ソーシャル・イノベーションに必要な要素は利他を超えた「利世界」や「利未来」(NOSIGNER 太刀川) – INDUSTRY CO-CREATION(ICC)

ソーシャル・イノベーションに必要な要素は利他を超えた「利世界」や「利未来」(NOSIGNER 太刀川)

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「ソーシャル・イノベーションのインパクト創出」の(その5/最終)はソーシャル・イノベーションに必要な要素は利他を超えた「利世界」や「利未来」であるなど、ソーシャル・イノベーション実現に向けた議論を行ないました。是非ご覧ください。

登壇者情報
2016年3月24日開催
ICCカンファレンス TOKYO 2016
Session 1C
「ソーシャル・イノベーションのインパクト創出」
(スピーカー)
太刀川 瑛弼  NOSIGNER株式会社 代表取締役
前野 隆司   慶應義塾大学 教授
米良 はるか  READYFOR株式会社 代表取締役 CEO
(モデレーター)
西村 勇哉   NPO法人ミラツク 代表理事

その1はこちらをご覧ください:ソーシャル・イノベーションのインパクト創出を実現するには?
その2はこちらをご覧ください:「郵便」はソーシャル・イノベーションの代表事例(ミラツク西村)
その3はこちらをご覧ください:指数関数的なスケーリングを実現するソーシャル・デザイン(NOSIGNER 太刀川)
その4はこちらをご覧ください:利己的な欲求と利他的な欲求の連鎖を可視化し、社会の仕組みをデザインする(慶應義塾大学 前野)


西村 なるほど。

少し会場の方のご質問もお聞きしてみたいのですが、よろしいでしょうか。

ここまで色々とお話をして頂きましたが、まだ議論されていない点や、もう少し踏み込んで聞いてみたい点等あれば伺いたいと思います。

何かございませんか?結構手が上がりましたね。順番にいきましょう。先に質問をとってしまおうと思ったので、お願いします。

質問者1 NPO法人Class for Everyone(クラスフォーエブリワン)代表の、高濱と申します。

私はもともと楽天という会社でシステムエンジニアをしていましたので、インターネット業界のスピード感についてはまさに内側から経験しています。

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最近、私が思う世の中の課題というのは、インターネット業界のスピード感というものが我々、一般人にも求められているということです。

新しいサービス、新しい機器が繰り出されるスピードに、ユーザー側が追いついて適応しなければならない状況です。

ソーシャル・イノベーションのスピードも、どんどん速くなっています。

要するに、例えば、もともと時速30キロで走っていた地球という名の自動車が、時速200キロくらいになって、それについていけない人たちが沢山いるんです。

そういう人たちをどう幸せにできるのか…。

ここに集まっている人たちも含めてですが、皆さん学歴も合って頭がよいと思うんですね。

でも、私の住んでいる海外のスラム街や、途上国でも日本でもそうなのですが、皆がそういう訳ではありません。

頭のよい人たちだけがどんどん幸せを求めていって、それに乗り遅れた人たちをどうそこにまた乗せるかとか、そうではない所を汲み取るかというところが、ソーシャル・イノベーションではないかなと思うのです。

皆さんにとってのソーシャル・イノベーションとは、そもそも普通のイノベーションとどう違って捉えられているのでしょうか。

定義のようなものを頂きたいなと思っています。

質問者2 Paypalの◯◯です。

私は2つほどお聞きしたいなと思っています。

米良さんが仰っていたように、結局 ソーシャル(社会的事業)はボランディアではないので、スケーリングしようとすると、事業価値を作ることがすごく重要だなとは思うんです。

その手段の1つとして、やはり資本というのがあると思うんですよね。

米良さんはスピードを速めたいと仰っていましたが、手段としての資本のルールや、資本を入れること自体についてどう見ておられるかが、お聞きしたいです。

西村 ここで一旦登壇者に返しますね。

ソーシャル・イノベーションについてどう考えていらっしゃるのかということと、資本を入れるということと、それ以外に何があるのかという、3つのご質問を頂きました。

では、どなたからでも結構ですのでご回答をお願いします。

ソーシャル・イノベーションに必要な要素は利他を超えた「利世界」や「利未来」

太刀川 ソーシャル・イノベーションのお話をさせていただきますね。

事業においては、企業がどういう風に利益を出したいのかということと、ユーザーがどういう風に受け取るのかという利己・利他の側面がある訳ですが、経済活動においても昔からそうだったんですよ。

