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「大学の研究から大きなインパクトのある事業を生み出すには?」【F17-5D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!11回シリーズ(その10)は、会場からの質問を受け付け、日本の研究者がもっと起業するようになるにはどうしたらよいか?などの問を議論しました。是非御覧ください。
ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2017年2月21〜23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 5D
大学の研究から大きなインパクトのある事業を生み出すには?
(スピーカー)
出雲 充
株式会社ユーグレナ
代表取締役社長
大西 啓介
株式会社ナビタイムジャパン
代表取締役社長 兼 CEO
中村 友哉
株式会社アクセルスペース
代表取締役
福田 真嗣
株式会社メタジェン
代表取締役社長CEO
(モデレーター)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役
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最初の記事
【新】大学の研究から事業を創る-研究開発型ベンチャーの経営者たちが徹底議論【F17-5D #1】
1つ前の記事
行動の質よりも圧倒的な量が重要(ユーグレナ出雲)【F17-5D #9】
本編
小林 残り時間が僅かとなってきまして、会場から質問を受け付けると最初に言っておきながら、全然受け付けていなくて申し訳なかったのですが、どなたかこれを聞きたい、という方はいらっしゃいますか?
はい、どうぞどうぞ。
質問者1 弁護士の伊藤と申します。
よろしくお願いします。
今、大学発ベンチャーで、どうやって起業し、ニーズに結び付けていくかという話をしていただきました。
皆さんは既に起業されていますが、そもそも例えば、研究者の方々は、研究がおもしろくて起業にあまり興味がないのではないか、裾野がもっと広がったらいいのではないか?ということがあるかと思います。
どのようにしたらその裾野を広げられるかなどの点について何かお考えがあれば教えていただきたいと思います。
研究者がもっと起業するには?
福田 よろしいですか?
やはり今おっしゃった通り、日本では研究者がベンチャーを創って実用化するということはあまり活発ではありません。
一方で、欧米などでは、研究者がバンバン会社を創っています。
ここには大きなマインドの違いというか、日本人と他の国の人々とでは、やはりその違いがあるのではないかと思います。
私自身できることは少ないと思いますが、現状でできることは、次のサイエンティストたち、つまりネクストジェネレーションたちが、「何かあいつベンチャーを作って変なことをやってるな」という後姿を見てほしいですね。
仮に我々がそれなりに自分たちの描きたい未来を実現できたならば、「あ、こういうやり方もあるんだ」というのを知ってくれて、後に続く人たちが増えてきてくれることに期待するだけかなと思っています。
後は、ちびっ子たちへの教育ですね。
彼らにこのような道もあるんだよ、ということを伝えられれば、興味を持つ人がどんどん増えてくるのではないかと思い、弊社メタジェンでは教育活動などにも取り組んでおり、腸内細菌の分野ですが、そのようなところも含めて活動しているところです。
現在のサイエンティスト、そして未来のサイエンティストに対して、こういう道もあるのだということを知ってもらいたいと思って、いつ実現するか分かりませんけれども、頑張っているところです。
小林 ありがとうございます。
とてもシンプルですよね。
成功事例がいかに出て、それに憧れるかどうかが、やはり一番大きいかなと思いますね。
私も長年、ベンチャー支援と名の付くものを、十数年やってきていますが、やはりタイミング、タイミングで、ユーグレナのような存在が登場したことが、大きな影響を与えてきたと思うんですよね。
ああいう風になりたいとか、こういう風に評価される会社になりたいというように、一社登場しただけで、明らかに変わったと思います。
そのような存在を、この会場にいらっしゃる皆さんで、どれだけ創れるか、それをどう伝えるか、ということが非常に重要なのではないかと思います。
サイエンスと事業の間の橋渡し的存在が重要
福田 もう一ついいですか?
