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3. 現場の小さな会議でもビジョンの話が出る中川政七商店

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ICC KYOTO 2025のセッション「ウェルビーイング経営を語り尽くす」、全7回の③は、中川政七商店の13代目、現PARADE中川 淳さんが、2つの問いを立て、答えを出していきます。1つ目の問いは、「いい会社とは何か」。2つ目の問いは、セッション登壇にあたって「考えざるを得なくなった」という「中川政七商店はウェルビーイング経営なのか?」です。中川さんによる解説を、ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回500名以上が登壇し、1,200名以上が参加する。そして参加者同士が真剣に議論し、学び合うためのカンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2026は、2026年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターは住友生命保険です。


【登壇者情報】
ICC KYOTO 2026
Session 8B ウェルビーイング経営を語り尽くす
Sponsored by 住友生命保険

(スピーカー)

石川 善樹
公益財団法人ウェルビーイング for Planet Earth
代表理事

小島 玲子
丸井グループ
取締役上席執行役員CWO 

中川 淳
PARADE
代表取締役社長

蓮田 健一
hacomono
代表取締役CEO

(モデレーター)

藤本 宏樹
住友生命保険相互会社
常務執行役員

『ウェルビーイング経営を語り尽くす』の配信済み記事一覧


藤本 中川さんと小島さんに、ご自身が考えるウェルビーイング、ウェルビーイング経営、もやもやしていること、今取り組まれていることなどを、まとめてきていただきました。

中川さんから、お話をお願いします。

「いい会社」とは何かを考え、実践するPARADE

中川 はい。前半に自己紹介が入りますが、僕は大学を卒業後、2年間富士通で働き、最初は継ぐ気のなかった家業の中川政七商店に入社して、23年間やってきました。

300年以上続く会社の13代目だったので、僕まではずっと一族で経営してきたし、それが当たり前でしたが、僕は入社した時から、次の代は中川ではない人間にやってもらおうと心に決めていました。

45歳で辞めることを目標にして、その代わりに死ぬ気で働くぞと思って頑張ってやってきて、44歳で社長を交代しました。

トップダウンから最強のチームワークへ。14代千石社長と中川政七商店302年目の挑戦 (中川政七商店)

コロナ禍も現経営陣で乗り切って、もう大丈夫だなと思ったので、予定よりちょっと遅いですが、50歳で完全に取締役からも退きました。

今は非上場会社の株主としているだけなので、不思議な感じです(笑)。

中川政七商店を経営する中で意識していたことは、ビジョンを持ってやろうということでした。

社是や家訓は全くなかったところに、「日本の工芸を元気にする!」を掲げ、一企業ではあるが、私たちは日本の工芸なんだと、そこに向けて一生懸命やってきました。

奈良県は県外就職率が高い県ですが、今、中川政七商店の社員で奈良県出身者は1割もいません。

ほぼ県外から引っ越して奈良で働いてくれているような会社になりましたが、ビジョンがすごくよく機能したからこそ、こういう風にやってこれたのかなと思っています。

セッションの前に、蓮田さんが使ってくれていると知り嬉しかったのですが、「ザ/THE」というブランドを、good design company水野 学さんというクリエイティブディレクターと僕と米津 (雄介さん)で並行してやっています。

KITTE丸の内や渋谷スクランブルスクエアにある「THE SHOP」というお店も引き続きやっています。

4年前(2021年)から、Takramと一緒にジョイントベンチャーとしてPARADEを立ち上げ、「『いい会社』とは何かを考え、実践する企業団体」みたいなことをしています。

中川政七商店とTakramのジョイントベンチャー「PARADE株式会社」始動のお知らせ 2021.09.30(中川政七商店)

「いい会社」とは何かを考えるみたいなことが、もしかしたら今日のウェルビーイングみたいなことにも繋がっているのかもしれません。

PARADEの参画企業は18社ぐらいですが、そのうち3社がB Corp認証を取っているので、色々指標があるとは思いますが、世界から見るとB Corpはウェルビーイングに近しいものがあるのかもしれないなと思います。

B Corp認証  (Wikipedia)

いい会社が増えると、世の中がちょっとでも良くなるのではないか。

工芸という枠を超えて、それに取り組んでいるのがPARADEです。

いい会社の定義とは

中川 余談ですが、いい会社とは「利益+共通善+個別善」と定義しています。

株式会社である以上、利益を出すのは当たり前だし、続けていくためには利益が必要で、それに加えて「共通善」という条件があると思います。

今日の話に通じると思いますが、「共通善」というのは、例えば、今で言うと気候問題や人権問題など、当たり前にやらないといけないという、社会が共通認識として持っている、最低限やらないといけないものです。

もう1つ、いい会社の条件があるのではないかと思いますが、それが「個別善」です。

会社を立ち上げる時に、何かを志したわけですよね?

