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「オープンイノベーションによるソーシャルバリューの作り方」【K17-8E】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その7)では、前回に引き続き、日本でオープンイノベーションの成功例を作るためのヒント事例について議論しました。是非御覧ください。
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ICCカンファレンス KYOTO 2017のプラチナ・スポンサーとして、レノボ・ジャパン株式会社様に本セッションをサポート頂きました。
ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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登壇者情報
2017年9月5日・6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 8E
オープンイノベーションによるソーシャルバリューの作り方
Supported by レノボ・ジャパン
(スピーカー)
小笠原 治
株式会社ABBALab 代表取締役 / さくらインターネット株式会社 フェロー
留目 真伸
レノボ・ジャパン株式会社
代表取締役社長
古田 秘馬
株式会社umari
代表取締役・プロジェクトデザイナー
村上 臣
ヤフー株式会社
執行役員CMO(※)
※登壇当時。現在は、LinkedIn Country Manager and Head of Product – Japan
(モデレーター)
角 勝
株式会社フィラメント
代表取締役CEO
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▶「オープンイノベーションによるソーシャルバリューの作り方」の配信済み記事一覧
連載を最初から読みたい方はこちら
最初の記事
【新】オープンイノベーションによるソーシャルバリューの作り方【K17-8E #1】
1つ前の記事
イノベーションは「テリ侵」(テリトリーの侵害)から生まれる【K17-8E #6】
本編
▶編集注:その7の記事に引き続き、日本でオープンイノベーションの成功例を作るためのヒント事例を紹介していきます。
小笠原 僕は、イノベーションを大きな組織の中で起こすのは難しいと思うので、すぐ外に場を作ろうとしてしまうんですね。
小笠原 最近でいうと、京都造形芸術大学で通信制の大学院を行なっています。
そこは、企業から人材と授業料、寄付金をいただいて開講しています。
レノボさんからも来ていただいていますし、アパマンショップからは社長室でビジネスデベロップメントを担当している方がいます。タレントでコード書いている池澤あやかさんや、さくらインターネットからサーバーサイドのエンジニア、毎日放送からプロデューサーが来ています。
村上 MBS(毎日放送)やるね。
小笠原 プロデューサーがいて、サーバーサイドが作れる人がいて、クライアントサイドのコードが書ける人もいます。レノボさんからはLAVIE Hybrid ZEROの商品企画をした人が来ているので、事業開発ができるかな?と。
彼らには「元の組織の評価に関係なく、ものづくりしよう」と話しています。
色々な話題が上がりましたが、やはり介護が今一番ソーシャルバリューのような価値になるということで、介護をもっと快適にできないかということに決まりました。
角 社会課題ですしね。
小笠原 そうですよね。
今、心拍からその人の感情がある程度推測できるのですが、その喜びの感情、スマイルを読み取り、そこに仮想通貨を発行する。
仮想通貨が、スマイルを与えた介護士さんにも、スマイルになった人にも届き、将来その通貨で介護が受けられるとか、もっと予防医療が受けられるという所までやろうという話になっています。
角 ソーシャルグッドが回っていく仕組みですね。
小笠原 既存の組織だと、「仮想通貨までやろう」という話に踏み込みにくいじゃないですか?
でも外であれば、すぐできるんですね。
角 すごいですね。
小笠原 このような取り組みは、すごく楽しいですね。
既存の組織の人事評価の仕組みから外れる
角 人事評価の話がありましたが、そこに参加している方々の活動は、既存の組織の人事評価の仕組みからは外れているということですね?
小笠原 でも、それがすごく大事です。
去年(2016年)、シン・ゴジラという映画がありましたよね?
あの映画で、途中まで全く話が進まないけれど、責任者が来て、皆に「既存の組織の評価は関係ない」と言った瞬間から話のテンポが上がるんです。
(会場笑)
僕、あれが結構好きで(笑)。
村上 あるあるですよね?