私自身の体験談をお話しすると、私はずっと研究をやってきて、今もやっているのですが、実用化したいという思いがあっても、やはりどのように会社を創るのだとか、具体的にどのように実用化すればいいのか、ということはなかなか分からないんですよね。
確かポスドク時代に半年くらいビジネススクールに通ってみたりもしたのですが、マーケットがどのくらいあるかは分かりませんし、事業計画書など全く書けませんでした。
そのビジネススクールでは結局事業計画書も完成できず、退学したような感じだったのですが、その数年後にリバネスの丸さんという方にたまたま出会う機会がありました。
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丸 幸弘
株式会社リバネス
代表取締役CEO
1978年神奈川県横浜市生まれ。幼少期の4年間をシンガポールで過ごす。
東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。博士(農学)。
東京大学大学院在学中の2002年6月に理工系大学生・大学院生のみでリバネスを設立。日本で初めて、「最先端科学の出前実験教室」をビジネス化した。現在、大学・地域に眠る経営資源や技術を組み合せて新事業のタネを生み出す「知識製造業」を営み、世界の知を集めるインフラ「知識プラットフォーム」を通じて、200以上のプロジェクトを進行させる。2014年12月に東証一部に上場した株式会社ユーグレナの技術顧問、孤独を解消するロボットをつくる株式会社オリィ研究所、日本初の大規模遺伝子検査ビジネスを行なう株式会社ジーンクエスト、次世代風力発電機を開発する株式会社チャレナジー、腸内細菌ベンチャーの株式会社メタジェンなど、多数のベンチャー企業の立ち上げにも携わるイノベーター。
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丸さんはユーグレナさんの支援もされていたと思うのですが、そういうサポートをしてくれるようなシステムなり、そういう方との出会いがあったので、たまたま運よく実現できたというところがあります。
やはりそのような方たちの存在、つまりサイエンスから新しい事業が創られていくところの「橋渡し」が極めて重要なのではないかと、個人的には思っています。
小林 もう1問くらいいきましょうか?
では、長谷川さん、どうぞ。
大学と企業の基礎研究所の違いとは?
質問者2 東急ハンズの長谷川と申します。よろしくお願いします。
少し程度の低い質問で申し訳ないのですが、大学に残って研究するのと、企業に入って基礎研究所のようなところで研究するという選択肢があると思うのですが、どのような違いがあるのでしょうか。
どちらがいいとか、理想はこうだよねといったところで、遠くから見ている分には、単純に、企業に行ったら給料をもらいながら研究ができたり、研究成果をすぐに実用化できるビジネスの土台がありそうだったりして、安心なのではないかと。
つまり、どちらかというと企業に移った方がメリットが多そうに見えます。
大学に残ってずっと研究をされる方は、なぜ企業に行かずに大学に残ることにメリットを感じるのでしょうか。
小林 どうですか?
自分がやりたい研究ができる場所か?
大西 企業にいると、研究成果がその企業のものになってしまうということと、企業にいるとなかなか独立しようと思っても、企業と切り離せないですよね。
もう一つは、企業には企業側の意思があり、これをやれと言われたら断れないという事情もあるのではないかと思います。
大学ですと、自分の好きな研究室に入って、教授と話をすればある程度好きなことができて、ある程度できたと思えば、独立することもできると思います。
その辺りの自由さがメリットなのではないでしょうか。
小林 福田さん、いかがでしょうか?
福田 私もそのように思いますね。
やはり自分がやりたいことがどこでできるか、という選択肢だと思います。
仮に会社に入ってそこで本当に自分がやりたいことができるのであれば、非常にハッピーですし、その会社のプラットフォームを使ってもしかしたらすごく早く実用化ができるかもしれませんので、自分がやりたいことにマッチすればとてもハッピーだと思います。
ただ、多くの場合はなかなかマッチしないと思いますので、大学で基礎研究をやるとか、自らベンチャーを興すという選択肢を取ることはあるのかなと思います。
重要なポイントは、自分が一番やりたいことを、どうしたらできるか、という選択肢なのではないかと思います。
小林 中村さんは、JAXAをはじめ、宇宙開発を研究する企業や団体があると思うのですが、大学に残ってやり続けた理由はありましたか?
