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2.メディアはなぜレガシー産業になったのか? PIVOT佐々木さんの考察

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ICC FUKUOKA 2022のセッション「伝統や産業をアップデートするクリエイティビティとは?(90分拡大版)」その②は、まさにそれに取り組む当事者たちが集結!このパートでは、登壇当時、新しいメディアPIVOTを立ち上げたばかりの佐々木 紀彦さんが、”コンテンツアントレプレナー”に注目している理由を語ります。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2023は、2023年2月13日〜2月16日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2022 プレミアム・スポンサーのNOT A HOTELにサポート頂きました。

NOT A HOTEL ロゴ


【登壇者情報】
2022年2月14〜17日開催
ICCサミット FUKUOKA 2022
Session 5C
伝統や産業をアップデートするクリエイティビティとは?(90分拡大版)
Sponsored by NOT A HOTEL

(スピーカー)
国見 昭仁
株式会社2100
CEO

佐々木 紀彦
PIVOT株式会社
代表取締役社長/CEO

佐藤 祐輔
新政酒造株式会社
代表取締役社長 CEO

中川 政七
株式会社 中川政七商店
代表取締役会長

濵渦 伸次
NOT A HOTEL 株式会社
代表取締役CEO

(モデレーター)

岩田 真吾
三星グループ
代表取締役社長

各務 亮
THE KYOTO
Creative Director

「伝統や産業をアップデートするクリエイティビティとは?(90分拡大版)」の配信済み記事一覧


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1つ前の記事
1. 企業の存在意義を拡張するビジネスデザインとは?

本編

メディアはなぜレガシー産業になったのか?

各務 佐々木さん、自己紹介と、何から何へ変えたのか、メディア業界で挑戦していることについて、お話をお願いいたします。

佐々木 今回、伝統というテーマに、メディア業界が入っていること自体が悲しいと思っています。

なぜなら、それくらいレガシー産業になっているということだからです。


佐々木 紀彦 
PIVOT株式会社
代表取締役社長CEO

1979年福岡県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業、スタンフォード大学大学院で修士号取得(国際政治経済専攻)。東洋経済新報社で自動車、IT業界などを担当。2012年に「東洋経済オンライン」編集長に就任し、ビジネス系ウェブサイトNo.1に成長させる。2014年ユーザベースに移籍し、NewsPicks創刊編集長に就任。2015年よりNewsPicks取締役に。2018年に電通との合併会社NewsPicks Studiosを設立し、代表取締役社長CEOに就任。経済コンテンツの動画化をいちはやく手掛け、自らもMCとして出演する。2021年6月にビジネスコンテンツ・プラットフォームを手掛けるPIVOT株式会社を創業。著書に『米国製エリートは本当にすごいのか』『5年後、メディアは稼げるか』『日本3.0』『編集思考』『起業のすすめ さよなら、サラリーマン』がある。

なぜメディアは変わらないのか?

色々な理由がありますが、田中角栄という理由が大きいと私は思っています。

田中角栄(コトバンク)

どういう意味かと言うと、戦後のメディアの形を作ったのはこの人だからです。

彼が郵政大臣や首相だった時にメディアの形を作りましたが、その中でも一番影響が大きかったのは、クロスオーナーシップという仕組みです。

クロスオーナーシップは新聞社、ローカル局、キー局それぞれがお互いに資本参加するということで、力が強くなりすぎるために、ほとんどの先進国では禁止されている仕組みです。

かつ、外資規制もあったため、一つの強いメディアグループが存在して新規参入ができなかった、これが、メディア業界がレガシーとなっている大きな原因だと思っています。

この仕組みにうまく乗ったのが電通ですね。素晴らしいビジネスモデルを作ったと思います。

しかし、それがやっと今、変わり始めており、3つの変化が起こっています。

ヒト、テクノロジー、カネで分けると、ヒトはようやくプロ化、流動化してきました。

テクノロジーは、ネット、スマホ、そしてどうなるか分かりませんがWeb 3ですね。

カネについては、Netflixなどの海外マネーと、我々も活用しているVCマネーが入ってきました。

マスメディアではなくても、カネが入ってくるようになったのです。

これら3つの変化が起こったことで、いよいよアップデートだなと思っています。

今後はクリエイターとユーザー主導の時代に

佐々木 マスに限らず、コンテンツ業界には、メディア、クリエイター、ユーザー、プラットフォームの4つのプレイヤーがいます。

これら4つの主体の力関係が変わってきたのが、この数十年間に起こりました。

インターネットやスマホが登場する以前は、圧倒的にマスメディアが強く、流通を独占していたので、テレビに紐づくクリエイターも同様に強い時代が、日本においては10年くらい前までは続いていたと思います。

スマホとCGM(Consumer Generated Media)の要素のあるSNSが台頭すると、FANGA、つまりGAFAにNetflixを加えたプラットフォームの時代になり、ユーザーの力が上がりましたよね。

これは希望的観測ですが、今後どうなるかと言うと、クリエイターエコノミーと言われるように、クリエイターの力が上がっていくと私は思っています。

流通するものが飽和してきたので、とにかく面白いもの、他にはないものを作ることのできる人の価値が上がるでしょう。

メディアとプラットフォームの役割は今のまま続きますが、クリエイターとユーザーが直接つながる手段が出てきたり、プロデューサーが二者をつなげたりすることで、クリエイターとユーザー主導の時代になると思います。

