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「愛されるブランドを創る」【K17-7B】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!8回シリーズ(その4)は、ヤッホーブルーイング井手さんに、よなよなエールなどのブランドを創れるに至る試行錯誤を語っていただきました。調査の結果、よなよなエールのファンはハーレーダビッドソンのファンと似ていることが分かったそうです。是非御覧ください。
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ICCカンファレンス KYOTO 2017のプラチナ・スポンサーとして、株式会社リクルートマネジメントソリューションズ様に本セッションをサポート頂きました。
ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2017年9月5日・6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 7B
愛されるブランドを創る
Supported by 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
(スピーカー)
井手 直行
株式会社ヤッホーブルーイング
代表取締役社長
榊 淳
株式会社一休
代表取締役社長
桜井 博志
旭酒造株式会社(「獺祭」の蔵元)
会長
高島 宏平
オイシックスドット大地株式会社
代表取締役社長
(モデレーター)
井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
プリンシパル
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最初の記事
【新】愛されるブランドを創る【K17-7B #1】
1つ前の記事
【ブランド論②】“獺祭”の桜井会長が語る小手先でないブランドの創り方・守り方【K17-7B #3】
本編
井上 ありがとうございます。井手さんにお聞きしたいと思います。
桜井さんはあまりブランドを意識して創ってきた訳ではないとおっしゃいましたが、井手さんはよなよなエール等のブランドについて「ブランドとは何なのか」「そもそもブランドが必要なのか」についてどのようにお考えですか?
ブランドとは「完全に差別化されたもの」
井手 桜井さんは先ほども控え室でブランドのことを考えていなかったとおっしゃっていました。これは凄いことです。
それで日本酒の業界の中で獺祭の名を知らしめたのは本当に凄いと思います。
ブランドのために事業をやっている訳ではありませんが、ブランドを築くというのは、優位性を築くということがあります。
ブランドとは、私にとって「完全に差別化されたもの」です。差別化された、他とは全然違うものと消費者が認知・識別しているものです。
それによりロイヤルティが増して、ロイヤルティが増したことによって色々な行動をしてくれるようになります。例えば値段が高くても買う、わざわざリピートする、それを人に教えて口コミさせるとか、その辺がブランドだと私は思っています。
我々は逆にブランドを意識して20年前から「よなよなエール」を作っていましたが、残念ながら私の頭が悪かったので、全然上手くいかず、創業して8年間は赤字でした。
出所:よなよなエールHP
しかし、だんだんとブランドのことを勉強したり、なぜ弊社のブランドには売れていない時から熱狂的なファンが一部いるのかということを中央大学のビジネススクールの田中先生と一緒に調査しました。
そこで出た結果や頂いた色々なアドバイスから、熱狂的なファンがいる日本のブランドをベンチマークしてその取り組みも参考にしながらやっていきました。
そうやって段々経験値が上がっていきました。自分たちがやっていた打ち手と市場調査した時の結果やブランディングの本等を照らし合わせると、よなよなエールを愛してくれるファンが増えている理由が段々分かってきて、今はそれに乗っ取り色々なことをやっています。
「熱狂的に愛されるブランド」を目指す
井手 ファンに最終的に幸せになってもらいたいということを本気で思ってやっています。
そこからぶれると単純にお金儲けになり、いやらしくなってしまうので、我々は「よなよなエール」を飲んでくれるお客さんが幸せになってくれることを念頭に、そのためにはどうしたら良いのかということを考えています。
細かい違いではありますが、よなよなエールは「愛されるブランド」というより「熱狂的に愛されるブランド」を目指しています。100人いたら、1人から2人には「よなよなエールがなければ人生の墓場だ」というくらいに思われたいと思ってやっています。
だから好き嫌いは分かれます。ここにいらっしゃる皆様がフックしているのは異常値、ベンチャー企業の方特有の異常値です。そのような感じです。
井上 今のお話の中で、8年間赤字が続いた中で研究をしたというところで、色々な事例を研究したとおっしゃられていましたが、どのようなところを研究されて、そこから得た学びについてもう少し詳しく教えてください。
