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ICC KYOTO 2024の特別プログラム決定! 普通のインテリアECじゃない「友安製作所」を訪問しました

ICCサミットはクラフテッド・カタパルトや、デザイン&イノベーションやフード&ドリンクのアワードなどを通して、歴史や伝統、アイデアにあふれた素晴らしいものづくりをご紹介しています。2024年4月某日、関西を訪れたICCチーム一行は、クラフテッド・カタパルトで登壇した「友安製作所」を訪問しました。プレゼンではわからなかった社内の雰囲気や、事業の展望、阿倍野のカフェまでお邪魔しました。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


ものづくりCo-Creation密集地、八尾へ

 4月某日、ICC一行は9月のICCサミット下見のために京都を訪れました。ICC KYOTO 2024の最終日、9月5日に実施する大人の社会見学「特別プログラム」の下見候補として上がったのが大阪八尾にある友安製作所です。

 八尾といえば、以前に訪問した錦城護謨木村石鹸、過去の特別プログラムでも訪問した藤田金属などと同じエリアにあり、錦城護謨の前まで来たので太田 泰造さんはいないかな?と訪ねてみたところ……。

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太田さんだけでなく、”割れない”仲間の石川樹脂工業(ARAS)の石川 勤さんまでいらっしゃいました。そのうち素敵なCo-Creationのお話が聞けそうです。

「石川樹脂工業」は、1,000回落としても割れない食器「ARAS」を通して樹脂の可能性を世の中に拡げていく(ICC FUKUOKA 2024)

友安製作所を初訪問

錦城護謨から歩いても10分くらいかという近さの友安製作所は、建物の外観がインダストリアルな雰囲気でカッコいいです。

マットなブルーに塗られたオフィス棟にグラフィティの描かれたコンテナ、ペイントされた社用車など、この一角だけ周囲の工場群と別世界です。この写真の奥側には併設されている昔ながらの工場、事業で展開しているコワーキングスペースのオフィスもあります。

迎えてくださった友安 啓則さんに早速お話をうかがいましょう。

「もともとネジや金具のカーテンフックを東大阪で製造していました。八尾に移って、それが金属から樹脂プラスチックに変わっていく中で需要がなくなってしまい、もうやめようかというタイミングで私が入ったんです。当時は従業員は私含めて5名、平均年齢は60歳越えで、最初はこの建物もありませんでした」

お話を聞いたのは、ショールームも兼ねた1室1室内装や家具の違うミーティングスペース。テーブルの天板も、椅子の張り地も、壁紙も1つとして同じものはありません。これはすべて商材を使ったものです。

2004年に友安さんが働き始めてインテリアの輸入商材を手掛けるようになり、ものづくりに回帰する流れは、クラフテッド・カタパルトのプレゼンで語られた通り。

「友安製作所」は“描く・作る・見せる・売る”を全て行うものづくりで、技術力を発信する製造業を目指す(ICC FUKUOKA 2024)

6畳くらいのところで20人で仕事をしていたといいますが、今のオフィスのフロアは見渡すような広さ。年に1回の社員の皆さんとの面談で小さな要望を1つ1つすくい上げて実現していき、ある年に出た「人のパーソナルスペースは120cm、どれだけ売上を達成すればその幅のデスクがもらえるか?」という質問に対して3年後の目標値を伝えたところ、半年で達成したのだそうです。

2階への階段からオフィスフロアを一望

「今、うちの会社で一番伸びてるのが、レンタルスペース事業の『カシカシ』で、貸したい人と借りたい人のマッチングプラットフォームを僕たちが運営しています」

インテリアのEC事業のほかに、ウェブサイトを見てみると、カフェ3店工務店業、メディア業、まちづくり、ホームパーティー推進委員会、そしてカタパルトでも話していたようなものづくりにも再度着手。果たして何屋なの?と思う展開ですが、これはすべてつながっています。

「僕らの事業のマーケットもシュリンクしていまして、その理由は人口減少。直近5年間で400万人ぐらい人が減っていて、そこでどう事業を伸ばしていくか考えた時に、強制的に需要を作るしかない。

そこで、ホームパーティーで家の中に人を入れることによって強制的な需要が生まれるんじゃないかと。いつ家をきれいにするかというと人が来る時ですし、人が来ることを楽しみながらきれいを常態化できる、それを文化化するということを考えました。

そうすれば僕たちの商品が動きます。これに賛同してくれてる会社さんを募ってみたところ、シャープさんや象印さん、ガスの岩谷さんとか今150 社ぐらいあります」

ホームパーティー以外にも、友安さんは理想の絵を描いて人を巻き込むビジネスに長けていて、カフェの内装は値札がすべて付いた体験型ショールームを兼ねた形、もとは外部に委託していたのを自らやるようになった工務店、活動を伝えるメディア、自分たちを含めものづくりをオープンファクトリーでPRするまちづくりと、聞けば納得のつながりがあります。

レンタルスペース事業は、物件のオーナーにECの割引クーポンを渡すだけで4割以上が何らかの商品を利用しているとのこと、まちづくり事業はオフィスを通じてブランディングをしたい企業と接点ができ、カフェは商品購入だけでなく、内装を気に入った企業が工務店を問い合わせるという具合です。

