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優れたマーケターはどのようにデータを活用するか?【F17-4B #4】

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「デジタルマーケティングやプロモーションは今後どのように変わっていくのか?」【F17-4B】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その4)は、マーケティングにおけるデータ活用やパーソナライゼーションの進化について議論しました。マーケティングオートメーションの考え方など、マーケター必見の議論です。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2017年2月21〜23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 4B
「デジタルマーケティングやプロモーションは今後どのように変わっていくのか?」

(スピーカー)

佐藤 裕介
株式会社フリークアウト・ホールディングス
代表取締役社長

東後 澄人
freee株式会社
取締役

濱野 幸介
プリズマティクス株式会社
代表取締役

逸見 光次郎
オムニチャネルコンサルタント

(モデレーター)

須藤 憲司
Kaizen Platform, Inc.
Co-founder & CEO

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最初の記事
【新】マーケティングは今後どのように変わっていくのか?【F17-4B #1】

1つ前の記事
マーケター注目のテクノロジートレンドとは?【F17-4B #3】

本編

須藤 東後さんは、最近注目しているトレンドなど、何かありますか?

東後 そうですね、アマゾンの話を少し絡めてお話しすると、我々もアマゾンを通して、実はパッケージなどを売っているんですね。

基本的にはクラウドでサービスを提供しているのですが、箱型(のパッケージソフトウェア)も一応販売しています。

これまで量販店に行って会計ソフトを探していた人たちの行き先が、今はアマゾンでの検索に変わってきています。

ですので、freeeとしては当然クラウドサービスを提供するのですが、実はその面も押さえなくてはならないというのが難しいところで、そのためにはわざわざ箱型も作らなくてはならないという状況です。

そして、そこで面を取るためには、アイコンにした時に箱のデザインがどのように見えるかというのが何より大事なので、予め極めて大きな文字で目立つデザインにするというように最適化しています。

チャネルが変わったり、人の購買行動が変わるにつれ、商品やサービスを提供する側もかなりフレキシブルに変化していかなくてはならないのだなということを、今のお話を聞いていて、ふと思い出しました。

須藤 「消費者の消費行動の変化に合わせてクラウドなのにパッケージを作っています」という熱い話ですよね。

東後 そうなんですよ、本当に。

データをどのように料理していくか

東後 元の話題に戻ると、弊社の場合はBtoBでクラウド、しかもバックオフィスでサービスを提供しているので、VRのようなファンシーな話はなかなかありませんが、我々が作っているサービスは、インフラ作りでありプラットフォーム作りなんですよね。

そこに蓄積されてくるデータというのは非常に面白味があります。

今回のICCでもいろいろなところで「AI」というキーワードが登場していますが、AIがたぶんマーケティングにも大いに関わってくることになるだろうと強く感じています。

具体的に言うと、freeeに蓄積されるデータというのは、各社の財務データだけではなく、例えば、A社とB社がどういう取引をしていたか、誰がどこから何を買っているかということも、ある程度その取引先から特定され、スモール・ビジネス間の一つのプラットフォーム上での取引の動きが分かります。

これは極めて貴重な情報で、例えば、A社もB社もC社から何かを買っている場合、共同で購入したら安くなるかもしれないというようなことが推測できたり、そのデータに基づいてファイナンス面だけでなく、マーケティング面でもいろいろなソリューションを提供していくことができます。

ですので、今後テクノロジーを上手くマーケティングに活用していくうえで、データをどのように料理し、それに対しどのようにマーケティング・ソリューションを提供していくのか、というところが非常に重要になってくるだろうと思います。

それから、弊社で最近活用している具体的なツールは、「KARTE(カルテ)」というサービスと「Marketo(マルケト)」というマーケティングオートメーションのツールです。

これらを組み合わせることにより、できることがいろいろあるのではないかと考えているところです。

例えば、KARTE(カルテ)は、ウェブの細かな動きなどが全て把握できて、かつその状況をMarketo(マルケト)とも連携させることができます。

Marketo(マルケト)というのは、マーケティングオートメーションのツールで、それぞれのユーザー属性に合わせていろいろなコミュニケーションを取ることができます。

