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【マインドフルネス①】瞑想は”注意の向け方”のトレーニング【F17-9E #2】

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「今、マインドフルネスが熱い」【F17-9E】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!7回シリーズ(その2)では、マインドフルネスとは何かについて春光院・川上さんに語っていただきました。メディアを通じたマインドフルネスへの理解について警鐘を鳴らします。是非御覧ください。

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ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 9E
「今、マインドフルネスが熱い」

(スピーカー)
井上 一鷹
株式会社ジンズ(当時:株式会社ジェイアイエヌ)
JINS MEME Gr 事業開発担当

川上(全龍)隆史
宗教法人 春光院
副住職

(ナビゲーター)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役

「今、マインドフルネスが熱い」の配信済み記事一覧

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最初の記事
【新】今、マインドフルネスが熱い【F17-9E #1】

本編

小林 最初に、そもそもマインドフルネスとは何か、というのをおさらいがてらお伺いしたいと思います。

川上 井上さんがおっしゃったように瞑想というものが仏教やヨガの世界、そしてキリスト教にもあり、2000年以上前から行われてきていますが、現代の科学を利用して、瞑想というものがデータとして見れるようになったというのが現代です。

私の考えからいうと、マインドフルネスとは神秘的なものを取り払った瞑想で、ある程度の脳科学や科学のサポートが入っているものという考え方です。

宗教的なものからもっと一般化されたものであるという考え方もできます。

小林 そもそも瞑想は何故始まったのでしょうか。

川上 仏教的な考えから入ると、サティパーソナという経典がありますが、集中法みたいなことが書いてあります。

どこに集中を向けることで「自分」というものが認知でき、最終的には「自分」というものがないということに気づくのが仏教です。

「自分も他もない存在で、全てはイチである」という考えを体現するための手段が瞑想です。

瞑想は、集中や注意の向け方のトレーニング

川上 そこに辿り着くには集中や注意をどこに向けるかということが重要で、結局宗教的なものから離れますが、科学的に見た時も人間の脳が処理できる情報には限界があります。

チクセントミハイというフロー研究で有名なクレアモント大学の教授がいますが、その教授の話しだと、人間の注意をバイナリーデジットに戻すと毎秒126バイト分の情報量、たったそれだけなんです。
かと言って、ここにある情報は数ギガバイトあるわけですよね。

フロー体験入門―楽しみと創造の心理学 M.チクセントミハイ (著)

▶編集注:フロー (英: Flow) とは、人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう。(Wikipedia

川上 数ギガバイトもあるけれどその一部のものにしか注意を向けられない。そして人間の経験や記憶は自分が何に注意を向けたかということによって形成されるので、それによってリアリティーが頭の中で作られます。

そのリアリティーは本当のリアリティーの一部しか見ていないわけですが、それに気づくために注意をどこに向けるか、ということをトレーニングをするのがそのサティパーソナという経典に書いてあります。

瞑想はそこからが始まりですが、どの宗教を見ても大体同じような経緯です。

注意をどこに向けるか、神や他のエネルギーに向けるというところもありますが、そこからですね。

井上 最近また流行っちゃっていますよね。

川上 流行っちゃってますね。

井上 その背景に関して僕が勝手に思っているのは、マインドフルネスの流行はアメリカの西海岸から出てきています。

今スマートフォンのようなマルチデバイスがあるが故に集中力が落ちているという情報を良く見ます。情報化社会になりすぐにググるし、すぐ情報が入ってくる、処理しなければいけないものがどんどん膨大になっています。

その中で、そうしたテクノロジーの一番最先端にいる西海岸の人が「このままでは人類やばい」という感覚を基にその真逆ってなんだろう、と考えた結果、マインドフルネスに目を向けているんです。

機械ではなく人間にもう一度目を向ける

川上 ある意味正しいと思います。

人間の過去100年はメソッドを改良することによってスピードを上げる、それによって生産性や効率を上げるという考えですよね。

メソッドを変えていこうという動きはマインドフルネスの世界だけではなく、例えばトップガン(アメリカ海軍戦闘機兵器学校)が作られた理由も似ています。

トップガンが作られたのはベトナム戦争の真っ只中で、当時、飛行機の性能もミサイルの性能も良くなってきていて、1965年から1968年の3年間におけるベトナム戦争のデータを見ていると、米軍機1機落とされるのに対して敵機である北ベトナム機を2機落としています。

しかし、1968年になるとそれが変わってしまい、米軍機9機落とされているのに対して敵機を10機落としているという状況になりました。しかも、もっとひどかったのが、空対空ミサイルを55発撃っているけど1機にも当たっていないというのが出ています。

結局、機械ばかりがどんどん進歩しても、人間というものを改善していかない限り結果がでない、ということに端を発してつくられたのがトップガンで、今はその段階に近づいていると思います。

色んなデバイスが良くなってきているけど、最終的に処理をしているのは人間なんです。「人間」というものにもう一度目を向けている、というのがマインドフルネスの動きではないかと思います。