それは社会全体に共有されているものではないかもしれませんが、中川政七商店で言うと、「工芸を元気にしよう」ということを掲げました。

この3つを実践できている会社が、いい会社なのではないかと定義しています。

中川政七商店を辞めてからは、VISION to STRUCTUREで、コンサルティングもしています。

最近は整体師のような気分になるのですが、志はある、背骨もそれなりにあるし会社は強い、利益も出ていて筋肉もあるのだけれど、何か動きがぎくしゃくしている会社の社長と壁打ちをしています。

いいビジョンがあって、そのビジョンを分解して、だからこれをやっているんだという事業との繋がりをきれいに整えると、社長さんが非常にすっきりして、社員も「そういうことなんだ!」と理解します。

その結果、採用力が強くなったりします。

ポキポキポキと鳴らすと、3回ぐらいでだいたい直るのですが、そんなことをしています。

藤本 興味がありますね。やってほしいな(笑)。

中川 (笑)。社外取締役は着物の最大手の会社(やまと)を7年くらい、子供服のファミリア結わえるにも就きました。

色々な賞を頂いて、メディアに出演したり、本を出版したりもしています。

会社はビジョンを達成するためにある

中川 中川政七商店はウェルビーイング経営なのかどうか、今回改めて考えざるを得なくなり考えてみました。

分からないので、ChatGPTにウェルビーイング経営とは何かと聞いたら、色々難しい話をたくさん教えてくれたのですが、経営者にも色々な流派があると思います。

経営者の仕事は、ゴーイングコンサーン、要は続いていくことが経営者の仕事だとよく言われると思いますが、僕はそれにすごく違和感があります。

僕は、「会社はビジョンを達成するためにある」と定義しているので、その前提に立った時に、ウェルビーイング経営とは何なのか、考えを進めてみました。

ウェルビーイングは、この瞬間のゴールではなくて「状態」ですよね。

僕らがビジョンに向けて一生懸命やっているそのプロセスが、社員にとってウェルビーイングだと感じられるかによって、中川政七商店はウェルビーイング経営ができているかどうかが分かるのだなと思います。

心理学者によるPERMAモデルで従業員の心情をチェック

中川 僕はその点について会話したこともないし、経営者に対して従業員が素直に語ってくれるかも分かりませんが、こういうモデル(マーティン・セリグマンによる「PERMAモデル」)があるようです。

心理学者が解説、真の幸せとは? 生涯にわたり幸福を支える「5つの柱」(Forbes JAPAN)

この視点に立って、中川政七商店がこの5つを満たしているのか、従業員が働いていて感じられているのかを、一つ一つ見ていきました。

大手の企業をわざわざ辞めて、正直お給料も若干下がって、県外から来て奈良で働いていることを考えると、意味や少なくともスタート地点ではポジティブな感情を持ってやってくれているのだと思います。

あと、中途入社の人がみんな驚くのは、現場の小さな会議でもビジョンの話が出ることです。

藤本 それは社員からですか?

中川 はい。「それはビジョンに繋がっているんですかね?」と、誰かが言い出すみたいなことがあるので、ビジョンに対するコミットというかモットーはあるのだろうと思います。

ビジョンの話をし始めた当初は全く誰にも伝わらなくて、「何を言い出したの、社長は」みたいな感じで、10年くらい社員総会でビジョンの浸透に取り組み、だんだん良くなって、10年経ったのでやめました。

というのも、僕らは小売なので、社員総会を開いて全員を集めるのは大変なことなのです。

ところが、社員総会をやめたらパワハラ事案が初めて出始めました。

藤本 へえ。

中川 これはどういうことなんだと思って、ある時ふと思ったのが、社員総会でビジョンを浸透させる取り組みをやめたから、これが起こっているのではないかと。

僕が思うに、パワハラやいじめは、暇だからやりますよね。

目指すべきところがあって、そこに向けて一生懸命やらなければいけなかったら、そんなことをやっている暇はないと思うので、社員総会を復活させたら、そういう事例はなくなりました。

「良好な人間関係」というのも、仕事における良好な人間関係は、ビジョンに向けて一生懸命仕事をしていたら、構築できているのではないかと思います。

ビジョンはだいたい遠い先の話なので、1年経って達成できることはないですが、経営サイドとして中期経営計画で毎年社員発表をします。

1年だとたいした進捗はないですが、ビジョンを掲げてから10年の節目に、こういうことが起こっていますときちんと共有するようにしています。

日々やっていることがビジョンに繋がっているかどうかは、なかなか目の前のことに集中すると見えにくいものです。

でも、定期的に自分の仕事は前に進めているのだと分かり、結果的にビジョンに向けて真剣に取り組んでいれば、この5つは満たされているなという気がしました。

それを踏まえて、藤本さんからこの場に呼んでいただけたのかなと思いました。

(続)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美

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