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ベストモチベーションカンパニーアワード2年連続1位、大阪の老舗スーパー・佐竹食品の梅原社長が語る「組織マネジメントの秘訣」とは?

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ICCサミット KYOTO 2019では、最終日の特別プログラムとして“ベストモチベーションカンパニーアワード”2年連続1位の老舗スーパー・佐竹食品グループを訪問し、組織マネジメントの秘訣を学ぶ「佐竹食品ツアー」を企画しています。それに先立ち、私たちICCパートナーズは、同社代表取締役社長の梅原さんを訪問しました。本レポートでは、その模様をお届けします。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月3〜5日 京都開催を予定しております。


今年9月に開催するICCサミット KYOTO 2019では、最終日の特別プログラムとして2つの体験型ツアーを企画しています。1つは、京セラ本社を訪問して稲盛和夫氏のフィロソフィーとアメーバ経営を学ぶ「京セラツアー」。そしてもう1つは、「ベストモチベーションカンパニーアワード」2年連続1位の老舗スーパー・佐竹食品グループを訪問し、組織マネジメントの秘訣を学ぶ「佐竹食品ツアー」です。

7月初旬、ICCパートナーズ一同は「佐竹食品ツアー」の現場となるFoods Market satake 朝日町本店の下見を兼ねて、同社代表取締役社長の梅原さんを訪問しました。本レポートでは、その取材模様をお届けします。

Foods Market satake 朝日町本店に到着!

大阪は吹田駅から徒歩5分ほどのアーケード商店街に、佐竹食品ツアーの会場となる「Foods Market satake 朝日町本店」はあります。夕方前の訪問でしたが、お店の前の駐輪場はほぼ満車状態。繁盛しているようです。

こちらのお店は、ICCサミット会場のウェスティン都ホテル京都から電車を乗り継ぎ1時間強の場所にあります。ツアー当日は、参加者の皆さまはホテルからLEXUSの車にて送迎させていただく予定です。

梅原さんにお会いするべく、本社事務所へ続く店舗横の階段を上るICCパートナーズ一同。すると、壁一面を埋め尽くすタイルアートが目に飛び込んできました。

本社事務所へ続く階段を見上げると…

どうやら、従業員の皆さまの目標が書かれているようです。「いつも笑顔で頑張ります!」「自分に勝つ!」「自分を追い越す人材を育てる」……早くも、佐竹食品グループのモチベーションの高さを感じさせられます。

「日本一のハイモチベーション集団」 佐竹食品とは?

2階の本社事務所に到着すると、なんと社長の梅原さんとともに社員の皆さまが「総起立」でお迎えくださいました。梅原さん、本日はよろしくお願いします!

佐竹食品株式会社/株式会社U&S 代表取締役社長 梅原 一嘉さん

梅原さん「よろしくお願いします。私たち佐竹食品グループは、大阪北部を中心に43店舗を展開するスーパーマーケットグループです。総合食料品スーパーマーケット「satake」と、生鮮特化型業務スーパー「TAKENOKO」の2つを展開しています。」

早速ですが、冒頭から強烈なインパクトを放っていた壁一面のタイル画について伺いました。

梅原さん「入り口のタイルアートは、2年に一度開催する全社総会『ありがとう総会』で“自分のなりたい姿”を従業員の皆さんに書いてもらったものです。

ありがとう総会は、全店舗を休みにして約2,000人の社員・パート・アルバイトが一堂に会するイベントです。ですので、これらのタイルには正社員だけでなく現場のパートの方々の言葉も含まれています。」

