比叡山延暦寺が、宗教サミットを開催する理由 | 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

5. 比叡山延暦寺が、宗教サミットを開催する理由

Pocket

新着記事を公式LINEでお知らせしています。友だち申請はこちらから!
ICCの動画コンテンツも充実! YouTubeチャンネルの登録はこちらから!

▶ICCパートナーズではコンテンツ編集チームメンバー(インターン)の募集をすることになりました。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。

「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」-1200年以上続く比叡山延暦寺から学ぶ人材育成とは?全6回シリーズ(その5)は、比叡山延暦寺が対外的に行っている取り組みについて紹介します。その存在意義からして他の団体では難しいことを意識的に行っているといいます。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2021は、2021年2月15日〜2月18日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

ICCサミット KYOTO 2020のプレミアム・スポンサーとして、Lexus International Co.様に本セッションをサポート頂きました。


【登壇者情報】
2020年9月1〜3日開催
ICCサミット KYOTO 2020
Session 12D
「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」-1200年以上続く比叡山延暦寺から学ぶ人材育成とは?
Supported by Lexus International Co.

(メイン・スピーカー)

今出川 行戒
天台宗総本山延暦寺
副執行 参拝部長

(ゲスト)

深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役

星野 最宥
天台宗総本山延暦寺
参拝部主事

松下 健
株式会社オプティマインド
代表取締役社長

吉田 浩一郎
株式会社クラウドワークス
代表取締役社長 兼 CEO

(モデレーター)

村山 和正
株式会社オートクチュール京都
支社長

「一隅を照らす、これすなわち国宝なり」-1200年以上続く比叡山延暦寺から学ぶ人材育成とは?の配信済み記事一覧


連載を最初から読みたい方はこちら

最初の記事
西暦788年開山(延暦7年)、1200年以上続く比叡山延暦寺から人材育成を学ぶ

1つ前の記事
ICC登壇者が深堀り! 檀家を持たない比叡山延暦寺はいかに運営されているのか?

本編

今出川 今はコロナの時代でありますし、全国的に人もなかなか動きませんので、こういう世の中ではあるけれどもできることをしていかなければいけません。

特にインバウンドのこともいろいろ問題にはなっていますが、インバウンドも今動いていません。そういう新しいことばかりではなく、昔はこうだったけれども、これから復活していくこともあります。

明日(9月4日)はまさしく北野天満宮の北野御霊会(ごりょうえ)がありますね。

神仏分離前のイベントを550年ぶりに再興

株式会社オートクチュール京都 支社長 村山 和正さん

村山 皆さん、北野天満宮さんをご存知ですか? 北野天満宮は菅原道真公を祀っていて、延暦寺さんとはずっと昔、合同でずっと法要をされてきましたが、あるときにいろいろな理由で途絶えてしまいました。それが明日(2020年9月4日)復活するのです。

応仁の乱で途絶えた神仏習合の北野御霊会550年ぶり再興 怨霊鎮めコロナ終息へ(2020年9月4日 毎日新聞)

すごく貴重な機会ですが、お寺のお坊さんや神主さんが動いたのではなく、実はそれを支えている地元の方、氏子さんが動いて今回復活することをなし得ました。

関係者だけが動くのではなく、それをちゃんと守ってきている人もいて、その人たちが動くことで、もう1回歴史が復活することが起こったという驚きの事態です。先ほどの、法律が変わるぐらいびっくりすることです。

今出川 その当時京都に都があって、いろいろな祭りごとは都で起こります。その出張所として東寺があるでしょう? 比叡山は距離があるので、都を治めるためにあったのが北野天満宮と八坂神社なのです。もともと半分はお寺ですから。

比叡山が都を管理するために置いていたものが北野天満宮と八坂神社なので、定期的に比叡山が北野天満宮さんに行って、道真公の法要を行っていたのです。ところが幕末の頃に神仏分離で途絶えて、令和までなかったのですが、幕末以来復活するという記念すべき日が明日なのです。たぶんニュースにいろいろ出ると思います。

特集 再興された北野御霊会(いろり)

さまざまな宗教が一堂に会する「比叡山宗教サミット」

天台宗総本山延暦寺 副執行 参拝部長 今出川 行戒さん

今出川 比叡山しかできないようなこと、先ほどいろいろな宗派の方が比叡山から出ているとお話(Part2参照)をしましたが、そういうものがあるからこそ、毎年8月に比叡山宗教サミットという集まりをやっています。

吉田 宗教サミットというと、俄然ビジネス色が強まりませんか?