ハーレーダビッドソンを参考にブランディング
井手 約10年前に田中先生にアドバイスをもらった時に、10年前はそれほど売れていなかったのですが熱狂的なファンが何人かいらっしゃいました。
1人当たり2時間くらいのインタビューによる聞き取り調査をして、その結果を見て田中先生がおっしゃったのが、「よなよなエールのファンはハーレーダビッドソンのファンと似ている」ということでした。
ハーレーダビッドソンとはご存知だと思いますが、世界最強のブランドの1つだと言われています。ロゴマークがタトゥーにされるのは世界でもハーレーダビッドソンくらいしかないそうです。
よなよなエールのタトゥーをした人はさすがに見たことがありませんが、シールはよく見ます。
そのようなことを聞いたのでハーレーダビッドソンをベンチマークし、その結果、彼らはファンとのイベントが最大のロイヤルティの結果ということが分かりました。
僕はバイクが好きなのですが、弊社の担当者はバイクに乗らないのにブルースカイヘブンというサーキットで開催されるイベントに行ったり、用事もないのにハーレーダビッドソンのお店を見に行ったりしました。
僕もハーレーダビッドソンのお店の門を直接叩いて、ブランディングについて聞きに行きました。正面突破すると教えてくれるものです。偉い人が出てきました。嬉しいのでしょうね。これが1つの軸です。
また、市場調査した時に、よなよなエールを飲んでいる理由として、5つのベネフィットが出てきました。
1位が理想像の実現、2位が癒し、3位が自己実現、4位が仲間を作る、5位が世界観の共有、お客さんは本人も気づいていないような、こういうところにベネフィットを感じ、よなよなエールを飲んでくれているということが分かりました。
軽井沢のキャンプ場でファンイベント
井手 イベントはこの要素が全部入った内容です。今年は軽井沢のキャンプ場に1000人のファンを呼んでイベントをやりました。イベントは3年目になりますが、一番遠いところではオーストラリアから来た方がいます。
チケットは15分でソールドアウトし、良かれと思って開催したのに、来られないファンが多くクレームが来ました。
今度は10月に神宮球場を貸し切って5000人のファンイベントを開催しますので是非いらしてください。まだチケットは余っていますので。
井上 先ほどの5つの条件というところと照らし合わせて、なぜキャンプを開催されたのでしょうか?
井手 ファンイベントを開催しようと思いました。今日いらっしゃっているのはエリートの方々だと思いますが、本来の自分の姿について考えると、別の自分があったりするものです。
例えば、がむしゃらに働いている人でも、本当は自然の中でのんびりしたいとか、よなよなエールみたいな馬鹿みたいなことを本当はやってみたいとか、そのような理想像の実現みたいなものはお酒を飲んだりすると出てきたりします。
また、仲間を作るというのという点では、信じられないかもしれませんが、初めて会ったファン同士が30分後には仲良くなり肩を組んでアドレスを交換し、帰る時には次に飲む約束をしています。凄いのはそれで結婚したカップルが何組もいることです。
そのようにベネフィットと照らし合わせていきました。今ではファンイベントができてビジネスとしても成り立っていますし、ファンにベネフィットを与えるという我々の社会的目標もクリアしているので両者はハッピーだと思います。
井上 凄いですね。そのキャンプ場でよなよなエールを飲むのですね。
井手 よなよなエールを飲んで圧倒的な満足度を感じて頂けます。7段階評価の満足評価をつけて頂きますが、90数%がトップの2段階をつけてくれます。
イベントだけでも5千円くらいします。そこにキャンプ場代や交通費がかかるのに、非常に満足したと答えて頂けます。7段階の中でも「非常に満足」です。普通は「満足」くらいで止まるものです。
感動したと言われるようなコンテンツを自ら考えて、ビールを飲むだけではなくウルトラクイズやカルトクイズをやったり、キャンプファイヤーをやったりして皆で踊ったりします。
このような異様な風景を見たコンサルティング会社は「宗教集団みたいだ」とおっしゃっていました(笑)。
井上 ブランドとは何か?というところで印象的だったのは、井手さんの言葉を繰り返しますと「馬鹿みたいな」というところです。よなよなエールにどのようなイメージを持たせようという意識をされているのでしょうか。
井手 よなよなエールのブランディングのビジュアル的な要件、情緒的ベネフィット、機能的ベネフィットについて明確に定義をしています。ピラミッド型にしてきちんと整理をして、それを踏襲したのが先ほどの5つのベネフィットです。
このベネフィットを持って愛情を注いで頂いているというのを、小さな会社ながら整理をしています。
ターゲットとしている人を、愛情を込めて「知的な変わり者」と呼んでいます。その知的な変わり者たちがブランドの要素のどれかにフックして愛してくれています。
僕たちはお客さんを喜ばせようと、簡単に言うと缶の名前だったり、デザインだったり、味のコンセプトだったり、コンテンツだったりもその要件から落とし込んで決めています。
ヤッホーブルーイングはどうネーミングするのか?
