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夏の恒例イベントとなるICC サマーパーティが、7月17日、ICCパートナーズのオフィスで開催されました。このパーティは、来たる9月のICCサミット KYOTOに登壇予定の方々を対象にした、顔合わせも兼ねた交流イベント。100名近くの参加ご登録をいただいために2部制とさせていただき、以前の好評だったモデレーター講座第2弾というパネルディスカッションも企画して、おいしい料理とお酒を囲みました。その模様をレポートします。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月3〜5日 京都開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【開催情報】
2019年7月17日
ICCサマーパーティ2019
特別セッション「モデレーター勉強会」
(スピーカー)
井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
パートナー
琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)
宮宗 孝光
株式会社ドリームインキュベータ
執行役員
渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー /
慶應大学SFC特別招聘教授
(モデレーター)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役
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モデレーターによる、モデレーターのためのディスカッション
モデレーターの専門といえる方々、モデレーター/スピーカーの両刀使い、議論のサポート型、マネージ型、まとめ型……モデレーターにもさまざまなタイプの方がいらっしゃいますが、今回はICCサミットでも屈指のモデレーター専門の方々が結集、その技を共有してくださることになりました。
第一線で活躍するリーダーたちによる白熱の議論はICCサミットの最大の魅力です。今回登壇いただくモデレーターの方々は、そんな猛者揃いのスピーカーたちを手練の調教師のようにさばき、議論を盛り上げ、深め、聴衆の学びにつながる答えを引き出するスキルの高い方々ばかり。
そんな方々は、モデレーターとして登壇する前に一体どんな準備をし、何をよりどころに議論を構築し、何をゴールとしているのか?
登壇いただくのはベイン・アンド・カンパニーの井上 真吾さん、慶應義塾大学の琴坂 将広さん、ドリームインキュベータの宮宗 孝光さんに、遅れて駆けつけてくださったTakramの渡邉康太郎さん。早く到着した琴坂さんは、ICCの小林 雅と立ち話を始めています。
ICC小林「社員で読みたい人がいるので、『MASTERキートン』を会社に持ってきているんです」
琴坂さん「僕、マンガ大好きなんです。浦沢直樹によって、マンガはドラマになりましたよね!」
ICC小林「近々『キングダム』のイベント(8月2日開催のICC x 日経ビジネス電子版コラボ企画「キングダム経営学 – 経営者はキングダムから何を学び、実践しているのか?」)もあるので、『キングダム』も読んでいます。
前回の京都のICCサミットで台風に見舞われてモデレーターが到着できないなか、どう運営をするかに目覚めました。指揮官たるもの、指揮を出さねばなりません」
琴坂さん「あれはまさにモデレーターの、モデレーターでしたね」
やがて最前列から席が埋まり始めました。モデレーター経験者のマイネットの嶺井 政人さん、リンクトインの村上臣さん、コーポレイトディレクション占部 伸一郎さんが座っています。
この日、登壇の5分前に今回のパネルに出ないか?と打診されたという井上さん、ICC小林のオファーがきっかけでモデレーターに目覚めたという琴坂さん、前回ICCサミットの初登壇で見事なモデレーションを見せた宮宗さんが席に着きました。
モデレーターによる、モデレーターのためのパネル・ディスカッション。巧者たちの技がついに明らかになります。詳細は書き起こし記事をお待ちいただくとして、こちらのレポートではそのエッセンスをお伝えしましょう。
セッション前の準備はどんなことをする?
宮宗さん「初対面であるがゆえに会話がはずまないのはよくないと思い、事前にお会いして、自己紹介しあったり、当日どんな形でやろうかというのを話しています」
琴坂さん「スピーカーの方々から、そこでしか話していない内容を引き出せたら勝ちだと思っています。そのためには、メディアでその方がインタビュー等に答えている記事を全部収集して、主要なものをマーキングして整理し、頭の中に入れた状態にします。
スピーカーの人には何も準備いただかないで本番に入ってもらっています。スピーカーとして登壇される側としては『こいつ大丈夫か?』と思う状態からスタートするのがポイントです。
もう1つのポイントは、スピーカーの『メディア回答モード』を回避すること。取材で答えられていることを頭に入れているので、それに気づくことができます。センシティブなトピックのときだけ、個別にNGを聞いておくことも」
井上さん「いろいろなメディアの記事をなるべく直近3つくらいは読んでおき、「普段どういうことを話しているのか」「どういうことを話したがっているのか」を把握しておき、なるべく既存の記事とはかぶらないようにしようと思っています。
モデレーターをお受けするにあたっては、小林さんのディレクションをもとに、自分の考えと論点、話の順番を決めます。それを整理して書いたメールを、事前に登壇者の皆様に送ります」
スピーカーにどう振っていくか?