佐竹食品グループの経営ビジョンは「日本一楽しいスーパー」

近づいてみると、従業員の皆さんの写真でした

続けて、社員の方々が全員起立してお出迎えいただいたことへの感動をお伝えすると、次のように説明してくださいました。

梅原さん「全員で起立してお客さまを送迎する習慣は、僕がやれと言ったわけではなく、社員が自主的に始めた活動です。

執務フロアはL字型になっているのですが、実はお客さまから見えない席にいる社員も起立しています。最初は、その子たちは他の社員が起立するのを見て『お客さんが来られたんやな』と思って一緒に起立していたのですが、ある日、その子たちから『お客さまが来たのが分かるように、モニターを付けて欲しい』という要望がありました。

理屈としてはおかしいんですよね。だって、その子たちが起立したところでお客さまからは見えないわけですから。でも、そうすることで社員みんなの息が合った状態でお客さまをお迎えできますよねと。そんな提案が、社員から上がってくる会社ですね。」

受付横に並ぶ「ベストモチベーションカンパニーアワード」受賞トロフィー

さすが『ベストモチベーションカンパニーアワード』2年連続1位の企業。スタートからハイモチベーションなエピソードをお聞かせいただきました。

ここで、ご存知ない読者のために「ベストモチベーションカンパニーアワード」について説明しておきたいと思います。同アワードは、ICCサミットに協賛いただいているリンクアンドモチベーション社が毎年開催する、エンゲージメントスコア(従業員エンゲージメントの偏差値)の高い企業を選出・表彰する式典です。

梅原さん率いる佐竹食品グループは、9年連続10位入賞、さらには直近の2018年・2019年は全国1,000社以上の中から「連続1位」に輝いた筋金入りの「ハイモチベーション集団」というわけです。

▶参照:Best Motivation Company Award 2019 | Link and Motivation Inc.(株式会社リンクアンドモチベーション)

ハイモチベーションの源泉!?「主任研修」に潜入!

私たちが訪問した日は、ちょうど佐竹食品グループの主任クラスの従業員を対象とした研修、その名も「主任強化プロジェクト」を開催中とのことで、梅原さんの引率で見学させていただきました。

主任強化プロジェクトとは、どのような研修なのでしょうか? 梅原さんに伺いました。

梅原さん「主任というのは、各店舗で鮮魚、精肉、レジなどの各部門を統括する役職のことをいいます。1店舗あたり6〜7名、全社で約300名の主任がいます。この研修では、各店舗の主任20〜30人を集めて、部門ごとに7つの島に分かれてグループワークを行っています。

佐竹食品グループ「主任研修(主任強化プロジェクト)」の様子

今はちょうど、モチベーションクラウドのサーベイ結果(※)をもとに、半年に一度の『アクションプランの策定』を行っているところです。

▶編集注:モチベーションクラウドは、リンクアンドモチベーション社が提供する 「企業と従業員のエンゲージメント向上」 を実現するためのクラウドサービス。モチベーションクラウドの特徴やサーベイの概要については、組織偏差値「Aランク」の企業が組織創りのノウハウを語り尽くす!(ICC FUKUOKA 2018)にてご覧いただけます。

「アクションプランの策定」とはどのような作業なのでしょうか? もう少し詳しく伺いました。

梅原さん「モチベーションクラウドのサーベイ結果には『上司から見た自分』と『部下から見た自分』という項目があります。その内容をもとに、『次の半年間、自分がどのように仕事に取り組むのか』をチーム内で発表するのです。

今そこで発表している主任は『酒を飲みすぎない』と書いていますが(笑)、『部門の売上◯%増』という数字でもいいですし、『元気よく返事する』『フルスイングする』といった目標でも構いません。

研修について解説する梅原さん

『アクションプランだから具体性が大事じゃないのか』と思われるかもしれませんが、抽象的なミッションで力が出る人もいれば、そうでない人もいますよね。どんな言葉で一番パワーが湧いてくるかは人それぞれなので、自分のなりたい姿を『松岡修造』と書いてもよしとしています。

またこの研修では、自分が半年前に決めたアクションプランを実際に行動に移せたかも、自分自身で評価します。あくまで自分自身で評価するのが大事で、出来なかったとしても罰則はありません。」

