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ICCカンファレンスの特別会場において株式会社LITALICO 代表取締役社長 長谷川 敦弥 氏 と 同社 取締役 中俣 博之 氏の2名をお迎えし、「LITALICOのすべて」をテーマに約60分間のインタビューを行ないました。3回シリーズ(その2)は、LITALICOのミッション・オリエンテッドな組織開発の仕組みについて議論しました。是非御覧ください。
ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016「ICC SUMMIT」
Session 4E
特別対談「LITALICOの経営のすべて」
(出演者)
長谷川 敦弥 株式会社LITALICO 代表取締役社長
中俣 博之 株式会社LITALICO 取締役
(聞き手)
小林 雅 ICCパートナーズ株式会社 代表取締役
竹内 麻衣
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最初の記事
LITALICOのすべて(1)トランスフォーメーションを成し遂げる組織と採用力の秘密【K16-4E #1】
本編
小林氏 先程から「命を懸ける」という言葉をお二人とも使っていましたが、そういう熱い人材が集まっているんですか。
中俣氏 先程の組織の作り方の話しになりますが、外から入った時にすごくびっくりしたのが、会議のアジェンダが「社会をどうしていくか」とかなんです。
1時間のミーティングでですよ。
普通だったら営業の数字をフィードバックしてトークスクリプトを見直して、「なぜこのKPIはこういかないんだ」というのでネクスト・ステップを議論する、というのがミーティングの流れじゃないですか。
でもLITALICOでは「社会をどうしていくか」「僕らのサービスはどう進化していくべきか」といったことを議論するんです。
とある企業だったら冷めるだろうし、とある企業だったら盛り上がるかもしれませんが、LITALICOではそこにいるメンバーが全員自分ごととして、その1時間だけではなく、毎週、毎月それをちゃんと向き合うというのは素晴らしい企業文化だと思っています。
そしてそれは長谷川やLITALICOが作ってきた企業文化の中での素晴らしいところだと思います。
小林氏 それは組織全体でそういうものを議論するカルチャーなんですか。
中俣氏 カルチャーだと思っています。
逆に「何故これ(ビジョン)を考えないのか」というふうに下から煽ってきます。
「まずはリーンにやろう」「まずは世の中に出してみて」といったインターネット業界の考え方がありますが、そうではなく「出すものに自信がないと出したくない、ユーザーが決めるとかではない」「自分たちが誇れるものを出そう」というカルチャーが強いのは、色んな意見がありますがLITALICOという会社のカルチャーでは大事にしてきたところだと思います。
長谷川氏 ユーザーが、とかサービス的に反応が良ければ、という考えはあまりなくて、このプロダクトによってどの社会課題が具体的にどのように解決され、どんな人たちがどのくらい喜ぶようになるのか、ということが決まったらみんな強いんですが、逆にそれが決まらないとみんなずっと動きません。
小林氏 ミッション・オリエンテッドの組織はそうなりますよね。
モチベーションというか動機づけされて入っているから、それ以外のことはやらないし、社長自らやらないから下もみんなやらなくなりますよね。
長谷川氏 最初に新しく入った人のマネージメントはその辺が大変です。
小林氏 新しく外部から入ってきた人ですか。
長谷川氏 外部から入ってくるとちょっと戸惑いますね。
もうちょっとブレイクダウンしたKPIからのマネージメントができないんです。
大上段から入っていかないとみんな動かないとなると、まずビジョンがあり、そのビジョンに具体的にこう繋がっていく、というのが鮮明に見えてこないとみんな動かないので、そこからちゃんとリーダーが関わらないといけません。
あなたの育成が、成長がというのではなく、「社会がどう変わるんですか」というところから入っていくんです。
小林氏 今新卒と中途がいると思いますが、割合は新卒の方が多いんですか。
長谷川氏 新卒は2割弱です。
中俣氏 新卒は約200人ぐらいで、トータルは1,000人を少し超えているぐらいなので、まだ20%ぐらいです。
小林氏 新卒全員が純度の高いミッション・オリエンテッドの人材ですか。
長谷川氏 だいたいそうですね。
小林氏 逆にいうとマネージメントする方も、純度が高くて、社会を大きく見て課題を解決するというマインドがないとそもそも採用しない、という理解で合っていますか。
長谷川氏 そうですね、そこはかなりしっかり見ています。
小林氏 この人はうちの会社ではマネージメントできない、というような観点は大きいわけですか。
中俣氏 そうですね、スペック・ファーストでは見ていません。
長谷川氏 「社会をどう変えますか」というのを全社員集まってディスカッションするとものすごく盛り上がります。
小林氏 そうなんですか!(驚)
社会に対する当事者意識を持つ
長谷川氏 普通の会社だと冷めてしまうかもしれませんが、うちはみんな「ど真剣」に話し合います。
1,000人の社員が6人ぐらいのグループになって1時間位アイディアを考え、「提案ある人」と聞くと全員手を挙げたりとか、それぐらいみんな真剣に向き合っています。
真剣だけど楽しく向き合っています。
中俣氏 長谷川が「この制度どう思いますか」と社員にメールで聞くと、何百通と返信があります。
