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2. エンタープライズに本格挑戦、「それ、早く言ってよ~」CMでおなじみSansan

ICC KYOTO 2024のセッション「元SAP・Oracle・Salesforce・BOX等、大手外資IT企業出身者が挑むスタートアップのエンタープライズセールスの立ち上げ」、全4回の②は、なぜエンタープライズをターゲットとするのかを議論。富岡 圭さんは、名刺のデータ化枚数等で課金するSansanのビジネスモデルは、社員数が多いほうが売上が大きくなるといいます。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターは チームスピリットです。


【登壇者情報】
2024年9月2〜5日開催
ICC KYOTO 2024
Session 4E
元SAP・Oracle・Salesforce・BOX等、大手外資IT企業出身者が挑むスタートアップのエンタープライズセールスの立ち上げ
Sponsored by チームスピリット

(スピーカー)

大我 猛
booost  technologies株式会社
取締役COO (最高執行責任者)

高山 清光
ジョーシス株式会社
日本統括上級副社長CRO

富岡 圭
Sansan株式会社
共同創業者/取締役 COO

(モデレーター)
道下 和良
株式会社チームスピリット
代表取締役CEO

「元SAP・Oracle・Salesforce・BOX等、大手外資IT企業出身者が挑むスタートアップのエンタープライズセールスの立ち上げ」の配信済み記事一覧


なぜエンタープライズをターゲットとするのか?

道下 先ほどご紹介した全体像のうち、各社、どれくらいエンタープライズに注力、期待しているのか、未来を懸けているのかについて、まず話せればと思います。

なぜ、複雑で、難解な要求をしてくるエンタープライズをわざわざ選ぶのか、そこにリソースを投入して本当に儲かるのか。

昔、Oracleが買収したPeopleSoftという会社がありますが、日本に上陸した時、最初に攻めたのがトヨタグループでした。

それに全勢力を取られて、トヨタにしか対応できなくなったという状況を近くで見ていました。

ですので、なぜ選ぶのか、どれくらい注力するのかについてお聞きしたいと思います。

道下 まず、こちらはチームスピリットの中期経営計画で、2026年までにARR70億円を目指しています。

伸ばすための一番のドライバーを、エンタープライズにしています。

長らく、中堅・中小企業のお客様が中心だったのですが、SaaSの競合が増えてきているので、そこで戦い続けるのは厳しいだろうと考えました。

難易度が高いことも分かっていますが、エンタープライズ向けに製品も作り変えた上で攻めます。

会社として、生き残るにはここしかないという理由と、成長の余地があるという理由から、覚悟を持ってエンタープライズを攻めることにしたので、2代目社長にと私に声がかかりました。

ここまでが、チームスピリットの状況です。

では、富岡さん、Sansanにとって、エンタープライズはどういう位置付けでしょうか?

社員数が多いほど売上が大きくなる

富岡 まず、エンタープライズの定義について、どれくらいの従業員数以上をエンタープライズとするかという議論があると思います。

Sansanでは、営業部隊のリソースによって、1,000、2,000、3,000人と変えますが、対外的には1,000人を区切りにして管理しています。

グラフの濃い青が1,000人以上、その次が100~999人、一番薄い青が100人未満で、各カテゴリからの収入の割合をグラフ化したものです。

横軸は2018年から、2024年5月までです。

現時点で、売上の45%が1,000人以上の会社からで、だんだん増えています。

このグラフには入れられていませんが、初期は、ほとんどが一番薄い青のSMB(中堅・中小企業)からの売上でした。

これは、Bill Oneのグラフです。

サービス開始から4年以上ですが、Sansanの初期に近い推移だと思っています。

最初は1,000人以上の会社からの売上はあまりなく、現時点で24%なのでSansanの半分です。

1,000人未満が7、8割です。

エンタープライズを徐々に増やしていくのが、我々のアプローチです。

道下 Bill Oneのエンタープライズ売上は24%ですが、今後はSansanのレベルにしたいと考えていますか?

