去る7月5日木曜日、第2回目となるICCビジネス・スタディツアーが東京郊外にあるクラシコムのオフィスで行われました。「北欧、暮らしの道具店」のブランド創りや代表取締役社長の青木耕平さんに共感する企業人は多く、参加してくださったのは23人の方々。想像を遥かに超えて盛り上がった模様をお伝えいたします。
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【開催情報】
2018年7月5日
ICCビジネス・スタディツアーvol.2
クラシコム(「北欧、暮らしの道具店」)
@クラシコム オフィス
【ご参加いただいた方々】
青木 優 株式会社MATCHA 代表取締役
秋元 里奈 株式会社ビビッドガーデン 代表取締役社長
井野 英隆 augment5 Inc. 代表
岩田 真吾 三星毛糸株式会社 代表取締役社長
占部 伸一郎 コーポレイトディレクション パートナー
大湯 俊介 Connehito株式会社 代表取締役社長
緒方 恵 株式会社中川政七商店 取締役 コミュニケーション本部 本部長
柏谷 泰行 株式会社mellow 代表取締役
久保 裕丈 株式会社CLAS 代表取締役社長
柴田 可那子 寺田倉庫株式会社
MINIKURAグループサブリーダー兼MINIKURAチームリーダー
西村 俊彦 ベネッセコーポレーション Kids&Family本部長
長谷川 秀樹 株式会社東急ハンズ 執行役員 オムニチャネル推進部長
浜田 敬子 Business Insider Japan 統括編集長
濱野 幸介 プリズマティクス株式会社 代表取締役
林 直孝 株式会社パルコ 執行役 グループICT戦略室担当
松岡 剛志 株式会社レクター 代表取締役社長
松本 龍祐 株式会社メルペイ 取締役CPO
水谷 寿美 vivit株式会社 代表取締役
森 光太郎 株式会社リトル・ママ 代表取締役
山口 翔 株式会社グライダーアソシエイツ 上席執行役員CMO
山口 義宏 インサイトフォース株式会社 代表取締役
山田 敏夫 ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役
世一 英仁 株式会社キュービック 代表取締役
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▶クラシコム青木さんの関連記事はこちらをご覧ください。
▶過去のスタディツアーの記事はこちらをご覧ください。
少人数だから話が深くなる
初めに申し上げておくと、この日議論された内容について、あまり詳細をお伝えすることはできません。なぜなら、せっかくのスモールグループでの討論なので、この場だから話せる内容を、クラシコム青木さんが率直すぎるほどに語ってくださったからです。
すべての質問に対し青木さんが答えを差し控えることはなく、たびたび参加者からは驚きの声が上がり、質問や議論がさらに白熱していきました。その熱気を少しでもお伝えしたいと思います。
「食べチョク」を運営するビビッドガーデンの秋元 里奈さんは「半端ない」Tシャツで登場
遠くは岐阜からも! クラシコム本社に23人が結集
クラシコムのオフィスは、東京の中心部から電車で40分ほど。この日一番遠くからいらっしゃったのは、岐阜から来た三星毛糸株式会社の岩田 真吾さん。みなさん集合時間になると続々と集まってきます。オフィスの場所は非公開のため、駅からICCのスタッフが順路に立ち、ご案内させていただきました。
16時になると自己紹介からスタート。そのなかで目立ったのは「青木さんのファン」という声です。クラシコムからコンテンツ創り、ブランド創りに限らず、組織作りやtoBでの伝え方を学びたいという方も。業種はコンサルから小売、EC、ファッションビル、物づくり、育児メディア、決済事業など実に様々です。
「ちょっと前は女性にバラを渡す仕事をアマゾンプライムでやっていました」(※)と、自己紹介でその場を沸かせたのは、株式会社CLASで、家具レンタルビジネスを手がける久保 裕丈さん。
▶編集注:久保さんはAmazonプライムで「バチェラー・ジャパン シーズン1」に出演されていました。
東急ハンズの長谷川さんは「クラシコムに買収してもらえないかなぁと思ってやってきました(笑)」と、冗談で皆を笑わせ、コーポレイトディレクションの占部さんは「コンサルタントとして、とてもユニークな会社なのでお客さんに紹介したいのですが、普通の会社がクラシコムさんを真似すると失敗するような気がします。今日は参加者のみなさんがクラシコムをどう見ているか知りたくて来ました」と言います。
自己紹介が終わったら、早速オフィス見学です。
クラシコムのオフィスを見学する