琴坂さん「準備で得た『この記事に近い』という話が出たら、ざっくりと「〇〇さん、どう思いますか?」と話を振るようにしています。
「こういうことを言うんじゃないか」というのをちゃんと理解した上で誘導するのではなくて、ただとりあえず振る、という感じです。できるだけ早く流します。
スピーカーが話を途中で切られるのに慣れてもらうために、『そうですよね』『〇〇ですね』と細かく相づちを打っています。
そうやって相づちを挟んでいくと、別の方に振りやすくなるのです」
リンクトイン村上さん「琴坂先生がモデレーションしているセッションに出たことがあります。確かに話を聞いてくれているのですが、パシッと他の人に振られて『もうちょい話したかった』と思ったことがあった!(笑)」
琴坂さん「それで、その「チクショー」と思う心が、また次の発言につながるわけです」
井上さん「僕も同じです。モデレーターは、しゃべらないほうが勝ち。質問を短く切って、投げて、とにかくテンポをつくることを意識してやっています」
ICC小林「やはりパスの出し方が重要ですね。よくありがちなのは、順番に聞くパターンですが、あれはつまらないじゃないですか。
局面というか、戦局を変える『これどうですか?』という瞬間の打ち手を出せるかです」
琴坂さん「自分は『キングダム』的にいうと力強い本能型の武将で、質問が刺さったときがめちゃくちゃうれしいですね。火が燃えている!!と(笑)」
ICC小林「あと『俺に話させろ』って目で訴えかけてくる人がいませんか?」
琴坂さん「そこにもすっとパスを出すのが大事ですよね」
ICC小林「すっとパスを出したり、逆にわざとじらしたりする人もいますよね」
井上さん「つなぎのパスをしているような流れのときと、スルーパスでズバッといくときと、サイドチェンジで話題を変えるときと、どこで何を繰り出すかというのは結構流れを考えながらやっています」
琴坂さん「そうですね。議論する中で、全員がこんな方向なんじゃないかなというのが同意されつつあるところに、『◯◯ってどうですか?』と、その先にあるゴールを出すんですよ。
そうするといい感じの風が来るときがあって、それがやはり盛り上がる瞬間なのかなと思いますね」
ICC小林「このパス出しの妙を覚えるとモデレーターは楽しいですよね」
モデレーターに向いている人とは?
株式会社ドリームインキュベータ 執行役員 宮宗 孝光さん(写真奥)
ICC小林「モデレーターには、まず、テンポが速い人が向いています。
あとはコンサルタント出身で整理ができる人。
パネルディスカッションを見ていて分かると思いますが、他の登壇者に質問する人っていますよね。そういう人はモデレーターに向いています。
あとは、その人に対して関心があるかどうかというのも重要だと思っています。
『この人にこういう話を聞きたいな』と心の底から思っていないと、まともな質問ができないですね。
よくイベントでありがちなのは、アナウンサーみたいな人が司会進行を務めることがありますけど、それでは形式的な質問しか出ません」
宮宗さん「場の雰囲気をどう創るかがすごく価値だと思います。
どうやって盛り上がるかたちにするのかというのは、瞬発の部分もあれば先読みの部分もあったり、整理の部分もあったり、それをどうその場で判断して進めていくかですよね。
だからアナウンサー的な能力だけではだめで、どこでどういう振りをするかとかが大事です。
そういう意味で、『雰囲気を創れる人』はすごく重要かなと思います」
予定調和からいかに離れるか?