どのチームも楽しそうにグループワークをされていました

梅原さん「僕は、モチベーションクラウドのサーベイ結果そのものには意味はないと思っています。意味があるのは、サーベイ結果から『何を感じて、何を目指すのか』ということです。

この研修自体も、ファシリテーターとして弊社の取締役や執行役員のメンバーが入っていますが『こうしなさい』『こうするべき』と指導するのではなく『もっとこうしたらいいんじゃないの?』とアドバイスをする程度です。

部門ごとにグルーピングしているのもそのためです、鮮魚なら鮮魚、精肉なら精肉を担当する他店舗の主任どうしで『それは大変だよね』と共感できることがたくさんありますよね。

上司の方も、彼らが書いたアクションプランに目は通しますが、『よっしゃ、それじゃ一緒に頑張っていこうな』という感じです。」

佐竹食品グループでは、こうした研修は「教育課」と呼ばれる部署が担当しているとのこと。会場には教育課の皆さんもいらしたので、ご挨拶させていただきました。

こうした研修以外にも新入社員向け研修、店長研修、全社員研修など様々な研修プログラムがあるらしく、さぞや大きなチームなのだろうと思いきや、教育課のメンバーは課長の細川さんを含めてわずか3人。2名の新卒入社の社員とともに、グループの全研修を担当しているのだそうです。

佐竹食品グループ 教育課 課長 細川さん(写真右)

梅原さん「佐竹では、講師の話を黙って聞くみたいな座学研修は一切ありません。必ず、何かについて考えて、話し合あったり、発表しあったりるする研修スタイルです。そうした研修プログラムを設計しているのが教育課です。

今回の研修では、チーム対抗の計算大会も開催したそうです。『骨や脂をとったら10kgの肉が8kgになりました。歩留まりは何%ですか?』といった問題ですね。“主任やったら当然分かりますよね”というレベルの問題ですが、意外とそうでもありません。

そうしたクイズを研修に盛り込む目的は『できない人を発見する』ことではなく『何が大事かを気づいてもらうこと』です。

極論を言えば、今日出来なくてもいいんです。今日、出来ないということに気づけたことが大事。
『じゃあ覚えていこうね』というのが僕のメッセージです。」

佐竹食品グループのハイモチベーションの秘密の1つは、モチベーションクラウドのサーベイと組み合わせた独自の研修プログラムにあることが分かりました。

しかし、今でこそ「ベストモチベーションカンパニー」として表彰される佐竹食品ですが、そこに至るまでの道のりは平坦ではなかったようです。一行は再び会議室に戻り、佐竹食品のこれまでの組織改善の取り組みを伺いました。

最初は「不純な動機」だった佐竹食品の組織改善

梅原さん「組織改善を始めたのは今から10年ほど前です。その頃からモチベーションクラウドを導入していたのですが、実際にその手応えを感じたのはここ5年くらいです。

当初、佐竹はベストモチベーションカンパニーアワードの10位とか9位とかでした。そこで僕は『3年以内にベスト3に入ろう!』と社員総会で高々と宣言しました。

今思えば入賞が目的というのは動機が不純というか完全に間違っているわけですが、当初はとにかく入賞することに躍起でした。寒かったり暑かったりすると社員のモチベーションは低いだろうから冬と夏はサーベイはやめようとか、逆に決算賞与を出した直後にやればスコアが高く出るだろうとか、スコアの低いチームは置いといてスコアが高めのチームをより伸ばして平均を上げようとか、始終そんな感じでした。

当然結果は振るわず全国6位。あの手この手を尽くしたのにベスト3位に入れず、もうこんなもんやってられるか、もうええわと思うわけですよ。社員からも『社長はただ表彰されたいだけやろ。誰のためのサーベイやねん』と。そこで冷静になるんですよね。そもそも何のためにやっているんだと。