オフィスフロアに移動すると、ミーティングスペースで活発な打ち合わせが行われています。青木さんによると、社員のおよそ4割がコンテンツ作りができて、半数がEC運営ができるとのこと。
オフィスフロアのキッチンで、社食制度やチームの仕事分担などを聞きました
コンテンツ作りは2グループに分かれて作業をミラーリングしており、企画会議よりも振り返りの会議に時間をより費やすそうです。通常のコンテンツと広告案件に矛盾がない理由なども説明され、普通のメディア運営では住み分けが悩みどころとなりますが、クラシコムにそれは存在しないそうです。
次に「北欧、暮らしの道具店」のサイトの雰囲気が広がる撮影スタジオへ。自然と「ブランドを表現できる人をどうやって採用しているのか」という話になります。
「社員にフルスタックを求め、ポテンシャルを重視する」という答えはシンプルですが、その採用プロセスは他社にはないもの。社員はほぼ「北欧、暮らしの道具店」の元お客様ですが、さらにカルチャーフィットしている人を見極め、半年間かけて育てていくプロセスは精度が高く、ミスマッチや離職も少ないのだとか。
青木さんの説明をスマホでメモを取りながらも、参加者のみなさんの表情から聞きたい質問が湧き上がってくる様子が伝わってきます。これは質疑応答が盛り上がりそうです。
クラシコムの採用や人事評価を聞く
再びディスカッションを行う部屋に戻ると、早速質疑応答が始まりました。
「厳選採用ということですが、事業が急成長しているときはどう対応しているのか」(賛同者多数)
「ミスジャッジで採用した人材に対して、どう対応する?」
「センスがいい人は、その一方で考え方とか人間性に問題はないのか?」
「人事評価の基準は?」
「皆がスキルや経験を上げていき、グレードが上部で詰まってしまうことはないのか?」
そんな質問に対し、青木さんはよどみなく次々と回答。その枝葉末節まで”クラシコム・イズム”が行き渡っているので、「普通の企業なら…」という質問が、徐々に減っていきます。尋ねる前に「クラシコムならばそこで悩まないだろう」という理解が、参加者にも浸透してきているのがわかります。
「プロを集める選択肢がなかったので、クラシコムは『がんばれベアーズ』方式です」と青木さん
組織作りはどう行っているのか
次に、4つのグループに分かれてフリーディスカッションの時間です。同じテーブルに座った人たちと自己紹介をしあいながら、話は自然と採用や組織の話になります。
松本さん 面接のときは、メルカリをどれだけ使っているか、そのユーザー感覚を見たりします。また、社内制度や福利厚生に先に投資しますね。獲得より持続性のアセットに投資します。お話を聞くと、エンゲージの高い人を厳選するクラシコムと、入社後にエンゲージを高めようとするメルカリは対極にありますね。
岩田さん いい人材といっても、すぐ見つかるのでしょうか? どうにも足りないときはどうしますか? 青木さんに聞いてみましょう!
青木さん うちは最初のアルバイトの募集から、50人の応募が来たのです…。最初の正社員に100人の応募が来ましたし…。(一同驚)
柴田さん 女性社員が多いと、派閥ができませんか?
青木さん 意外と少ないですね。派閥ができるのは、自分を守る必要があるからではないでしょうか。そういう心配に対して、圧倒的に安心感を与えるようにしています。
ライフイベントで働けなくなるかもしれないなど、先が見えないとテンションが下がるじゃないですか。問題があるのならば、長期に渡って会社が誠意をもって対応するというコンセンサスを事前にとっておきます。
組織についての話は尽きることがありません。こんなときどうする?というのを、同じグループの人に尋ねたり、青木さんに質問しています。テーブルごとに議論した内容を発表したあとは、クラシコムで話し合うならこのテーマは欠かせない「ファン作り」です。まずは青木さんの説明からお聞きしましょう。
クラシコムの「ファン作り」とは
青木さん 自分たちがこういう風に思われたいというエピソードを積み上げていくことだと思っています。ベンツがいい車だとしたら、「あの映画に出ていた」「友達の父親が乗っていた」などそれにまつわるエピソードが想起されること。そしてそのエピソードが狂っていないといけない。
「今日はオフレコトークでいきます」と、率直に語っていただきました
気をつけないといけないのは、ブランドは、儲かって見えると価値が下がること。たとえば遊園地の入場ゲートに目標来場数と入場数が掲げられていたら、気分が台無しです。
商品にスペック以上の価値を感じてもらい、どう見ても損して見える、この値段で大丈夫? それをやって得するの?というふうに狂わなければいけない。たとえば大企業がベンチャーを高額で買収するのも、そういうことだと思います。
