LITALICOのすべて(3)心から信じているものを理念にする – LITALICOブランドの誕生秘話- – INDUSTRY CO-CREATION

LITALICOのすべて(3)心から信じているものを理念にする – LITALICOブランドの誕生秘話-

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ICCカンファレンスの特別会場において株式会社LITALICO 代表取締役社長 長谷川 敦弥 氏 と 同社 取締役 中俣 博之 氏の2名をお迎えし、「LITALICOのすべて」をテーマに約60分間のインタビューを行ないました。3回シリーズ(その3)は、LITALICOブランドの誕生と、「LITALICOらしさ」と言われる、ぶれない基準の創り方について議論しました。是非御覧ください。

ICCカンファンレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級の招待制カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス FUKUOKA 2017は2017年2月21〜23日 福岡市での開催を予定しております。

登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016「ICC SUMMIT」
Session 4E 
特別対談「LITALICOの経営のすべて」
(出演者)
長谷川 敦弥  株式会社LITALICO 代表取締役社長
中俣 博之   株式会社LITALICO 取締役 
(聞き手)
小林 雅       ICCパートナーズ株式会社 代表取締役
竹内 麻衣

その1はこちらをご覧ください:LITALICOのすべて(1)トランスフォーメーションを成し遂げる組織と採用力の秘密
その2はこちらをご覧ください:LITALICOのすべて(2)当事者意識と自浄作用が働く組織の創り方


「LITALICO」ブランド 誕生秘話

小林氏 トピックを変えて、ブランディングの話をお聞きします。(旧社名の)「ウイングル」はその分野では認知されていたのに、一気に色も全然違う「LITALICO」(りたりこ)というブランドに大きくCI(Corporate Identity)を変えたきっかけは何だったんですか。

そして社名はどのように生まれたのですか。

長谷川氏 まずB to Cの事業をやっていく中でうちのブランドがどうあるべきかを考えた時、利用者である障がい者の人たちが自分の個性に合ったものを誇りを持って選べるブランドにしたいと思ったんです。

障がい者向けのサービスってみんな残念な気持ちで、「障がい者になってしまった、だから不本意なんだけど車椅子に乗ろう、この就労支援のサービスを使おう」と選ぶんです。

そうではなく、自分に合ったものを誇りをもってデザイン的にも品質的にも選んでいけるものにしたいと思ったので、そういう部分でブランドには結構こだわりがありました。

その観点で考えた時に、当時ウイングルというブランドでやっていて、そんなに悪くはないけれどそんなに良くもないと思いました。

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何故かというと、経営とは理念、ビジョンからの一貫性をどこまで細部にわたって宿すかが大きな力の吸引力になってくると思っているのですが、その点でいうとウイングルの理念は「Win-Win-Winのトライアングルで関わる人がみんなハッピーになろう」というモデルで、NOではないけれど最高にYESではない、つまり、僕たちの価値観や思想を一番反映しているわけではないのでそれほど愛せてないと思いました。

60点ぐらいしか愛せないと力が分散していって理想から欠け落ちそうなので、やはり100点満点自分たちがこれだと思える理念、ブランドで勝負していくというのが結果的に世界を変えていく大きな力になるのではないかと思い、当時全然利益が出ていない時に、名前を変えることにトータルで5,000万円かけました。

小林氏 すごいですね。PAOSさんでしたっけ?

長谷川氏 そうです、ベネッセやブリヂストン、ドコモといったブランドを作ったのがPAOSさんです。

サービスブランドやパンフレットなど色々ひっくるめて5,000万円で、本当に素晴らしい仕事をしていただいたので僕は決して高いとは思いませんでした。

小林氏 プロジェクトはどのくらいの期間で行ったんですか。

長谷川氏 LITALICOという名前が出来るまでは半年でした。

小林氏 他にはどういう社名の候補があったんですか。

長谷川氏 最終的にPAOSさんが300案くらい出してきて、その中からうちらしいのはどれかということで最後3択ぐらいに絞りました。

「クレストリー」(クリエイトヒストリーで歴史を作っていく)というものだったり、1人1人に合ったサービスを作る社会を作るという意味で「FOR YOU」 という名前だったり、色々案がある中で、「LITALICO」は断トツでした。

これは100年経っても200年経っても変わらないし、我々経営陣も社員も心からこれが信念だと思える名前でした。

小林氏 LITALICOのロゴのキャラ、文字、色は可愛いですよね。あれはどういう発想でそうなったんでしょうか。

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ウイングルのロゴはお堅い感じがしたと思うのですが、一気にイメージチェンジしていますよね。

