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LEXUSと華道の“CRAFTED”な出会い。美が生み出す奇跡と、美を生む遊び心とは【ICCサミットKYOTO 2018レポート#4 特別鼎談】

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9月4日~6日の3日間にわたって開催されたICCサミット KYOTO 2018の開催レポートシリーズ、今回は特別鼎談です。会場に展示されたLEXUSと華道のコラボレーションと美意識、ものづくりについてLEXUS International Jマーケティング室 室長の沖野和雄さん、未生流笹岡家元の笹岡隆甫さん、電通の各務亮さんが語ります。ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18-21日 福岡開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをご覧ください。


ICCサミット KYOTO 2018では、初めての試みにいくつか挑戦しているが、LEXUSと華道のコラボレーションもそのひとつ。今回のICCサミットを企画する際に、京都ならでは、日本伝統の美の演出を試みたいと電通 プロデューサーの各務亮さんにご相談したことがきっかけで、未生流笹岡家元の笹岡隆甫さんのご紹介をいただいた。会場を訪れる方を花でお迎えしようというのがそもそもの始まりだったのだが、LEXUSの話をいただいたことから、両者ををかけ合わせてみては?ということになり、この企画が誕生した。

こちらのレポートでは、今回のコラボレーションを快諾いただいた、LEXUS International Jマーケティング室 室長の沖野和雄さん、家元の笹岡さん、今回のご縁を作ってくださった各務さん、そしてナビゲーターにベイン・アンド・カンパニーの井上真吾さんを迎えて、今回のコラボレーションの感想や、それぞれのものづくりにかける想いなどを語るスペシャル鼎談をお送りする。LEXUS×華道の展示の前から、会話が始まった。

LEXUSを器に見立てて花を生ける

井上 笹岡さん、今回のお花についてご説明いただけますか?

笹岡 まずは京都にいらっしゃる皆さんを季節の花でもてなそうという想いからスタートしました。

秋は日本の四季でも最も美しい季節。今は花といえば春ですけれども、昔は秋がもっとも花が咲き誇っていた季節で、華道家が一番忙しいのは秋です。秋草のようなものだけでなく、紅葉もありますし、実りの季節でもある。花材も豊富ですしイベントも多い。万葉集でいうと、春の梅よりも秋の萩のほうが歌がたくさん詠まれている。非常に華やかな季節です。

未生流笹岡家元 笹岡隆甫氏

主材は、ナナカマドの紅葉を用いました。最初から真っ赤に染まったものではなく、緑から黄、橙、赤へと移ろいゆく時間経過を見ていただきたいと考えました。せっかくのこういう空間に花を生けるので、単に私の作品を飾るだけでなく、文化と文化を掛け算したいと想いました。たとえば今回のために特注で花器を焼いてもらいそこに生けるなどでもいいかなと考えていたところ、LEXUSさんとのコラボ案をご提案いただき、LEXUSを花器に見立てて花を生けてみたら楽しいじゃないか、と話が盛り上がりました。

沖野 すばらしいですね。

笹岡 LEXUSからナナカマドの紅葉を飛び出すように生けました。前や、上にも何かほしいと考え、天井から吊ることにしました。制約のある空間ですが、背景を真っ黒に染めていただいて、その中に浮き上がるような、羽のようなデザインを提案しました。

LEXUSのこの青が特徴的ですが、花では青い素材はほとんどありません。そこで、青に青を重ねるのではなく、ナナカマドとリンクさせて緑と赤を入れようと考えました。

吊るすので水のない状況ですから、赤と緑の多肉植物やエアプランツといった花材を選びました。それが引き立つ色は白ではないかと考え、白のパームボードを使っています。パームボードはヤシの実を保護する殻のようなもので、それを漂白して、さらに白に染めて使いました。

井上 選んだ素材は理想の状態で来るのではないと思いますが、そこでどのように素材に向き合うのでしょう?