私たちは「オーナーシップ」と呼んでいますが、みんな社会に対して当事者意識を持っています。
長谷川氏 一億総活躍国民会議というのがありますが、先日その意見交換会という公式の場に呼んでいただいて、うちから何か提案をしようという機会がありました。
今回は就労支援がテーマだったので、就労支援担当の社員500人に「何か制度のアイディアはありますか」とメールを送ったら、300件アイディアが上がってきたんです。
小林氏 すごいですね。当事者意識を持つ組織文化というのは、いつから作られたんですか。
段階的にできたとは思うのですが、そのルーツは何だったんでしょうか。
長谷川氏 文化としては、創業の頃から「社会を変えたい」という意思を持っている人が集まっているというのがあります。
組織としては、みんなのオーナーシップを起点にして事業や会社を開拓していく、ということを繰り返してきているので、その事実の積み重ねも大きいと思います。
僕が社長になった時、全社員に面談をして「会社をどう変えたいか」ということをみんなにインタビューして回りました。
その時も「どうせ変わらないと思いますけど」という感じの人は当然いました。
しかし、意見を聞き実際にそれを実行していくということを積み重ねて、みんなが「本当に変わるんだな」と思うようになると、どんどんオーナーシップを持って意見を出してくれるようになります。
小林氏 でも300人がアイディアを出しても、実行されるアイディアは少ないですよね。
その時にアイデイアが採用されなかった人のモチベーションが低下する、ということはないんですか?
長谷川氏 ちゃんと説明すれば理解してもらえます。
ミッションに対して何が一番効率的で合理的なのかというのが判断基準で、社長がどうしたいか、あなたがどうしたいか、ということではありません。
常にミッション実現に最短距離で今やるべきことは何か、という基準で考えます。
小林氏 判断基準が明確だから、合理的ですよね。
長谷川氏 だからみんなが納得しやすいんです。
小林氏 素晴らしいですね。 ちょっと観客に聞いてみましょう
(ICCスタッフの)竹内さん、何か質問ありますか?
竹内氏 聞いていて本当に凄いと思うのですが、とはいえ利益も追っているとついこっちも追いたくなったり、というのでどうしても判断がぶれる瞬間とか、矛盾を抱えてどうにもならない瞬間はLITALICOではあまりないのでしょうか。
ビジョンに対して自浄作業が働く組織
長谷川氏 僕自身がブレて違う方向にいきそうになるというのは当然ありますが、そういう時はみんなが止めてくれます。
2009年頃、赤字になり3ヶ月ぐらいキャッシュアウトして倒産するかもしれないという時に、短期的に利益があがるこの事業をやろう、意義はそれほどないかもしれないけどいつか役立つかもしれない、という話をみんなにしました。
スタートしようとしたらみんながやってくれなかったんです。
小林氏 それはどうやって乗り切ったんですか。
長谷川氏 別の手段を考えるしかなかったですね。
「やらないんだ、なるほど」と思って別の手段に転換していきました。
経営陣が常にブレずに正しい意思決定をしてこれたかというとそうではなくて、みんなの集合知でやってきたなという感じがあります。
中俣氏 組織の自浄作用があるんです。
新しい戦略、戦術、事業を始める際、ミーティング中に「え、この事業やるの?」という雰囲気がある時は、そういう意思決定をしがちな時で、「何でみんな盛り上がってないんだろう」と考えると「これは意思決定自体がうちの理念にそぐっていない可能性が高そうだ」ということに気付きます。
このように、組織としての自浄作用がちゃんと経営サイドにも上がってくる組織になっていると思います。
小林氏 最近上場されましたが、上場企業になると株主に対して利益還元と社会性とが必ずしも一致しないことがあると思うのですが、そういった点に関して社内や社外へのコミュニケーションはどう考えていますか。
長谷川氏 上場前も後も変わらないですね。
社員に対しても株主の皆さんに対してもちゃんと説明しています。
うちはこのビジョンを追いかけるのが第一の会社で、そのビジョンを実現するために経済的な原動力を上手く活用していき、結果的には従業員もお客さんも株主の皆さんもハッピーになるようにしていきます、ということを一貫してコミュニケーションをとっているので、そのことを説明し続けるだけです。
小林氏 上場に関しては喜ぶ人とそうでない人が社員の中でいると思いますが、基本的には社会的に認められたという感じがあるので嬉しいという人が多いんでしょうか。
長谷川氏 嬉しいという人の方が多いですね。
小林氏 ストックオプション等で金銭的に儲かった、といって喜ぶような会社ではないような気がするんですが。
長谷川氏 やはりこういうジャンルに陽の光を当ててもらえたというのはすごく嬉しいと思います。
LITALICOがこの業界の課題を全部自分たちで解決しようとは思っていません。
みんなもそれが出来るとは思っていなくて、LITALICOができる役割を果たしていこうと思うと上場という手段が必要であるということは皆んなが理解してくれていました。
社員の中には当然、これで利益重視の方向に行ってしまうのではないか、と不安に思っている人もいると思いますが、それもやはり我々経営陣がブレずに実践を積み重ねていけば払拭されていくと思っています。
最近新しい決断をするタイミングがあったのですが、中俣が「それってブレてるんじゃない、それはLITALICOらしくないし長谷川敦弥らしくない」と指摘してくれました。
「長谷川 敦弥」らしさとは?
