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「大家×NPO×ファイナンス」で、シングルマザーの課題を住まいから解決する「LivEQuality大家さん」(ICC KYOTO 2024)

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ICC KYOTO 2024 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただき、見事優勝に輝いた、LivEQuality大家さん 岡本 拓也さんのプレゼンテーション動画【「大家×NPO×ファイナンス」で、シングルマザーの課題を住まいから解決する「LivEQuality大家さん」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2025は、2025年2月17日〜 2月20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。

【速報】アフォーダブルハウジング市場をつくり、母子家庭の暮らしを支える「LivEQuality大家さん」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2024)


【登壇者情報】
2024年9月2〜5日開催
ICC KYOTO 2024
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ

岡本 拓也
LivEQuality大家さん
代表取締役社長
公式HP | 公式X

公認会計士として大手コンサルティング会社で企業再生等に携わった後、中間支援団体の代表理事、教育系NPOの常務理事を歴任。2018年、父の急逝に伴い建設会社を承継。2021年、コロナ禍を機に、シングルマザーの課題を「住まい」から解決するLivEQuality(リブクオリティー)事業をローンチ、後に法人化。母子家庭の相対的貧困率48%の起点には、DVや離婚による住まいの喪失がある。弊社の提唱する「新しい大家さん業」では、まずテナントや一般入居者が求める「都市部の好立地のビル」を購入。メンテナンスで物件の質を高め、ビル全体の収益性を担保しつつ、一部を相場以下で貸し出す。清潔な個室を得て、2022年に立ち上げたNPO法人による支援を受けたシングルマザーの家賃滞納はゼロ、入居半年後就労率83%。インパクト投資家への私募社債発行等で累計5億円調達した資金を基に、名古屋市で構築した経済性・社会性の両立モデルを全国展開する。


岡本 拓也さん 皆さん、こんにちは。

株式会社LivEQuality(リブクオリティ)大家さんの岡本です。

私は、「新しい大家さん業」に挑戦しています。

「新しい大家さん業」とは

どのような事業かと言いますと、家を借りられないシングルマザーに家を貸すことです。

慈善事業ではありません。

社会性と経済性を両立させたビジネスとして取り組んでいます。

欧米で広がる「アフォーダブルハウジング」

皆さん、「アフォーダブルハウジング」という言葉を聞いたことがありますか?

アフォーダブルハウジングとは、「住まいに困窮されている方々に提供する、低価格で気持ちの良い」住まいのことを言います。

アフォーダブルハウジングとは?アフォーダブル住宅の世界の事例も(HEDGE GUIDE)

この分野は、欧米ではすでに「行政による税制優遇を背景」に、民間主導で大きな市場ができあがっています。

GAFAは、数千億円をこの分野に投じると発表しており、多くのスタートアップも生まれ、多額の資金を調達しています。

GAFAの「罪滅ぼし」で注目のアフォーダブル住宅、商機を嗅ぎ付け起業続々(日経XTECH)

減少傾向にある日本の公営住宅

他方、日本では、この分野は長らく公営住宅が担ってきました。

しかし、国の財政が限界を迎え、公営住宅は減少傾向にあります。

一方、民間の不動産マーケットは加熱しています。

経済格差がそのまま「住まいの困窮者」を生み出す構図になっています。

コロナ禍、住まいの困窮はより深刻に

この問題は、コロナ禍でより深刻になりました。

突然訪れたパンデミックの中、真っ先に雇用を打ち切られたのは、非正規雇用の方々です。

非正規雇用の多くは女性、中でもシングルマザーが収入源を失うことの影響は大きく、最後の砦である住まいを手放さざるを得ない方々が大勢いました。

「自分にできることはないだろうか?」

コロナ禍で居ても立っても居られなくなった私は、必死に考えました。

「住所主義」の日本で起こる問題

日本は「住所主義」――つまり、住所がなければ、公的サービスを受けられません。

保育園に子どもを預けることができないシングルマザーは働くことがままならず、そのような状況に置かれた母子に「まともな家」を貸す大家さんがいない、それが日本の現状です。

そのような、ひとり親世帯の44.5%が、相対的に貧困であるとされています。

これは、見過ごせない数字ではないでしょうか。

2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況(厚生労働省)

令和 3年度 全国ひとり親世帯等調査結果の概要(厚生労働省)

不動産会社で相手にされず、大家さんに断られ、ようやくたどり着いた住まいは、お世辞にも良い環境とは言えません。

都心に近く駅から5分の部屋を3割安い家賃で提供

住まいは、人々にとって「尊厳」を取りもどせる、その第一歩を踏み出せる場所です。

そこで私は、「日本版アフォーダブルハウジング」をたちあげようと決意しました。

私たちが提供する住まいは、都市へのアクセスが良好で、駅から5分以内の部屋がほとんどです。

条件の良い中古マンションを取得して、きれいにリノベーションした部屋は、日当たりがよく、広さも様々です。

市場家賃から平均3割引で提供しています。

母子に伴走支援するNPOを設立

しかしながら、住まいの提供だけでは複合的に絡み合う課題は解決できません。

そこで、重要となるのがNPOです。

認定NPO法人LivEQuality HUB(リブクオリティ ハブ)