長谷川氏 やはりサービスとしてそもそも明るくしていこうというのがありました。ストイックなサービスが多すぎるとこの分野に結果的に人も寄り付かないので、もっと明るく軽やかにお客様の人生につながっていく名前がいいというのと、デザイン的にも音も明るくてリズミカルにしたいというのがありました。

あとはLITALICOのAが「人」になっています。

僕らが作っていく障がいのない社会というのは人を中心にした社会で、社会をいわゆる固定的に捉えてその社会に適応できる人を作るのではなく、色んな人がいて色んな人を中心にした社会づくりをしていこう、ということで真ん中に「人」という文字を入れて、その「人」には全カラーを採用しているので、コーポレートカラーはありません。

どの人にもあった社会づくりをしていこう、ということでこのロゴ自体が決まりました。

小林氏 まずウイングルを残しながらLITALICOというコーポレートブランドを作り、最近統一して、という流れはなかなか戦略的だと思ったのですが、もともとそのように考えていたのですか。

長谷川氏 マルチブランドがいいのかシングルブランドがいいのか、ということはずっと迷っていました。

ずっと考えてきた中で、LITALICOに出会ったら安心だし希望を持てるという分かりやすい世界を作る方がお客さんのためになるだろう、というのが最終的な結論でした。

小林氏 楽天などと発想が近いですね。

中俣氏 そのブランドの検討をしたのは、確か長谷川がとある事業モデルの観察のために海外に行った時で、戻ってきてその報告のミーティングが開かれ、私はその国の事業とか状況等のレポートを楽しみにしていたら、いきなり「ブランドを変える」と言い出しだんです。

小林氏 いつの話ですか。

長谷川氏 2年前の7月ぐらいですね。

小林氏 ブランドを変えるきっかけは海外の視察だったんですか。

長谷川氏 メキシコに、子どもアセスメントの結果に応じてプログラムが変わっていくという子育てアプリがあるので、その視察に行っていました。

海外に行くと時差の関係等で眠れなくなるんですが、テレビを見ても分からないので、ずっと深夜ぶらぶらしながら部屋で考えているんです。

考えている時にたまたまAmazonがAmazon病院を作るというニュースを見て、「LITALICO病院のほうがいい名前だよな」ということを自分の中で考え、今まではマルチブランドの方が結果的に多様な人がそれぞれのサービスを選びやすいのではないか、という考えでやってきましたが、うちらしいやり方を考えると発想の転換をしてシングルブランドにしたほうがいいんじゃないかと思い始めました。

そしてシングルブランドにした場合の世界観や、どのようなメリットデメリットがあるのかということを一気にイメージし、それをノートに書きなぐって壁に貼り、それを見ながらイメージしてると、(マルチブランドではなく)こっち(シングルブランド)だな、と。

実はロジカルに決めたというよりは、直感的に多分こちらだと。

会社のあり方を考えても、お客さんにとっても僕たちが作っていきたい世界観、価値観を込めていくというスタンスの方がいいんだろうな、というのを直感的に感じました。

小林氏 メキシコとは全く関係ないですね。

中俣氏 結局その事業が僕のところにきました(笑)。

会社の一貫性を担うであろうブランドのようなプロジェクトは、マーケティング担当等、得意な人が推進するのが一般的ですが、うちの会社は長谷川が一気通貫して自分の構想のなかで推進するので、隅々にまでわたる一貫性ができているのだと思います。

小林氏 LITALICOブランドになって社内はどのように変わりましたか。

僕は素晴らしいブランドだと思うのですが、組織としても誇りに思う人が増えたのでしょうか。

長谷川氏 みんなLITALICOを愛してくれているので、「その名前を付けるからにはサービスはこれでは嫌だ」「このサービスはLITALICOらしくない」というふうに基準が上がりました。

名前とは不思議なもので、サービスの各ブランドが色々出来ていき、その中に自分がそれほど思い入れの無いブランドがあるとそんなに品質を追求しないんですね。

しかし、LITALICOとつけるからには、僕自らが品質をこのレベルまで持っていきたい、もっと安心感がないといけない、もっと希望を持てないといけない、という話になっていき、「LITALICOらしい」という基準をどのサービスにも共通して求めていくので、結果的にクオリティーが上がっていきつつあります。

サービスに求める品質基準が親ブランドと離れる場合は、マルチブランドの方がいいと思いますが、求める品質のベクトル自体が親ブランドと一致していくのであれば、親ブランドを冠する方が結果的には品質が押し上げられていきます。

