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「今、社会課題の現場が熱い」【F17-6E】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!6回シリーズ(その5)は、現場の社会制度下での課題、社会変革のストーリーの普遍性などについて広く議論しました。登壇者のお二人の今後の展望にも注目です。是非御覧ください。
ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 6E
「今、社会課題の現場が熱い」
(スピーカー)
安部 敏樹
一般社団法人リディラバ 代表理事
株式会社Ridilover 代表取締役社長
三輪 開人
特定非営利法人e-Education
代表理事
(ナビゲーター)
竹内 麻衣
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最初の記事
【新】社会課題の現場から① NPOで培ってきた力がビジネスでも生きる【F17-6E #1】
1つ前の記事
社会課題の現場から④ “強者が弱者を救うモデル”はもはや通用しない【F17-6E #4】
本編
安部 もはや(社会課題解決のために)強者が弱者を救うというモデルでは無くなってきています。
誰が弱者なのか強者なのかは分からないもので、結局かき混ぜてみると弱者と思っていた人が人を救うことも増えてくるだろうし、強者の人だけが世界を考えるというスキームもかなり難しいです。
三輪 バングラデシュでもダッカでの襲撃人質テロ事件を起こしたのは、私立のトップ大学の学生でした。彼らも何らかの弱者であったと思います。
その国にいると見えてこない課題がたくさんあると思います。
それは政治のことであったり、彼らなりに悩んでいたことがたくさんあったからこそ生まれてしまった悲劇というか原理主義への傾倒だったと思います。
彼らが外とファーストコンタクトを取った時に、その相手が超過激派のISだったのかもしれませんが、もしここが少し違っていて、リディラバさんしかり、日本のソーシャルセクターの人に繋がっていたら、違った方向で国を変えたいということにもなったのかなと考えます。
社会制度を通して自分が社会を変えられる実感が失われている
安部 昨日メディアのセッションがあったのですが、もっと踏み込んで欲しいと思ったことがありました。
印刷物や新聞でも良いですが、メディアがこれまでやってきたのは、人に情報を与えることによって人に「できること」を増やしたことです。
インターネットもそのような側面が多かったのですが、今はそれが全く逆の方向に作用してしまっています。
つまり、情報は増えるけれども、人ができる範囲は自分の中でどんどん小さくなっていくという問題が今のメディアにはあると私は思っています。
IS(イスラム国)の話もそうだと思います。
今の社会制度を通して自分が社会を変えていけるという実感がないからあのようなアクションに走る訳です。
「政治にアクションしたら何かが変えられる訳ではない。だから銃を持って革命を起こして新しい仕組みを作るしかない」となります。
世界中で個人が主体的に社会を変えていく意識がどんどん下がっていると思います。
それが社会の寛容性の低下にも繋がっていて、それが溜まってくると、ISやトランプ現象等、鬱憤が急に爆発した形として出て来て急に爆発してまたそれが変化して悲劇が生まれるのではないかと思います。
人間は巨大な社会システムに対してできることは何もないと思うと、その諦めから来る次の行動というのは、引きこもりかもしれないし、銃を持って人を虐殺することかもしれません。
それとどう向き合うか、我々が世の中を作っていく際に、世の中の一員として社会を支えていく際に、もっと真剣に考えていかないといけないところなのではないかと思います。
社会変革プロセスの可視化が別の社会を変える
三輪 僕たちはバングラデシュで教育メディアを立ち上げている最中で、1つ限界を感じていることがあります。
例えばバングラデシュという国の中で、アンチISみたいなものが構造的に起こしにくいということです。
ものすごい極論になりますが、バングラデシュの人たちにとって、イスラム教自体を否定することはとても難しく、そんなイスラム教の教えを引用しているISを全て否定することはきっと難しいでしょう。
しかし、外の社会課題と組み合わせることによって緩衝材にもなるし、中和剤にもなり得ます。
例えば、部族差別等の歴史があったとしたら、それに立ち向かった人たちがいて、最終的に彼らが社会構造を変えたというようなことが仮にあるとします。
そのようなストーリーは、直接には語っていないけれども結果的に社会の課題を解決しようと思っている人たちに響く可能性があります。
それが昔では風刺画や、もしかしたら童話のような形で広まっていたかもしれないものが、今ではリアルな体験談や歴史として、社会が変わったプロセスは可視化されているし、物語化されています。
そういうものを国を超える形で繋いであげた時に、新しい社会変化のあり方があるのではないかと考えています。
だからISの問題に対して今僕らなりに打ち込める1つの手だと思っているのは、違う側面を持っているけれども本質的には非常に近いもののストーリーを国内で探すのではなく、海外にそれに近いものが、海外に根付く形で届けることができればメディアの可能性が増えると思っています。
課題の現場を繋げることにはリスクもある
安部 良いところ・悪いところあると思います。
今の話を聞いて思いついたのは、アグレッシブに日本から海外に行ってネットワークを作ってたのは歴史上の近い時代でいうとで誰かと考えると、日本赤軍だと思いました。
