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ICC サミット KYOTO 2018が終わって間もないころ、インサイトフォースの山口義宏さんから、素敵なブランドのご紹介をいただきました。それは近年メディアでも取り上げられている”Bean to Bar Chocolate”専門店「Minimal -Bean to Bar Chocolate-(ミニマル)」。ICCサミットでの”CRAFTED”という文脈から、ブランドサイトを見て好印象を抱いたことと、お店でチョコレートのテイスティング体験ができると聞き、早速訪問してきました。その模様をレポートします!
▶2019年2月18-21日に開催する ICCサミット FUKUOKA 2019の運営スタッフを募集しています。詳細はぜひ下記リンクからご覧ください。
【ともに学び、ともに産業を創る。】ICCサミット FUKUOKA 2019 運営チーム募集
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18〜21日 福岡開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
お客様の42%は男性
日本国内の菓子カテゴリー小売金額で、チョコレートが和菓子を抜いて1位に成長していることをご存知ですか? そのなかでも注目されているのが高級ラインで、”Bean to Bar”のクラフトチョコレート。これは2000年代後半からアメリカに誕生したトレンドで、カカオ豆(Bean)から板チョコレート(Bar)になるまでの全工程を自社工房で管理製造したチョコレートのことを指し、日本でも近年増えてきています。
Minimalはすでに熱狂的なファンを持ち、2014年の創業から順調に成長して現在都内には4店舗があります。訪問した山手通り沿いにある店舗は、車通りはあっても人通りはほとんどなく、客商売としてはありえないような立地です。しかしここは、わざわざこの店を目的にしてスイーツを求める女性客やコーヒーやお酒好きの男性客が集まってくるといいます。Minimal代表の山下貴嗣さんにその理由をお聞きしました。
「チョコレートというと、普通は10〜20代の女性が消費ターゲットですが、僕らは30〜40代の男女とし、その中心を男性にしました。ものづくりや嗜好品というエッジを立て、既存のチョコレートとこれだけ違うというメッセージを強くしたところ、お酒やコーヒーの好きな男性が集まってきました。実際に1ヵ月調査してみたところ、お客様の42%が男性でした」
日本人の感性でチョコレートを再定義
山下さんの前職はリンクアンドモチベーションで、30歳を機にこのブランドを始めました。そもそもチョコレート好きが講じてというわけではなかったそうです。
「前職は大好きだったのですが、今の日本は少子高齢化で、これからは外貨を得ることを考えなければいけない。だから自分が30代、40代の一番働けるときにできることをしたいと考えたのです」
日本人の感性を使ってスケーラブルなものは何かと考え、日本人のものづくりを発揮できるもの=クラフトマンシップのあるもの、そこをコアに据えた商品サービスでのブランドをやりたいという考えに至ったといいます。
「具体的に何をやるかは決めず、ブランドをやる、日本のものづくりで世の中にあるものをアップデートする、というテーマだけ決めて会社を辞めました。Bean to Barを知ったのは、今のシェフがきっかけです。ある日、彼が作ったチョコレートを食べたらオレンジの味がして、何が入っているのかと聞いたら、カカオと砂糖だけだと言う。それが衝撃だったのです」
近代的なチョコレートはヨーロッパで150年以上の歴史のある食べ物。カカオ豆に砂糖、ミルクやクリームなど、従来は足し算の技術で作られてきたものを、Minimalは日本人の感性でとらえ直し、手作り・素材の良さで勝負することを決めました。よりよい味のカカオ豆を求めて赤道直下の国を駆け巡り、品質改善や味を壊さない製法にこだわっています。
「自分はショコラティエでもパティシエでもないので、素人だからできた味だと思います。食べていただくとわかると思いますが、カカオを粗挽きにしているので食感はザクザクしていて、後味はあっさりしています。普通はカカオ豆はなめらかにするとカカオバターという油が出て、なおかつ油分を足したりしますが、それをしていないから、後味がすっきりとしています」
聞けば聞くほど、どんなチョコレートか食べてみたくなってきました。試食タイムです!