小林氏 一般的にブランドというのは品質の統一感、高品質が原則ですよね。

長谷川氏 そういう意味で社員の情熱がもっと品質に向くようになったし、お客さんからみても分かりやすく、安心できるようになりました。

小林氏 すごく分かりやすくなったと思います。

長谷川氏 結構色んな方がLITALICOのフィロソフィーに感動してくれるんです。

会っていく人たちの中で、LITALICOという名前が好きだから応援してる、という方たちも結構いらっしゃって、有名な企業の会長さんにも「最初LITALICOという名前を聞いた時電撃が走った。これだと思ったので全力で支援したい。」と言っていただきました。

小林氏 僕もICC(Industry Co-Creation)という名前をつけると、「産業を作ることにつながらない活動はしちゃいけない」「共に作っていないことをやってもしょうがない」というふうになりますよね。

ブランドにはそういう力がありますし、Tシャツ等を作っていくと、着てるという意識だけで行動が変わってきます。

「LITALICOらしさ」という独自の基準

長谷川氏 中俣がやっている「LITALICO発達ナビ」というインターネットの事業にしても、インターネット事業の常識でいったら普通はこんなんだけど、LITALICOのネットサービスはこうじゃないといけない、という独自の基準ができていきますよね。

中俣氏 A/Bテストはせず自分たちが誇りを持てるAをやる、というようにブランドがマネージメントを作っていくようになり、「LITALICOっぽい」の「ぽい」というのがブランドに近いので意思決定の基準がそっちに寄っていきます。

「この意思決定はLITALICOっぽくないので辞めよう」というのが僕らの意思決定でも事業の意思決定でも細かいTO DOの意思決定でもおりてくるというのは、ブランドの持つ力だと思います。

長谷川氏 ブランド自体が、よくありがちなハイソでおしゃれでかっこいいものを作るということではなく、理念、ビジョンから真っ直ぐなブランドができたということがこの力になっていると思います。

小林氏 例えばエルメス等もそうですが、ブランドは創業時から歴史を持っているというのが一般的だと思うのですが、御社の場合は途中からブランド名を変更しているわけですよね。

それでこんなに強力なカルチャーを作れるブランドを作るというのは、経営としてのコミットメントが必要だと思うのですが、やはり社長自ら時間を使ったというのが大きいということですね。

心から信じているものを理念にする

長谷川氏 理念もビジョンもブランドも、結局経営陣自体の信念レベルが形になっていないと機能しないと思います。

うちは信念のレベルが形になっているので、みんな僕は一貫性があると言ってくれるのですが、信念がそのまま形になっているのでそれはそうですよね。

何も考えなくてもある程度の一貫性が保てるというのは、心から信じているものをブランドにしているし、心から信じているものを理念にしているからそうなるんです。

どの企業のステージであっても経営陣自体の信念をちゃんと覚悟を持って形にしていく、企業の核にしていくということが一番大事だと思います。

小林氏 最後に長谷川さんから見た中俣さんの良い点はどこですか。

中俣氏 いっぱいあるからね!

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長谷川氏 人から褒められる前に自分で全部言うんです。そういう愛らしいキャラクターで皆んなから愛されるというのがあります。

やはりリーダーとしてのエネルギー量や情熱、人としての強さや優しさ等、そういうリーダーとしての資質を兼ね備えているのがとても魅力的だと思います。

またそれでいて面白く、おちゃめで皆から好かれ、愛される感じがあるのはすごくいいところだと思います。

変幻自在なところもあり、僕が理念、ビジョンの部分を考えていると、彼は実行が長けているので実行の部分をやってくれるのですが、逆に僕が理念、ビジョンからちょっとぶれたりするとむしろそっちは中俣が補完し、僕は実行を考えたりします。

実行が強いと本人は思っていると思いますが、実行はもちろん強いけれど、意外とリーダーとしての理念、ビジョンを示していったり、長期の方向性を示して行く部分も変幻自在で強いな、という感じがします。

小林氏 今のを聞いてどうですか。

中俣氏 ちょっと恥ずかしいですね。

(会場 笑)