これらを組み合わせることによって、ユーザーの属性ごとに、一人ひとりに対してカスタマイズしたマーケティングが、リアルタイムでできるようになります。

今までできなかったことだなと思いますし、これは面白いなということで、取り組み始めたところです。

デジタルマーケティングのすごさというのはある意味、ワン・トゥー・ワンのマーケティングをスケーラブルにできることだと思っています。

マスマーケティングはこれまで、カスタマイズやパーソナライズには対応できていませんでしたが、デジタルであればそれができるようになります。

そのためのツールやテクノロジーが今急激に進化していますので、アイデア次第でデータと、リアルタイムの情報取得に応じた、様々なマーケティング・ソリューションが可能になるだろうと感じています。

須藤 データの話は、すごく面白いですよね。

特に決済、FinTechもそうですが、これがマーケティングにつながるということに、可能性を感じています。

その流れではやはり、LINEの話をここで聞いてみたいと思っています。

「WeChat(ウィーチャット)」などは、明確に決済(の領域)を取っていっていますよね。

LINEの戦略について話せと言われても困るかもしれませんが、その辺りはどうなのでしょうか、佐藤さん。

「自分ごと化」が一番良いデジタルマーケティング

佐藤 そうですね、今日はスドケンさん(須藤氏)に全裸になってくれと言われているのですが(笑)。

須藤 ICCのセッションでは、できる限り皆さんに楽しんでいただけるよう、ポジショントークなどはなしでいきましょうと、予め釘を刺していますので。

佐藤 メッセンジャー・プラットフォームというのは、それ単体では個人のデータというのはほとんど取得していませんが、ファミリーサービスで蓄積されたデータをどのように活用していくかは、当然重要になってくると思います。

その一方で、WeChatがどの程度それを使っているかは分かりませんが、単純な広告のターゲティングのために使うという観点からは、期待するほど巨大なインパクトはないのではないかと思います。

いいマーケティングというのは、基本的にサービス主体と広告主体のように分離されているものではなくて、サービス側に練り込まれていることが重要です。

ですから、デジタルで一番いいマーケティングの例を挙げるとすると、InstagramやFacebookの「あなたの投稿に誰々がコメントしました」というプッシュ通知だと思います。

データを使って、どのようにマーケティング・メッセージを「自分ごと化」して、あのような個別化を見ずにはいられないものとするか、そのようなプッシュ通知をタップせざるを得なくするのが優れたマーケティングなはずです。

例えば、データ活用を行うからといって、単純に決済サービスのデータを見れば分かるコンビニで水を買った履歴から、「この水はどうですか?」とお勧めしたところで、それは「自分ごと化」ではありませんから、あまりそういう方向には進まないのではないかと思います。

須藤 なるほど。

高度なパーソナライゼーションの実現とは

須藤 濱野さんと目が合ってしょうがないのですが(笑)「俺に語らせろ」と言わんばかりの熱い視線を感じていますので、濱野さんお願いします。

今佐藤さんがお話した、「サービスにマーケティングが練り込まれている」というのは、いい話ですよね。

(濱野さんが手掛けた)「MUJI passport」がきっとやりたかったことなのではないでしょうか。

濱野 MUJI passportのアプリ自体も、実はあれでもまだ途中の状態なので、もう少し練り込まなければならない部分があります。

また、本セッションの前のセッションでも、「ハイパー・パーソナライゼーション」が結構話題になっていましたが、まさにそうだろうなと思っています。

一段階目の人間によるお客様へのパーソナライゼーションのシナリオについては、トライしようとしているのですが、その行き着く先というのは、最適なコミュニケーションを送るタイミングだったり、最適な情報を提供するタイミングであったりするかもしれません。また、金額、つまり値下げのタイミングさえもおそらく最適化されていかなくてはなりません。

そうであるならば、プロセスを遡る必要がありますよね。

この時にこのくらいの商品を倉庫に入れておかなくてはならない、このくらいの生産を今年は行わなくてはならないよね、というところまで、全部のプロセスを遡っていくことになります。

マーケティングでも同様で、もっと言えばこれ全体がマーケティングにつながるのですが、一見サプライチェーンの話も、パーソナライゼーションを追求すると、そこまでずっとつながっていくというように考えています。

MUJI passportというアプリに関して言えば、行動データだけでも70億件くらいのデータがあります。

このデータを活用すればいろいろできるだろうなと考えています。

外部のデータなども組み合わせて、その人に合ったメッセージだったり、コミュニケーションを実現することは、これからまさに取り組んでいくべきことだと考えて実際に進めています。

