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「今、社会課題の現場が熱い」【F17-6E】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!6回シリーズ(その1)は、NPOの人材育成の話に始まり、ソーシャルセクターと企業の付き合い方について議論しました。是非御覧ください。
ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 6E
「今、社会課題の現場が熱い」
(スピーカー)
安部 敏樹
一般社団法人リディラバ 代表理事
株式会社Ridilover 代表取締役社長
三輪 開人
特定非営利法人e-Education
代表理事
(ナビゲーター)
竹内 麻衣
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竹内 麻衣氏(以下、竹内) 本日は宜しくお願いいたします。
三輪 開人氏(以下、三輪) おはようございます。よろしくお願いします。
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三輪 開人
特定非営利法人e-Education
代表理事
1986年生まれ。早稲田大学在学中に税所篤快と共にNPO、e-Educationの前身を設立。バングラデシュの貧しい高校生に映像教育を提供し、大学受験を支援した。1年目から合格者を輩出し「途上国版ドラゴン桜」と呼ばれる。大学卒業後はJICA(国際協力機構)で東南アジア・大洋州の教育案件を担当しながら、NGOの海外事業総括を担当。2013年10月にJICAを退職してe-Educationの活動に専念。14年7月に同団体の代表理事へ就任。これまでに途上国14カ国8000名の中高生に映像授業を届けてきた。2016年、アメリカの経済誌「Forbes」が選ぶアジアを牽引する若手リーダー「Forbes 30 under 30 in Asia」に選出される。
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▶編集注:e-education の事業などについてはこちらをご覧ください
安部 敏樹氏(以下、安部) おはようございます! いい議論にしましょう。
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安部 敏樹
一般社団法人リディラバ 代表理事
株式会社Ridilover 代表取締役社長
東京大学在学中にみんなが社会問題をツアーにして発信・共有するプラットフォーム『リディラバ』を2009年に設立。600名以上の運営会員と150種類以上の社会問題のスタディツアーの実績があり、これまで4000人以上を社会問題の現場に送り込む。また都立中学の修学旅行や企業の研修旅行などにもスタディツアーを提供する。2012年度より東京大学教養学部にて1・2年生向けに社会起業の授業を教え、2014年度より同大学で教員向けにも講義を持つ。特技はマグロを素手で取ること。総務省起業家甲子園日本一、学生起業家選手権優勝、ビジコン奈良ベンチャー部門トップ賞、KDDI∞ラボ第5期最優秀賞など受賞多数。第2回若者旅行を応援する取組表彰において観光庁長官賞(最優秀賞)を受賞。著作に『いつかリーダーになる君たちへ』(日経BP)などがある。
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▶編集注:リディラバ の事業などについてはこちらをご覧ください
三輪 まずお話したいと思っていたことは「NPOで培っている力が意外と企業で役立つ」ということが最近分かってきました。
リディラバの事業の一つである、(社会課題の現場を訪問する)社員研修のようなものがやっと腑に落ちてきましたね。確かに意味があるということが、最近になって理解が追いついてきました。
安部 自分は、企業をもっともっとNPOの領域に送り出してNPOと勝負させないと駄目だなと思っています。一定の競争環境と、共通言語ができて来た状態での協働こそがインパクトが大きい。
竹内 NPOで培ってきた力がビジネスで生きるというのは例えばどんな所ですか?
三輪 新規事業の立ち上げのためにミャンマーに1年間渡航した、e-Education元インターンだった小沼君が良い例になると思うのですが、彼は民間企業に営業職で就職し、新人のMVPを取っています。
彼に話を聞いていると、やっていることはe-Educationと変わらないということでした。
彼は就職後も失敗をした経験が圧倒的に多いらしいのです。営業は成約率以上に成約した本数で勝負が決まりますよね。
分かりやすいことに、失敗をした回数が多ければ多いほど強いです。
例えば優秀な大学を出て勝ち続けており、いかに失敗しないかという自分なりのプライドやこだわりを持っている人が多い中で、彼は新人研修の頃から出禁を食らっていたりとか、失敗を繰り返して営業をとってくる。
彼のような人が、結果的に成績を残しているようです。
思い返すと、自分達のNPOの仲間たちは失敗をあまり恐れないというところがあります。
創業者の税所篤快くんも大手教育系企業に就職後、何度も失敗して一勝したという話を聞ききました。 そういうことが比較的NPOらしいのかなと思いますね。
安部 NPO全体というか、e-Educationらしさな気がします。チャレンジ精神旺盛な人が集まっている。(笑)
三輪 それはありますね。チャレンジするから失敗の数も多くなる。私たちだけではなく、途上国でNPOをやっている人たちはうまくいかないこと、失敗することの方が多い気がします。
安部 それはベンチャー企業でもそうですね。チャレンジしないと死んでしまうというところがあるかもしれません。
三輪 例えば「ミーティングに来てくれなかった場合はどうする?」ということが常に頭の中にあって、営業でも「予定がバッティングした。さあどうする?」というようなことがあると思います。