小林氏 では中俣さんから長谷川敦弥とは何か、ということを話してください。

中俣氏 先程の「一貫性がちゃんとある」ということに尽きると思うのですが、経営的意思決定と事業的意思決定が長谷川の場合は分かれていないんです。

「短期ではこうだよね」とか「よく分からないけど取り敢えず試してみて」等、思考を止めて取り敢えず進もう、という意思決定を長谷川はやりません。

世の中の経営者にもやりがちな人が結構多い中で一貫性を持ち続けているというのは尊敬していますし、自分もそういう人になりたいと思っています。

ただたまに抜けるところもあります。

盛り上がりがちで、たまに「やりたーい!」となるので、「落ち着いて、1週間後もう1度話そう」といって1週間後話すと「やっぱりいいや」となることがあります。

長谷川氏 そういうところを結構大人な眼差しで見てくれます。

中俣氏 熱くなってる時に社長室に呼ばれて入ると、大きなホワイトボードいっぱに書きながら「これをやりたいんだ」と言うので、「それ俺もワクワクする、でも1週間寝かそう」と言うと、1週間後には「やっぱりやめようか」というふうになったりします。

長谷川氏 引いてみて考えるのも好きですが、自分が渦中に入って創造的に考えていくのがすごく好きなんです、大好きなんです。

むしろそっちの研究ばっかりしていたいぐらい新しい実験をするのが好きなんです。

「こんなことをしたらどう喜ぶんだろう」等考えながら独創的な物を作りたいんです。

人と同じことはできないんです、やってる人がいると冷めてものすごくやる気を失っていくので。

誰もやらないところに答えを見出したがるというのがあるので、そういうのを研究したり実験したりするのが大好きなんです。

小林氏 (ソフトバンクの)孫正義さんみたいですね。

100年に1回のチャンスが来たと毎週のようにやっているわけですよね。

中俣氏 よく言ってます。

社会への感度がちゃんと高いというのは経営者として必要なポイントだと思うのですが、長谷川は社会への感度が非常に高いですね。

社会を創造していく力と、自分でやっていくというリーダーシップはLITALICOの経営として求めていきたいので、そのベクトルが一緒だし、高いレベルでいてくれるので僕は安心して事業が推進できます。

特に介入してこないんです。

介入しそうな雰囲気があるんですが、大きな戦略の方向性だけ合意すれば、後は「中俣さんよろしく」といった感じです。

その任せる範囲と締める範囲のバランスが、僕としては絶妙な感じですね。

小林氏 中俣さん 褒められてますよ〜。

長谷川氏 中俣の場合は自分で気付いて自分で進化していくので、自分で勝手にやるのが一番上手くいくんだろうと思います。

小林氏 お互い信頼関係があっていいですね。

長谷川氏 そういう人と出会えたというのはよかったです。

小林氏 ずっとホームページをチェックしててよかったですね。

長谷川氏 そうそう、最初はいけ好かないなーと思ってたんですけどね(笑)。

髪が長いし、当時メガネかけてちょっと髭面だったので、「ちょっとおしゃれすぎないか」と思ってました。

小林氏 楽しい対談だったのですがそろそろお時間なので、最後この対談の感想を伺って終わりにしたいと思います。

中俣さんからよろしくお願いします。

中俣氏 たまに、3年に1回ぐらいこういう対談もいいかなと思います。

言ったことをちゃんと守っていくということも重要だと思っているので、この対談の中で一貫性という言葉を頻繁に使いましたが、2年後、3年後にこういう対談があった時、同じように一貫性ということを重要視している自分でいたいなと改めて思いました。

ありがとうございました。

小林氏 ありがとうございました。

では最後、長谷川さんに締めていただきたいと思います。

長谷川氏 初めて2人でという形で恥ずかしかったので、もう二度とやらなくていいと思っています。

(一同爆笑)

改めて自分達のこれまでや自分達らしさを振り返る機会というのは、すごく貴重だったと思います。

話しながら気付きもあったし、もっともっとそうしていきたいなという気持ちになったので、こういう機会をいただけて良かったと思います。

1人(中俣)が入るだけでこれだけ会社は進化するし、うちの会社が進化するということは社会が進化するということになるので、1人が入るインパクトは本当に大きいと思います。

社会課題を解決したいと思っている人はいっぱいいると思うので、そういう人たちとの出会いを積極的に求めて、一緒にチャレンジしていくことを楽しみにしています。

小林氏 60分あっという間でしたが、どうもありがとうございました。

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(完)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/城山 ゆかり/戸田 秀成

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ICCパートナーズ(ICC Partners Inc.)は産業を共に創る経営者・経営幹部のためのコミュニティ型カンフ ァレンス「Industry Co-Creation(ICC) カンファレンス」の企画・運営および新規事業創出・アライアンスなどのアドバイザー業務を行っています。