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【終】大企業は自社の技術を開放し、本当のオープン・イノベーションを実現しよう【F17-8C #8】

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「技術シーズの事業化と知財戦略を徹底議論」【F17-8C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!8回シリーズ(その8)は、会場の質問に答え、海外進出時の知財戦略、社内の知財部・技術者の事業変革への巻き込み方などについて議論しました。是非御覧ください。

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ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 8C
イノベーションを生み出せ!技術シーズの事業化と知財戦略を徹底議論

(スピーカー)

井上 一鷹
株式会社ジンズ
JINS MEME Gr 事業開発担当

鮫島 正洋
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
代表パートナー弁護士・弁理士

千葉 功太郎
投資家・慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

丸 幸弘
株式会社 リバネス
代表取締役CEO

(モデレーター)

水島 淳
西村あさひ法律事務所
パートナー

「技術シーズの事業化と知財戦略を徹底議論」の配信済み記事一覧

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【新】技術シーズの事業化と知財戦略を徹底議論!【F17-8C #1】

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Amazonのワンクリック特許のような優れたビジネスモデル特許取得のコツ【F17-8C #7】

本編

水島 それではQ&Aに移ります。

今日はかなり突っ込んだ話もしていただけましたが、皆さんもどうぞご質問ください。

質問者1 ウミトロンの山田と申します。


山田雅彦
UMITRON PTE. LTD.
Managing director / Co-founder

1989年生まれ。九州大学機械工学修士卒。在学中に超小型人工衛星の開発に従事。2014年にロシアより打ち上げに成功。また学業と並行して教育、人材、観光事業等の複数領域で起業し、糸島市や九州大学から多数の表彰を受ける。大学卒業後は、三井物産に入社し、日本に先立って自由化したオーストラリアの電力市場において、発電及び小売事業会社の経営と、IoT領域の新規事業開発に従事。またグローバルでの税制・会計管理と同社の事業売却案件も兼任。2015年、上場前のメタップスに入社。同社の主軸事業であるマーケティング領域において、ビジネスと技術を横断する役割として、主にプロダクト開発、ビジネスアライアンス、消費者行動・購買履歴を活用したデータ分析及び、同データを活用したアプリ開発者向けのマーケティングコンサルを担当。その後、ウミトロンを共同創業し、IoT、リモートセンシング、データプラットフォームなど、過去の知見を最大限に活用し、世界の食問題解決に取り組む。

▶参考:【保存版】水産養殖の課題をIoTで解決する「ウミトロン」(全3回)

我々は、魚を育てる養殖にIoTを使うビジネスをしていて、日本だけではなく東南アジアが市場で、今も千葉さんとかに色々と相談させていただいているんですけど、国際特許の話を伺いたいです。

一番恐れているのは、中国の後発の人たちがすごい価格で勝負してくることです。そのあたりのお話を伺いたいです。

鮫島 国際特許は難しくてお金もかかる話で、中国はまだしも東南アジアという市場は国の数がすごく多いし、特許は国ごとに取らなければいけないというとんでもない制度なのでベンチャーさんだとおそらくなかなか取りきれないと思っています。

これは私の個人的な予想なのですが、東南アジアは膨大な特許フリー市場になるのではないかと思っています。

西村あさひ法律事務所 パートナー 水島 淳氏

その時効いてくるのは、先ほどから話に出ているように「ノウハウは流出しない」ということですので、そこでどう勝負するかという話があります。

あともう1つ、模倣は完全悪かと言うとそうでもない部分があります。

なぜかと言うと、模倣者の費用でマーケットを開拓してくれる部分があるので、開拓をしてもらって、自分たちは模倣者も一緒に開拓した大きな市場の中でどのポジションを取るかという考えもあります。

そのあたりはあまり頭に血を上らせないで考えた方がいいのではないかと思います。

商標・ノウハウ・ブランドで勝負する

 あともう1つ、海外に出る時のポイントは、商標・ノウハウ・ブランド。

この3つを中心にどうやってマーケティングするかを考えた方が早いかもしれません。

商標は比較的簡単に出せるし、安いです。

リバネス 代表取締役CEO 丸 幸弘氏(中央)

たとえば、アグリホールディングスという会社があります。

【保存版】”コメのトヨタ”を目指す「アグリホールディングス」(全3回)

今日も社長がICCカンファレンスに来ていますが、「侍のライス」、つまり日本の米でおにぎりを作る会社です。彼らは、「サムライス」というのを35か国で商標登録しています。

おにぎりは真似できてしまうんですけど、「サムライス」という真似できないブランドを先に持っていくわけです。

日本だと守れるものが、中国だと守れませんから。

真似されるのを防ぐのが無理なら、 共にどうやって発展するかを考える。じゃあブランド、商標、ノウハウだよね、と。そういうところを考えた方が海外戦略が上手くいくかもしれません。