▶編集注:日本赤軍とは、1971年から2001年まで存在した日本の新左翼系団体、武装集団。日本革命を世界革命の一環と位置付け、中東など海外に拠点を置き、1970年代から1980年代にかけて多数の武装闘争事件・テロ事件を起こした(Wikipedia)
彼らは非常にアグレッシブでしたよね。
何と結びつくかによって、社会の変化は全く違うと思います。
例えば戦前の日本で、日本が戦争に走った1つの側面としてあったのは、日本の軍部と農村が結びついたことが大きい原動力になったのですよね。
当時の農村地域は貧困地域でもありました。そしてその貧困地域を良くするというのが軍部の掲げた建前です。
それ故に農村出身の兵隊もたくさん入ったし、戦争への国民の支持を得て、日中戦争・太平洋戦争があったということがあります。
私たちは社会問題をフィールドにしている以上、貧困を目にすることもあり、それが何と結びつくと怖くて、何と結びつくと解決に向かうのかは慎重に見ていかなければいけないと思います。
繋がったことによってエンパワーされて戦争や殺し合いに繋がった事例もたくさんあります。
三輪 何が正解なのかは最終的にはその国の人たちが個人の意志で決めていくものだと思いますが、少なくともよそ者から見て、こことここが結びついて欲しくないというとことはあります。
それは日本の歴史のアンチテーゼなのかもしれませんが。
もしかしたらこことここが繋がったら良い変化が起こったという歴史が日本や他の国にあるのであれば、ぜひその可能性は作っていきたいと思っています。
「社会課題が熱い」ということでしたが、気づいたら、話がどこに向かっているのか分からなくなってきましたね(笑)
安部 質問の抽象度が高かったので好きにやらせてもらっています(笑)
課題解決を加速していくための展望
竹内 最後に課題解決を加速していくための、お二人の今後の戦略や展望をお聞きしたいです。
三輪 私は割とシンプルです。
国際協力という文脈で私たちは活動しているので、最終的には「アクターをどれだけ増やせるか」が社会課題の解決を加速する装置になると思っています。
先ほど述べましたように、民間企業にとっても社会課題に入るメリットは金銭面でもあります。NPOの人たちも更に入り込める余地があります。
だからお互いにブレーキを踏みあうのではなく、アクセルを踏み合えば、小さな衝突があったとしても最終的には社会課題が解決するスピードは相当上がっていくのかと思います。
そういうことを途上国にいるほど感じます。
安部さんたちと似ていますが、民間企業の人たちがもっと社会課題に入りやすくなり、NPOの人たちももっと胸を張って社会課題に挑んでいけるための橋になりたいということが、今個人的に思っていることです。
社会課題にアクティブになれる人を増やす
安部 まず、どうやって人をアクティブに、主体的にするのかという話が1つあると思っています。
社会課題について現地で学ぶというスタディツアーを行なっていていいなと思うのは、現場に行くと参加者の当事者意識が非常に喚起されるということです。
この問題を何とかしたい、自分でも関わりたいという気持ちが芽生えます。野生に帰るというか、何とかしなければいけないという高まる何かがあります。
メディアの話でも少ししましたが、基本的に人は情報が増えれば増えるほど受け身になってきます。
しかし、受け身になっていては社会は動きません。自分からアクティブになって関わっていかないと世の中は前に進まないし、問題も解決しません。
そのため、情報を伝えるということと、人をアクティブにするということをどうやって両立させながら社会を支える仕組みになるかということが私の中で明確な1つの課題です。
そのため私たちは、情報をメディアとして伝えていくということと、現場に行って次のアクションを起こしてもらうことをやっています。
企業に行ってもらえばそれは事業活動にしてもらえますし、中高生であれば現場から学び将来考える機会としてもらうことができます。個人の人であればそれぞれが持つ問題意識をベースに動いて貰えばいいと思います。
あくまで知るだけでなく、何かしらその人のアクティブさがその人の中で生まれる仕組みを作りたいです。量的にも、社会にインパクトになる形で出していきたいと思っています。
今、我々が社会課題の現場に送っているのは年間1500人から2000人くらいですが、これを何年後には数十万人にしたいという気持ちがあります。
それによりインパクトの量を増やすということもそうですし、その結果アクティブになって社会の何かを変えていく人が出てくるものです。
しかも、先ほど言った(パブリックセクターが従来担っていた役である)探索(社会課題の発見)と見積もりという2つが必要な部分が増えてくるので、世界中の探索と見積もりが非常にしやすいプラットフォームとして機能したらいいというのが私個人の今後の展望としてあります。
(続)
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続きは 社会課題の現場から⑥ 人類史の中で君という存在はどういう価値があるのか? をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸
【編集部コメント】
「現状の社会制度を通して自分が社会を変えていけるという実感を持てない」という非常に大きな問題意識に、共感しつつも、これをどのようにときほぐしていけばよいのだろうとも思いました。(立花)
続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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