『従業員が、楽しく元気に働ける組織をつくるためだろう』と。

そこで原点回帰で『もう入賞できなくてもいい。一番スコアの低いチームにフォーカスしよう』と考えを改めたときから、全体のエンゲージメントスコアが上がってきました。」

スコアの低いチームは「解体」、悪者は生み出さない

梅原さん「その後社員の話を聞いて分かったのは、あるチームの綻びというのは、そこで働く全員が分かっているということでした。

例えば、ある店舗の鮮魚部門の雰囲気が悪いとします。そういうとき、鮮魚以外のどの部門の社員も『最近、魚が良くない』ということは分かってるんですよね。そして、それに対して会社が何もしてくれないという事実が、さらに雰囲気を悪くする。

『あの子たち可愛そうやん。休憩のときいっつも愚痴ってるよ。会社はなんで何もせえへんの?』と。

ですから、そうした課題に対して僕らがちゃんと向き合って、話し合って、なんとかしようとする姿を見せることで、ようやく他のみんなも応援しよう、頑張ろうと思ってくれるわけです。

シンプルで当たり前なことなのですが、そういうことも最初は分かっていませんでした。」

上記のように過去の“姑息な施策”を話してくださった梅原さんですが、こうしたエピソードを笑顔で話せるということに、現状への自信のようなものも感じた一同でした。

その一方で、どうしても改善の難しい組織に対しては、大胆な施策を実行しているようです。

梅原さん「例えば 5人のチームの関係性がむちゃくちゃ、モチベーションスコアも最下位、みたいなチームがあったとします。

僕らはそんなとき、『解体』と呼んでいるのですが、文字通り5人全員をバラバラの店舗に異動させます。

どういうことかというと、例えばそのチームでAさんとBさんの仲が険悪で、チームにも悪影響が出ているとします。そこでAさんとBさんだけを別々の店舗に異動させたとします。そうすると、残った3人としては『してやったり』なんですよ。『あいつらほんま鬱陶しかったな』と。

そして追い出された2人はどこに行っても『前の店で大変だったらしいな』と“排除された悪玉”みたいに言われます。だから、5人全員をバラバラにする。誰が悪者だという話ではなく「スコアが低くて再編成された」という扱いです。悪者をつくり出さない、というところがポイントです。

弊社では年に3回くらい人事異動があります。1回に100数十の人が動くので、解体したチームの人員の受け入れという点では、そこまで困ることもありません。」

チームに所属する「誇り」を醸成するために

梅原さん「ちなみに異動は基本的には、他店舗間の同じ部門への異動、つまり精肉部門なら他店舗の精肉部門への異動という形になります。部門間の異動は本人の希望があれば、という感じですが、ほとんどありません。

というのも、佐竹では入社時点から自分の部門に『誇り』をもってもらうような工夫をしています。

今年は48名の新入社員が入社しましたが、彼らはどの部門に配属されるかは未定の状態で採用されます。ではどうやって配属が決まるかというと、各部門の代表者が新入社員48名に対してプレゼンテーションをする場があります。そこで、精肉、鮮魚、野菜といった各部門の代表者が、いかに自分の部門が素晴らしいかを15分ずつ必死にPRします。プレゼンテーションの後には質疑応答もあります。その上で、新入社員は第1希望、第2希望という形で配属を志望する部門を提出します。

ですから、プレゼンテーションが振るわずにその部門の志望者が全然いない、ということもありえます。過去、新入社員が50名くらの年に精肉部門の志望者が2人しかいないときがありました。プレゼンした社員は『ほんますみません!』と泣いていたのですが、それはそれで仕方ありません。

でも彼らがその翌年何をしたかと言うと、新入社員の前で肉を焼いて配り始めたんですよ。他の部門からは『賄賂や!』みたいなクレームがありましたが、それほど、どの部門もあの手この手を尽くして真剣に人材獲得に臨んでいます。