井上 それはすごく平たい言葉で言うと、僕が小学校ぐらいの時は、漢字を覚えるやつが強かったけれど、スマホがあるとそれでは勝負がつかないので、ツールがどんどん充実してくると結局差がでるのはその瞬間に何が選べるか、という「人」になると。

だからその「知識・知恵」×「集中・マインドフル」というものに負荷が上がってきているのではないですか。

脳の処理能力から考えるとマルチタスキングは存在しない

川上 それも一理あると思いますが、まずマルチタスキングは僕は存在しないと思っています。

存在しない理由は、人間の脳はシングルプロセッサーなので一つのことにしか集中できません。

マルチタスキングとはこっちのコンピューターを見て、iPad見て、iPhoneを見て、しかもテレビまで見ているという状況ですが、脳は1つ1つにしか注意を向けられないし、注意を移す時に大量のエネルギーを使うので、結局疲れるので生産性や効率性が悪くなってしまいます。

また、脳の海馬といって記憶を司る部分は、1つのことに集中している時は機能はしていますが、マルチタスキングをやろうとしている時は機能していません。

記憶がきちんと機能しないと科学もアートも生まれない

川上 記憶の話になりますが、先程もお伝えしたとおり何に注意を向けるか、何に注意を向けないか、というのが人間の経験や記憶、ひいては自分のアイデンティティまで形成しています。

逆に言うと、マルチタスキングで注意が常に移動していて海馬が機能していないと、結局自分というものの構成ができていないという状態になります。

ギリシャ神話で、ムネモシュネという女神がいますが、彼女は記憶の神です。片や、科学やアートの神でミューズという9姉妹の神々がいますが、面白いことに、ムネモシュネが母とされています。

つまり、記憶を具現化している神が、科学やアートの母なんです。

結局人間は、記憶とルールや方式がちゃんとできない限り文化とかそういうものは多分生まれていない、というのをギリシャ神話での神々の人間関係で上手く表していると思います。それを見ると、やはり人間の記憶は非常に重要になってくることが分かります。

そして記憶とは何ぞやと考えると、結局注意を向けたもの、向けてなかったものに非常に影響をうけてくるのでそこをもう一度見直しましょう、というのがマインドフルネスの動きだと思います。

井上 感情を伴った記憶の方が定着するという話をしていらっしゃいましたが、やはりすごくプレーンな人間の機能をちゃんと戻そう、強めようということなんでしょうかね。

川上 本来の動きはそうですよね。

井上 1つ1つの事象に対して、同じ経験をしていてもマインドフルネスをしている人であればそれに対して深い感情を持って紐付けられるので。

川上 感情もそうですし、恐らく細かいところまでもっと強い記憶になると思います。

海馬の部分がそれなりに活性化されるので、長期的な記憶にもなりやすいし、強い印象を残しやすいと思います。

井上 しかもそれは記憶力のためではなく、記憶力を基にしたアートや科学のためですよね。

川上 人間活動全部ですよね。

そこからは英語でいう「鶏が先か卵が先か」という議論と一緒で、自分のアイデンティティーが形成されると、そのアイデンティティーによってどこに注意を向けるかが変わってきます。

注意力によって人間のアイデンティティーが形成され、しかもそこからどこに注意を向けるかということが形成されるので、注意力は非常に重要です。

マインドフルネスをメディアは誤解している!

川上 その理論が非常に重要なのですが、最近マインドフルネスで危惧しているのは、即効性や効率性や生産性が上がるとか、15分やったからいきなり集中力があがる、リラックスする等メディアや色んなところで言われていることです。

アメリカでは、そんな現状を「マックマインドフルネス」と言うんです。

マクドナルドの製品は全部マックがつきますね。そんな感じでみんな手軽に身につくようなものになっている、といういい方をされています。

それに対して一部の脳科学者や心理学者、マインドフルネスを研究している科学者、そして哲学者や宗教学者もかなり危惧していますが、即効性や、「これは絶対いいんだ」という言い方をしているのが非常におかしいですよね。

世の中に絶対いいものはまず存在しません。一時的に良い悪いは判断できますが、長期的に見た時のデータはマインドフルネスではゼロです。

それを「絶対にいい」と言っているのはまず間違っています。

やっていいけれどセラピスト等スペシャリストの監視下でやることが必要な人も絶対いるにも関わらず、一概に「これはいいんだ、リラックスするんだ」とガンガン言っているのはかなり危険で、新興宗教と変わらないと思います。

科学を確実に無視したアプローチで、それを私はかなり危惧しています。

(続)

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続きは 【マインドフルネス②】リラックスしていないと人間はネガティブになる をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/城山 ゆかり/横井 一隆/立花 美幸

【編集部コメント】

自分が注意を向けたものによって、私たちのアイデンティティーは形成され、その結果注意が向くものが変わる、という非常に興味深いお話でした。「アイデンティティは過去の人生で決まる」との話はよく聞きますが、「人生」というあやふやな言葉をより明確にすると、もしくは分解すると「何に注意を向けたか」となるのですね。(横井)

続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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