けれども、問題が起こるのは、綺麗な野菜を買いたい人に綺麗な野菜を届けるため、結果的に農薬を使いますということになるからです。

健康には直ちに被害はありません、でもどこに被害が出ているのかは分かりません、と言って無視してしまうのが一番効率がよい訳ですよね。

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そうすると、モンサントのような会社が大規模な投資を受けて、超巨大企業になっていく訳です。

これは利己・利他を満たしているけれども、大きな意味での利他は満たしていないので、ソーシャルとは呼ばれない。むしろ逆です。

ソーシャル(社会的事業)のムーブメントというのは、そんな風に、どこか私たちが知っているけれども目を瞑ってきたものに対してのカウンターなんですよね。

日本には「三方良し」という言葉があって、売り手と書いてがともに満足し、また社会貢献もできるのがよいという、近江商人の心得を言った言葉があります。

利己・利他だけではなくて、「利世界」、「利未来」みたいなものがあって、要するに、利他であろうともやはり不誠実なことはやってはいけないということです。

それを世界が徹底できなかったから失敗しました、というのが現状だと思うんですよ。

それは、資本においてもそうだし、市場においてもそうだと思うんです。

ですから、ソーシャル・イノベーションに必要な要素は、利他を超えた利世界や、「利未来」のようなものがあるかどうかだと思っています。

でも、私はこれは当然のことだと思っていて、わざわざソーシャル・イノベーションだからと特別に論じる必要もないような話だと思っています。

それがないと、サスティナブル(持続可能)にならないのは、当然のことだと思います。

ですから、あらゆる事業がそうなる可能性があるし、そろそろそうならないといけないよということを考えています。

先程前野先生が速いと仰っていましたが、実はかなり遅いんです。70年代から「成長の限界」は言われていて、今頃になってようやく皆が危機感を感じるようになりましたよね。

ソーシャル・イノベーションを実現するにはスケールアウトし、インフラになること

ソーシャル・イノベーションを定義するにあたっての、もう1つの大切な要素は、インフラだと思います。

よい形で共感が集まったプロジェクトがソーシャル・イノベーションかというと、実はそうでもないかなと思っています。

その仕組みがスケールアウトすることも重要です。

例えば、「和える」を真似して、伝統産業のベビー・キッズ領域に100社興るようなことになれば、これは立派なスケールアウトです。インフラになり始めており、とてもよいことだと思うんです。

まだそうはなっていないけれども、「和える」もソーシャル・イノベーション種の1つなんですよね。

インフラ化するときには、例えば、漆器を作っている産地が沢山ありますという風になっているべきで、そういうことなのかなと。

「利世界」、「利未来」を志向しているインフラが作れたら、それが理想的なソーシャル・イノベーションに繋がるというのが私の考えです。

クラウドファンディングによって社会課題の解決を後押しする

米良 私は、資本の話をさせて頂きたいと思います。

フローレンスさん(認定NPO法人フローレンス)が、虐待にさらされるかもしれない赤ちゃんの里親制度(「赤ちゃん縁組」)を事業化する資金として、READYFORのクラウドファンディングで約3,000万円集められたことがありました。

「赤ちゃん縁組」事業のクラウドファンディング (出所:READYFORのWebサイト https://readyfor.jp/projects/akachan-engumi )

「赤ちゃん縁組」事業のクラウドファンディング
(出所:READYFORのWebサイト
https://readyfor.jp/projects/akachan-engumi )

1,000人を超える支援で8日間くらいで目標達成された時には、READYFORがあってよかったなと思われたと思います。

集められた資金は、事業の立ち上げ費用と2年間のパイロット運営に充てられ、現在では里親が縁組費用を負担する仕組みになっています。

縁組では、里親と子どもとがその時点でマッチングされたと思っても、人と人の相性であるし、里親になる側も自分が産んだ子どもではないので、例えば3年後にどうなっているかは分からないじゃないですか。

そこで、フローレンスさんの事業では、ゆっくりと慎重なマッチングと、きめ細かな養育フォローをされています。

数千万円の融資や投資をお願いするのはなかなか難しいことですが、このように、教育や人命に関する社会問題の解決になりそうで、事業モデルがある程度見えているものには、まとまった支援が集まりますね。

フローレンスさんの事業のスタート地点にREADYFORとして関われて、本当によかったなと思っています。

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私たちの事業もそうですが、社会問題を本当に解決して大きくなっていきたいと思うと、やはり問題の経過を見たり、自分たちのやっていることの善し悪しを見極めながらやっていかなければならないという点で、資本は絶対に必要になってきます。