須藤 先ほどの東後さんの話に近いですよね、オンライン上で行っているパーソナライゼーションで、しかもAIが絡んでくるのではなかろうかという話でしたよね。

濱野 最初は、人間が意思入れをしてこういう商品をお勧めしたいというように始めることになりますが、それを突き詰めていくとものすごい数の戦略になっていったり、個々の顧客ごとのストーリーになっていきます。

それをどの辺りからAIに完全に任せてしまわねばならないのか、もしかしたら人間は調整の部分だけを担うような形になっていくのかなと、何となく見えてきているような感じですね。

BtoBのマーケティングの方がAIは扱いやすい

須藤 その辺りは実際にされていてどのような感じでしょうか。東後さんのところは、もう始められているんですよね。

東後 始めていると言っても、まだ社内でそれをマーケティングに活用しているというところまでは至っていませんが、ただ自社のマーケティングに関しては、BtoBのユーザーは比較的シンプルなんですよね。

BtoCほど、エモーショナルな判断をしなくて、比較的ロジカルな判断をすると思います。

須藤 理屈で判断するので、トリッキーじゃないですよね。

濱野 うちはトリッキーばかりですよ(笑)

東後 もちろんBtoBでも、たまにはトリッキーなこともありますが(笑)、これを提案したら、間違いなく興味を持つだろうという、刺さるだろうという確度が高いので、比較的AIなどが扱いやすい領域なのではないかと思います。

これがBtoCで、しかもリテールになってくると、そこに全く違うダイナミズムが働くというか、違った戦いになるのだろうと感じています。

須藤 確かに、私も区分けでいくと、BtoBですので非常によく分かるのですが、「変なこと」がそれほど起こらないんですよね。

Marketoなどを使っていても思うのですが、「まぁ、そりゃそうだねよ」ということが起きます。

オートメーションしやすいんでしすよね。

濱野 だって(toCでは)なぜこのクリップを28個もこのタイミングで買うんだ!というようなケースが結構起こるんですよ(笑)。

これ(買って)どうするんだ?と。

須藤 何かに必要だったんでしょうね!たぶんね(笑)。

濱野 読み解いていくと本当にそのような話があり、春にトートバックを30個くらい買われたお客様がいて、よくよくヒアリングしてみると、幼稚園で必要だったというような理由が背景にはあったりするのですが、予測はし辛いですよね。

逸見 でもそういう理由は店頭では見えてるんですよね。

濱野 はい、店頭では(直接お客様と会話していたりするので)見えています。

逸見 一方にデータ分析で当てていくところから仮説を立てる話と、他方で現場だけが知っている購買行動の話があり、現場では、一人のお客さんは見えているけれど、全体のデータは見えていないわけですよね。

要は、28個のクリップとか、後は修学旅行シーズンになると今でも「写ルンです」が売れるとかね。

店では当たり前のことですが、でもそれがなぜなのかはお客さんと話している現場の人しか知りません。

それが全国的に起きているかどうかは、バックでデータを吸い上げて、全店データで見ると分かってくるということですね。

須藤 面白い。

逸見 ここのつながりですね。

先ほど濱野さんがおっしゃった商品の生産管理や補充発注などのデータが得意とするところと、データだけでは推測できないところ、この両者を上手く組み合わせていくことだろうと考えています。

須藤 そういう意味では、今のお話からすると、ヒューリスティックな部分というのは、必ず残るということですよね。

▶︎編集注:ヒューリスティック(心理学)・・・人が複雑な問題解決などのために、何らかの意思決定を行うときに、暗黙のうちに用いている簡便な解法や法則のこと(wikipediaより)。ここでは直感や経験から判断する思考のことを指す。

逸見 はい。よくAIによって人間の仕事がなくなると言われ、小売業などは真っ先にその代表例として挙げられますが、私は残るだろうと思います。

濱野 とことん極めていけばAIに任せるということになるかもしれませんが、現段階ではまだちょっと無理だなという感じがしますね。

どちらかというとまだ、AIをどのように使いこなして、AIの助けを借りながら、どのように最適なコミュニケーションを行うかをマーケターがきちんと管理するということだと思います。

須藤 なるほど。

(続)

続きは こんなマーケター・セールス・ベンダーは嫌だ! をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/鈴木ファストアーベント 理恵

【編集部コメント】

FacebookやInstagramは「サービスにマーケティングが練り込まれている」とのことでしたが、たしかに思い返せば自分もFacebookで「◯◯さんがいいね!しました」と表示される記事はクリックすることが多いですね。(立花)

続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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