笹岡 ひとつひとつ形が違うので、どう組み合わせて、今回ならばどう浮遊感を創りあげていくかが大事でした。吊るすバトンはひとつしかなく、どう奥行きを表現するかは、図面を書きつつ、実際生けつつ微調整をしたのが苦労した点ですね。照明もこだわって限界まで調整いただきました。

沖野 大変ありがたいですね。僕らは車がかもしだす体験を皆さんにお届けするブランドで、唯一無二の時間と空間をご提供したいということで車づくりをしています。車についても光の当たり方でいろんな表情が出るようなデザインを施しています。

ご覧のとおり、塗装面も非常にきれいに、水面に映るが如く鏡面仕上げにしています。お客様の顔が写ってもゆがまないとか、いろいろな光をとらえたときに、当たり方に様々な表情がでるような仕上げを施しています。このストラクチャルブルーのLCは、青い塗料を使っているわけではなくて、海が青く見えるのと同じ原理で光の青い部分だけを反射することで青く見えているのです。

笹岡 さきほど写真を撮ったのですよ。(と、携帯の写真を見せる)車の表面に紅葉が写り込んでいます。

沖野 おお、これはいいですね!この写真ください!(笑)

完璧なデザインはいいと思わない

井上 LEXUSは“CRAFTED”がテーマとのことですが、そこにどんな意味を込めたのでしょうか?

沖野 LEXUSのブランドのスピリッツなのですが、「手作り」という意味だけではなく、クラフトマンシップというモノづくりへの想いと、お客様に喜んで頂きたいという想いをめぐらせています。このふたつを合わせて我々は “CRAFTED”という言葉を使いたいと思っています。

LEXUS International Jマーケティング室 室長 沖野和雄氏

井上 お花の制作過程とも重なりますね。

笹岡 “CRAFTED”、まさにそうですね。先ほど登壇していたセッションで、美とは想像力ではないかという話をしていたのです。完璧なものも美しいのですが、何の疑問を差し挟む余地もない。でも、ちょっと欠けていたりずれていると、そこに想像力が働く。だからこそ愛着や味わいがあったりする。そこが楽しいなと思います。

沖野 車のデザインも、あまりに完璧なデザインをよしとはしていないのです。

笹岡、各務、井上 おお、そうなのですか?

沖野 どこかちょっと破綻している部分があることが、ところが必要で、デザイナーに言わせると、そういうところがないと魅力的なデザインにならないのだそうです。

「時のうつろい」をデザインに落とし込む

各務 笹岡さんは伝統的なお花を現代的に皆さんに愛していただけるように挑戦していると思いますし、LEXUSさんは、新しいブランドだけれども日本の伝統を解釈して、世界に日本発のユニークな価値として発信することに挑戦していると思います。今回生けた花は、伝統というより革新の要素が強いなと感じました。今回のコラボレーションで挑戦したことなどありますか?

電通 プロデューサー 各務亮 氏

笹岡 今回重視したのは色です。花のうつろい、時間経過とともに変わっていく、緑から赤へのグラデーション、空中に浮かべたなかでそれを表現したいと思いました。紅葉だと4日間はもたないので、準備日を含めた長丁場にもつもの。普段我々は使わない花材ですが、多肉植物やエアプランツならもつだろうと。それがまず挑戦でした。

もうひとつは、フラワーアートの技法を取り入れたことです。
生け花では、枝を入れるときに埋め尽くすのではなく、必ず一本一本の枝のラインが見えるように削ぎ落とし、その枝についた葉の一枚が緑から赤に染まっていくのが目立つようにデザインして創り上げます。

しかし、吊るしたものに関しては逆にフラワーアート的な「敷き詰める」に近い表現をしています。生け花のように花と花の間に余白をあけると色がぼけてしまいます。白のラインを生かすためでもあるのですが、花材をぎゅっと凝縮する、フラワーアート的な表現を用いました。

秋色を強調するために、エアプランツの緑、多肉植物の赤と2種類に加えて、唐辛子の赤を色目に足しました。この色使いはどちらかというとモダンで、伝統的ではないものですが、それと(紅葉という)和のど真ん中のグラデーションとの対比を見せるというのが、生け花の世界においては挑戦でした。

各務 LEXUSは今回、花を生ける器となりましたが、車は人の器みたいなものともいえますよね。

沖野 そのとおりです。車はライフスタイルを彩るものであってほしいので、そういう意味では器ですね。人生の器であってほしいので、非常にいいコラボレーションになったと思います。

各務 沖野さんは、革新的なブランドをやっていらっしゃいます。今回のお花をご覧になって、改めて日本の伝統的なことで気づいたこと、インスピレーションなどありますか?