実際引き合いも増えており、リノベーション案件は毎月4〜5件あるそうで、その一方で一度は諦めた自社のものづくり(トモヤス家具製作所)も、売上の10%を占めるようになっているというからすごいです。

ふと壁を見上げると、マグネットシートの貼り付け実験が行われていたり、立体的に見える壁紙だったりと、気になるものがたくさんあります。そこで友安さんにオフィスや工場を案内していただくことにしました。

オフィスと工場を見学

ガラスのパーテーションや床材、壁紙、スイッチカバーや椅子もすべて商品で、実用例が見られるのがいい感じです。オフィスや店舗の什器もオーダーメイドで作っているとのことです。

工場はきわめてクラシック。現在も金属製のフックや部品、メタルのプレートや真鍮のノブを作っています。この工場で機械工として働いていた人たちが、自分たちでデザインした家具を作るという事業を始めた結果、勢い余って芸術家かクリエイターかというアイテムが工場内そこここにあります。

自分たちの社名入りのアイテム(友安さんも知らないうちに増えているそう)や、腕に任せて木彫りを掘ったりして、会社のスローガンのごとく、まるで遊ぶように仕事をしている様子がうかがえます。フォルムが美しい椅子というオーダーに見事に応える美大卒の社員さんもいるそうで、これは働いていて楽しいんだろうなという雰囲気が伝わってきます。

楽しいといえば、こちら。エイプリルフールの企画として400万1円で「人をダメにするヒロノリ」(※友安さんの下の名前)という商品名のパウダービーズクッションをECサイトに掲載したところ、数千人が買い物カゴに入れ、数人が決済してしまい慌てたのだそう。ちなみにこの企画、前年は木工職人による力作オセロ「どっちもヒロノリ」。友安さん、愛されてます!z

社内はカメラマンを抱えていて、ウェブサイトで見るような商品の使用イメージがわかるレイアウトがたくさんありました。DIY好きの人は、このスタジオを見るとウズウズするんじゃないでしょうか。

社員のみなさんがランチ休憩していたスペースも、扱っている商品がさまざまに使われています。カーテン、3Dの壁紙、床材、照明器具、椅子、テーブルトップにテーブルの脚、塗るとテクスチャーが変わって見える塗料、メッシュで電波を妨げないWiFiルーターのボックスなどなど。

こんな素敵なカフェのような空間で休憩やランチができるのも良いですし、実際に使い心地がわかると、商品に対する理解や愛情も深まりそうです。コロナ禍で特需のように盛り上がったDIYブームですが、人を迎える空間を素敵にというのは永遠のテーマ。それをサポートするのが友安さんたちなのです。

ものづくりを世界に届ける道を作る

さらに驚かされたのは、友安さんが語った今後の計画です。

「今、世界進出しようとしていまして、進出すると言っても、他の会社さんみたいにお店を作るんじゃなくて、物流拠点を作りたいと思っています。

僕らみたいな小さい会社が世界に出るときに、バイオーダーだと輸送とロジスティックスで、めちゃくちゃ時間とお金がかかってしまう。JETROなどが展示会に斡旋して、日本のものが選ばれて売れるんですけど、結局価格が高くなって買ってもらえないという話をいろいろ聞くんです。

僕らは今、アメリカの僕らの仕入れ会社から19カ国45社ぐらいと商品を取引してるので、そこに物流拠点を作らせてもらって、いろんなスモールファクトリーのメイドインジャパンのクラフトマンシップの商品を、僕らが海外に代行で販売と物流をやらせてもらえるように画策しています。

すでに台湾でも始めていて、僕らの台湾のスタッフが出していきます。ニューヨークとポートランドとドイツで今年、土台を作るんですけど、そこはうちの仕入先さん、パートナー企業さんが全部管理などをやってくれるので、月々5万円ぐらいで海外に倉庫を持ちませんか?という話をすると、それで出荷してくれるならやりたいと結構乗っかってきてくれているんです。

太田さん(錦城護謨)も、他のところも、ものづくり企業はすごいものを作る。僕は一度作るのを諦めて売ることに特化した経験があるので、売り方を知らないのが非常にもったいないと昔から思っていました。

売ることよりも作る方が全然難しくて、でもなぜか作る人は売ることができないので、僕らがお手伝いする。もっとその日本のものづくりを海外に出していきたいなというのでやっています」

海外で経営を学び、そのまま就職するはずが父親と一緒に働きたくて家業に戻った友安さん。会社のミッションを「世界中の人々の人生の一部に、わたしたちの製品・サービスを」としていますが、その”わたしたち”が自社だけでなく、ものづくりをする仲間たちまで広がっているようです。

この他にもいろいろな話を聞いたのですが、この友安さんが作っているものづくり物流プラットフォーム、うまくいく予感しかしません。世界に向けて、世界に誇れるものを届ける道を作る、それをものづくりの凄さをわかっている人が作るというのは、理想的なことのように思えます。

友安さん、製作所のみなさま、訪問のお時間をいただきましてありがとうございました!