中村 JAXAはロケットなどの大きな衛星しか作っていなんですよ。
ですから、大学時代にやっていたこととは、宇宙という括りでは同じだけれど、やることが全く変わってしまうんですよね。
それは避けたかったというのがあります。
小林 やはり、やりたいことが大切ということですね。
研究のタイムスパンが大きく異なる
出雲 どなたもおっしゃらなかったので補足しますと、企業の研究所と大学の基礎研究でクリティカルに違うのは、タイムスパンなんですよ。
ついこの間、経団連と東大で、経団連加盟企業全社に対し、インハウス(企業内)の研究所で行っている研究のスパンを調べたところ、90%以上の研究の研究期間は3年以内でした。
例えば社長は3年、4年で交代しますが、新社長は、自分が社長をやっている間に研究所からすごくいいものが出てきて、いい新製品を出して、ヒットを飛ばしたら、やはり優れた社長だという評価になりますから、当然そういうことをしたいというインセンティブが働くので、ご想像の通り、研究期間と社長の在任期間というのは、相当程度オーバーラップすると思います。
結果として、日本では90%以上の研究所のプロジェクトの期間が3年未満になっているんですね。
例えば私どもの場合、つまりミドリムシは、1980年からずっと研究して、25年かかって、ちょうど25年目にユーグレナの大量培養技術が完成しています。
大学の基礎研究というのは、3年で成果が出るようなものは、あまり野心的でないというか、アンビシャスではないという理由で、そういったものに研究者が一生のテーマとして真剣に取り組むことは、やはりありません。
これはいい、悪いではなく、単純にタイムスパンの違いです。
ごく一部、例外もあります。
例えば日覺さん(東レ株式会社 日覺昭廣 代表取締役社長)がずっとやっていらっしゃった、東レのカーボンファイバーは例えば例外です。
これはちょうど25年前に東レの中央研究所で基礎研究からスタートして、最後20年経ったところで、ゴルフシャフトと釣り竿に使うというアプリケーションを研究者が何とか見つけたのです。
そして、ボーイング社の機体の胴体部分に使用するということで、10年間1兆円の長期契約というところまで持って行けたのですが、それもやはり25年かかっているんですよ。
今日は大企業のCEOやCTOの方がどのくらいいらっしゃるか分かりませんが、そのような話を聞くと、これはいい話を聞いたということで、長期でやれと社長が号令をかけるのですが、その社長が3年しかいなんですよ。
次の社長が、「何でこれにずっとお金を使っているのか、赤字続きだがいつ成果が出るのか」と言うと、それは25年後ですと。
もう止めろ、という話になりますよね。
ですから、単純に組織の構造と、マネジメントのインセンティブのタイムスパンというものが、大学の先生と、中央研究所と、大手企業の会社の社長では、全くスケールが異なりますので、その点は気にした方がいいのではないかと思います。
小林 よろしいでしょうか。
楽しかったお話も、ついに時間がきてしまいました。
ということで、最後に一言ずつ、まとめというか、感想でも何でも、議論を通じて学んだこと、伝えたいことを、福田さんから順に、最後に出雲さんに締めていただくということでお願いします。
(続)
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続きは 【終】「諦めなければ、助けてくれる人がいる」研究開発型ベンチャーへのエール をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/鈴木ファストアーベント 理恵
【編集部コメント】
リアルテックファンド代表、永田さんも以前「技術が本当に実用化に至るまで30年、40年潜伏していて、その技術が世に出る”浮上”のタイミングやきっかけをいかに理解していくか」が重要だとお話ししていました。企業内研究でも不確実性に対する支出と我慢のバランスが難しいですね(榎戸)
続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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