一方で、例えば『今年は野菜部門は7名しか採りません』という状況に対して15名の新入社員が野菜部門を志望しているとします。そうしたら、今度は新入社員に対して『野菜部門に入りたいんやったら、自分を売り込みなさい』ということになります。

そんな感じで基本は相思相愛で配属されるので、別の部門に移りたいというケースはあまりないですね。

また佐竹では、部門ごとに部門の志を設定して浸透させています。鮮魚部門なら『魚嫌いを魚好きにする』、精肉部門なら『肉好きをうならせる』といった具合です。

佐竹の店舗には各部門でどのように商品を陳列するかというルールやマニュアルは存在しません。それぞれのミッションのもと、お客さまに喜んでもらうためなら何をやってもよい、というルールが存在するだけ。社員の自主性を重んじています。」

「従業員のモチベーションが高い」とはどういう状態か?

佐竹食品グループが「ベストモチベーションカンパニー」たる所以が段々と分かってきました。こうして醸成されるモチベーションや自主性の高さは、スーパーマーケットとしての「強み」にどのように表れているのでしょうか?

梅原さん「ここFoods Market satakeの本店がある吹田駅の駅前には大手のスーパーさんもあります。僕らとしては、佐竹と大手スーパーさんを使い分けしてもらえたら一番いいなと思っています。僕らの売り場面積では出来ることに限界もあるし、『プライベートブランドのあの商品が欲しい』と言われたら大手スーパーさんに行ってもらうしかありません。

その上で僕らの強みが何かというと、『接客』と『生鮮』です。

モチベーションが高いということで、よく『プッシュ型』の接客をイメージされがちなのですが、実際の佐竹は『アプローチ型』の接客です。

本社事務所に貼ってあったポスター

来ていただいたのが3回目やなと思ったら『いつもありがとうございます』と声をかけるとか、商品を探してそうだったら『何かお探しですか』と声かけるとか、そうした会話を通じて接客できるのが、うちの従業員です。

よく『モチベーションの高いスーパーやから、店員がノリノリで話しかけてくるんでしょ?』 と聞かれるのですが、それはテンションが高いだけでモチベーションが高いのとは違います(笑)。

モチベーションが高い状態というのは、大好きな趣味を黙々とするように、やりたいことに一生懸命に取り組む状態です。佐竹の従業員はまさにそんな感じで、売り場の設計を考えるにしても『どうやったらもっとよくなるだろう?』『 どうやったらお客さんがもっと喜ぶだろう?』 というのを、ずっとみんな真剣に考えています。」

お客さまに喜んでもらうためなら、何をやってもよい

一行は最後に、1階の店舗(Foods Market satake 朝日町本店)を見学させていただきながら、梅原さんに生鮮を中心とした売り場の工夫を解説いただきました。

梅原さん「電化製品であればAという製品はどこで買ってもAという製品ですから、単純に安かったりポイントがつく店に行きますよね。

でも生鮮食品は、同じキャベツであっても産地が違えばサイズも味も違います。だから佐竹では、いつ来ても新鮮な野菜、美味しい果物、旬の魚が置いてあるスーパーを目指しています。

そのため、僕らは店舗ごとにバイヤーがいます。市場の問屋には、佐竹のバイヤー同士で商品を競りあう光景がみられるくらいです。聞くところによると、他店舗の先輩バイヤーにとられないように、逆周りで問屋をまわる若手社員もいるようです(笑)。

すべての商品は店舗ごとのバイヤーが仕入れる

いわゆる『広告の品』以外のイチ押し商品は、そのように店舗ごとに仕入れをして、値段も各店舗でつけて、自分たちで売る。新鮮で美味しい生鮮をお客さまにお届けするために、そんなことをしています。」

梅原さんの解説を聞きながら、スーパー内を見学するICCパートナーズ一行。そこで私たちは、目を疑う光景に遭遇しました。

鮮魚コーナーで「金魚」が売られている!

