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4.「この人、ネットのインタビュー記事と同じことをしゃべってる……」イベント参加者をがっかりさせないために、司会・モデレーター役は何をするべきか?

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ICCサマーパーティ2019“特別セッション”の書き起こし記事「ICC名物モデレーター直伝!トークセッションを成功に導くための極意とは」。全8回シリーズ(その4)は、オーディエンスに対して新鮮な話題を提供するための司会・モデレーター術です。ライブの醍醐味“オフレコ話”を引き出すためにするべきこととは? ぜひご覧ください。

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うためのエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は、2019年9月2日〜5日 京都での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2019年7月17日
ICCサマーパーティ2019
特別セッション「モデレーター勉強会」

(スピーカー)

井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
パートナー

琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)

宮宗 孝光
株式会社ドリームインキュベータ
執行役員

渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー /
慶應大学SFC特別招聘教授

(モデレーター)

小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役

「ICC名物モデレーター直伝!トークセッションを成功に導くための極意とは」の配信済み記事一覧


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最初の記事
1. トークセッションは「準備」がすべて? 司会・モデレーター役を依頼されたあなたが、イベント当日までにするべきこと

1つ前の記事
3. 議論を活性化するモデレーター講座 ②「しゃべらない人は、切り捨てる」!?

本編

登壇者の「メディア回答モード」を回避する技とは?

宮治 勇輔さん(以下、宮治) ちょっと話が戻るのですが、「メディア回答モード」を回避することについてもう少し聞かせてください。


宮治 勇輔
株式会社みやじ豚 代表取締役社長 /
NPO法人農家のこせがれネットワーク 代表理事/
株式会社ファーマーズバーベキュー 代表取締役社長

1978年神奈川県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。2006年9月株式会社みやじ豚を設立し代表取締役に就任。生産は弟、自身はプロデュースを担当し、2年で神奈川県のトップブランドに押し上げる。みやじ豚は2008年農林水産大臣賞受賞。2009年に、都心で働く農家のこせがれの帰農支援を目的に、NPO法人農家のこせがれネットワークを設立。2010年、地域づくり総務大臣表彰個人表彰を受賞。2015年より農業の事業承継を研究する、農家のファミリービジネス研究会を主宰。2017年には全ての家業の後継者を対象とした家業イノベーションラボ実行委員に就任。2017年8月、生産者に最も近いBBQを企画運営する株式会社ファーマーズバーベキューを設立。DIAMOND・ハーバード・ビジネス・レビュー「未来を創るU-40経営者20名」。著書に『湘南の風に吹かれて豚を売る』。

短く切るのも1つだと思いますが、他にもポイントがあれば教えていただければと思います。

琴坂 経営者の皆さんがメディア向けに話されているものというのは、多分加工が入っているはずなんですよね。

本当はそうじゃないはずなのに、その加工されたものが「公式見解」みたいなものになってしまっていて、それについて経営者の方も私たち研究者も、「いや、そうではないのでは?」という仮説が頭の中に何か出てきます。

それをそのまま、相手に質問としてぶつけるイメージですね。

宮治 そうした情報を頭に入れておいて、通り一遍な答えが来たたら、そこへの切り返しとしてより深く質問するということでしょうか?

琴坂 そういうことですね。

そこは実はこういうのが理由だったんだよという……

(ここで渡邉康太郎さん登場)

小林 名モデレーターの渡邉さんが登場です!よろしくお願いします!

渡邉 康太郎さん(以下、渡邉) 遅れてすみません。よろしくお願いします。


渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー /
慶應大学SFC特別招聘教授

東京とロンドンを拠点に、ブランディング、UXデザイン、サービスデザインなどに取り組む。個人の小さな「ものがたり」が生まれる「ものづくり」がテーマ。主な仕事に日本経済新聞社のブランディング、ISSEY MIYAKEの花と手紙のギフト「FLORIOGRAPHY」、一冊だけの本屋「森岡書店」など。慶應SFC卒業。国内外での受賞や講演実績多数。著書に『ストーリー・ウィーヴィング』、『デザイン・イノベーションの振り子』など。独iF Design Award審査員。趣味はお酒と香水の蒐集と、茶道。茶名は仙康宗達。母校のSFCでは「コンテクストデザイン」をテーマにしたサブゼミを主宰。

小林 ちょうど盛り上がっているところです。

宮宗 今の琴坂先生のお話ですが、すごく分かります。

基本皆さんライブでしか聞けないこと、その場じゃないと聞けないことに対してのニーズが高いんですよね。

「メディアに出ている情報=ある程度加工された情報」というのは本当にそのとおりです。

瞬発力がないと難しい部分もありますが、ある程度流れを先読みした上で、メディア向けのお決まりの話にならないように、テーマや小論点を設定することを意識しています。

琴坂 逆に、今誰かが話していて、でも他の登壇者の方の発言を誰もが聞きたい、というときは、今話している人を見ればひと目で分かるんですよ。

目が泳いでいるか、つまらない口調になっていて、それをできるだけ早く切ってあげるというのがポイントです。

井上 これはちょっとコンサルっぽいんですけれど、やっぱりポリティカルコレクトというか、ただの一般論の話だなというフェーズと、ここはどんどん深めようという境界線は意識しています。