けれども、投資家が期待されている速さにきちんと追いついてパフォーマンス(リターン)を出せるかというとそうとは限らないので、先程仰っていたようなソーシャル・インパクト・ボンド(Social Impact Bond)のような感じに近いかもしれませんが、そういった投資家の方に長期的に支援をしていただけたら結構見えてくるのではないかと思います。

だからといって数十年見て下さいという訳ではなくて、しっかりと事業計画を描いた上で、それがこれまでのIT企業やインターネット企業とは時間の捉え方という点で違いますよということなのかなと思います。

ですから、資金提供する側と、ソーシャル・インパクトを起したいという側とが一緒に話し合いながら、よい投資ファンドを作ることができれば、もっともっと加速していくのではないかなと思っています。

前野 お金の話は苦手なので、利己・利他と、スピードの話をさせて頂きますね。

太刀川さんに少し誤解されているようなので説明しますけれど、速くなってきているというのは、以前よりも速くなってきているということであって、これで十分だとは思っていません。

遅すぎて、当然、もっと何とかしたいですよね。それから、利己と利他についても、本当は利己・利他という言葉は好きではないんですよ。

でも分けないと分からないから、利己・利他と言っているのです。私の言う利他にはもちろん、世界のための利他や、未来のための利他が含まれているのですが。

そもそも、利己と利他という言葉の始まりは、西洋近代的な個人主義的世界観からですよね。

我々日本人というのは、もともと東洋という集団主義的な、利他と言うまでもなく皆で平和で幸せな世界を目指すような世界観と、近代的世界観による教育を受けたために、自分できちんとお金を儲けて自立しましょうという個人主義的な世界観の真っ只中で股裂き状態になっているようなところがあります。

私は、本当のところを言うと、ソーシャル・イノベーションよりも「幸せな世界」のほうに興味があるんですよ。

戦争や貧困がなく、皆が幸せな世界を実現することは実は簡単で、皆が助け合い、デザインし合い、許し合って生きていけばよいだけなんですよね。

それができていないから、真反対の世界になっている。

戦わざるを得ず、貧困もあって、地球はどんどんダメになっていく。

皆でよい世界を創るには、本当は全体的ソーシャル・イノベーションを興さなければなりません。

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皆さんが仰っている通り、本来全ての仕事、全てのものがソーシャル・イノベーションであって、目指す方向、つまり皆が幸せで平和な世界へと全体的に加速していくことが必要です。

それなのに、そう(理想の世界)ではない側というのが大きくなっていっています。

私が一生をかけてやりたい課題は、大きな世界デザインに対して、皆がどう協力して、こっちの真っ暗な世界から移っていくかということですので、そこは誤解のなきようお願いします。

太刀川 もちろんです。

西村 先程、終了10分前という合図が出ていたので、恐らく終了予定時刻の5分前くらいになっているはずです。

太刀川 そうですか、あっという間ですね。

西村 それでは、最後に皆さんから一言ずつお願いします。

太刀川 そう言われると、何だか考えてしまいますね。本当だ、5分前ですね。

利他の話に絡んでですが、利他もショートタームのものと、ロングタームのものがあるんです。

私たちの想像力は限定されているので、想像できる範囲が満たされると満たされたことになるのですが、それがその先どうなるかは分からないし、それを誰の責任にすることもできないから、そこはもうよいだろうということになっている訳ですよ。

要するに、あらゆる領域が近視眼的な現在を持っていて、それをなるべく遠くまで俯瞰する努力はできると思っています。

今だと極端な話、近視眼のままでもOKという世界ですからね。

例えば、是非皆さんにも考えて頂きたいんですけれど、先程インフラ化がソーシャル・イノベーションになるという話がありましたが、金融の世界で、将来きちんと価値を提供するところしか上場ができないという条件がつけば、状況ははるかに良くなるだろうと思うんです。

例えばですよ。だって、そこが経済を代表してお金を集めていく訳じゃないですか。

残念ながら、そういう仕組みというのは、今は回っていない訳ですよ。

だから、モンサントでもよい訳ですよね。

要するに近視眼的にはOK、長距離的に見るとダメでもOKな訳じゃないですか。

それではいけないので、そこをインフラとしてどういう風に仕組み化していくのかということが問われるなと思っています。

そこにデザインがどう関われるかは私にとっても未知数です。

そしてやはり、目の前にあるもの1つ1つを少しずつでも良くしていくしかないのかなとは思います。

先程のツイートが大きくなりましたという話ですけれど、他の人とは少し違うけれども少しよいはずだという提案、例えば切手の本を書いてみるとか、そういうことをしてみるということなんじゃないのかなと思います。

