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資金が限られるスタートアップが取るべき特許戦略とは?【F17-8C #6】

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「技術シーズの事業化と知財戦略を徹底議論」【F17-8C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!8回シリーズ(その6)は、事業のコアを守るための知財戦略について議論しました。特許化のコツ、特許をとるべきでないケースなどの話は必見です。是非御覧ください。

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ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 8C
イノベーションを生み出せ!技術シーズの事業化と知財戦略を徹底議論

(スピーカー)

井上 一鷹
株式会社ジンズ
JINS MEME Gr 事業開発担当

鮫島 正洋
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
代表パートナー弁護士・弁理士

千葉 功太郎
投資家・慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

丸 幸弘
株式会社 リバネス
代表取締役CEO

(モデレーター)

水島 淳
西村あさひ法律事務所
パートナー

「技術シーズの事業化と知財戦略を徹底議論」の配信済み記事一覧

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最初の記事
【新】技術シーズの事業化と知財戦略を徹底議論!【F17-8C #1】

1つ前の記事
ゼロから何かを生み出せる自信があるベンチャーは借入で資金を集めて来い(リバネス丸)【F17-8C #5】

本編

水島 ここまで、技術シーズから事業シーズ、事業シーズから事業へという話をお話したんですけど、先ほど千葉さんからお話のあった、事業のコアをどう守るのか、特許以外あるのかという話です。

色々ありますよね。

ビジネスをメガビジネスにするというところは、特許だけではなくて商流を抑えにいくとか、色々戦略があると思うんですけど、その中でも特に技術シーズであれば知財戦略が非常に重要になってきます。

そこを専門の鮫島さんにお話しいただいて、その後皆さんからの悩みも含めて議論できればと思います。

鮫島 首尾よく技術を事業化して売上が出ましたというケースを想定しましょう。

売上が出ただけではなくて、ヒット商品になって年々すごい売上になっているという時に必ず出るものとは何でしょう。

内田・鮫島法律事務所 代表パートナー弁護士・弁理士 鮫島 正洋氏

それは後発品・模倣品です。

後発品・模倣品が出るとどうなるかと言うと、価格競争になって利益率が低下して結局投資回収ができないという事態に陥りがちです。

そういう事態を防止する、1つの手段が特許という位置付けです。

特許を取ったら売上が上がる、という命題は間違いで、売上が上がってから特許、が正しいのです。

ただし、時系列的には物が売れてから特許は出せないので、物を売り出す前から取り組んでやらなければいけない。

ここに特許の難しさがあります。

売上もないのに特許の費用がかかるのは、特にベンチャーのような資力の乏しい事業主体には難しいところなんですね。

知的財産戦略、はじめの一歩は?

水島 井上さんは何か悩んでいるとか注意していることはありますか。

井上 何を悩めば良いかわからないぐらいのところで止まっています。一番初め「JINS MEME」をやった時には、それこそ知財を20件何か出そうという話になってしまうんです。

20件だったら国内だけなら1,000万円ぐらいで済むから、とりあえずその1,000万円の予算の中でどういう知財が出せるか、優先順位の高いところからやろうというわけです。

もし他の領域で同じことを言っている人がいたら、「考えが浅いな~」と思うだろうというレベルなのですけれど、どのようにすべきかわからなすぎて、そうやってしまっています。

何から間違っていますでしょうか。

水島 良いですね、公開相談会。

西村あさひ法律事務所 パートナー 水島 淳氏

鮫島 実はそういう方大勢いらっしゃいます。井上さんだけではありませんので、まずはご安心ください。

我々のサービス紹介みたいになってしまって恐縮なのですけれど、お答えします。

「発明発掘」と我々は言うんですけど、どこを特許として切り出すのが良いのか、という支援サービスをやっています。

いわばブレストを一緒にしていくサービスなのですが、その際に大事なのはブレストのメンバーです。技術者だけではダメなんです。それだとシーズだけになってしまうので。

マーケット側、新規事業開発の人とか営業の人とかを含めた混成チームを作って、将来的にきっとユーザーはこういう機能を欲しがるよねというブレストを徹底的にやっていきます。

そのブレストの結果、面白い!と参加者が感じたアイディアについてどんどん特許を出していくということをやるのです。

最近はベンチャーさんだけではなくて、錚錚(そうそう)たる大企業からもご依頼が来ています。彼らは知財部もあるのになぜ弊所に依頼するかというと、今までものの特許は知財部で散々出してきたけど、IoT系やビジネスモデルものはやったことありませんという趣旨なんです。

資金が限られるスタートアップの特許戦略

水島 従来的に企業によっては件数重視の特許戦略というのがありますが、それは良くないとも言われています。

その中で何をしていくのかというのは、鮫島さんがおっしゃったようなことがあります。

マーケッターといいますか、事業開発側の人がアイディアを入れていかないと、どこが事業のボトルネックになるかわからなくて、ここを狙おうみたいな話が出てこないというのがあります。

千葉さんはそのあたりはどういう思考でやってらっしゃいますか。

千葉 僕自身は自分が経営に携わった会社は、最初から弁護士や弁理士をエンジニアと同じぐらい初期から入れてしっかりとやっていますが、もしかしたら心の保険かもしれないですよね。

投資家 千葉 功太郎氏

そこにお金をかけたところで将来儲かるわけでもないしコストは出て行くし、時間的なパワーも取られて、ただでさえ忙しいスタートアップ時期にそんなことやっている場合ではない、けれどもやらなくてはいけないという意思で自分の会社はやってきています。

それぐらい意思があればできると思うのですが、普通は無理だと思います。意思もなければ優先順位を高くできないし、何よりお金がありません。

鮫島さんに相談がありまして。

普通のベンチャーだと、特許20個出そうとしてもそんなにお金がないし、1,000万円のシード資金をエンジェル投資家からかき集めて、そのうちの半分を先生にお渡ししようとしても無理じゃないですか。