今出川 いえ、これはビジネスではなくて、本当に世界平和を祈る祭典です。仏教、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、シーク教など、それぞれの代表の方が毎年比叡山に集まって、それぞれの祈り方、それぞれの言語で世界の平和を祈ります。

それは日本ではたぶん比叡山にしかできないことです。

吉田 全員とフラットに付き合えるということですか。

今出川 そうです。こういう壇上にいろいろな宗教の方が集まります。

吉田 すごいですね。

今出川 それは最澄さんが人づくりの山を目指して、いろいろな宗派の方が比叡山から出ていったというベースがあるからです。他のところでやると「なんでそこでやるの?」と問題に発展しますが、比叡山でやると皆さんが納得してくれます。

意外と知られていませんが、比叡山は毎年コツコツとそういう活動をしているのです。

村山 織田信長の焼き討ちに関しても、焼き討ちされた日には、比叡山が亡くなられたすべての方々の法要もしています。

焼き討ちから450年目、織田と明智が比叡山に結集

写真左から、今出川さん、株式会社クラウドワークス 代表取締役社長 兼 CEO 吉田 浩一郎さん

今出川 焼き討ちのことを「元亀の法難(ほうなん)」といいますが、比叡山の中には、信長も含めて焼き討ちで亡くなった人たちの御霊を供養する塔が建てられています。

9月12日が焼き討ちの日ですが、 毎年9月12日に法要をしています。2021年で焼き討ちから450年目になりますが、そのときに織田家と明智家の末裔を比叡山にお招きする企画を考えています。

信長・光秀平等に 延暦寺で焼き討ち450回忌(文化時報社)

吉田 たくさんいろいろな企画をしていますね!

今出川 しています。節目だからこそ、今まで450年間こういう機会がなかったわけですから、比叡山にも、織田にも、明智にも、家康にも、それぞれに正義があったと思いますし、その信念のとおりそれぞれが動きました。

その結果、焼き討ちという悲劇にはなったけれども、450年経ってそれぞれの人たちに言い分もあるでしょう。そういったものもシンポジウム的なもので話して、最終的には比叡山もここまで復活したし、それぞれの末裔の方も元気でおられるので、三者が手を取り合って元気で良かったねとしたいと思います。

吉田 社会の枠組みで考えると、国連でさえも特定の国寄りになっているのではと言われるときがあります。オフィシャルに全員と等距離を取り続けることは、社会の枠組みではなかなかありませんが、すごいですね。

今出川 「大丈夫なの?」とみんなから言われますよ。でも僕はすごく意義があることだと思いますので。

吉田 今の日本政府とは、どういう関係ですか?

今出川 日本政府は、すごくいい感じですよ(笑)。われわれが付き合うところは限られていて、文化庁、観光庁ですので、そことは非常に良好です。

吉田 民主党政権になったときは、”仕分け”などで扱いが悪くなったりしなかったのですか?

今出川 民主党政権ではないですね。比叡山に研修道場があって、それまで毎年、自衛隊の幹部候補生などが100人単位ぐらいで来ていたのですが、社会党の政権に変わったらゼロになるということはありました。

深井 今は復活したのですか?

今出川 完全には復活していませんが、来られてはいます。

神仏の区別なく、いいものをつなぐ「縁」

村山 こういう話は結構たくさんありまして、今、吉田さんが話を向けてくれたことで、僕も大事だなと思っているのが、宗教は、仏教もそうですが、基本的に全部「縁」だと思えるのです。

科学的ではない、理屈ではない、よく分からないものでつながっている。別に布教しているわけではありませんが、特にコロナになって余計人を信用できるのかとか、変に疑心暗鬼になったりするときも、宗教はなんか助けてくれるような気がします。

僕の実家はずっと神主の家だったので、神道になりますが、明治の神仏分離で分けられてしまってから今150年ぐらいですが、それまで神仏はずっと神仏習合で一緒だったわけです。

むしろ最近のほうがイレギュラーで、もともとずっと一緒だったからと思うと、僕は今出川さんと企画を今一緒にやらせていただいたりもして、当たり前に一緒にいたのですが、皆さんの頭の中では、政教分離だし、お寺と神社も分離だし、全部別々だと思うのですが、実はそうではありません。

海外はキリスト教、イスラム教と分かれていてそんな感じがあると思いますが、日本はそれもすべて受け入れて、いいところを全部受け入れて、みんなで共有しようという考えがあると思います。

「この教えを守らないお前は悪だ!」ではなく、先ほど今出川さんがおっしゃったように、自分で修行をして、自分のためにやって、自分のやった修行を周りの人にも分配するという考えで、ずっと1000年ぐらい続いてきたので、一般の宗教と関係のない人にも、親から受け継がれているのではないかなと最近すごく感じます。

それがたぶん「縁」なのかなと思います。

今出川 そうですね。確かに「縁」がすべてかなと私も思っています。いろいろな話をしましたが、今はインターネットがあるので、どこでもいろいろな情報が見られます。でもやはり来てもらわないと分からないということは絶対にあると思いますし、世界観や空気感は来ないと分かりません。

そのために、いろいろなところにアプローチをしていきます。私はきっかけは何でもいいと思っています。いろいろな事業なりイベントなりをやって、そこに来ていただいて、比叡山の空気、世界、教え、そういったものに少しでも触れていただく。その縁をつなぐために私がやっていることが仕事だなと思っています。