小笠原 あるあるです。
角 僕も役所出身ですから、その辺は良く分かります。
役所にいた時の組織の評価は、僕のやりたいこととやはり違いました。
僕のやりたいことは、ミッションとしてイノベーション創出支援をすることで、そのミッションの効率を上げる、効果を出すということにフォーカスしていました。
例えばFacebookのフレンドをこれ位増やすとか、組織の評価軸とは違う KPIを自分の中に持って仕事をしていました。
そうすると、自分の中にイノベーションが起きてしまい会社を辞めることになった(笑)。
小笠原 一人イノベーションですね。
角 先程の話にもありましたが、外の人と一緒に仕事をすることには価値があり、人の中のイノベーションが起きる可能性がすごく高まると思うんです。
そのような人が、どんどん増えていく可能性がありますね。
留目 それはありますよね。すごく良いことだと思います。
今、会場の後ろの方に社員に混ざって座っているツンツンした頭の人がいますが、彼は元々当社にいたけれど、既に辞めてしまった人なんです。
社員でいる時から好奇心旺盛で色々なプロジェクトに貢献してくれましたが、今は脱藩して、彼は彼で自由に様々な領域のプロジェクトに携わっています。一方で、引き続き当社とも契約をして一緒に関連するプロジェクトに取り組んでいます。
古田 やっぱり脱藩した方が良くて、当時、咸臨丸という軍艦に幕府の人間もいれば、全く違う人も乗船していました。
村上さんがおっしゃったように、ある一定期間一緒に過ごすことが重要です。
単に会っただけの人間関係でイノベーションを起こすことは無理で、一緒に過ごす中でその人の癖といった色々なものから新しい人格が出て、そこからイノベーションが生まれる。
その時間をどう味方につけるかということがすごく重要な気がしますよね。
角 なるほど。
僕たちもフィラメントとして、ハッカソンやアイデアソンを開催しますが、一緒にすごく考え、すごく苦労します。
1日、2日あるいは1週間というスパンで、同じチームの人たちが苦労する。
その苦労の度合いが高いので、その後チームが仲良くなるということはありますね。
ヤフーは年に2回ハッカソンを開催している
村上 ヤフーも年に2回 HACK DAY というイベントを行なっていますが、1つは社内、もう1つは社外にもオープンに開催しています。
組織のラインが縦だとすると、横糸がなければ布はバラバラになってしまいます。
僕は、縦糸と横糸という表現をしますが、縦は勝手に強くなり、横糸はなくなってしまうので、そこを通すには本業以外で仕事をするようなプロジェクトを増やさなければなりません。
HACK DAYは、自由なテーマでクリエイターを集め、何でも作って良いということにしています。
仲間を探し、実際に考え、24時間徹夜してものを生み出す。
どんな形であれ動くものでなければ発表できないルールにしているので、皆必死でアウトプットをします。
角 なるほど。
村上 企画からローンチまで24時間ででき、かつ濃い時間を過ごして取り組むと、本業にも活かすことができます。
隣のチームであっても、人となりが分かるわけです。
「普段はデザイナーだけど、コードも書けるんだ」と分かったり、「データサイエンティストだと思ったけれど、絵が描けるんだ」という意外な才能に気付いたり、周りを見ることで色々な情報が得られるわけです。
そうすると、仕事においても「あの人はあれが得意だから、ちょっと聞いてみようか」というように、本業と違う軸で人に対するタグ付けがされ、本業にも良い影響を与える。
そのことが実業の課題解決に役立ったりするんですね。
角 大企業がハッカソンといったものを開催する意義は、人の情報が色々な所に繋がり、横のチームができていくということなんですね。
シャープのものづくりをスタートアップが学ぶ
小笠原 そのようなことをケチらないということも大事だと思っています。
シャープで、「IoT.make Bootcamp」というものを3ヶ月に1回開催しているのですが、スタートアップの経営者が天理にある研究所に10日間程泊まり込み、シャープのものづくりの考え方を教えてもらいます。
シャープの実際の現場の方が指導に来るので、初期の頃はやはり出し惜しみをしてしまうんです。
角 出し惜しみするんですか。
小笠原 ものづくりの真髄といったことは、皆がずっと守ってきたものなので、当然のことです。
でも、回を重ねるにつれ、彼らもスタートアップの考え方をどんどん吸収して、技術を出してくれるようになった。
角 人が変わっていくというような?
小笠原 そうです。
だから今関わっている方々はすごく元気です。
tsumugというコネクティッド・ロックというものを作っている会社の製品は、シャープが量産支援を行う予定です。
▶ アキバベンチャーがシャープと手を組むワケ(東洋経済オンライン)
Bootcamp出身者の量産を手伝うということですが、今までの通例からすると、スマートロックのようなものは、取り扱いが難しいのでSHARPは絶対に手がけません。
でも、外部が行なっていることを手伝う形で手がけることになった。
現場では「将来的にはtsumugがプラットフォーマーで、SHARPがハードを作ると良いかもしれないね」という話が起きています。
角 すごく良いですね。
小笠原 その話を聞いた瞬間、すごく気持ちよかったですね。
村上 理想的ですね。
角 鍵の話をしていて、人の心の鍵が開いてしまったという話ですね。
村上 良いこと言おうとして(笑)。
古田 噛みましたね(笑)。
(会場笑)
角 次行きましょう(笑)!
