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「愛され続けるブランドを創る」5回シリーズ(その2)は、MacintoshやiPhoneを生み出したアップルの歴史を紐解きながら、アップルが“狂った存在”であり続けなければならない理由に迫ります。
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ICCサミット KYOTO 2018 第二回プレイベント・スポンサーとして、株式会社ガイアックス様に本セッションをサポート頂きました。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18-21日 福岡市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2018年8月22日開催
ICCサミット KYOTO 2018
第2回プレイベント
愛され続けるブランドを創る
Supported by 株式会社ガイアックス
(スピーカー)
青木 耕平
株式会社クラシコム
代表取締役
井手 直行
株式会社ヤッホーブルーイング
代表取締役社長
山口 義宏
インサイトフォース株式会社
代表取締役
(モデレーター)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役
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1つ前の記事
1. ブランド戦略コンサルタント・山口義宏氏が解説「ブランディングの定義とは?」
本編
井手 そんなくだらない、売上に全然つながらないようなことをしています。
でも「くだらないな、でもよなよなエールのやっていること、好きだな」と思ってもらい、結果的に、ファンをじわじわ広げたいと思っています!
小林 すごくいい話ですね!
そもそも、ビールはビールです。
ですから、自らのアイデンティティを「知的な変わり者」にすること自体、本当に変わっていると思うのですが、なぜそこに至ったのでしょうか?
「知的な変わり者」というアイデンティティの理由
井手 うちの創業者は、星野リゾートの星野(同社代表取締役社長・星野佳路氏)なのです。
(中央)株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役社長 井手 直行 氏
星野リゾートのことを知っている方?
(会場多数挙手)
星野のことを知っている方?
(同上)
有名人になってしまって悔しいので、星野の話は全くしないのですが(笑)。
星野が最初に、よなよなエールのコアターゲットは、「知的な変わり者」だと言い出したのです。
実は、彼自身が、知的な変わり者なんですよね(笑)。
彼自身は現在ヤッホーの経営からは離れているのですが、優秀で、そして変わっている。
ブランドも「知的な変わり者」をターゲットにしていて、という状況を見ているうちに、僕も「知的な変わり者」に興味が出てきたんです。
結果、僕自身も殻を破って、だんだん変なやつになってきました(笑)。
わが社のスタッフも、それぞれが色々な方向性を持った、「知的な変わり者」です。
個性を伸ばし、かつ、常識を超えると「あいつ、変わってる」となるわけです。
常識を超えるくらい個性があって、その個性が会社の方向性と合致しているならば、その対象は「分析が得意」とか「漫画が好き」とか、何でもいいと思っています。
そういったメンバーが集まって同じ方向を向けばすごいパワーになりますから、そういう会社になろうと伝えています。
何の根拠もなく、「よなよなエールのターゲットは、こんな僕らのことを愛してくれるに違いない!」というところから始めて、今に至ります(笑)。
小林 ここにいらっしゃる皆さんは、知的な変わり者ですよね。
井手 絶対そうですよね。
もし「私は違う!」という人がいれば、手を挙げてもらっていいですか?
あ、いる!
(会場笑)
手を挙げたのは岡島悦子さんです、岡島さんこそ知的な変わり者の大ボスですよ(笑)!
小林 でも変わっている人って、自分は変わっていないと思うのではないでしょうか。
僕は変わっていないと思うんですけど。
井手 いや、めちゃくちゃ変わっていますよ!(笑)
小林 僕は自分自身のことを、至って標準的な日本人だと思っているのですが、違うのでしょうか?
井手 違います。
ご自身はそう思っているかもしれませんが、側から見ると、みんなそう思っていないのです。
これは、典型的なパターンですね。
小林 では山口さん、コンサルの視点から、これを解説してもらえないでしょうか?