ただ、アメリカやロンドン等の主要都市ではきちんと権利を取っておけばきちんと守られます。

それは鮫島さんに相談して、シンガポールとか上手いところを取っておけば、あとはブランドで囲ってみたら良いのではないですか。

質問者1 まだ小さい会社なので小さいところから始めてご相談させてください。

非常に納得しました、ありがとうございました。

水島 他のご質問いかがでしょうか。どうぞ。

質問者2 ヤマハモーターベンチャーズの西城と申します。

先ほど事業会社側のお話も少しありましたが、モノ売りから、いわゆる”As a Service”(サービス化)への切り替えというのがかなり大胆に進んで来るだろうなと僕も思っています。

僕らみたいな会社はものづくりに最適化しすぎているので、なかなか特許も出せないという状況なんですけど、僕らも投資する時にベンチャーの特許を見たりしています。そして、ベンチャーサイドはベンチャーサイドで課題があります。

事業会社が大きな事業変革を求める時に、技術者は先ほどおっしゃったように技術への愛が強く、事業側の人間は今のビジネスモデルには明るいけど新しいモデルについては自己否定を含むので懐疑的です。

社内の知財部・技術者を含めて事業変革に対してどのようにアプローチしていけば良いのか、ベストプラクティスはないとは思いますが、いくつかアドバイスをいただきたいです。

そういう時にどういった枠組みでやっていけば良いのかアドバイスをいただければと思います。

技術を開放し、本当のオープン・イノベーションを興す

 数々の大企業と仕事をさせていただいているのですが、色々な企業さんが「これ10億円かけて特許出したんだけど事業化していないんだよ」という特許を山ほどもってるんです。

ぜひそれを外に出して、ベンチャーに使ってもらうというのをやってほしいですね。

この技術を使ってベンチャーをやりたい人、もしくはこの技術を自社に取り込んだら面白くなる、というベンチャー集まってくれと。

実は元々のオープンイノベーションはこれです。ベンチャーを取り込むのがオープンイノベーションではない。そもそも取り込んだら、「クローズ」しているじゃないですか。

相変わらず、クローズドイノベーションをやっている日本の大企業はおかしいです。

まず自分がオープンにすること。今自分たちが持っている200、300の技術を開放するから、それで事業化したい人集まれ、と。

その会社が大きくなったら戻せば良いし、大きくならなかったらあげれば良い。そういう形を生態系として大企業は持っていかないとダメです。

もう1つ、その特許を活かしたい人たちと組むことによって知財部は強くなります。

今まで見ていなかった技術の話ができるようになるので、今まで片寄ったところでしか特許を取らないと考えていた知財戦略の人が、こういう考え方があるんだ、ああいう考え方があるんだ、というのを、逆にベンチャー側から教わったりします。

これによってオープンマインドが社内に広がっていって、強くなる。

質問者2 それはやらないといけないと思います。非常に面白いです。

 よろしくお願いします。

水島 井上さんから何かありますか。

井上 ちょうど水島さんとお会いする前日に読んだ稲盛和夫さんの言葉で、「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」というのがあります。

やはりイノベーションを起こそうと思ったら、強い思いがある人が最初の構想だけは楽観的にやらなければいけないですよね。

ジンズ JINS MEME Gr 事業開発担当 井上 一鷹氏

その後にマーケットインで計画を立てる時は、それがお客さんに刺さるの?ときちんとやらないといけない。

その順番にしっかりフェーズを分けて、管理をしようと思ってはいけないのかもしれないですけど、そのあたりのパイプライン管理が本当はうちの会社もできたら良いなというのを議論していました。

水島 とても良い言葉だと思いますよね。

研究所を減らす=知の空洞化が起きる

 全ての大企業にもう一度きちんとした研究所を作ってほしいです。

リテールの会社であろうがなんであろうが、そこも研究所作るべきだと思います。そして、博士を雇ってください。すべての大企業がもう一度研究所をきちんと自前で持つことです。