沖野 レクサスは日本のブランドですが、車は国際商品なので、いわゆる日本的なものを直接表現できません。表現するところは日本人的な感性であったりします。それはもちろん伝統につながります。日本人の感性である「時のうつろいを大事にする」部分などを、デザインランゲージに取り入れています。

世界で日本車が認めていただいているのも、日本人の感性が車のものづくりに、にじみ出ているからだと思うのです。作り込んだ内装であったり、部品の構成の仕方であったり、部品と部品の合わせの詰まり具合とか、日本建築と西洋建築の違いのようなものが出てくるわけです。そういうところに、日本的なものを感じていただいている。精緻感にそういうところを感じていただいていると思います。

井上 それを聞いて鳥肌が立ちました。さきほど各務さんや笹岡さんが登壇されたセッションで「美は時のうつろいを表現する」というまったく同じことを話していましたね。

笹岡 そうですよね。我々生け花で最も大事にしているのが「時間経過」です。今の瞬間が美しいのも大事なのですが、今日生けた花はまだ緑が多く、これから3日間で色づいていくと思うのです。時間とともに変わっていくものを、それをしっかり見届けること、見るなかでそこから花のさまざまなメッセージを受け取ります。

花が師匠で、花から教わる。そういう花との向き合いかたを日本人はしてきて、それが映えるようなデザインが生け花のデザインといえます。日本人にとって自然はとても近い存在なのです。

沖野 LEXUSのデザインも、朝見たときと夜見たときの見え方、感じ方が変わるようなテクニックを盛り込んでいます。車という工業製品に、どうにかして時のうつろいを盛り込んでいきたいのです。

笹岡 あの青はフラットなのに、光でとても陰影が出るのですよね。

沖野 まさにそういう塗装です。光の入り方と出方で青の色が変わります。

美によってLEXUSは誕生した

沖野 実は、あの車は美の力で生まれた車なのです。LCは、2012年1月にデトロイトショーでコンセプトカーとして発表されました。それから世に出たのが2017年3月、この間たった5年です。5年で車ができることは自動車業界の常識からいうとありえないことです。

実際発表された時点では、生産発売される計画はありませんでした。でも、もともとのコンセプトカーが非常に美しく魅力的な車で、売る側もお客様もこの車を作りたい、作ってほしいという声が集まった。作る人間たちも、この美しい車をとにかくそのままで作ろうという気持ちでした。社内が一致団結して販売に至ったのです。まさに美の力です。

もともとコンセプトカーはかっこよく見せるためのものなので、そのまま作ろうとするとフードが低すぎて、エンジンが入らない寸法になっています。それをいろいろなデザインのテクニックで、同じようなデザインだけどエンジンが入り、販売できるクルマになったのです。

そういう過程の中で、通常の車ではできないことができたました。鉄板のカーブの曲がり具合など、今までの車では、既存の生産設備の壁などで、「無理」といわれたことができたのです。これまでは、そういう壁(障害)で、もともとのデザインから変更することはよくあることでした。

でもこの車については、「自分達のせいであのかっこいいデザインができなくなるのは嫌だ」という気持ちが働いたのでしょうね。LCに関しては、コンセプトデザインから寸分たがわぬデザインで5年という短い時間で創り上げることができた。これは美の力だと思います。

業界に30年いますが、こんなことが起こったのは初めてです。初期の車は、粘土を削って創るのですが、その最初の形からほとんど同じ車が出来上がったのは初めてです。

あの車のために、クルマのプラットフォームも一新しました。それもすごいことです。僕ですら、あの車は最初は格好だけの車だと思っていた。でもプラットフォームもあのデザインにふさわしいものでないといけないと一新し、スポーツカーにふさわしい一級の運動性能が備わった車になった。美はそんなに人を動かすのかと本当に驚きました。

実現できないものを実現させる力とは

各務 それをうかがって、お聞きしたいことが2つあります。ひとつは美とは何でしょうか。なぜそれを皆さんが美しいと思うのか、そしてそれは説明可能なのかということ。もうひとつは美が働くメカニズム。皆が美しいと思い、それが伝播して人を動かした理由についてお聞きしたいです。