山口 そうですね、職業柄、俯瞰してみます(笑)。
(一同笑)
マーケットシェアからブランディングを考える
山口 正確な数字は把握していませんが、井手さん、青木さんのそれぞれのビジネスサイズは数10億円で、マーケットシェアは1桁ではないかと思います。
そういう状態ですと、マーケットニーズを考えるのではなく、コアファンに対して「僕たちはこう思う」という強い思いやアイデアをぶつけていくのが、うまくいきやすい手法です。
つまり、マーケットニーズに迎合するというよりも、啓発するということです。
というのが、俯瞰した際の所感です。
青木 逆に、そのやり方だと苦しくなるマーケットシェアのパーセンテージはどれくらいでしょうか?
山口 マーケットシェアが2桁になると、客層が変わってきます。
例えばスキンケアの市場は1兆円規模ですが、売上が200〜300億円ほどであれば、お二方と同じ手法(マーケットに対する啓発)でうまくいきます。
シェアが2〜3%くらいの場合ということですね。
ただ例外もあって、例えば、日清食品。
これは褒め言葉ですが、オーナーの安藤さんは代々狂っていて(笑)、今の日清食品の安藤徳隆社長もいい意味で狂っているのですが、彼らは「自分たちが良いと思うものを提示し、それで嫌われても構わない」という覚悟を私は感じます。
カップヌードルくらいの市場シェアになり、認知も100%に近いと、もはや日本でのCMはカップヌードルを売るためというより、日清食品という企業の意思表明やブランディングなのだろうなと推察されます。
そのアイデンティティ表明という視点が強いからこそ、狂った仕立てになっているのだと思います。
もはや、「カップヌードルのCMに対する好き嫌い」で、カップヌードルの売上は大きくは変わらないのだと思いますが、結果的に賛否や好き嫌いが分かれるような発信があるから、あれだけ古くからのロングセラーブランドなのに、話題が続き、ブランドとしての存在感も維持されるのだと思います。
一般論として、小売で売られる食品プロダクトで売上を大きく左右するのは、商品政策と店頭の販促施策です。
ですから、売上5,000億円規模の企業で、あれだけ尖ったメッセージをしているのは珍しい例ですね。
上場はされていますが、創業家オーナー経営の企業だからできるという理由はあると思います。
井手さんはオーナーですか?
井手 僕は、雇われ社長です。
山口 青木さんは?
青木 オーナーです。
山口 常識を外れたような「狂ったこと」は、オーナー的存在がいる場合、つまりガバナンスが一人に集中している場合には、行いやすいですね。
ですから、青木さんの質問にお答えすると、マーケットシェアが2桁になったタイミング、そして雇われのサラリーマン社長が存在していて意思決定が合議による場合は、狂いにくくなります。
また、単に狂っているだけだと、コアファンではない新しい客層からは受けなくなるので、次の一手も同時に考える必要が出てくるということですね。
青木 なるほど。
愛され続けるためには、狂い続けなければいけない?
井手 実は青木さんがいらっしゃる前に、三人で雑談をしていました。
よくインタビューで、「シェア何パーセントを目指していますか」と聞かれるのですが、僕は「僕らはアップルを目指しています」と答えます。
アップルは20年ほど前、一度追放されたスティーブ・ジョブズが戻ってきた際(※)に、改革をしました。
▶編集注:ジョブスは1985年に役職を解任されアップルを辞したのち、1996年に復帰。業績不振に喘いでいたアップルの立て直しに貢献しました。
20年前は、Macを使っている人なんてほとんどいなかったわけです。
使っているのは、デザイナーかMac信者かです。
ですから、当時はシェアもとても低かったのですが、現状は皆さんご存知のとおりです。
では熱狂的な信者がいなくなったかと言うと、今でもいますよね。
当時、「ニッチな製品だから」や「使っている人があまりいないから」という点に価値を見出したユーザーは離れていっていると思いますが、革新性やデザイン性、製品価値に共感していたユーザーは今、「今のMacファンはにわかファンだ」と言っているのです。
ちなみに、「俺は昔からファンなんだよ!」と、創業者の星野が言っています(笑)。
彼は、20数年前からずっとMacユーザーです。
僕はMacは持っていませんが、iPhoneの話をすると、馬鹿にされます。
「お前みたいなのが、アップル製品を口にするな」と(笑)。
つまり何が言いたいかと言うと、世界一の企業になったとしても熱狂的な信者はつくということです。
ですから僕は、「Macにできるんだから、よなよなエールにもできるんだ!」といつも言っていて。結果、皆さんに笑われます(笑)。
でも、そういう実際のモデルがあるので、僕らにもできると思っています!