どうしたら良いのでしょうか。

1件の特許で100件分のクオリティを出す

鮫島 まずは誤解ないように言っておくと、うちはそんなに高くないです。

(会場笑)

ベンチャー、特にスタートアップはすごい技術を開発して、大企業だったら100件出すなと思うものについて、1、2件しか出せないんです。

何が必要かというと、100件分のクオリティを1、2件で実現しなくてはいけない。これを実現するためには、マーケットとシーズをどのように最適融合させるかということと、実務的な話になりますが特許明細書のクオリティコントロールなんです。

前者は我々の専門ではないんだけれども、後者のクオリティコントロールは自信を持って提供するサービスの1つになっています。

千葉 スキル的なところでお聞きしたいのが、マーケティングの人たちから後でこうなると言われ、あと半年後、1年後事業が伸びてきた時に見えることもあって、特許はタイミングによって付け足していくものだと僕は思っているんです。

そうした時に、コアの軸となる最初の1本目、2本目の幹みたいな特許の作り方、考え方のコツはありますか。

後で継ぎ足しができる、戦えるというような。

鮫島 10項目ぐらいあるんですけど、それをここで言うと日が暮れてしまうので、後でごく低料金でコソっと教えます。

(会場笑)

技術を論文ベースで特許化してはいけない

 技術者で一番間違えているのは、論文を書いて、その論文のまま特許を出してしまうことです。

それではすごく小さい範囲しか取れない。特許はできるだけ広く取るというのが基本ですよね。

広く取るというのは結構ノウハウがあって、そういう時に弁理士、弁護士とディスカッションをしていかないといけません。

それからもう1つ、僕らがいつもやるのは特許を買って来ることです。

例えば、眼鏡だったら、先に眼鏡の周辺特許を全部調べる。たくさん出ていたら、そこは競合が多い、皆が同じことを考えているということなので、もう少し違う、抜け穴の部分を自分たちで押さえようとなります。

どれだけ特許をマップ化できるか、企業の中にそういうファンクションを担うところが出てくると良い。

僕らリバネスは不思議な会社で、特許を買っているんです。

(中央)リバネス 代表取締役CEO 丸 幸弘氏

水島 特許のマッピングというのはごく正当なフェアな手段で、トップ企業も採っている手法ですし、そこに不断の努力をするというのが1つ大事な作業ですよね。

 ベンチャーの戦略としては、たくさん特許が出ているところに突っ込んでいけるほど体力はないんです。

ポイントはできるだけ…

鮫島 できるだけ特許が少ないところ。

 その通り。これは鮫島さんに教えてもらいました。

鮫島 なぜ少ないところで取るかと言うと、特許がほとんど出されていなれば広い特許が取れますよね。

100件分の特許を1つの特許で取れる可能性があるわけです。

ベンチャー企業のマーケティングというのは、ある程度の規模のマーケットもなければいけないけれども、すでに出願されている特許の件数が少ない、というもう1つの軸を加えた2軸で見ています。

特許化しないという戦略

 逆説的に、僕が何もない砂漠のようなところにポンと特許を出したとします。

すると、「次はここ来るな」っていうにおいを嗅いだ人たちがフワーッと集まってきますよね。

だから、この領域において、無限にノウハウとして持っておける場所があるならば、敢えて特許を出さない。

ピンポイントでは出さず、その周辺に散らばせるという方法があるんですね。

たとえばコカコーラさんとかケンタッキーさんとかは、一番王道のところをレシピという形で(特許ではなく)ノウハウ化している。

特許を出すとバレてしまうから。

そういうふうに、ここは絶対にいけるというところだけは逆にノウハウで押さえるという方法論もあります。

千葉 そういうのはリバースエンジニアリングができない自信があるから?

 おっしゃる通りです。

水島 千葉さんが先ほどおっしゃっていた特許にしないコアという話に関して、まず1つは特許を出したことによるシグナリングがあるということと、もう1つ、お客さんによく言うのは、誰にも真似できないものというのは特許化してはいけないという話なんです。

誰かが真似できそうだから特許で蓋を埋めるのですが、そもそも特許を出すと晒されますし、有効期限もあります。

誰にも真似できないレシピは、きちんと隠している限りは永遠に持てます。

だから本当にコアなところを中で持っているというのは、特許の有効期間を超えた長期的な事業の根幹になりうるのです。

 だからラボが必要なんです。

天井10mの研究所に入らないと見えない何かがあるという隠れたバリューです。

特許がないと投資できないという投資家はいなくなれば良いと思っていて、マッドサイエンティストがなぜ上手くいくのかというのはそういうことで、4mのロボット(※)を作る彼らはマッドなんです。

▶編集注:ICCにも登壇している株式会社人機一体は4mのロボットを作ろうとしています。

その空間でしか見えないことが存在しうるということなんです。

鮫島 我々の立場からすると「特許ないの?」と言う投資家がいなくなると困るのですが(笑)

(会場笑)

ただ特許とノウハウはどちらも参入障壁なので、それをベストミックスするのが一番です。しかし、なかなかベストミックスの仕方がわからないという相談もすごく多いです。

 そういう時はリバネスと鮫島先生両方に相談に来ると破格の値段でできます。

(会場笑)

(続)

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続きは Amazonのワンクリック特許のような優れたビジネスモデル特許取得のコツ【F17-8C #7】 を配信予定です。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸

【編集部コメント】

誰にも真似できないものというのは特許化してはいけないというのは大変納得させられたのですが、それを見極める人材が必要とされそうですね。(立花)

続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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