井上 先ほどのセッションでは、美を経営に取り込むのは未知の領域という結論でした。でもありえない短期間でLEXUSは完成して、それをドライブしたのは美で、結果経営に貢献しています。

沖野 メーカーは幸せだなと思うのは、モノが強いということです。いいモノって、みんなにわかってしまうのですよ。それは強みで、要は言葉で表せられるようなものではだめで、よくわからないレベルになっていないといけません。(一同笑)

もうひとつはトップですね。トップがそれを理解して、それを実現することが大事だとわかっていることが大きいです。たとえば技術のトップは、これは難しい、実現できるわけがないとわかっていた。トップは、それよりも高次元の想いで、これは作らなければいけないという想いがあったのです。

あとはディーラーの想い。この車がほしいというのも強かったですね。アメリカのディーラーたちの、この車が何かを変える、必要だという強い思いをいただきました。そこまで人の心を動かすものを作れないとだめなのですよ。なぜ、作れたのかはわからないのですが(笑)。

各務 圧倒的な美の再現性は難しいのですね。

あえて難題をいただく

各務 笹岡さん、生け花の歴史でも、今までの常識ではなかったけれども、圧倒的な美を表現した作品があると思います。それはどういうものだったのでしょうか。美が様式をひっくり返すようなことはありますか?

笹岡 たとえばお猿さんが描かれている掛け軸があって、その前に松の木を立て、お猿さんが遊んでいるように見せた池坊さんの作品。そういう遊び心的なものが、アートなものを生み出す大きなきっかけになるのではという気はします。

立花の大成 安土桃山時代~江戸時代(前期)- 池坊

沖野 面白いですね。

笹岡 基本通りなら、名人の作ったものを再現すればいい。でも再現からもう一歩踏み出すというのは、その時代に生きた人の、遊びましょうとか、浮気してみましょうという心が生み出すのではないかと思います。

こういったコラボレーションで挑戦させていただくのは、すごく自分にとっても勉強になりますし、機会を与えていただいてありがたいと思っています。それがなかったら、文化って面白くない。あえて難題をいただくほうが、進化ができる可能性があります。

危機意識が次の一手や個性につながる

各務 伝統をはみ出すときは、周りの反応があるのではないでしょうか。笹岡さんが時にお花の世界を超え、なお挑戦を続けるのはなぜでしょうか。危機意識があるのでしょうか。

笹岡 我々の世代的なものもあると思います。私が仕事を始めたのは20年前ですが、伝統文化の世界は、少子高齢化で右肩下がりでした。そういう時代に流派を継ぐ我々は、常に羽ばたいていないと落ちてしまいます。落ちないためにはいろいろなものに挑戦して、表には見えないように変えていかなければなりません。

おっしゃるような危機意識は強制的に持たされている感じがします。今までと同じでは、私の代ではいいかもしれないですが、息子の世代につながっていきません。ただ危機感を前向きに捉えて、せっかくなので遊んでやろうと思っています。

沖野 挑戦をしたり定石を外すというのは、LCもそうです。フロント部分のデザインは、反り返った花びらの形をモチーフとしています。それは従来の自動車の文法にはないものでした。デザイナーの目から見ると引っかかりがあるらしいです。

美というと、欠点がない美を人は想像しますが、うちのデザインのトップがよく言っているのは、完璧なモデルを創るのではなく、魅力的な女優を創るのだと言うのです。完璧な顔では大成しない、少し欠点のあるほうがよいと。

井上 まさに先ほどのセッションでは、美とは、非対称であり、不完全で余白のあるものという話でした。自然界のものは時とともにうつろい、存在が完全ではない。でもそれは工業デザインとしての美と異質なものに感じます。工業製品とは対称なものだと思うし、不完全さを持ち込むのは相当なチャレンジだと思います。なぜそれをしたのでしょうか。

沖野 日本車としてアイデンティティ・クライシスがあるのだと思います。韓国車や中国車が出てきて、きちんとしたアイデンティティを持たなくてはという危機感がこの20年ほどありました。

トヨタ、LEXUSも日本の造形に対するスピリッツはどう表せばいいのかというのをデザイナーと考え、非対称性や自然にヒントを得るとか、時のうつろいを、工業製品のデザインランゲージに入れています。