今、企業は研究所を減らしていっていますが、これは非常にまずい状況だと思っています。確実に知の空洞化が起こります。

眼鏡の会社だろうが牛丼の会社だろうが、サービスしかやっていない会社も、研究所を持つべき時代が来たと言って、僕は研究所設立をおすすめしています。

井上 うちは世界で最初の眼鏡をR&Dする会社です。

 そうですよね、だから一番大好きな眼鏡屋です。

すべての会社が研究所をきちんと持って、研究者を雇い、本当に考え続けるブレイン集団をもう一度作らなければいけないと思っています。

水島 ありがとうございます。お時間がまもなく終了ですので、最後にスピーカーの皆さんからメッセージをお願いします。丸さんから。

 今日はありがとうございました。

知的財産とか特許に関しては、実際僕は自前で勉強したのと特許庁でバイトをしていたぐらいなんですが、僕は知財というのは「人」であると思っています。

知財を持った人が情熱を持っていれば何でも生み出せるので、あまり細かく知財戦略を組むべきではない。

むしろ、その情熱を持った人が一緒に議論できる空間をいかに作れるか。

まさにCo-Creationである今日のこの場(ICCカンファレンス)がそこかもしれないし、社内外でそういう場所をしっかり持っておくことが最も重要な知財戦略だと思っています。

プロダクトは内製しないと魂が入っていかない

千葉 今日は僕自身も勉強になりました。

冒頭にも申し上げた通り、僕は理系、つくる人が大好きだし、そういう人たちと一緒に働いていきたいと思っています。

今日はスタートアップの方もいらっしゃると思うんですけど、やはりスタートアップは内製が良い。先ほどロボットの話がありましたけど、ロボットに限らずエンジニアリングは社内でやった方が良いと思っています。

投資家 千葉 功太郎氏

それは今日の高尚な議論のようなものじゃなくても、本当に自分たちが作ろうと思っているプロダクトは自分たちで作って、自分たちで提供して、ユーザーからクレームをいただいて、それを直してという手触り感での繰り返しでしか良いものは生まれないし、そこに魂は入っていかないのではないかなと僕は思っています。

その中に、これは特許化した方が良いのではないかとか、これは僕も教わりましたが、逆に特許化しない方が良いのではないかという戦略がくっついてくるものです。

おっしゃる通り、特許を出すことが目的ではなくて、作りたいものを作ることというのが商売の基本であり、インターネットもハードウェア商売も関係なく同じことだと思っています。

より一層エンジニアリングや技術を社内で持って、それをコアに据えてノウハウとして溜めるということをこれからの経営戦略で生かしていただきたいですし、僕もそうします。

一緒に頑張りましょう、ありがとうございました。

大企業とベンチャーが連携してAll Japanで戦いたい

鮫島 法律事務所でベンチャーサイドに立っていると、大企業に勝手に特許出されてしまったとか色々なトラブルばかり見ることが多いんですけど、正直に言って、日本は大企業とベンチャーが揉めている場合ではありません。

内田・鮫島法律事務所 代表パートナー弁護士・弁理士 鮫島 正洋氏

オールジャパンで日本の技術力を世界に発信しなければいけないと思っていて、午前中のカタパルトにあったように、日本は本当に素晴らしい技術がある国だと思うのです。

ただ、ベンチャーがグローバルにビジネスできるかというと厳しいので、そういう時に大企業と連携していくのが大きなテーマになると思っています。

経済産業省も今そこに着目していて、そういった委員会があって私も委員になっているんですけど、来年(2017年-2018年)のテーマはまさに大企業・ベンチャー連携です。

その時に今問題になっているのが、あまりにもマインドが違いすぎることです。

具体策としてどうやってマインドを合わせていくか、たとえばICCも1つの人材交流の場ですけど、もう少し進んで大企業からベンチャー企業に半年間出向とか、そういうことをしたら良いのではないか。

施策の中心になってくるのがこの流れだと思いますので、オールジャパン構想にぜひ皆さんご期待ください。

技術シーズの事業化プロセス自体が”知的財産”

井上 JINSという会社はユニクロなどと同じSPA(製造小売業)で企画から販売までやっていますとよく言っているんですけど、工場もなければ物流拠点も自社で持っているわけではなく、店舗も借りています。

基本的に「持たざる経営」で稼働率を考えなくていいからこそ早くものを作れるという性質があるんです。

ハードウェアを作ったとき、ハードウェアのアセンブリまではこの会社がやって、アプリはまた別の開発会社で出して、とやってきたので、自社にはそういうノウハウがあまり溜まりません。

その中で、知財についてどう考えればいいのかなと思っていました。

特許をどう出すということも考えなければいけないんですけど、丸さんがおっしゃった通りで、僕ら5年間かけてJINS MEME をずっと作ってきて、それで出会ってきた人たちもいますし、お客さんにも実際に触れてもらった。

こうしたリレーション自体が、知財だなというふうに改めて思いました。

何にもないと思うのではなく、自分たちが携えているものをもう少し日々きちんと言語化できれば、間違いなく強いものを作ってきたんじゃないかなと考えられる、そういう捉え方を学びました。

水島 本日は素晴らしいスピーカーの皆さんに真剣に、直球勝負で議論していただきました。

今回のセッションが少しでも皆さんのご参考になれば幸いです。

ありがとうございました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸

【編集部コメント】

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