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「今、AIと漫画が熱い」【F17-5E】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!11回シリーズ(その5)は、日本がアメリカや中国との産業面における競争においてのボトルネックについて議論しました。もう1度、壊して創るプロセスが必要と語る安宅さんの想いを是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2017年2月21〜23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 5E
安宅 x 佐渡島 特別対談!
「今、AIと漫画が熱い」
(スピーカー)
安宅 和人
ヤフー株式会社
チーフストラテジーオフィサー
佐渡島 庸平
株式会社コルク
代表取締役社長
(ナビゲーター)
井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
プリンシパル
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最初の記事
【新】ヤフー安宅×コルク佐渡島、特別対談「AIと漫画の交差点」【F17-5E #1】
1つ前の記事
【安宅×佐渡島】日本はどんなグランドビジョンを描くべきか?【F17-5E #4】
本編
佐渡島 アメリカのビジネス界の方がグランドビジョンを描く人が多くて、日本の方が少ないということでしょうか?
安宅 それはそうなんだと思います。夢を描く力の不足は一つあると思います。もう一つは「規制」だと思います。
アメリカはやはりブラックリスト方式というか、人の道に外れなければOKみたいな地域がいくつかあるじゃないですか。
カリフォルニアはそうですし、有名なICT系の大学があるところ、例えばカーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University)の周辺は、大体、大半の実験ができるようになってしまっているので、もうUBERは無人で走っているわけですよ。ああいう実験ができる空間には。
日本は全てホワイトリスト方式で、何か成功事例があると、これも許可しましょうかと言うばかり。だから、このタイプだと、新しいタイプのイノベーションは絶対に起きないんですよね。
イノベーションというのは、そもそも前例がないからイノベーション。基本的に前例が何もないグレーゾーンからしか生まれてこないので。
日本にはグレーゾーンがない
佐渡島 そうですよね。
安宅 この国のホワイトリスト方式は、このような技術変革の時代には全く即していないというのは大きいですね。
佐渡島 そこは、変えられるところなのですかね?
安宅 変えにくいので、僕は倒幕というか、「シン・ニホン」(安宅氏が経済産業省 産業構造審議会 で提言したビジョン)と言うか、ホワイトリスト方式からブラックリスト方式の国に変えるということをしたい、過去にしがみつくのではなく、未来と若者の才能と情熱に賭ける国にしたいなと思っています。
別に政府の転覆をしたいわけではなく、運営の方式をエイヤで変えたい、インサイダーアタッカー的に内面から脱皮させたいということです。ただこのためには倒幕するぐらいの気合がいると思っているということです。
佐渡島 アメリカも別に変った訳ではないですものね。
安宅 はい。アメリカは前からブラックリスト方式という理解です。
佐渡島 初めからそうだということですね?
安宅 そうですね。
佐渡島 アメリカの方が賢かったからそういった方式に変えた、という訳ではなく、(アメリカは)上手く時代に乗ったということですものね。難しいですよね。
安宅 はい、リスクを許容し、挑戦する、イノベーション向きの仕組みなんですよ。
もうモノづくりだけでは富は生まれない
佐渡島 アメリカというのは、「アメリカンドリーム」という言葉で国としてのビジョンが定義されているなと、僕、すごく思うんですよ。
会社の場合、ビジョンの定義といっても、日本だと成功のイメージが今バラバラになってしまっています。
国全体で何らかの成功を目指すと言った時に、保守の人達からしてみると、イノベーションが起きるというのがあり得ないと思う訳じゃないですか。
安宅 そうですね。
佐渡島 そういう人達にとっては、イノベーションは成功でも何でもないから。
安宅 全くです。昨日、情報システム研究機構のシンポジウムで話していました。
(情報システム研究機構は)日本の国立情報学研究所(NII)や統計数理研究所(ISM)、国立遺伝研など、情報系の研究所を束ねる機構です。
僕が(経済産業省 産業構造審議会 で提言したビジョン)「シン・ニホン」のような話をしていた訳ですけれども、その後に何人かの高齢の方々が私を取り囲み、「モノづくりはどうなるんですか?!」と。
(話したのは)モノづくりでGDPを稼ぐのはもう無理ですと。
先進国は、中国も含めてあとは向こう数十年人口が減るだけなので、「N倍化」でこれまでのように金を稼ぐのも、これまでのように成長するのももう無理です。消費の中心である生産年齢人口はもっと急速に減ります。
だってトヨタより大きなメーカーを作るのはもう無理でしょ、と。現実解として世界最大級のメーカーですよ。
それでも事業価値ランキングを見れば、その日本一の企業であるトヨタのかなり上に(中国のネット企業の)Alibaba(アリババ)やTencent(テンセント)がいる訳ですから。日本は企業レベルでも中国に負けちゃった訳です。取り残されているのです。
N倍化のゲームではない、Updateゲームに変わっている時に、GDPドリブンの思想でやっている場合ではなく、こちらに来なければならないのだけれど。
モノづくりは日本の誇りで、僕も誇っているのですけれども、そこからだけではもう大きな富は生まれないですよ。そこに掛け合わせる形でデータと新しい技術を使って、どの分野でも良いので、あらゆる産業を刷新していかないといけない。これができるかどうかが富を生み出せるかどうかの勝負なんですと。
強いビジョンを定義できない日本
佐渡島 そこの議論というのは永遠に平行線を辿ってしまっていて、こちらがやろうとしていることを邪魔してしまう可能性があるじゃないですか。
安宅 すごくあります。
佐渡島 倫理的に良くないと言ってくる可能性が出て来るので。
アメリカンドリームというのは、成功に対して公平に認められて、こんなやり方で成功しないといけない社会的な圧力がかからないじゃないですか。
日本はビジョンの弱さが、全産業にもかなり影響を及ぼしているのだろうなという気が、言葉側の人間としては思うんですよね。
安宅 その通りだと思うんです。
佐渡島 そういう言葉を定義しようという人が、官僚組織だといないだろうなと思って。
安宅 ですね。ですから、取り敢えず仕掛けているという感じです。
官僚の方々が僕みたいな異分子を呼び込んでいるのは、そうだからだと思うんですよ。この1、2年、色々とお手伝いしています。
僕は、国には頼らない、近づかない方針で生きてきたのですが(笑)、なぜかお手伝いしている感じです。必要な変化があるなら、国に頼まずに自分でやろうというのが基本線であるのは変わらないのですが。
官僚の方々はとても優秀ですが、今まさに佐渡島さんがおっしゃったように、そういうタイプのゼロベースの仕組みづくりではなく、できているものを綺麗に、きっちりと走らせるのが本来の仕事です。
しかし、今、必要なのはいわゆるdisruption、つまり破壊することじゃないですか。もう一つ作ってこちらに乗り換える、ということなので、すごく苦痛度が高いのだと思います。
もう一回ドンジャラ(編集注:壊して創る)だと思いますね。これほど激しく仕組みが変わっていこうとしているので。
ただシェアを拡大するみたいなタイプの思考ではない発想で…世の中をアップデートすることでしか富が生まれにくくなっている時に、既存の中でただ綺麗に走るということを目的にやっているという、厳しさがあるのだと思います。
(続)
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続きは 【安宅×佐渡島】物語は波でできている – データ×編集のフロンティア をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/Froese 祥子
【編集部コメント】
国家戦略特区などは、そのグレーゾーンを許容する取り組みの一環のはずですが、どうもそうなってはいないような…(榎戸)
続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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