仮説を小さく出していくというトライを続けているうちに、その仮説の中で成長するものと成長しないものとが出てきて淘汰されていくので、とにかく仮説を沢山出していくというのが、遠回りのようで近道なのかなと考えています。

いつも大規模にできる訳ではなくて、やはりノックをしながら段々膨れていき、ノックをしながら段々パンチ力が上がっていくような感じだと思います。

後で是非またお話しましょう。ありがとうございました。

米良 ありがとうございました。

普段、私はクラウドファンディングの事業を通して、色々な人たちがチャレンジするような世の中を作りたいと言っています。

先程会場でお話をお伺いしたら、大企業の方やベンチャーキャピタリストの方もおられて、世の中にとって価値のある企業を育てていきたいという視点の方々に沢山お会いしました。

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でも、先程もお話にあったように、相互理解がまだまだ薄いなと思っています。

そのせいで、ソーシャル(社会的事業)がただの社会貢献のようになってしまい、資金がつかなくて、可能性のあるものでも、産業へと引き上げられずに終わってしまうんです。

もしくはメディアで祭り上げられて終わてしまうような感じになってしまうのは、やはりすごくもったいないなと思っています。

お互いに歩み寄り、しっかりと産業を創っていくことが大事ですよね。

ですので、我々READYFORは、資金調達が必要なときに、皆さんから想起される事業になっていきたいと思っています。

そして、我々のプラットフォームから生まれるもののインパクトというものは、今の資本市場の中では、少し長いタームで見ないといけないものかもしれません。

私たちは、そういったものをしっかりと発信し、皆さんとコラボレーションしながら、一般消費者が「いいね、そういう企業」というものを資金面で支援していけるような環境を作っていきたいと思っています。

ありがとうございました。

前野 皆さん、ソーシャル・イノベーションを興していますかね。

3人はまさにキラ星のように、リーダーとして、できることから非常に大きな分かりやすい形で取り組んでいらっしゃいます。

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私は大学からの視点で、ソーシャル・イノベーションの最終理想形態みたいなものが何で、皆が何を目指しているのか、という大きい所を理解しようとしています。

ただ、皆が壮大なことばかり言っていても仕方がないので、皆のやり易いクリアなところからやっていく人もいるし、私のように、革命ではないけれど、全体的な大きな流れを作り出していこうとする者もいる。

このソーシャル・イノベーションのスケーリングについて、今までそういう風に考えたことはなかったけれど、今日はすごくよい事例からヒントをもらいながら、この動きがまだ少し小さくて遅いかもしれないので、ぐーっと速めることを皆と一緒にやりたいなと思いました。

皆さん、是非、本当にこの間違った世界を早く止めるために、皆で少しずつ頑張ってやりましょう。

西村 ありがとうございます。

今日色々とお話を伺って、私が最後に思ったことを、1つだけ加えさせて頂きたいと思います。

私たちがやっていることというのは、企業の方がよいことをしたいと言ったときに、そのよいことというのが分からないから、それを調べに行って、皆の話を聞きに行って、すごく息の長い話もあれば、すごくショートな話も、全部織り交ぜながら、こういうことがよいことじゃないですか、ということを探してくるリサーチャーです。

速くなりたいということに対しては、こうすれば速くなれるということを組み込むこともできるんだろうなと少し思いました。

つまり、よいことを組み込んで下さいということも言っているのですが、こうなったら速くできるんですよということも、多分組み込める。

けれども、組み込む際には「バチン」と合わせると大体反発し合うので、上手くいかないんですよね。

だから、組み込むために少し解釈をし直してあげるとか、少し紐解き直して、もう1回素材に戻してあげるようなことをしないと、組み込むことってできないんです。

どうすれば、産業というところに対して、社会化を組み込めるかというのもありますが、逆に産業化というところで学んだことを組み込むこともできるんだろうなというのが、今日全体的に思ったことです。

いうことで、このセッション「ソーシャル・イノベーションのインパクト創出」については、ここで終わりにしたいと思います。

皆さん、ありがとうございました。

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(終)

編集チーム:石川 翔太/小林 雅/Froese 祥子

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