そういう風なピンチに強い印象はあります。
安部 皆、生命力はありそうですね。
リディラバ人材育成の仕組み
三輪 リディラバのインターンも割とクレイジーで有名かと思いますが。
安部 厳しいとは思いますが、クレイジーかな…。真っ当にやっているつもりなんですけどね(笑)
リディラバはとても理屈っぽい組織なので、まずは理路整然と問題のリサーチができていることが必要ですが、一方で現場に存在する感情のようなものもあって、そこを握って(協力先である)現地を巻き込むという部分がきちんとできないといけません。
複数の適性をまたぐ業務なので、まだまだ試行錯誤中ですがNPOの中では比較的人材育成の仕組みを作れている方だと思います。インターンをやるにあたり、つけなければいけない力の6要素を定義しています。
その6要素の実施の順番も決まっていて、3ヶ月くらいのプログラムの中で、ここの部分はOJTでやって、ここは座学でやるというプログラムを出して、最初は4項目を重点的にやります。
インターンを半年くらい経ってそこがだいぶできてくれば、残りの2項目を埋めるために別の部署に行くことになります。
NPOがそのような人材育成をどれくらいやっているかという話はありそうですね。そういうことをやっていると学生の中で評判になって、学生が集まって好循環に入ります。そうすると優秀な学生をインターンに採用できるようになります。
今のインターンの合格率は50%くらいです。良質な人材をコミットメントも含めて確保した上で採れるようにもっと頑張りたいですね。
三輪 リディラバはインターンを募集するだけで、採用コストはかけていませんよね。
安部 かけていません。自分たちでネットワークを築き上げています。
ETIC.とかSVPのような中間支援団体があって、中間支援団体の周りにNPOが衛星のように回ってるというような「生態系」がありますが、もともと我々はあの生態系の外からやって来ているので、独自で作らざるを得なかったところはありますね。
三輪 しかも、外からやって来たに関わらず、R-SICをやるように、わりとど真ん中にいますよね。
▶︎編集注:R-SIC(Ridilover – Social Issue Conference)はリディラバの事業の一つで、ソーシャルセクター(NPO・社会起業家)を中心としたカンファレンスイベント。
安部 そこは、ど真ん中を取りに行くという選択をしたので。色をつけずに、ど真ん中に。
ソーシャルセクターには「派閥」が存在する
三輪 その辺り、私がまさに海外でやりたいことと同じです。
海外のNGOでは派閥みたいなものが非常にあります。
安部 あるでしょうね。
しかも、海外のNGOは日本のNGOと違って非常に予算感が大きいですね。
三輪 バングラデシュは時価総額という明確な基準がそもそも無いですが、トップ10社の内の9社くらいがNPOです。
かの有名なBRACのような”3大財閥”みたいなところが土地の利権も持っていたりしています。
▶︎編集注:BRAC (bangladesh rural advancement committee) は1972年に創設された、現在世界最大規模となっているNGO。
そこに対して、ソーシャルムーブメントを起こそうとした場合、一度ど真ん中に入り込まないと、どの派閥寄りか」と言われてしまうような状況です。
そういった状況と比較し、安部さんのリディラバはどこにも染まっていないと思いました。
安部 できるかぎり中立に近い立場で、論点整理をする役割というのはは非常に意識しました。
そもそもNPOとかソーシャルセクターという括り方は強引だと思っていて、本来は「介護」とか「子供の貧困」といったようなテーマ別で分かれていくはずです。
ところが、国・自治体や支援団体が法人格で区切って業界を作ったとこから、こうした「ソーシャルセクター」という仕切りが生まれました。
NPOや一般社団法人だから貰える基金等があり、そこに資金が投入されるようになったので、業界として成立しました。
一方で、だからこそ(別法人格の組織同士が)テーマが別になっている場合にお互いの作法を分かっていないので、双方の誤解が生まれやすくなる。そこを埋める共通言語や共通体験を作りたいんですよね。
企業とNPOでは”話している言葉”が噛み合わない
三輪 最近は日本でも海外でも「translation(翻訳)」が必要とよく言っています。
日本でも海外でも、企業とNPOの「普段使っている言葉」が通じなくて、話が噛み合っていないことが非常に多くあります。
同じテーマについて違う言語で話しているようなものです。そこのブリッジになる人が、特に日本のNPO周りに必要な気がします。
安部 必要ですね。
個人のコーディネーションで何とかしようとする人が多すぎますよね。
NPOの業界で「コーディネーターが必要だ」と言うと、「自分はコーディネーターができるから大丈夫」と自信満々で言ってくる人がいますが、あれだけだとやはり弱い。
そもそも個人のコーディネーターに依存して上手くやって来れなかったのがこのソーシャルセクターの30年、40年であり、新しい仕組みが必要じゃないか、と。
僕たちがスタディーツアーという形に非常にこだわったのは、それがほぼ全ての社会課題に当てはめることができるからです。
もちろんその現場をどれだけ(参加者などに)オープンに見せるかは別ですが。
例えば性風俗の労働を問題のテーマにした時に、さすがにそのサービスをツアーに組み込むわけにはいかないので、擬似的に体験できる形や、取材に近いようなスタディーツアーになってきます。
しかし、現地に行き、インプットとフィードバックを入れたスタディツアーというパッケージに落とし込むことはどのような問題に関しても可能です。
それをベースに、現場ごとに、全く違うテーマを扱っているグループでも同じ議題で話ができるようになる。フォーマットとして汎用性が高いことが非常に重要なんです。
フォーマットを揃えて整理をしている前提があったから、R-SICのようなカンファレンスも成り立ちました。
だから「コーディネーション」だけでは厳しいと思います。
ソーシャルセクターが企業とうまく付き合うには?