Cafe&Barでショップとバーガーを確認 

友安さんが「味には自信があるので、ぜひ食べてほしい」というハンバーガーを食べに、ICC一行は阿倍野にある「友安製作所Cafe&Bar 阿倍野店」まで足を伸ばしました。

日生劇場や京都開催時のICCサミットのメイン会場であるウェスティン都ホテルなどを手掛けた建築家の村野 藤吾氏の旧事務所を生かした形でリノベーションし、レンタルスペースとショップ、カフェ&バーを作り、インテリアDIYのワークショップなども開催しています。平日でも行列ができるほどの人気店で、本当に阿倍野のど真ん中にあります。

入口すぐ横手にはカッコいいカウンターのバーがあり、一杯飲みながら席が空くのを待てます。平日の微妙な時間帯ということもあってか、こんなに空いていることも珍しいのだそう。

お店は外側から見るよりもずっと広く、高い天井と明るい中庭で、ここが阿倍野の駅チカだということを忘れそうな空間です。もちろん、インテリアのありとあらゆるものが友安製作所です。一角にはECサイトで売っている食器なども並んでおり、手に取ったり購入することもできます。

今回、特別に2階のショールームなどもご案内いただきました。ここからは写真中心でお届けします。歴史的建築を活かしながら、さまざまなルームプランやパーツが集められ並べられており圧倒されます。インテリアやDIYがお好きな方、ぜひ写真を拡大してご覧くださいね!

実例インテリアとして参考になるうえ、友安製作所の世界観も伝わります。お買い物欲を抑えるのが大変です!

再びカフェに戻ると、友安さんおすすめのハンバーガーがやってました。アメリカに住んでいたこともあり、こだわりがあるというハンバーガーは「お肉も大事だけど、実はバンズが大事。天然酵母から作っています」とのこと。

いや、このハンバーガー、本当に美味しいんです。ICCオフィスの近くにはトランプ元大統領が食べたというバーガーショップなどもあるのですが、一行は「過去一美味しいかも!」と言いながらぺろりと完食しました。阿倍野にお寄りの際、ハンバーガーを食べたいときは自信を持ってお勧めします。ちなみに福岡と東京にもお店があります。

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印象に残った話はもう1つあって、友安さんがICC小林に向けてカタパルトに登壇した感謝を伝えたときのことでした。

「天狗になっていたつもりもなかったんですけど、ICCに行って打ちのめされて、本当に、すごい勉強になったんですよ。なんか人生観が変わったというか、(小林)雅さんをはじめ、来ているみなさんの事業への向き合い方がすごかった。自分の力のなさを痛感できたのもよかったです。

僕のプレゼンは、一方的に伝えたいことをずっとしゃべっていたと反省しました。それからいろんなところを少し変えてみたら、『なんかいいね』と言ってもらえるようになったんです。ちょっとしたことでこんなにも変わるし、ICCで出会えた人たちはみんなすごい方だった。

デザイン&イノベーションアワードの会場で隣のブースだった石川樹脂工業の石川さんは、ともに初参加だったので最初はどうしていいかわからないねという話をしながらすごく気が合って、出会えて本当に良かったと思っています。今度一緒に台湾でもやりますが、単純に商売につながるだけじゃなく、人としての刺激をめちゃくちゃ受けました。

すごい、よかったです。本当に。木村石鹸の木村さんや太田さんがとかICC、ICCといつも言うのはそういうことかと。

こういったピッチコンテストでも、ものづくりは結構対象外です。僕が代表理事をやっているみせるばやおは140社ぐらいが入っていて、そこは全部ものすごい企業さんばっかりなんですけど、大人の人って『勉強しないと工場で働くことになるよ』って言っちゃうんですよ。

それを工場で働くイコールかっこいいという意識になればいい。ドイツとかでは工場で働くのはステータスであったりもするんです。そのぐらい日本の製造業を盛り上げたいなと思っているので、それを発表できる場、お伝えできる場があるのはすごくありがたいです。

ICCから帰ってきて、僕のプレゼンはダメだったけど、友安製作所がダメだったわけじゃないですと伝えて、もう一度、一緒にそれをみんなでわかりやすくしたいと考えて、動画ができたんですよ。ナレーションも含め、3日ぐらいで作ってくれました。もしよかったら見てくださいませんか?」

そしてICC一行が見たのは、友安製作所が大事にしていることを動画にぎゅっと凝縮したものでした。「世界中の人々の人生に彩りを」「生きるをあそぶ」を真剣に考えた自分たちは、どんなことに誇りを持っているのかを詰め込んだような内容で、見終わったあとには自然に拍手が起こりました。

スペースの都合上ご紹介できていない面白い話は他にもあり、全部見どころのようなオフィスや工場、阿倍野のカフェも見応え充分です。ICC KYOTO 2024では、スモールビジネスを束ねる発想力、ものづくりへの愛と尊敬にあふれた友安製作所を見学する特別プログラムを予定しています。ぜひご期待ください! 以上現場から浅郷がお送りしました。

(終)

編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成

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