なるべく「なぜ? どうして?」じゃないですけど、突っ込んで突っ込んで、さらに突っ込んで深く聞きます。

「多分普通のインタビューだとそこまで聞かれないよね」というところまで、いかに突っ込めるかということを意識しています。

どこにそのポイントを見出して掘り下げるのか、ということをちょっと意識してやると、当たり前の話にはならないかなと思います。

宮治 質問力が求められるわけですね。

琴坂 そうです。一番簡単なのは、極論か間違っている可能性のあることを、「こうなんですか?」と聞くことです。

宮治 間違ってもいいんですか?

琴坂 間違っているほうがいいです。むしろ敢えて間違っている可能性の高い解釈をぶつけることすらあります。

(写真右)慶應義塾大学 准教授(SFC・総合政策)琴坂 将広さん

間違っていると、「違います。なぜならば……」と答えてくれることが結構多くて、それが一番すぐ思いつくし、引き出しやすい形ですね。

宮宗 僕は同じ言葉をリフレインしますね。

嶺井さんとかとミーティングをしていても、発しているのと同じ言葉を返すんですね。

そうすると、人間てそれについて深く補足しようと思います。

なので、そうやって引き出すというのは結構意識していますね。

小林 深いですね。

宮治 なるほど。ありがとうございます。

小林 三輪君どうぞ。

ライブの醍醐味「オフレコ話」が生まれる状況とは?

三輪 開人さん(以下、三輪) 今の議論に重なる話題になりますが、多分深く話を掘り下げていけばいくほど、いわゆるオフレコの領域に入るかなと思います。


三輪 開人
特例認定NPO法人 e-Education
代表理事

1986年生まれ。早稲田大学在学中に友人と共にNPO、e-Educationの前身を設立。バングラデシュの貧しい高校生に映像教育を提供し、大学受験を支援した。1年目から合格者を輩出し「途上国版ドラゴン桜」と呼ばれる。大学卒業後はJICA(国際協力機構)で東南アジア・大洋州の教育案件を担当しながら、NGOの海外事業総括を担当。入職3年半後の2013年10月にJICAを退職してe-Educationの活動に専念。2014年7月に同団体の代表理事へ就任。これまでにアフリカや南米を含む途上国14カ国、20,000名以上の中高生に映像授業を届けてきた。2016年、アメリカの経済誌「Forbes」が選ぶアジアを牽引する若手リーダー「Forbes 30 under 30 in Asia」に選出。2018年、人間力大賞にて外務大臣奨励賞および参議院議長奨励賞を受賞。NHKドキュメンタリー番組『明日世界が終わるとしても』などメディア出演多数。

「完全オフレコ」ではないセッションでは、皆さんオフレコの話に狙ってたどりついているのか、それとも盛り上がった流れでオフレコまでいくのかということを、ぜひ聞きたいです。

宮宗 (渡邉さんを見て)どうですか?

小林 渡邉さん、いきなり振られていますけど大丈夫ですか?(笑)

渡邉 僕はオフレコセッションをICCではあまりやったことがなくて、逆に皆さんにそのコツを聞いてみたいと思います。

小林 おっ、来た!うまい切り返し!(笑)

じゃあ、ちょっとみんなでパス回ししましょうか。

琴坂 これにはパターンがありまして、私も色々な方と親交があるので、結構な数のセッションで「私、それ知っている」というのがあります。

そして、相手も私がそれを知っていることを知っている。

こういう、オフレコなんだけどすでに知ってしまっているという場合には、オフレコセッションではない時もジャブを打って「話してくれない?」っていう感じの質問の仕方をしています。

三輪 それは、事前にですか?

琴坂 いえ、その場でです。

そういう質問をすると、相手は「おいおい、その事は知ってるだろ、聞かないでよ」みたいな表情になりますが、最終的には話すか話さないかはその人に判断してもらう、という戦略です。

あとは、登壇者のAさんとBさんが昔すごい喧嘩をした、という組み合わせのセッションがあった時に、Bさんが仲直りしたいと思っていることを知っていたので、Bさんに「(Aさんに)こういう質問をしてくれませんか」という話を事前に回したこともあります。

小林 深いですね。

渡邉 勝手にちょっとメタにすると、結局予定調和からいかに離れるかってことですよね。

それがオフレコであり、即興であり、現場のライブ感であり。

ここで難しいのは、正確性とか平等性を担保しようとすればするほど、構造的に予定調和になってしまうんですよね。

この振り子をいかに振れるかというところで、予定調和になったらもちろん崩したほうがいいというパターンがあるかと思います。

琴坂さんがモデレートするセッションは基本的に完成度が高いというのは、設計がしっかりしているからだと思うんですが、設計がしっかりしていると逆に壊したくなっちゃうみたいなところが僕はあって(笑)。