とくにLEXUSのようなラグジュアリーブランドはお客様の愛を受けなければいけない。好き嫌いははっきりしてよく、好きな人はとても好きというようなところを追求しています。

心を揺さぶるものに価値がある

井上 西洋のフラワーアレンジメントと東洋の生け花は違います。海外の高級車に対してのチャレンジとも重なりますね。

笹岡 西洋のフラワーアートは、あえて開いた花、盛りを迎えた花を敷き詰めて、最高の瞬間を演出するために圧倒的な花の空間を見せる。一方、生け花は「時間経過」を見せるので、開いた花を入れてもいいけれどもつぼみを入れ、その花が目立つように余白を創る。その開いていく花の姿を見せます。

デザインとしては西洋の花のほうがやはり目立ちますが、生け花は時間がたつと効いてくる。圧倒的な花はずっと見ていると疲れてくるのですが、変わっていくものは愛着がわくのです。

沖野 いい言葉をいただきました!

井上 各務さんも日本の伝統と向き合い、世界に発信されています。通じるものはありますか?

各務 非常に通じますね。今回はこのお二方の間の架け橋としてお役に立てればという立場ですが、沖野さんにもっとお聞きしたいことがあります。

笹岡さんがお花を通して実現したい社会は、人間も自然の一部であり、そういう自然と人間のあり方、その日本人の世界観を、華道を通して発信していきたいというのがあるとお聞きしています。

トヨタやLEXUSは、どういう自然観、社会感を持っているのでしょうか。車を社会に提供するというのは、どういうことなのでしょうか。

沖野 僕らは「移動する自由」を徹底的に守りたいと思っています。それを阻害するものを一生懸命排除していきたい。たとえば自動運転を進めることで、交通事故を減らしたいし、燃料の多様化によって地球温暖化を遅らせたい。それによって車の楽しみ、自由を守っていきたいのです。そうでないと子どもに申し訳が立ちません。

僕の子どもも車好きなのですが、私の働きが悪いせいで、車の楽しみを奪いたくない。未来の子どもたちに、車の楽しみが残るようにテクノロジーを使いたいのです。トヨタとしては、車は人間のパートナーであるというスタンスです。お互いに協調しあって、安全に運転ができるようにしていきたい。そうして人間から車を運転する自由を奪わないようにしていきたいです。

各務 自分の話で恐縮ですが、2009年に豊田章男さんが社長になられて「もっといいクルマをつくろうよ」とおっしゃられたのが、当時あまりに引っかかりがなくて、ピンときませんでした。でも海外勤務から京都に帰ってきて、京都の方々が自分のサービスをまじめに創る姿を見るようになり、章男さんがおっしゃったことが初めてわかったのです。今は僕も、そういうことが大事だと思っています。

沖野 クルマは、もっと人の心を揺さぶるようなものでなければいけないと思っています。クルマは製品名の前に「愛」が着く唯一のプロダクトだと思います。「愛車」となるクルマをこれからもご提供できるように、お客様にとっての、自分達にとっての「もっといいクルマ」を作り続けたいと思います。

笹岡さんと各務さんはともに3Bのセッション「経営者が身につけるべき『美意識』『デザイン思考』とは何か?」登壇直後で、沖野さんはそれを聴講できなかったとのことだが、極めてオーガニックな華道、日本の伝統の発信、工業製品である車と、三者のフィールドは違えど、美を目指し、革新を続けながらものづくりをする姿勢や、それを次世代に受け継ぐことを使命と捉えているところまで、ぴたりと三者の話は符合して、驚きを禁じ得なかった。

自然や伝統から学び、美を発見し、取り入れる。人の心を揺さぶるいいものを創り、発信する。いみじくも3Bのセッションで「美しいものを見る時の人間の脳は、自分の内面を見るときと同じである」という話が出ていたが、来場された方々、および写真を見られた方々は、どのようにお感じになっただろうか。

今回のコラボレーションのように、ICCサミットの場で、すでに確立されたブランドを持つ方々が出会い、力を合わせて新しいものを生み出し、それを来場者に発信するという場を設けられたことが非常に嬉しく思っています。改めて今回のコラボレーションに尽力いただいた方々に感謝いたします。

(完)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成

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