クリエイティブを活かす経営が世界的なムーブメント

佐々木 国見さんも触れていましたが、業界が変わるためには、クリエイターと経営者のかけ合わせが生まれるかどうかが大事な点です。

今、これらは分断されており、クリエイターは経営には関わっていないですし、経営者もクリエイティブのことを考えていません。

私も、なぜNewsPicksを辞めたのか100回くらい聞かれましたが、当時は作ることばかりのコンテンツバカのような状態で、それだともう業界を変えられないと思ったため、自分が経営に関わってかけ合わせをするしかないと考えたからです。

世界では今、コンテンツアントレプレナーと呼ばれる人がたくさん生まれています。

BTSを作ったHYBEのトップであるパン・シヒョクさんは、もともとは作曲家でありプロデューサーです。

J.Y. Parkや最近の「スター・ウォーズ」シリーズの監督J・J・エイブラムス、日本で一番ヒットしている映画プロデューサーかつ作家の川村元気、ブラッド・ピット…彼らに共通するのは、プロデューサーでありコンテンツクリエイターであり、自分で会社を創った経営者であるということです。

川村元気(allcinema)

『ミナリ』などオスカー有力作を続々制作 ブラッド・ピット率いるプランBの歩み(Real Sound)

そうしなければ、クリエイティブをうまく活かせないからです。

クリエイティブが分からない経営者だとクリエイティブが犠牲になるので、クリエイティブを活かしながら経営で拡張させることが、世界的なムーブメントであり、今後日本でも必要なことだと思います。

先日、クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんに話を聞く機会がありました。

昔、彼が博報堂で働いていた際、自身のアイデアが枯渇することが怖いと感じていたようですが、今は全くないとのことでした。

なぜなら、答えは相手の中にあるので、それを引き出してあげればいいだけだから、と言っていて、私はその通りだなと感じました。

Snow Peakの例も、同じことかもしれないなと思いました。

伝統産業には、良いものが既にたくさんあるので、それらを引き出すだけで十分ではないかと思います。

つまり、プロデューサーのような存在がいれば、もっと繁栄するのではないのでしょうか。

これは、佐藤さんが手がけている今治タオルですね。

コンテンツの力で個人や企業を“ピボット”したい

佐々木 私がPIVOTという会社を創ったのは、コンテンツの力で、日本の個人や企業をピボットしたいという思いからです。

具体的には、これから生まれてくるビジネススターと、クリエイターや制作スタジオをつなげ、それを活かして、活字、漫画、トーク番組、ポッドキャスト、リアリティショー、ドキュメンタリーを作り、アプリやSNSを通じて届けたいと思っています。

ちなみに、スターというのは有名人という意味ではありません。

また、ゆくゆくは、ドラマも作りたいと思っています。

私は、世の中が変わる時に必要なことは、福澤 諭吉から学んでいます。

彼が創った3大事業は、慶應という学校、時事新報というメディア、人々が交流する場である交詢社です(※)。

▶編集注:「時事新報」は1882年に創刊された日刊新聞、「交詢社」は1880年に福澤諭吉が提唱し結成された日本で最初の実業家社交クラブ。

8. 楽天共同創業者 小林正忠さんが選んだ偉人「福沢諭吉」の功績をどれだけ知っていますか?

交詢社は、今は銀座にありますね。

ですから、知識と道徳という意味の智徳、情報、交際のあり方を変え、人々のマインドセットまで変えて初めて、世の中が変わると思っています。

私は、現代においてこれらに取り組みたいと思っています。

PIVOTが経済コンテンツ・アプリを始動、記事連載と映像番組一挙100コンテンツ配信開始(PR TIMES)

よろしくお願いします。

岩田 皆さん、さっそくスマホを出してPivotアプリをダウンロードしてください(笑)

ところで、先ほど、J.Y. Parkの写真があるスライドがありましたよね。

これは、クリエイティブ制作とビジネスマネジメントの両方ができるスーパーマンにならないとダメだという意味ではないと思いますが、彼らについては、両方できているということでしょうか?

佐々木 クリエイティブ制作には才能が必要ですが、経営については、きちんと勉強をすれば、ある程度のレベルにはなれると思っています。

岩田 クリエイターがビジネスやマネジメントを勉強して経営に携わるべき、という話だとすれば、クリエイターではないけれどビジネスが好きな人たちは、今後どうやって生きていけばいいのでしょうか?

佐々木 良い質問ですね(笑)、手法はあると思います。

例えば、本田宗一郎と藤澤武雄(※)みたいな関係で、最高のクリエイターたちの理解者になって一緒に取り組むのです。

▶編集注:藤澤武雄は本田宗一郎の名参謀として本田技研工業の経営全般を取り仕切り、同社を世界的な大企業に育て上げた。

岩田 そうですね。

たしかにファッション業界でも、ルイヴィトンを擁するLVMHはクリエイティブなデザイナーとビジネスマネージャーのコンビネーションで経営するスタイルを仕組み化した、最強のコングロマリットではないかと思います。

各務 クリエイター×起業家というのが、今回目指していることだと思います。

PIVOTにおいて、これを実現するための戦略やコンテンツの考え方について、言える範囲で教えてもらえますか?

佐々木 起業家をスターにしていくことですね。

ICCサミットは盛り上がっていますが、日本にとって起業家やスタートアップは、まだマイナーだと思っています。

ですから、これらをいい意味でマス化していく、エスタブリッシュメントとつなげていくことが大事だと思います。

ICCサミットの場にいると、スタートアップが日本の中心にあると勘違いしてしまうと思いますが、実際は全くそうではないので、もっと広めることが必要です。

各務 この後、その点も皆さんと議論していければと思います。

では佐藤さん、お願いします。

(続)

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続きは 3.本質を求める酒造りで、日本酒をアップデートする新政酒造 佐藤 祐輔さん をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成/大塚 幸

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