富岡 そうですね、増やしていきたいと思っています。

道下 なぜですか?

富岡 売上を伸ばすには、エンタープライズ売上を取っていかないといけないからですかね。

道下 やはり、1社あたりの契約額、受注額は大きいのでしょうか?

富岡 大きいですね。

Sansanは名刺交換枚数、名刺のデータ化枚数、Bill Oneは請求書枚数によって課金していますので、基本的には、社員が多いほうが売上金額は大きくなっていきます。

ただ、最初からエンタープライズを狙えたかと言うとそうではなかったので、SMBから始めて徐々に広げていきました。

Bill Oneも、広げている最中です。

「それ、早く言ってよ~」CMの効果

道下 私、そしてここにいる皆さんが聞きたいのは、SMB中心の状態からエンタープライズにギアを変えていく、その端境期には、何を意識していたのか、何がドライバーとなって加速したのかです。

振り返って、どんなことがあったのでしょうか?

富岡 正直、積み重ねでしかないと思っています。

例えば、テレビCMが一つ。

僕らは、B2Bのスタートアップのうち、テレビCMをいち早く出稿した企業かと思います。

テレビCMは、エンタープライズにアプローチするために出稿しました。

松重 豊さんや野間口 徹さんが出演し、「それ、早く言ってよ~」というセリフのあるCMですが、スーツを着た大企業の部長と課長であるという設定で、大企業には隠れた人脈があることを示唆するストーリーです。

CMギャラリー(Sansan)

ですので、大企業を攻めたいというメッセージを込めていました。

Sansanにはあまり大きな流れはなかったですが、あったとすれば、働き方改革の流れが起こった際、その要素を無理やり入れたことはありましたね。

あとは採用ですかね…でも、そんなに簡単にエンタープライズに強い人材は採れないので。

トライはしましたが、あまりうまくいかなかったなと感じています。

道下 そもそも、CMは効果があるのかとよく言われますよね。

今振り返ると、あれがあったから成功したとおっしゃると思いますが、当時は、エンタープライズ営業において、CMのおかげだという手応えは感じていたのでしょうか?

それとも、何年か経って実感したのでしょうか?

富岡 当時の僕らとしては、一か八かくらいの金額をかけて作ったのですが、効果はすぐにあったと感じました。

ただそれは、エンタープライズというよりも、全体の受注においてリターンがあったという意味です。

エンタープライズに対しては、やはり積み重ねによって認知が広がったので、CMによる即効性はなかったです。

道下 私ばかり聞いてしまっていますが、高山さん、大我さんも、質問やコメントがあればお願いしますね。

では、Bill Oneについて、エンタープライズ売上を今後伸ばすにあたって、どうする予定ですか?

もうCMという手は取らないと思いますが。

富岡 今年、Bill OneのCMも作りましたよ。

Bill One「異動でやられた」篇(Sansan YouTube)

今日の午前中も社内で議論していたくらいなので、まさに今、試行錯誤しています。

要素としてライセンス、体制、プロダクト、売り方、価格などありますが…積み重ねというか、Bill Oneは地道に活動するフェーズにいますね。

若手のエンタープライズ営業登用はあり?

高山 どの会社でも、SMB営業がミドルサイズ、そしてエンタープライズ営業をしたいと言いますよね。

でも、すぐに別カテゴリの営業ができるのかという話で、僕は、エンタープライズが得意な人、SMBが得意な人に分かれていると思っています。

Sansanの場合、若手をエンタープライズ営業に登用しているのでしょうか?