琴坂 いやー、それはかなり困る人ですね(笑)。

渡邉 モデレーターから1人ずつ質問、みたいなスタイルにになってくると、1人目から2人目に移っても「あと3人か」みたいな気持ちになってくるか。

そこで、ちょっと壊したいなというふうに思うわけですよ。

手塚治虫の漫画だと「ヒョウタンツギ」とか「アッチョンブリケ」とか出てきて、息抜きが起こるじゃないですか(※)。

▶編集注:ヒョウタンツギは、手塚治虫のマンガに登場するヒョウタンのようなブタのような生物(参照:手塚治虫オフィシャルサイト)。アッチョンブリケは、『ブラックジャック』の主要キャラクターであるピノコが驚いたときなどに発する言葉またはその仕草。真面目なシーンであったり、脈絡のないシーンでも描かれることがある。

議論の中にも、「ヒョウタンツギ」があったほうがいい、っていう気が勝手にするわけなんです。

小林 パスを出す順番を1回変えるだけで、緊張感が変わりますよね。

渡邉 変わりますね。

小林 「俺、3番目かな?」とか思った途端に、大抵の人は油断しますからね。

あと会場で最前列に座っている人に声を掛けたりすると、「俺に来るかもしれない」みたいな気持ちになることが、やっぱりありますよね。

渡邉 それはすごく大事だと思いますね。

一度、組織論をテーマにしたセッションで琴坂さんがモデレートしている時に、「大学のゼミの組織運営とヨット上の人の組織運営はどう違うんですか?」みたいな質問を琴坂さんに振っちゃったことがあるんです。

琴坂 振られちゃったんですよね。ヨットは私のツボなんです(笑)。

ICCでは多分10回以上登壇させてもらっていますが、私がある程度のボリュームで発言したのはおそらくそこの部分しかないんです。ガチでヨット部の組織について話してしまいました。

しかも、、、全く刺さっていませんでした。

(会場笑)

宮宗 そういうのを分かっていて振られるときって、モデレートしにくいですよね。

難易度が高くなる印象があります。

渡邉 でも、モデレーターさえも緊張するというのはいい状況ですよね。

まあ、モデレーターは常に緊張していますが……。

あと、全員に平等に振ろうと思いすぎると、逆におもしろくなくなることもありますよね。

井上 そうですね。さっきもそのことについて話題になったのですが、本当にそのとおりです。

この前のモデレーターのセッション(※)の時に、残念ながら参加が叶わなかった岡島悦子さんがFacebookでコメントを残していたんですけど、「めちゃくちゃちゃんと準備をして、でも当日は全部捨てる」って書いてありました。

▶編集注:ICCパートナーズの新オフィス・オープニングパーティで開催された、本セッションの前身となる特別セッション「モデレーターの極意とは?」のこと。

まさに真理だなと思いました。

結局「こういうふうにやろう」と思ってそこに縛られて、無理矢理やろうとすると絶対つまらないじゃないですか。

できる限り準備はするけれど、それを壊してその場に集中して、その場に入り込んで、なるべくその場でディスカッションをする。

そのことに集中したほうがうまくいくな、というのが、過去私がモデレーターを務めたセッションでの学びかなと思います。

小林 そうですね。

そもそも、配役が決まっている段階で平等になっていないですよね。

このセッションは誰が主役なのか? というのがだいたい見たら分かるかと思います。

だから「そのセッションはこの人が主力だから、それに合わせてつくろうよ」というのがもともとの企画になっている部分が多くて、例えば石川善樹さんが出ている時は、だいたい石川善樹さんが話しているじゃないですか。

渡邉 そうですね。だいたい最初からずっと笑っているみたいな(笑)。

Takram コンテクストデザイナー / 慶應大学SFC特別招聘教授 渡邉 康太郎さん

琴坂 そう。石川さんは自分でモデレーターもできますし、引き出しも広いし、エンターティナーなので、モデレーターとしては一番想像が難しい登壇者です。

エンターティナーなので、会場を盛り上げようとちゃぶ台をひっくり返してくれたりします。

石川さんのように、自分のストーリーでどんどん質問し続けてくれる人がいると、その時自分が準備していたものがすべて崩壊するんですよね。それはいい意味でも悪い意味でも。一番緊張する瞬間です。

小林 「話変わってもいいですか?」「ジャック・マーって知っていますか」とかね。

▶編集注:一時期、石川善樹さんは一見するとセッションで議論されている文脈とは関係のないような形で、中国アリババ率いるジャック・マー氏に関する薀蓄を披露する傾向にありました。

井上 一方で、そこに乗っかるのもやっぱり大事ですよね。

「なんでそんな話をするんだ」と不安になっちゃうと絶対おもしろくならないから、もう切り替えて乗っかってしまうと。

村上 ジャック・マーはそろそろ乗らなくていいと思うけどね(笑)

(会場笑)

三輪 ありがとうございます。

小林 他に質問は? ではそちらの方。

(続)

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続きは 5.「登壇者どうしの学び」を意識する?しない? ICCサミットの名物モデレーターたちは、トークセッション中に何を考えているのか をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/戸田 秀成/小林 弘美

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