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5. 敵を作らないリーダーシップは可能なのか?

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「最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?(シーズン2)」7回シリーズ(その5)は、モデレーターの琴坂さんからの「全員に愛されるリーダーは実現可能なのか?」という問いをきっかけに、敵を作らないリーダーシップの要件を会場と一緒に考えます。その答えとは?ぜひご覧ください。

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ICCサミット KYOTO 2018 第一回プレイベント・スポンサーとして、日本アイ・ビー・エム株式会社様に本セッションをサポート頂きました。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18-21日 福岡市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2018年6月26日開催
ICCサミット KYOTO 2018 第一回プレ・イベント
パネルディスカッション
最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?(シーズン2)
Supported by 日本アイ・ビー・エム

(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者

岡島 悦子
株式会社プロノバ
代表取締役社長

中竹 竜二
(公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター /
株式会社TEAMBOX 代表取締役

渡邉 康太郎
Takram
マネージングパートナー / コンテクストデザイナー

(モデレーター)
琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策学部)

「最高の成果を生み出すリーダーシップとチームマネジメントとは何か?(シーズン2)」の配信済み記事一覧

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最初の記事
1.「ドラえもん」にリーダーはいるのか? 多様性が求められる時代のリーダーシップを考える

1つ前の記事
4. 優れたラグビー指導者が「本番よりも高負荷の練習」をさせる理由

本編


岡島 先ほど中竹さんが言っていた、フィロソフィーやビジョンというテーマに少しだけ戻りたいと思います。

これは石川さんの得意分野かもしれませんが、最近、「幸せとは何か?」という話を色々な職業の人たちとよくしています。

ビジョンで会社を引っ張っていくことはあっても、長期で考えた時、お互い「幸せ」の感覚が近いものでなければ、同じ船には乗れないと思うのです。

でも、この「幸せ」の価値観は、ものすごく色々ありますよね。

それから、これは残念な話ではありますが、「仮想敵をおけば幸せになる」人や、「相対的に考えれば幸せだと思う」人がいます。

そうなると、リーダーとしては束ねにくくなりますよね。

石川さん、こういう時はどうすればいいと思いますか?

「幸せ」という価値観の違いとリーダーシップ

石川 自分にとっての幸せや豊かさは個人個人で違うので、最終的には、「みんな違って、みんないい」の世界にしかならないかもしれませんね。

琴坂 それがまさに難しさです。

慶應義塾大学 准教授(SFC・総合政策学部)琴坂 将広 氏

過去の日本社会は、「売上を拡大して、会社を大きくして、家を建てて、住宅ローンを返して…」という、同じような価値観を持つ同質的な社会でした。

同質的な社会におけるリーダーシップと、現代社会のクリエイティビティあふれる活動におけるリーダーシップは、全然違うものが必要とされますよね。

別々のファンクションを束ねるには、全員が合意できる「幸せ」という要素が必要になるわけですが、故に、曖昧なものに収束してしまうという傾向があります。

誰もが合意できる目標にするのか、ユニークだけれど敵も作ってしまう目標にするのか。

岡島 メンバーがいずれ卒業していく組織になるかどうか、によっても変わってきますね。

スポーツの場合、卒業していくことが多いですよね。

そのサイクルも早いので、フィロソフィーを定めやすいかなと思うのですが、いかがでしょうか?

「具体的な行動指針」がチームを強くする

中竹 例えば伝統校ではフィロソフィーはすでに固まっていますね、それに憧れて入ってくる学生もいます。

(公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター / 株式会社TEAMBOX 代表取締役 中竹 竜二 氏

ですが、新しいコーチが就任して、それを覆すこともあります。

これも研究されていることではありますが、フィロソフィーやビジョンを作る際、最終的に大事なのは「ビヘイビア・スタンダード」とされています。

岡島 「行動指針」のようなものですよね?

中竹 そうです。

石川 宗教にも必ず、行動指針がありますよね。

「これをせよ、これをすべからず」という。

中竹 最近の選手はスマホ世代なのもあり、選手がイヤホンをしながらロッカールームに入ってくるのを見て、あるヘッドコーチは「このチームは勝てない」と思ったらしいです。

そこでコーチは、「今シーズン勝つために、入って来る時はイヤホンは外して、全員とハイタッチしようよ、全員と話そうよ」という指針を出しました。

そして、「今日良い練習をしようよ、今日チャンピオンのように練習をしようよ」という標語を掲げて、結果、実際に強くなったチームもあるのです。

これはつまり、フィロソフィーとして「良いチームを作ろう」と言ったからではなく、具体的な行動、ビヘイビアを示したからですね。

馬鹿にされても「グラウンドに入るときは、胸張って行こうよ、俺たちはチャンピオンなんだから」と、それで強くなったというわけです。

これが、具体的なビヘイビアの力です。

琴坂 具体的なビヘイビアを示した際、それが嫌で辞める選手はいないのでしょうか?

中竹 いると思います。

岡島 いますよね、こういう人。(石川氏を指す)

(会場笑)

渡邉 前回のICCサミットで、ICCパネルの前で写真を撮ろうとなった時、クリエイター陣は「拳を前に出して上げる」というICCポーズが嫌で、みんな拳の位置が低かった(笑)。

参照画像(ICC FUKUOKA 2018 Session 3Fの登壇者の皆さま)

岡島 しかも、「はしゃいでください」と言われますよね(笑)。

渡邉 ICCのTシャツを着たスタッフに「こうやって手を構えるんです!」と言われるんですけど、「…はい……」と言いながらも、位置は低いままという。

ルールに従いたくない、クリエイターのわがままですね(笑)。

石川 僕は大学で初めて「部活」を始めました。

東京大学のラクロス部に入ったのですが、そこにはたくさんのルールがありました。

練習の最初に、アップしますよね。

その際にメンバーは、「東大、行こうぜ!」と言うのです。

僕は、「…どこに行くんですか?」と思ってたんです(笑)。

ただ、それを口に出して言っているうちに、一体感が出てきたのです。

理屈はさておき、実際に同じ行動を行っているうちに、1つのチームになっていくのでしょうね。

琴坂 他に選択肢がない場合はそのルールにフォローするかもしれませんが、選択肢があれば他に行ってしまう気がします。

さて、皆さんに質問です。

具体性があって行動ベースであり、誰も厭わない「最高の目的」を提示できるリーダーは存在すると思いますか?