なんと、鮮魚コーナーで金魚を販売されているのでした。梅原さんもその時はじめて知ったようで「金魚を売ってみたかったんやろな(笑)」と。店舗ごとの自主性を大事にしているとのことでしたが、現場判断でここまで出来るとは、佐竹食品恐るべし。

もちろん食用ではなく、お子さん連れのお母さんをターゲットにした商品のようです。梅原さんが現場の方に売れ行きを聞くと、「ぼちぼちですね」とのことでした。

梅原さん「この企画も、半分冗談で半分本気だろうと思います。先ほども言ったように、仕入れは各店舗のバイヤーに任されていて、そこにあるのは『お客さまに喜んでもらうためなら、何をやってもよい』というルールのみです。他のスーパーだったら鮮魚のバイヤーが金魚を仕入れてきたら当然怒られるでしょうけど、佐竹では怒られません。

陳列にもルールはなく、売り場でどの商品をどう並べるかも各部門の担当者が考えます。

こんな感じで、どこからか網やらS字フックを持ってきて、勝手に売り場を増殖させている部門もあります。やり過ぎの場合は注意はしますが、基本的には現場の判断でやってもらっています。」

「理念のリレー」で組織をつなぐ

取材の途中、高齢のお客さまが多いことについて触れると、梅原さんが次のようにおっしゃいました。

梅原さん「足腰が弱くなってしまったご高齢の方にとって、買い物に出かけることは1つの運動でもあり、リハビリですよね。

そういう方々に『冷蔵庫に何もない。ああ、スーパーに行かなきゃ……』と思われるようではだめなんですよ。だって楽しい場所なら『行かなきゃ』なんて思いませんよね。

僕たちは佐竹というスーパーを、毎日でも、1日何度でも行きたくなる場所にしたいと思っています。近場に佐竹がなくても、週末に『父ちゃん、佐竹行きたいから車出してや』そう言ってもらえる存在になりたいんです。

僕らはスーパーマーケットですが、『ファン』をつくりたいと思っています。それが、僕たちが『日本一楽しいスーパー』を理念に掲げている理由です。」

そのように「ファンづくり」について熱弁する梅原さんですが、佐竹で働く従業員の皆さんも同様に、梅原さんの「ファン」として梅原さんを慕っていらっしゃることを感じる瞬間がありました。

それは、主任研修を取材している最中のことでした。

私たちのスタッフのひとりが若手社員の方に「なぜ佐竹に入社されたのですか?」と聞いたところ、その答えは「梅原の人柄ですね」というものでした。

「距離が近く、困ったときにすぐに相談できる存在です」とその方は続けました。

そのことをお伝えすると、梅原さんははにかんだ笑顔を見せながら次のようにおっしゃいました。

「嬉しい限りですね。僕は、そういう関係が“リレー”できている組織がいい組織だと思っています。

僕だけが身近な存在として頑張るんじゃなくて、役員、部長、店長、みんなが同じようなスタンスでいられたら、みんなが身近になりますよね。

そこで大切なのは、やはり理念だなと思っています。

これからも『 日本一楽しいスーパー 』めざして、頑張っていきたいなと思います。」

◆ ◆ ◆

以上、「ベストモチベーションカンパニーアワード」連覇に輝いた佐竹食品グループの組織マネジメントの秘訣を、同社社長の梅原さんにご解説いただきました。

実は、ここでご紹介しきれなかったお話もたくさんありました。

「佐竹食品ツアー」では、梅原さんのレクチャーのほか、今回レポートさせていただいた研修見学や店舗見学のコンテンツも予定しております。ご参加される皆さま、ぜひご期待いただければと思います。

梅原さん、佐竹食品の皆さま、平日夕方の大変お忙しいなか取材にご協力いただき、ありがとうございました!ICCサミット KYOTO 2019 当日も、何とぞよろしくお願いします!

(終)

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/浅郷 浩子/戸田 秀成

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