井上 「インドの青鬼」等、普通はビールにつけないようなネーミングですね。
井手 そうですね。「水曜日のネコ」とかですね。水曜日は一番ビールが飲まれない日で馬鹿ではないかと言われましたが。
高島 ネーミングはどうやって決めているのですか?
井手 これもあまり言うといやらしくなってしまうのですが、市場調査をしてターゲットを決めています。
「水曜日のネコ」であれば4、5年前に作ったのですが、30歳前後のオピニオンリーダー、TSUBAKIのCMに出るような世の中のトレンドセッターをターゲットに決めました。
しかし、彼女たちがビールを飲むかというと、市場調査をすると誰も飲まないことが分かります。
大手の調査は普通そこで終わるのですが、僕たちはそこの氷山の一角、100人に聞いたら1人か2人が言う意見、もしくは明確には言わないけれども潜在的に眠っているような期待を拾って形にしました。
週の真ん中の日にふと一息つきたい時にお酒を飲む、しかしビールは飲みませんと言う人がいます。ビールは苦いから嫌だとかおじさんの飲み物だと言うイメージがありました。
それを払拭するようなお洒落な絵柄にする必要がありましたし、水曜日という言葉を使いました。
出所:ヤッホーブルーイングHP
また、熱狂的に猫が好きな人が何人かいらっしゃいました。「女性は犬ではなく猫だろう」ことを女性のプロジェクトメンバーが言い、水曜日のネコということになりました。これを全部社内でやりました。
10人中5人以上が熱狂的に好きだと言うものはもの凄くヒット
高島 それは社長が決めるのではなく、下から意見が上がってくるのですか?
井手 私がブランドリーダーなので、私が見守りながら自由な意見を言ってもらい、私がだんだんその意見を狭めていきます。
最初は社内で千個くらいネーミングの意見を出してもらいます。それを20〜30個に減らし、さらにそれを減らし、最終的にはそのターゲット層の女性にもう一度聞いて決めます。
高島 それで外すということもあるのですか。
井手 あります。誰もフックしない時などです。誰もフックしないのは危険水域ですが、10人に聞いて2人くらいが熱狂的に好きであれば可能性としてはあるもので、10人いて5人以上が熱狂的に好きだというのはもの凄くヒットします。
今ローソンさんの「僕ビール、君ビール。」という専売ビールがあります。これはPBでローソンさんのほぼ全店に置いているので是非買ってください。
出所:ヤッホーブルーイングHP
これはターゲット層に最終段階で聞いたら、8割くらいが良いと言っていたので、これは絶対ヒットすると思いました。
高島 味と名前はどちらが先ですか。
井手 途中のコンセプトを決めたらクリエイティブ部門と製造部門に枝分かれしてそれから同時並行で進めます。
最初にターゲットを決めてコンセプトを決めてその前に市場調査をします。しかしお金がないので市場調査も全部自分たちでやります。
井上 ありがとうございます。
今のお話を聞いて、改めてブランドとは何かというところをぜひ榊さんにもお聞きしてみたいです。
(続)
▶ICCパートナーズではコンテンツ編集チームメンバー(正社員&インターン)とオフィス/コミュニティマネジャーの募集をすることになりました。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸
【編集部コメント】
先日、「僕ビール、君ビール。ミッドナイト星人」ローソンで買って飲んでみました!今までにないフルーティなビールの味で凄く美味でした!(榎戸)
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