「気持ちの良い住まい」という「ハード」を得て、尊厳を取り戻す第一歩を踏み出した母子に、「伴走支援」という「ソフト」を、NPOが提供します。

3割安い家賃設定でもビジネスとして成立

冒頭でも申し上げましたが、私たちはこの取り組みを慈善事業としてではなく、ビジネスとして取り組んでいます。

所有物件の30%を、通常家賃より30%ほど割り引いて提供しています。

一見、大家業としての利回りは、下がるように思えるかもしれません。

しかし、空いた部屋にすぐにシングルマザー母子が入居するため、稼働率が向上します。

この稼働率の向上による収益の増加が、家賃を割り引いた利回りの低下を上回ります。

結果、経済性と社会性が両立し得るモデルとなっています。

「寄付でも出資でもない」新しいファイナンス手法

さらに、私たちは、新しいファイナンス手法を生み出し、資金調達に成功しています。

このモデルに可能性を感じてくださった投資家や金融機関から、累計5億円を調達しました。

第2回のインパクトボンドを発行。累計5億円の資金調達を実施(PR TIMES) 

投資家の皆さんは、「インパクトボンド(私募社債)」という、実に利回り0.1%、返済期間20年という社債を、引き受けてくださっています。

寄付でもない、出資でもないファイナンス手法を織り交ぜて多額の資金を調達したことで、新しい「お金の流れ」としてインパクト投資(※) の可能性も拓くことができました。

▶編集注:「インパクト投資」とは、財務的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的及び環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資行動のこと。

住まいをきっかけに生活を再建

このようにして、住まいをきっかけに困難な状況から抜け出した母子家庭の家賃回収率は100%、滞納は0件、就業率は80%を超えています。

彼女たちは、口を揃えてこう言います。

「自分と子どもの『可能性』を信じられるようになりました」

お母さんが安定すると、子どもたちは元気になります。

この事業は、子どもたちの未来を照らす事業でもあるのです。

公認会計士としてキャリアをスタート

まだ日本にない、アフォーダブルハウジング市場を立ちあげる、その先頭に立つのが、私たち株式会社LivEQuality大家さんです。

代表の私にとって、このチャレンジは人生そのものです。

20代は、公認会計士として企業再生の分野でビジネスとファイナンスの腕を磨きました。

30代は、ソーシャルセクターの現場に飛び込み 経営に邁進しました。

そして40代、父の急な他界により突如継いだ名古屋の建設会社(千年建設株式会社)が得意とするのは、建物の修繕です。

これらの点と点がのちに繋がることになるとは、当時は想像もしていませんでした。

まだ道半ばであり、ようやく0→1(ゼロイチ)のフェーズを乗り越えたばかりです。

私はこれからの人生を、この事業と市場創出にかけていきます。

この人生をかけた挑戦を、後押ししてくれる仲間がいます。

ソーシャル、ファイナンス、法律など、様々な領域の第一線で活躍するプロフェッショナルが、ビジョンに共感し集まってくれました。

この仲間たちとなら、これからのフェーズも必ずや乗り越えていける、私はそう確信しています。

支援対象を拡大し、政策提言を推進

まずはシングルマザーを対象に事業をたちあげましたが、住まいに困難を抱えている方々は、ほかにも大勢います。

今後は、全国のNPOと連携して対象を広げます。

株式会社LivEQuality大家さんは、5年後までに資産総額100億円規模まで事業を拡大します。

そして、欧米のような「税制優遇に向けた政策提言」を推進します。

税制優遇が進み、欧米のように多くのプレイヤーと投資家が参画し、日本の賃貸住宅市場68兆円のうち10%がアフォーダブルハウジング市場になれば、およそ120万世帯に住まいを届けることができます。

誰もが「可能性」を信じ、自立して幸せに生きられる社会へ

日本版アフォーダブルハウジングは、旧来の不動産市場のプレイヤーから、「リスクが高い」と見られて排除されてきた方々の「可能性」に光を当て包摂する事業です。

私たちは、住まいに困難を抱えるすべての方々が「尊厳」を取り戻し、誰もが「可能性」を信じ、自立して幸せに生きられる社会を目指します。

皆さん、日本版アフォーダブルハウジング市場をともに創りませんか?

皆さんの力が必要です。

ご清聴ありがとうございました。

▶︎実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/中村 瑠李子/戸田 秀成

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