小林 「愛され続けるには、狂い続ける」ということですかね?
世界一になっても、狂った存在であり続けるアップル
井手 僕なりに色々と研究しましたが、革新性が大事だと思っています。
常に革新を続けていること、大きくなっても「このブランドはすごい」と思われる要素を持たせることですね。
僕らは、よなよなエールにもその要素を持たせたいと思っています。
よなよなエールにとっては、「知的な変わり者」であり続けることが、それにあたります。
「知的な変わり者と言うくらいだから、すごいことをやるかもしれない」と思われるだろうなと。
小林 なるほど、青木さんはどうですか?
青木 原理として、「儲かれば、ブランド価値は下がる」と思っています。
ユーザー側から見て、「このブランド、儲かっているだろうな」というイメージがあると、応援したいと思う人はあまりいないですよね。
儲かっているというよりも、「儲けた利益を使って、より狂ったことをやっている」のがアップルなのだと思います。
ですから、まるで国防総省のようなオフィス(※)を建てざるを得なくなるという。
▶ジョブズが遺した「宇宙船」 その“狂気”のデザインと魔法の力(WIRED.jp)
あそこまで狂ったことをしなければ、狂っていると思われなくなってしまうわけです。
そしてアップルは、投資効率に見合わないような小売店のようなことを始めました。
消費者から見た時に、「どうやって収支を合わせているのだろう」と思うようなことを行い、実は裏側では大きな利益を出している…という構造を作ることが重要なのではないかと思っています。
アップルも、「良い商品だけを作る」という昔のやり方のままだったとすれば、今ほどの支持を得ていない気がしますね。
とんでもなく狂ったことを、要所要所で行ってきたということだと思います。
ですから、支持され続け、成長するためには、狂ったことへの投資が必要だと思っています。
また、同じことをずっと続けていてもダメですよね。
今まで行ってきたことよりも一段上の、「狂っているように見えるけれど、裏側では狂っていない」構図を作り、それを更新し続けることが成長の鍵だと思います。
日本人は特に、判官贔屓なところがありますから、ブランドの成長を見て、「小さかったブランドが大きくなってしまった」と思う人がいます。
「ブランドが大きくなったから、そのブランドを信用するようになる」人たちは、革新的なものに興味がある人ではありませんし、そういった層は僕らのターゲットではありません。
革新的な構造を拡大し、再生産していくことを常に考えていますね。
井手 先ほどのアップルストアの話ですが、あれは、家賃の高いところにたくさんのスタッフを配置していますよね。
PR効果はあるだろうけど、経費がかかっているんだろうなあと思っていました。
しかしアップルストアの支配人をしている友人に聞いたところ、「PRだと思われているかもしれないけど、めちゃくちゃ利益出てるよ!」ということでした。
山口 確か、一坪あたりの売上が世界一のはずです。
井手 儲かっているとは思っていなかったので、びっくりしました!
青木 狂っているように見えて、狂っていない構造ですね。
でも、「儲かっているように見えるお店」にしてしまうと厳しいのだと思います。
(続)
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続きは 3. 日清カップヌードル、無印良品などのブランド戦略から何を学ぶか? をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/上原 伊織/尾形 佳靖/戸田 秀成/大塚 幸
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