようなテクノロジー寄りの側面がまずあります。
別の文脈で「D2C(Direct To Consumer)」などにも注目しているので、それは後で解説できればなと思うのですが。
例えばVRでは、単純にゴーグルなどをかけて例えば360°動画をYouTubeで見るような単純なレベルのものもあり、それは1,000円くらいのものを皆にどう配るのかというやり方の話になります。
一方、Oculus(オキュラス)だとかHTC Vive(バイブ)などのVRデバイスを頭にかけて、かつ入力用デバイスなどを付けてやる時の体験というのは全く異なっています。
そういった技術を、リアルなお店などでどのように実際の体験として落とし込めるかという点に大いに着目しています。
音声の話も同様で、常時オン状態にあるEchoの端末などに対して、Custom Skills(※)で、オーダーをどのように流していくか。
▶編集注:Custome Skillsとは、Amazonの音声認識プラットフォーム「Alexa」において、1から音声命令に対する機能実行を定義すること。例えば、「カレンダー、X月X日にランチをセット」という命令に対して、Googleカレンダーにランチの予定を登録するアクション(Skill)を1から定義するなど。
また、そのシチュエーションや文脈に応じてどのように使っていくかという体験の研究は、すごく自然な流れで進んでいくだろうと注視しているところです。
インプットのところは、音声であったり、デバイスがもっと薄くなっていた時の、Mixed Reality(複合現実)のようなものだったりというのは、小売りかつオフラインをやっている側としても、ものすごく注目しています。
ですので、当然Amazon Go(=レジでの精算なしで食品を買うことができるAmazonの実験型店舗)のように体験を変えていく動きについても、やはりテクノロジーがすごくギークだから気になっているというよりも、体験を劇的に変える可能性があるから注目しているということですね。
須藤 皆さんのお話にアマゾンの名前がよく出てきますね。
私も、アマゾンというのは、企業としてやろうとしていることが壮大で、かつあらゆる戦略が正しいのではないかと思わざるを得ないくらい、今非常に当たっているような気がしています。
どうなのでしょうか、アマゾンというのは、小売りをやられているお2人の立場からはどのように映っているのでしょうか。
小売側からAmazonはどう映る?
濱野 普通に流通しているもので、かつ予測もできて自動的に補充されるものなどは、もしかしたら本当にアマゾンだけで十分なのではないかと思うくらい、全てを下手したら飲み込んでいきかねないというくらいの脅威として見ています。
では、そのような状況でオフラインの店を持っているところがどう戦うのかといえば、そのブランドをなぜ買うのかというところを、徹底的に極めていかなければならないというのが、今まさに小売りの側が持っている危機感です。
須藤 なるほど。私も関心を持って注目していますが、オフラインのお店が、アマゾンしかり、アリババしかり、そのようなオンラインの勢力とどのように戦っていくのかについては、何かベストプラクティスのようなものがあるのでしょうか。
逸見 個人的には、戦うとは思っていません。
私の捉え方ですが、アマゾンというのはあくまでもインフラビジネスだと思っています。
物流にしても、アマゾン・ペイメントの支払いにしても然り、AWS(=Amazon Web Service)にしてもまさにインフラの話です。
そもそもアマゾンのジェフ・ベゾスは、本を売りたいからビジネスを始めたわけではないですからね。書籍がパッケージ的に扱いやすかったからに過ぎません。
また、本当に言ったのかどうかは分かりませんが、あちこちで読んで恐らくそうなのだろうと思っている話があります。
アマゾンはとにかくクレームをなくすためにシステム改善をひたすら行い、お客さんに不便を掛けないように改善した結果、クレームがなくなっていったと。
日本では違いますよね、クレームに対してはまずお詫びをするという姿勢です。
そのような合理的な対応がいいのか悪いのかという判断はあるにせよ、既にできてきているこのインフラをどのように使うのかを考えねばなりません。
ダッシュボタン(Amazonが提供するワンタッチで注文ができるボタン型デバイス)など、いろいろなものも出てきて、確かにその瞬間は便利ですが、皆がダッシュボタンを押せば押すほど、日本の物流は弾けるんですよね。
そうなると物が届かなくなりますよね。
ですから、そのように全体で見た時に、アマゾンをいかにインフラとして活用するのか。
オフラインの拠点を持っているからこそできること、お店があるからこそできることがあるはずです。
アメリカのように距離が遠い、宅配が前提のビジネスだとしたら、確かにアマゾンと戦うのは大変だと思いますが、日本の場合は、どんなに急いで発送したところで、店頭で商品を受け取れるのならば、その方が早いはずです。
更に、その場で商品の説明をすることができるなどの利点もあります。