バチカンとほぼ同時期に始まった、世界平和への祈り

吉田 比叡山は本当にすごいですね! 私はインターネットにすごく失望しています。なぜかと言うと、インターネットが出来た頃はすごくフラットで、全員がアクセスは平等でした。

でも今、中国やらアメリカやら、政府がお金を投じて、香港はいいとか悪いとかいうTwitterのアカウントをたくさん作って、すごくバイアスを持っています。

当初インターネットはフラットに世界を開くはずだと思ったら、イデオロギーに巻き込まれてしまった。インターネットに接するときに、自分が哲学をしっかり持っていないと、バイアスを持ってしまうというところで時代が逆行している感覚があります。

そういう中で人が関わって、すべてに対してフラットでいられる組織が世界に存在していたんだという(笑)、これは人類の希望じゃないですか。

村山 本当にそう思いますよ。

吉田 料理だろうが会社だろうが全部イデオロギーの戦いで、この前社会心理学者の宮台真司さんが勉強会で、「人間というのは、自分の言葉が正しいと全員思っている精神病患者だ」と言っていました。

動物たちは自分たちの環世界(自分たち独自で構築した世界)の中で過ごしているので、別に自分が正しいとか正しくないとかにあまり興味がありません。他人にも押し付けません。

一方人間は、全員「自分が正しい」と思ってやっていることによって、今また世の中が不穏になっていますよね。

戦後から75年間、日本人は戦争を起こしませんでした。焼き討ちや第二次世界大戦まで日本人は戦乱や戦争を起こしていました。今は75年間戦争をしていないけれども、すぐそこでもう殺し合いが始まっているじゃないですか。

そのことに対してすごく憂いていたのですが、比叡山はすごいですね。もっと世界に広めませんか?

(一同笑)

今出川 そうなのですよ。比叡山宗教サミットをスタートしたのは、まねから始めたのです。やり始めたのはバチカンでした。

比叡山宗教サミットの歴史(天台宗国際平和宗教協力協会)
アッシジの祈り30周年(RELNET) – イタリアでの2016年の第30回世界平和祈りの集会の模様、比叡山との関連も紹介。

毎年ヨーロッパで、ローマ法王の声掛けで宗教者が集まって宗教サミットが行われています。これをなんとか日本でもやりたいと、時の比叡山のトップが日本でやり出しました。バチカンから1年遅れで毎年やっています。

こういうことも、もっと本来は発信していかないといけませんが、なかなかしきれていないのが現状です。

村山 比叡山宗教サミットは今年で33回目で、30年以上やっていますが、皆さん知らないのです。もちろん発信の仕方もありますが、今吉田さんが感動してくれたようなことを、ずっと世の中の人にわざわざ言わなくてもやり続けているところがすごくて、続けるすごさを感じます。

吉田 実際比叡山にお伺いしたときに、昔の方の2ケタ億円の寄付によって塔が建っているというお話を伺いましたが、今その話が腹落ちしましたね。

なぜ10~20億円寄付をして塔を建てているのだろうと思いましたが、世界の光ですね。

村山 インターネットがフラットでスタートして、今いろいろなバイアスがかかって、何か世の中はおかしなことになって、新型コロナウイルスの感染が拡大して、というこのタイミングで、奇しくも来年は最澄さんが亡くなって1200年の記念すべき遠忌(おんき)を迎えます。

そこに信長の焼き討ちから450年の回忌も入ってきますが、先ほどお話をされた因縁がいろいろあったけれども、改めて仲良くしようという年が来年(2021年)すぐそこにあるわけです。

しかも皆さんが住まわれている、この日本の中で、それがあることを知っていただきたい。

来年いろいろな企画を今出川さんとも考えて、先ほどのシンポジウムもそうですが、世界の平和、みんな仲良く、「利他の心」のようなものをそこで体験してもらえるような、比叡山を知ってもらえる、個々それぞれの働いている方々に利用してもらったり活用してもらったりすればいいなと思い、常にこちら側は利他の状態でやっています。

別に「延暦寺にとって」というわけではなく、「皆さんにとって」ということをずっとやっておられることを、皆さんに知ってもらえたらいいなと思います。

ゲストの方には比叡山に来ていただいて、今日はお話を聞いていただいて、すごく吉田さんが開眼されたご様子で良かったです。

(続)

次の記事を読みたい方はこちら

続きは 修行をしても無くせない「with煩悩」と経営者が向き合うには をご覧ください。

新着記事を公式LINEでお知らせしています。友だち申請はこちらから!
ICCの動画コンテンツも充実! YouTubeチャンネルの登録はこちらから!

編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/フローゼ 祥子/戸田 秀成

他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

更新情報はFacebookページのフォローをお願い致します。

Pocket

ICCパートナーズ

ICCパートナーズ(ICC Partners Inc.)は産業を共に創る経営者・経営幹部のためのコミュニティ型カンファレンス「Industry Co-Creation サミット/ICCサミット」の企画・運営および新規事業創出・アライアンスなどのアドバイザー業務を行っています。