メンバー同士の心の鍵を開けよう
古田 今の話にはポイントがあって、初回は出し惜しみがあったのに、ある期間を過ぎた時、正に鍵が開いた瞬間があるわけですよね?
それは何なのか?
時間のモメンタムがすごく重要だと思います。
小笠原 僕のファンドは表立ってどこがLP(ファンドの出資者)ということを公開していないのですが、鴻海からも少し出資していただいています。
1年半程前は、「鴻海から送り込まれた嫌なやつ、良く分からないやつ」と思われていたんです。
角 そうなんですね。
村上 そんな所にも気づくんですね?
小笠原 鴻海からの紹介だったということもあります。
角、村上 なるほど。
小笠原 最初は、あからさまに警戒されていました。
でもそれは仕方がないですよね、当時はそのような文化の中ですから。
でも「なんとかゴリゴリやりましょう」ということで進んでいき、研究所の責任者の方がやる気になってくださった。
ここで中間層が一回認めてくれたわけです。
そしてBootcampが始まったのですが、1回目の開催時は鴻海からの払込がまだ済んでいなかったので、公開しないということになったので、幻の0回目という会が開催されました。
1度回してみて、起こった不具合や、何が問題だったのかということをフィードバックすると、真面目な方が多いので、やはりきちんと考えて下さいました。
晴れて鴻海からの出資が終わり、戴社長(シャープ 戴正呉 代表取締役社長)が「イノベーションや、スタートアップの関係を認める、評価する」ということを表明してくれてから、「やって良いんだ」となりました。
本当は皆やりたかったはずなんです。
通常は2、3年に1回しか新しい製品に関われないけれど、ものづくりがしたくて入社したはずですから。
スタートアップが沢山いることで、色々な製品に関われる。
自分の能力が10だとしても、この能力を分けていくのではなくて、掛ける状態になるので、関わる人たちがどんどん元気になる。
たった1年という時間軸の話ですが、これを色々な所で3ヶ月位の期間で取り組みしたいなと思っています。
やった感だけが残って終わるイベントはやめよう
古田 正に時間のセットアップが大事だなと思います。
「やっても良いんだ」となる瞬間です。
地域で「オープンイノベーション〇〇」といった会を開き、皆で話しましょうというのは形だけでなかなか動きません。
お互いの信頼もできていない、前提条件がない中でイノベーションの話だけをしても、防御に入ってしまい、お互いに評論家のような話だけで終わってしまう。
ワールドカフェ的に「色々な文字が出ました」といった、やった感だけが残って終わることが多いんです。
同じ言葉ですが、イノベーションが起きるまでの時間もすごく重要だと思っています。
小笠原 浸透したと感じる瞬間はあります。コネクティット・ロックの例ですと、tsumugの代表に牧田という女性がいるのですが、物理鍵をコピーされて元彼に不法侵入されたことがあって「物理鍵を絶対になくしてやる」と考えている。
村上 起業家には、実体験に基づく強い思いがありますよね。
小笠原 でも、やはりスタートアップは色々しんどい時もありますし、作れない、できないといったことの繰り返しです。
まだ出来ないことへの過渡的な対応として物理的な鍵となるNFC等を用意している時、SHARPの方から「でも、物理鍵を失くすんですよね?」と言われた。
この時が浸透した瞬間でした。
村上 ビジョンが共有できている。
大企業の延長ではないオープンイノベーション
角 それ、すごく良い話だなと思います。
SHARPさんが「IoT.make Bootcamp」として取り組みされていることが、本当にスタートアップのためになっている。
これからも続けていくには、両方にメリットがあるということが社会的に認知されるものでなければサスティナブルではないと思います。
大企業の延長ではないオープンイノベーションの一つの進歩ですね。
留目 一方で、それを見ながら経営者も学ばなければならないと思います。
誰のためにもなるんだと思うんです。
大企業のためにもなるし、株主のためにもなるし、スタートアップのためにもなるし、コミュニュティのためにもなるわけですよね。
本当はそれをすべきなのに、できていない現実があるので、そこを経営者も学んでいかなければならないですよね。
(続)
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続きは 【喝】合議・多数決ではイノベーションは生まれない をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/本田 隼輝/鎌田 さくら
【編集部コメント】
ただ同じ時間を過ごすのではなく、濃密に一緒にものを形にする時間を過ごすことが大事なのですね。週刊少年ジャンプの三大原則は、友情・努力・勝利であることを思い出しました。(横井)
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