ですので、いかにうまくインフラとしてどう活用していけるのかと考えるべきだと思っています。
須藤 なるほど。濱野さんはその辺り、いかがでしょうか。
濱野 この辺でまた「D2C(Direct To Consumer)」の話が出てくるかなと思っていますが、要は「全部がアマゾンになるの?」という話ですよね。
どういうきっかけでそういう商品が欲しいと思い、誰を、そして何を信頼して買うのかということは、変わらずに残ると思います。
例えば、メガネには既にいろいろな種類があるのになぜ「Warby Parker(ワービーパーカー※1)」のようなメガネがアメリカであれだけ流行ったりするのか。
もっと言えば、「Bonobos(ボノボス※2)」 のようなものがなぜあるのか。
あるいはスタートアップでいうと「le tote(ルトート※3)」 のようなサブスクリプション・モデルというのが、データビジネスなどと絡めてなぜあれほどうまくいくのかということは真剣に見なければならない気がしています。
▼(まとめて編集注)▼
※1:Warby Parker…米国でデザイン性の高い眼鏡等をリーズナブルなプライスで提供するアイウェアブランド。Fast Company「世界で最もイノベーティブな50社」の1位に輝く。
※2:Bonobos…米国のeコマース専業のアパレルブランド。店舗で商品をチェック・試着し、購入はeコマース」の形をとるショールーム専用ショップ(GUIDE SHOP)が有名。
※3:le tote…米国の衣類及びアクセサリーのレンタルサービス。月額49ドルで、様々なファッションアイテムをレンタルできる。
▲編集注終わり▲
本当にアマゾンだけが勝つのだったら、単純にインフラとして使えば確かにいいのだけれど、「誰からどういうきっかけで何を買うのか」というところは変わらず残ると思っています。
そこが、アマゾンとは異なるレイヤーの話なのかなと思っています。
須藤 なるほど。
購買の意思決定プロセスで需要喚起=広告がスキップされかねない
須藤 佐藤さん、ご意見がありそうですが、いかがでしょうか?
佐藤 広告屋から見ても、アマゾンは、当然お客さんでもある一方で、強大な競争相手だとも思っています。
例えばPCの世界ですと、eコマースの利点というのは、大量の商品から比較ができる、際限なくページングをして、同じ検索キーワードの中から、大量の商品を見比べることができるところにあります。
楽天などはまさにそのような構造だと思います。
それがスマホになると、比較がだんだん面倒になってきます。スマホは PC と比較して受動的なメディアですので、比較というよりも推薦なんですよね。情報は流れてくるものであるという。
可能な限り絞られた商品の中から選びたいというようなトレンドになってきていると思います。
例えばインプットが音声認識と音声入力になっていき、画面がない中での継続購入や音声だけでの購買の意思決定がなされるようになると、物を買う際の意思決定の部分において、これまでであれば広告による認知によって商品想起されていたステップが全てスキップされかねません。
アマゾンに接している瞬間だけで物の購買意思決定が済まされてしまうということになると、広告は完全にスキップされてることになります。
言い換えれば、エンドユーザーのところに(アマゾンが)ベタ張りされているような状態なので、我々(広告側)の存在意義が問われることになります。
特に、FMCG(fast moving consumer goods=日曜消費財)を扱う企業については、既にそのような懸念がかなり出てきているように思いますし、我々の事業という観点からも、懸念していますし、今後チャレンジしていかねばならない部分だと考えています。
須藤 すごく面白いですよね。
ビジネスとしての販売と、そして情報を流通させる広告とでは、かなり違う視点で見えてきますね。
私自身が何となく感じていることは、昔は、指名買いつまりバイネームで物を買うとか、あるいは「宿を予約するのであればこういうサイトだよね」というような購入のあり方が、恐らくオンラインならではのニーズだったのだと思うのですが、それが今は「衝動買い」の範疇にまで食い込んできている感じがあります。
現実の消費というのは、衝動買いの方が遥かに多いですよね。
9割くらいは衝動買いであるとも言われていますが、衝動買いがオンラインで起こるようになるというのは、なかなか衝撃的というか、面白い時代になったなと感じています。
(続)
続きは 優れたマーケターはどのようにデータを活用するか? をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/鈴木ファストアーベント 理恵
【編集部コメント】
他のセッションでも、Amazonの話題はかなりの頻度で出てきます。世の中の潮流を作り出している企業であることを記事を編集をしながらもひしひしと感じています。(立花)
続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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