8種類のチョコレートを試食
マッピングされている地域の豆を使った8種類のチョコレートをテイスティング
早速「NUTTY」という、いくつかのカカオ豆がブレンドされたカカオ70%のチョコレートから試食スタート。香ばしい味を楽しんだあとは、「FRUITY」という、2016年インターナショナルチョコレートアワードで銀賞に輝いたものをいただきました。その名の通り、果実のような酸味や爽やかな香りがあります。
山下さん「工場での大量生産プロセスを経ると、150℃前後の高温でカカオ豆をローストするという話を聞くことが多いですが、高い温度で長時間焙煎すると焦げがついたり、酸味が飛んでしまったりします。しかし低温でゆっくりじっくり焦げないように焼くと、苦味が少なかったり、キレイな酸味が残ります。たとえばそんなふうに、素材本来の持つ風味をきめ細かく日本人の感性で捉え、チョコレートの製法を考え直しています」
試食には、味の特徴やカカオ豆のパーセンテージ、産地などが書かれた解説カードが添えられている
食べ終わったあとにミントのような清涼感が残る「SAVORY」、その名の通りカカオ80%だけど苦くない「HIGH CACAO」、元々はコロンビアにある神聖な山で作られていたカカオ豆など、その時々の特別なチョコレートを提供する「’Arhuaco」(プライムライン「’」※このときはコロンビアの部族名からネーミング)など、ひとつひとつのチョコレートには、さまざまなストーリーがあります。
山下さんが「豆と砂糖だけでそれを出そうとしているなんて、頭がおかしいと言われるかもしれませんが」と笑いながら薦めてくださった「CLASSIC」は、ミルクを不使用なのに、たしかに、ミルクチョコレートの味。驚きです。ストーリーを聞きながら味わうのは、また新たな発見があります。
味だけでなく、形状にもこだわっていて、日本人的にチョコレートのUXを捉え直したといいます。
山下さん「欧米のBean to Barのチョコレートも様々試して、おいしいのですが、一片が厚く同じ形であるため、時に重すぎる。そこでさまざまな形で割れるように作り、好きな形、好きな量で食べられるようにしました」
たしかに欧米のチョコレートバーは食文化の違いを感じるほど分厚く、大きい印象があります。Minimalは欧米ほどチョコレートを食べつけない日本人向けのチョコレートのデザインを再定義し、これは2017年、グッドデザイン賞も受賞しています。
バーのほかに、店内ではチョコレートスプレッドやドリンクも販売
奥のキッチンではアイスクリームやパフェなど、季節限定のデザートを作っていました
スパイスを効かせたチョコレートソースとオレンジコンフィで作った「チョコレートソーダ」
この日、私たちが体験したようなチョコレートのテイスティングは各店舗で開催されています。ぜひ興味があれば体験してみてくださいね。現在、チョコレート市場は右肩上がりに伸びていて、質のいい様々な商品が出ていますが「手作りのチョコレートは違う!」と感じていただけると思います。
最新情報はウェブサイトのイベントページをご確認ください
CRAFTとビジネスの両立を目指す
ご紹介いただいたインサイトフォースの山口さんいわく、MinimalはCRAFTとビジネスの両立を目指し、今後スケールさせていくのに比重を変えていくタイミングにあるとのことです。
国内では、カルティエやルイ・ヴィトン、バカラなどブランドとのコラボレーションがあとを絶たず、世界最高峰のヨーロッパの品評会で多数受賞したことから海外でも注目され、香港の高級デパートやスペシャルティコーヒーのお店では、一部取り扱いを始めたそうです。
山下さんにはテイスティングのほかにも、ブランディングの話やマーケティング、海外で研鑽した精鋭ぞろいのシェフが集まる採用など多岐にわたるお話もうかがって、そのどれもが非常に興味深いものでした。何らかの形で、ぜひICCサミットにご参加いただけたらと思っていますので、詳しいお話はその際や後日の記事などをお待ち下さいね。
店を後にすると、外観の看板まわりがMinimalのチョコレートバーのような形状になっていることを発見。ブランドデザインの徹底が素敵です。
「世界でトップ10%以内に入る良い豆を手に入れる」「日本人的に繊細に作る」「ブランディングをしっかりやる」というMinimalの3本柱は、造り手の顔が見える「クラフト」、素材の良さを表す「スペシャルティ」「グルメ」、洗練された「デザイン」といった、現在強いフードブランドが持つものを兼ね備えています。日本発ではありませんが、ブルーボトルコーヒーのブランド力も想起されます。
▶早朝課外セッション:ブルーボトルコーヒーのカッピング体験で、強いブランドを学ぶ【ICCサミットKYOTO 2018レポート#7】
Minimalでは、チョコレートを購入することでも、テイスティングでもそのブランドをしっかりと感じることができます。甘い物がお好きな方、ブランド構築の一つの形を体験したい方は、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。以上、現場から浅郷がお送りしました!
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成
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