三輪 今日安部さんに聞きたかったことの1つは、企業の方との交渉についてです。
ラバーズ会員しかり、R-SICへの協賛しかり、いわゆるNPOがしている寄付の交渉とは違うように思います。
▶︎編集注:ラバーズ会員はリディラバの月額課金の「会員」制度。
企業に対するメリットを説明できて交渉が行える人材がNPO側に少ないという印象がありますが、安部さんは非常に企業さんと仲が良いというか、交渉が上手いと思います。
安部 仲は良い方ですね(笑)。
企業に就職したことはないですが、どこの企業にも変わった人というのはいるみたいで。そういう方々にとっても助けてもらっています。
ナビゲーターの竹内さんのところ(インテリジェンス、現パーソルキャリア)からも協賛して頂いているし、色々な企業さんに手伝ってもらっています。
企業と話していくのも、どこから回るのかという順序はあると思います。
R-SICの協賛をどこからとったかという話ですが、最初は今ICCを主催している小林さんと一緒にやろう(後援)という話になり、小林さんがセプテーニの佐藤さん(セプテーニ・ホールディングス代表取締役の佐藤 光紀氏)と話をしてくれたことがきっかけでした。
その後、佐藤さんにメールを入れたところ、5秒後くらいに協賛をしてくださるという返事をもらいました。それが初めての協賛でした。おいおい、そんな簡単に金って動くのか、と衝撃でしたけど。信頼ってこういうものを言うんだなと。
最初は私や小林さんなど、個人に対して応援するという気持ちだったと思います。
そのような小さな始まりは、ある程度「心意気」なのです。
ただ、その心意気で、どこか一社が応援してくれると、他の会社もそれを見て考えてくれるようになります。
ちょっとしたTipsは社長以外の人は社内稟議を通す必要があるので、そのために「必要な言葉」を覚えて使うことが重要です。私はKDDIさんに結構ここら辺を教えてもらった気がします。
社内稟議を通してもらうためのNPOの提案の仕方
安部 日本国内で500兆円くらいお金が流れる中で、試算の仕方は色々ありますが120兆円くらいはガバメントマーケット、自治体や国が扱っているマーケットです。
しかしそうは言ってもそこにはお金が動いているわりには産業になっていなかったという歴史があります。それは何故なのか。
これを企業の人にはきちんと説明します。企業の方は社会課題というのはCSRの対象であって事業のマーケットだとは思っていないことが多いので、そこの認識を変えるところから入っていくのが大事ですね。
あとは、どんなタイムスパンで見てもいいですが、いわゆるプライベートセクターと言われる民間企業と、パブリックセクターと言われる公共集団(国や自治体)の間にどうしてソーシャルセクターが生まれてきたのかという歴史的背景を論理的に説明することが重要です。
▶︎編集注:これらの歴史的背景については後のPartで詳しくお話いただきます。後日の配信をお楽しみに!
企業というのは基本的には一般の消費者心理に比べると論理的ですので、社会課題のこれまでや伸び代についてロジックが明確だと企業の方にも納得してもらえます。
企業としては国内では人口減少の影響により売り上げ維持は厳しい状態ですから、ブルーオーシャンを開拓したい。
その「ブルーオーシャンは社会課題の現場にある」ということは論定的に説明すれば分かってもらえます。
そういうところをきちんと伝えるようにしています。
(続)
編集部よりシリーズの予告
お読み頂き、ありがとうございます。本シリーズは、以下のテーマと日程で配信されます。ぜひ毎日御覧ください!
11月6日:【新】社会課題の現場から① NPOで培ってきた力がビジネスでも生きる【F17-6E #1】
11月7日:社会課題の現場から② ソーシャルセクターの資金調達のコツ
11月8日:社会課題の現場から③ ソーシャルセクターはなぜ生まれてきたのか?
11月9日:社会課題の現場から④ “強者が弱者を救うモデル”はもはや通用しない
11月10日:社会課題の現場から⑤ 社会制度下で自分が社会を変えられる実感が失われている
11月13日:【終】社会課題の現場から⑥ 人類史の中で、君という存在はどういう価値があるのか?
以上
(続)
次の記事を読みたい方はこちら
続きは 社会課題の現場から② ソーシャルセクターの資金調達のコツ をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸
【編集部コメント】
NPOと企業とでは”作法”が全く異なるという話はよく聞く話ですよね。”作法”という意味では、(中身は異なりますが)大企業とスタートアップとの協業においても、同じく”作法”の違いにより困難が伴うという話も思い出されます。(立花)
他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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