富岡 若手かどうかは分かりませんが、基本的には、なるべく下から上に上げています。

いきなり登用しても、パフォーマンスは出にくいですし、他の外資で活躍していた人をいきなり登用してもなかなか売れません。

もちろん一部、例外的な人はいますが、下から上げていくのが良いと思っています。

高山 セールスイネーブルメントが、しっかりとしているのですね。

富岡 取り組んではいますが、エンタープライズ領域においては、そこまで型ができているわけではないと思います。

道下 ありがとうございます。では、このままの流れで、高山さん、お願いします。

エンタープライズ開拓はまさしくこれから

高山 歴史がまだ浅いので、簡単に書いているだけですが……会社設立時(2022年)は従業員300名以下の会社にしか売らない、301名の会社が買いたいと言ってきても売らないという戦略でした。

面白いのは、製品を作って間もない頃だったので、優秀な営業を採用すると、製品が悪いけれど売れたという状況になるかもしれないということで、IT営業未経験者4名を採用して売ったことです。

オンラインでの商談後、対面で会った際には名刺の交換方法さえ分からない状態の社員4名から、型作りはスタートしました。

その後は300~1,000人規模のエンタープライズへの拡張のため、僕も面接にアドバイザーとして入り、外資企業の営業部門のヘッドを採用しました。

そして、エンタープライズの定義として従業員3,000名規模に拡張、2024年1月には製品も良くなってきたので、10,000名規模にまで拡張しました。

今、600社ほどのお客様がいますが、そのうちの10%が、従業員1,000名以上の規模の企業です。

ですので、まだまだこれからです。

人員構成としても、従業員3,000名以上の企業への営業活動には、ほとんど人を割いておらず、ナーチャリングやお友達作りのような活動を行っています。

従業員1,000~3,000名規模に対しては今3人ですが、これを10人ほどにしようとしています。

また、日本の主要なチャネルパートナー40社と連携しているので、そのチャネルチームに一番人員を割いて、イネーブルメントに強く取り組んでいますね。

例えば、NTTドコモの法人営業部隊は、ドコモショップにいます。

彼ら1,800人へのトレーニングを行った結果、何と今、1カ月半で2,500の案件が動いています。

イネーブルメントは大変ですが、パートナーにしっかり伝えていくことで、とんでもない数の案件になって、勝手に売上が入るようになります。

それはSMB、中小規模の話であり、これからエンタープライズを攻めるところです。

エンタープライズはタイミングや機能について、投資家も含め、会社としてめちゃくちゃ迷っています。

「効率化」だけで訴求できないケースも

高山 余談ですが、小さいIT企業の場合、情報システム部には1人しかおらず、その人ができることしかしません。

ジョーシスとしては、効率化を訴求するとすぐに導入が決まります。

でもエンタープライズの場合、ITの仕事をしたい人はいないのです。

ITの仕事がしたい人は、SIerにいます。

とある大企業のCIOに聞いたのですが、600人の従業員がいるIT部門で「ITを愛しているか」というアンケートをとったところ、愛していると回答したのは1人だったらしいです。

そしてほとんどが、「速やかにマーケティングの仕事に戻りたい」ということでした(笑)。

失敗しないで戻りたいという人たちに物を売るときは、ビジョンセリングにはなりません。

ですので、エンタープライズ向けには、パートナーを活用するなど方法を考えないといけないです。

CIOは話が上手いけれど、その下の部長は何もしないということもありますので、誰に、どう落とすのかを考える必要があります。

また、マーケティングもいろいろなテストをやっていますが、大きくするにもデータを見てMQL(Marketing Qualified Lead)からSQL(Sales Qualified Lead)にどう展開するか、メッセージをきちんと伝えることが必要です。

従業員1,000名以下の企業には刺さっていますが、それよりも大きい企業には、機能がまだ足りずに刺さりきっていません。

ですからテレビCMも、全セグメントに刺さるものが見つかったら、作りたいと考えています。

富岡 パートナーチャネルについて、今のフェーズではSMB中心ということでしたが、エンタープライズ向けのパートナービジネスは、僕らは模索中です。

うまくいかせるためのポイントがもしあれば、教えてほしいです。

道下 それはすごく面白いテーマで、高山さんに登壇していただいたのは、まさにこのためです。

高山さん、まずご見解をお願いします。

(続)

編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

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