渡邉さん「(議論を盛り上げるには)結局予定調和からいかに離れるかってことじゃないですか。それがオフレコであり、即興であり、現場のライブ感であり。
ここで難しいのは、正確性とか平等性を担保しようとすればするほど、構造的に予定調和になってしまうんですよね。
ここの振り子をいかに振れるかというところで、あまりに予定調和になったらもちろん壊したほうがいいというパターンがあるかと思います。
琴坂さんのモデレートするセッションの完成度が高いというのは、設計がしっかりしているからだと思うのですが、僕は設計がしっかりしていると逆に壊したくなっちゃうみたいなところがあります(笑)。
モデレーターから1人ずつ質問、みたいなスタイルにになってくると、1人目から2人目に移っても『あと3人か』みたいな気持ちになってくる。
そこで、ちょっと壊したいなというふうに思うわけですよ」
ICC小林「パスを出す順番を1回変えるだけで、緊張感が変わりますよね。『自分、3番目かな?』とか思った途端に、大抵の人は油断しますからね。
あとは、会場で最前列に座っている人に声を掛けたりすると、『自分に来るかもしれない』みたいな気持ちになることが、やっぱりありますよね」
渡邉さん「それはすごく大事だと思います。
一度、組織論をテーマにしたセッションで琴坂さんがモデレートしている時に、『大学のゼミの組織運営とヨット上の人の組織運営はどう違うんですか?』みたいな質問を、琴坂さんに振っちゃったことがあるんです」
琴坂さん「振られちゃったんですよね。ヨットは私のツボなんです(笑)。
ICCでは多分10回以上登壇させてもらっていますが、私がある程度のボリュームで発言したのはおそらくそこの部分しかないんです。ガチでヨット部の組織について話してしまいました。しかも……全く刺さっていませんでした」
(会場笑)
宮宗さん「そういうのを分かっていて振られるときって、モデレートしにくいですよね。難易度が高くなる印象があります」
渡邉さん「でも、モデレーターさえも緊張するというのはいい状況ですよね。
あと、モデレーター側が全員に平等に振ろうと思いすぎると、逆におもしろくなくなるということもありますよね」
井上さん「本当にそのとおりです。
この前のモデレーターのセッション(※)の時に、残念ながら参加が叶わなかった岡島悦子さんが、Facebookでコメントを残されていました。『めちゃくちゃちゃんと準備をして、でも当日は全部捨てる』と書いてありました。
▶編集注:ICCパートナーズの新オフィス・オープニングパーティで開催された、本セッションの前身となる特別セッション「モデレーターの極意とは?」のこと。
まさに真理だなと思いました。
結局『こういうふうにやろう』と思ってそこに縛られて、無理矢理やろうとすると絶対つまらないじゃないですか。
できる限り準備はするけれど、それを壊してその場に集中して、その場に入り込んで、なるべくその場でディスカッションをする・そのことに集中したほうがうまくいくなというのが、過去私がモデレーターを務めたセッションでの学びかなと思います」
ICC小林「そもそも、配役が決まっている段階で平等になっていないですよね。
このセッションは誰が主役なのか? というのが、だいたい見たら分かるかと思います。
だから『そのセッションはこの人が主力だから、それに合わせてつくろうよ』というのがもともとの企画になっている部分が多いので、もちろん平等にする部分もあるのですが、だいたい『このテーマだからこの人』のようにやるじゃないですか。
石川善樹さんが出ている時は、だいたい石川善樹さんが話しているみたいな」
渡邉さん「そうですね。だいたい最初からずっと笑っているみたいな(笑)」
琴坂さん「そう。石川さんは自分でモデレーターもできます。引き出しも広いし、エンターティナーなので、モデレーターとしては一番想像が難しい登壇者です。エンターティナーなので、会場を盛り上げようとちゃぶ台をひっくり返してくれたりします。
石川さんのように、自分のストーリーでどんどん質問し続けてくれる人がいると、そのとき自分が準備していたものがすべて崩壊するんですよね。それはいい意味でも悪い意味でも。一番緊張する瞬間です」
ICC小林「いつも途中で言い出す、『話変わってもいいですか?』とかね。
(会場爆笑)
本当に変わるからね。ジャック・マー(※)が来たら気をつけろ的な」
▶編集注:一時期、石川善樹さんはセッションで議論されている話題とはほぼ無関係に、中国アリババ率いるジャック・マー氏に関する蘊蓄を披露する傾向にありました。
井上さん「一方で、そこで乗っかるのがやっぱり大事ですよね。
『なぜそんな話をするんだ』と不安になってしまうと絶対おもしろくならないから、もう切り替えて乗っかってしまう」
リンクトイン村上さん「ジャック・マーはそろそろ乗らなくていいと思うけどね(笑)」
(会場笑)
以上ご紹介した内容はほんの一部。モデレーターの極意として語られたさまざまなTIPSは、ICCサミットのセッションモデレーターとしてだけではなく、たとえば会議などの司会進行や、家族や友人たちとの会話のときも応用可能なものが多いのでは?と思います。ぜひ書き起こし記事をご期待ください。
懇親会も盛り上がりました!
パネル・ディスカッションが終わると懇親会となりました。この日は、コエドビールの朝霧 重治さんが来てくださったこともあり、コエドビール祭り! リンクトインの画面を表示すると、高級ワインのオーパスワンが飲める企画も大好評でした。
次回、ICCサミット KYOTO 2019にご参加いただく方々にお越しいただいたので、運営スタッフ一同も士気が上がりました。
最後は、セッションでもおなじみのFiNC溝口さんの指導で、全員でエクササイズ!
本番はこれからだというのに、お忙しいなか、サマーパーティをCo-Creationいただいた皆様、本当にどうもありがとうございました。9月2日からのICCサミット KYOTO 2019まで、この熱気をさらに高めていきたいと思っています。以上、現場から浅郷がお送りいたしました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成
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