全員に愛されるのは可能なのか? それとも敵を作ってしまうのか?

いかがでしょうか。

敵を作らないリーダーシップは可能なのか?

石川 例えばApple社のスティーブ・ジョブズは敵を作るのが上手かったと僕は思います。

最初に作った敵は、今日のイベントのスポンサーの、IBMさんですよね(笑)。

「IBMをぶっつぶす!」というメッセージを込めた、有名な「1984」というCMです。

次に作ったのが、「Think Different」というCMで、「世の中を変えようとする際には抵抗勢力がいること、その抵抗勢力と自分たちは戦うんだ」というメッセージを発しました。

琴坂 つまり、敵を作ることによってメンバーをまとめるリーダーだった、ということですね。

石川 はい。そして今の質問は、「誰も敵を作らないことはできるか」ということですよね?

琴坂 はい、そんなことはあり得るのでしょうか。

岡島 私は、無理なのではないかと思いますが…

石川 (岡島氏の肩をたたく)

岡島 何、この話したいの?(笑)

(左)株式会社Campus for H 共同創業者 石川 善樹 氏/(右)株式会社プロノバ 代表取締役社長 岡島 悦子 氏

石川 実はその話は一度、リクルートの山口文洋さんとしたことがあるんですよ。

そしたら「敵を作らない、みんなを包摂するリーダーを目指したい」という話をされていました。

琴坂 …山口さん、いきなり話題を振ってもいいでしょうか?

「敵を作らないリーダーシップ」とは?

山口 文洋氏(以下、山口) 皆さんこんにちは、リクルートの山口です。

株式会社リクルート 執行役員 / 株式会社リクルートマーケティングパートナーズ 代表取締役社長 山口 文洋 氏

いや敵は作らない方がいいですよ、作ってはだめです。

(会場笑)

琴坂 どうすればそれが可能なのでしょうか?

山口 …「角を丸くする」ですね。

言うは易しかもしれませんが、考え抜くと、自分たちのビジョンや事業が、「全てのステイクホルダーにとってのwin」になることがあります。

考え抜くというプロセスにおいて想定されるステイクホルダー全員が、「否定されているのではなく自分たちの味方であり、エンパワーしてくれるもので、敵ではない」と思えるようにするわけです。

仮想敵を作ってきたのが人類の歴史かもしれませんが、今後は全体を包み込む「包容力」のようなものが求められる気がしますね。

(会場拍手)

琴坂 リフレーミングですね。

「積極的な誤読」がリーダーシップを生む

渡邉 今してくださった話と関連するかもしれない、Takramの事例を1つご紹介します。

もう8年くらい前になりますが、とあるメーカーが、ミラノサローネ(毎年4月にミラノで開催される世界最大規模の家具見本市)で展示を行いたいということで、広い空間に面白い仕掛けを作る機会を頂きました。

そのクライアントの社内には経営企画やデザイナー、エンジニアなどあらゆる部門の方がいらっしゃって、展示においてはそれぞれ別々の役割だったはずなのですが、あるとき全員が「これは私の仕事です」と言い始めました。

これはすごく良い状況だなと思いました。

少ししか会議に参加していなくても「自分のものだ」と言いたくなるものづくりとは何か。

強いリーダーがいて、その人が強い指針を示すと、無意識のうちにその人に従うフォロワーシップを生み出すことになってしまいます。

Takram マネージングパートナー / コンテクストデザイナー 渡邉 康太郎 氏

一方で、Co-Creation(共創)においては、絶対共有している「結果としてのもの」は存在するものの、そこから枝葉が伸びている状態、つまり解釈が多様になる状態が可能です。

これは言い換えると、ものづくりに関わった人それぞれが積極的な誤読をしてしまうということ。そうなると、お客様もその誤読をする可能性があります。

積極的な誤読を誘えること、「少しのブレを許容する」ものづくりが良いのではと思います。

岡島 今私たちがやらなければいけないことは、方向性を示すトップがいたとしても、ボトムアップで何かを成し遂げる、ということだと思います。

その「積極的な誤訳」によって、さらに新しいものが生まれていく状態は面白いですね。

琴坂 一段上の難しい議論をしていますね。

「売上何億円!」という話ではなく、曖昧な「良い社会」に向けての話です。

しかし同時に、その誤読は許容範囲に収める必要がありますよね。

すごく難しいことを話していますが、それは本当に可能だと思いますか?

中竹 多分それはテクニカルな話というよりかは、先ほど自己肯定感という話がありましたが、今重要視されているのは自己受容、つまり「自分をどれだけ受け入れるか」ということだと思います。

自己受容ができる人は、カオス状態でも、先ほどの誤読も、全て受け入れることができます。

全員から受け入れられる状態を作りたければ、全員が自己受容できるマネジメントをすればいいのではないでしょうか。

「全てを受け入れることができるから、何が起こっても大丈夫」という状態ですね。

(続)

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続きは 6. 自己受容を促し、価値翻訳できることが新しいリーダーシップ をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/戸田 秀成/本田 隼輝/吉名 あらた/尾形 佳靖/大塚 幸

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