小林氏 中俣さんからみて長谷川 敦弥らしいというのはどういうことでしょうか?
中俣氏 やはり一貫性です。
理念とビジョンと事業と組織の作り方、そして売上の作り方に一貫性がある。
ここがずれると会社自体の方向性が変わりますので、そこの一貫性を常々意識している人物であると思います。
小林氏 自分で意識しているのですか、それとも自然にそうなっているんですか。
長谷川氏 大きなベクトルでいったら自然体でしかないんです。
自分が世界の中で色んな社会的課題といわれるものに挑み続けるというのが本能的にインプットされているという感覚なので、向かっていく先はそっちでしかないんです。
ただ戦略的にどういう道筋が理念やビジョンの実現に最短なのか、良い登り方なのかというのはよく考えていかないといけないと思っています。
とにかくせっかちで早く世界を良くしたいので、全身全霊をかけて1日でも早くやりたい、というのが戦略的な間違えに繋がったりします。
障がい者に限らず全ての人が自分の個性に誇りを持てて、個性を活かして生きていけるような社会づくりをしようとすると、障がい者だけではなく一般の人も対象者になります。
なので、僕の中では早く万人を対象にして、万人の可能性を伸ばしていけるようなところに将来的には持っていきたいので前のめりになりがちです。
しかし、会社のキャパシティや戦略的な道筋等の優先順位を考えていくと、もうちょっと今こっちをやるべきだ、これをやってからこっちに進むべきた、といううちらしい歩み方があるので、それをきちんと問い続け、LITALICOらしい歩み方を導き出していく、ということに関しては毎日考えています。
小林氏 そういうのはいつも議論されるんですか。
中俣氏 そうですね。
週に1回は1時間半ぐらいノンジャンルで会話する時間を設けていて、細かい人事や事業の話からこの会社のビジョンをどうしていくか、という話は必ずしています。
障がい者の領域は、社会の仕組み、制度、保障の考え方、事業者、働く人等変数が多いので、考えなきゃいけないことも多いのですが、その中で片方にブレることなくバランス感覚を常に保ち続けるのがリーダーの役目だと思っています。
彼はそのバランス感覚を高いレベルで保ってくれているので、自分もそれに合わせながら90%引っ張ってもらい、10%たまに引っ張る、という感じです。
小林氏 いい関係ですね。
長谷川氏 そうですね、補完関係にもあると思います。
小林氏 長谷川さんにはメンターみたいな人はいるんですか。
長谷川氏 経営的な部分でお世話になっているのは、クックパッドで役員をされている穐田さんです。
うちの会社の大株主で、社外取締役もしばらくしていただいたこともあり、率直なアドバイスをいただいています。
こういう仕事をしていると、色んな経営者の方にお会いして応援していただけるのですか、「いいことやってるよね」「素晴らしい」という感じになる中で、穐田さんにはぼっこぼこに言われるんです。
「全然だめ、もっとこうした方がいい」というのを初対面の時からズバズバ言われて、なんてグサグサ言う人なんだ、というのが最初の印象です。
色んな経営者にお会いした中でも、一番真摯にうちのことを考えて向き合ってくれたのが穐田さんだったので、1年半ぐらい前に投資もお願いして、一時は役員にもなっていただくなど、すごくお世話になっています。
社会をどうしていくのか、とかメンタル的な部分でいくと、ETICというNPO法人の宮城さんという代表の方がいらっしゃるのですが、宮城さんには私が19才の時からずっとお世話になっていて、うちの会社が危機の際も上手く導いてくださっています。
例えばですが、私は生き急いでいるところがあり、自分の能力と全エネルギーをぶつけて自分自身が痛いぐらい歪みながらやるのが好きなのですが、そのようなタイミングで宮城さんに久しぶりにお会いしたら、「会社全体が歪んでいる、ここで立ち止まる勇気を持たないとLITALICOらしくないことになるよね」ということをアドバイス頂いたり、会社の哲学や姿勢について多くの示唆を頂けます。
小林氏 社外にもお世話になっている方がいて社内の人材にも恵まれているというのは、本当に素晴らしいですね。
(続)
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/城山 ゆかり/戸田 秀成
続きはこちら:LITALICOのすべて(3)心から信じているものを理念にする – LITALICOブランドの誕生秘話-
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