そのためのポイントとして「萌えている人しか萌やせない」「とにかく最初から楽しそうにやる」「自分が上がらないと上がれない」ということが青木さんから語られました。
そこで山田さんから「新規のお客さんへのコミュニケーションはどうしているのですか?」と質問です。
ファッションブランド「ファクトリエ」を運営するライフスタイルアクセントの山田 敏夫さん
青木さん それがどうして増えているのか、実はわかっていないんです。先日、インスタグラムの講座に行って、若い人たちにノウハウを聞かれたのですが、その人達のほうがよほどいろんなことを知っていました。僕らはただ黙々とやっているだけで、インスタ経由、LINE経由の売上目標も持っていません。伝えたいことが届けば売上は上がると思っています。
そもそも売上目標を知っているのは、社内で4人ぐらいかもしれません。
「届けば売上が上がる? 売上目標を知っているのは4人だけ?」参加者のみなさんが衝撃を受けています。席替えをして、ディスカッションパート2が始まりました。
持っているだけ、使って見せる
〜〜〜〜ディスカッションの内容はあまりに濃いため割愛します〜〜〜〜
ディスカッションタイムが終わると、再び各テーブルから学んだことを発表です。
大湯さん 青木さんに入っていただいて話して面白かったのは、10年位、ユーザーコミュニケーションに消極的だったという話です。1対Nの強いブランドを創っていくなかで、ユーザーとの距離感をどうしていくかがとても興味深かったです。コミュニケーションとブランド、ビジネスの関係性について宿題として考えていきたいと思いました。
緒方さん コアキーワードとして「ディズニーランドはインタラクティブではない」が残りました。
久保さん 我々の将来の話にもなりました。たとえばフードトラックで狂うとは何ぞや?とか。
(一同笑)
家具のレンタルもどこから狂ったことになるのか? 100万円の家具なら期待を超えるのか? 考えるきっかけをいただきました。
林さん 一度は狂うことができても、狂い続けることは難しいという話にもなりましたね。
CLAS久保さん、パルコの林さん、レクターの松岡さん、メルペイの松本さん、Mellowの柏谷さんが、自社の「狂い方」を検討中
山口 義宏さん 合議制の会社だと、なかなか狂えないところがあります。オーナーカンパニーでまれに狂える会社もありますが。
青木さん たしかに小さい会社のほうが狂いやすいですね。アップル本社のUFOのようなオフィスは、狂っている印象を与えるためかなと個人的にに思っています。稼いでも溜め込まないというか、「持っているなら持っているだけ、使って見せる」ことが重要な気がしています。アップルはあらゆる方面で狂っていますが、ダメ押し的な感じかなと思いますね。
「北欧、暮らしの道具店」は、サイトを20回以上訪れた人が売上の半分を占めるそう
その他、KPI設定はどうしているのかなど青木さんへの質問がまだまだ続いていきます。
懇親会でも続くディスカッション
印象的だったのは青木さんの「ファン作りには、矛盾がないことが大切」という言葉です。たとえばディズニーランドに、ミッキーマウスが5人いたほうが、短期的には売上が上がるだろうけれども、それではストーリーに矛盾があります。
そのブランドに期待するものを見極め、それに沿った行動をとっていくというのが、ファン作りの大原則。たとえファンでなくても「理解できる」「腑に落ちる」、青木さんの言葉から、ブランド作りにおいてはもちろんのこと、採用面接や今回のようなスタディツアーの場であっても、その首尾一貫した姿が伝わってきました。
質問や議論の熱が冷めやらぬまま、予定の3時間があっという間に過ぎていきました。
その後、クラシコムのオフィス近くで懇親会の場を設けたのですが、予定人数の倍の方々にご参加いただきました。食事やお酒を楽しみながら、さらに話が続き、議論が深まっていったことは言うまでもありません。
青木さんにも「クローズドな場所でベースラインの話を率直にできたことや、考えていたことが皆さんと話をしていくなかで言語化できてよかったです」と感想をいただきました。
2回目の開催も、クラシコムの青木さんと、参加者の皆様のご協力のおかげで、大変な盛り上がりのなか終了することができました。気になる企業をさらに深く知りたい、小さなグループディスカッションで経営者と直に討論したい、課題を共有して解決したいという方々には、ぜひご参加いただければと思います。
ICCビジネス・スタディツアーはICCサミット参加者を対象としています。開催の折にはまたレポートしますので、ぜひお楽しみに!
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成
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