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「最強の組織戦略〜アカツキ、クラウドワークス、ネオキャリアのすべて〜」8回シリーズ(その4)は、アントレプレナーシップの新たな概念として関心高まる「エフェクチュエーション」を、クラウドワークスの吉田さんが解説します。同社のこれまでの事業成長と組織施策の変遷とあわせて、ぜひご注目ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2020は、2020年2月17日〜20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット KYOTO 2019 ダイヤモンド・スポンサーのMotivation Cloud(Link and Motivation Inc.)様にサポートいただきました。
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【登壇者情報】
2019年9月3〜5日
ICCサミット KYOTO 2019
Session 3C
最強の組織戦略(シーズン3) 〜アカツキ、クラウドワークス、ネオキャリアのすべて〜
Supported by Motivation Cloud(Link and Motivation Inc.)
(スピーカー)
塩田 元規
株式会社アカツキ
代表取締役CEO
西澤 亮一
株式会社ネオキャリア
代表取締役
吉田 浩一郎
株式会社クラウドワークス
代表取締役社長 兼 CEO
(モデレーター)
田中 允樹
株式会社リンクアンドモチベーション
MCVカンパニー カンパニー長
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最初の記事
1. 人気シリーズ第3弾!アカツキ・クラウドワークス・ネオキャリアの組織戦略を徹底解剖!
1つ前の記事
3. チャレンジを恐れる社員の「心理的ハードル」をどう下げるか?
本編
田中 次に、クラウドワークスの吉田さんのお話を伺いたいと思います。
「クラウドワークスの組織戦略を一言で言うと?」
吉田さん、お願いします。
3段階で進化、クラウドワークス(CW)の組織戦略
吉田 クラウドワークスの組織戦略には3つのフェーズがあって、上場までの3年は非常に「単純化」して、プラットフォームの一本足打法で上場しました。
上場後、急成長期に入ると「単純化しない」という真逆のことをして、非常に複雑にやりました。
「エフェクチュエーション」というのはこの後に出てきますが、今、世界ではエフェクチュエーションという経営手法の研究が進んでいます。
その日本で初めてのケーススタディがクラウドワークスになり、「エフェクチュエーション」のスタイルで経営を行っていきました。
そして最近の黒字化のところでは、「ミッションカードによるコアの形成」となります。
「単純化」の時は特にコアは必要なく、ルールしか無かったという感じです。
その後に、創業メンバーである取締役陣の価値観を否定した上で、非常に複雑にやって色々なものが広がって、その中から成功する種がいくつも生まれてきました。
それを集約してアウフヘーベン(止揚)のような「コア」を作りました。
創業メンバーとその後に入ってきて躍進したメンバーの、アウフヘーベンで「コア」を作っていった感じになります。
①未上場ベンチャー期:全員参加による「単純化」
吉田 各フェーズについて、具体的にお話します。
まず「単純化」の時代はどちらかというと事業戦略に近いのですが、そもそも“仕事のマッチングサイト”というモデル自体は、ビジネスコンテストで10組あれば5組はマッチングサイトの話になるくらい、価値の無いものと思っていました。
そこで、とにかくクライアントが集まって賑わっている以外に価値は無いよねということで、UX改善だけを全社員でやっていました。
コーポレートも営業も、全員がUX改善をしていました。
その頃は1日も休みが無かったので、毎週日曜日の午前中に向けて、全員が自分のサービスの画面構成やUIを改善する案を考えていました。
それによって共通言語ができました。
ベンチャーでありがちなのは、皆がバラバラにそれぞれの専門性でやっているがために共通言語が生まれず、営業と開発と管理の間に大きな溝ができることです。
クラウドワークスの創業期の場合はそれがありませんでした。
また、「採用は太陽戦略(≠北風)」と、とにかく言われた条件で全て即答して採用していました。
そんなことは、今はできませんが……。
写真左から、アカツキ塩田さん、ネオキャリア西澤さん、クラウドワークス吉田さん、リンクアンドモチベーション田中さん
田中 応募者からの条件を全て受け入れたということですか?
吉田 はい。「私は年収600万円でないと嫌です」と言われれば「分かりました。じゃあ600万円で」という感じです(笑)。
田中 すごいですね。
吉田 それを即答すると、心理的な貸し借りの関係で、だいぶ感情を「ギブ」している状態になるので、相手は「すごく期待された」という感じになります。
この600万円を例えば550万円にしたところで、「50万円値段を下げられた」という思いしか残りません。
その時は、エクイティで良い人をどんどん採用する戦略でやっていました。
全社員で常に1つのことをしていたので、UX改善が一通り終わったタイミングで、今度は全員でSEOを勉強して、全員でSEOをやりました。
トラフィックが積み上がってくるので、全員で価値観を共有化できるわけです。
UX改善をやり、その後にSEOによってどれだけ伸びたのかが分かり、オーガニックが分かったのでリスティングをやり、リスティングを全員でやってネットマーケが分かったので、リアルマーケでエンタープライズを立ち上げました。
そのような順番で、3年くらいかけてやっていきました。
②上場後の急成長期:複雑系、エフェクチュエーション
吉田 上場後の急成長期は、「エフェクチュエーション」でやっていました。
対照的な言葉として「コーゼーション」があります。
「コーゼーション」は、目的があって、そこから逆算すると今やるべきことが分かるというもので、開発における「ウォーターフォール」のようなものです。
ゴールを分解すれば、現在があるはずだという考え方です。
それに対して「エフェクチュエーション」は、今我々が持っているリソースや手段しか無く、未来は予測不可能だという考え方です。
未来は予測不可能なので、持っている手段によって色々と動いていくと、パッチワークのように勝手に未来ができていき、その未来は自分が思っているものとは全く違っている可能性があるということです。
「エフェクチュエーション」の特徴的な考え方を示します。
未来の予測に対して起業家が明らかな不信感を持っていたというレポートがあったり、市場は見つけるものではなくて勝手にできるもの、紡ぎ出すもの、そして事前に思っていたものと全く違う結果だということがあります。
実は我々は、上場後に新規で14の事業をやっていますが、その14事業は1つも社長が起案していません。
推進についても、14事業のうち1事業の0.5くらいしか社長がやっていません。
実は、これらの事業の半分以上は、私が内心、個人的には「伸びないんじゃないかな」と思っていた事業です。
でも、そもそも自分の人生経験から、自分が正しいと思ったことが間違っていたという経験を何度もしているので、現段階で自分が伸びないと思っていてもやってみるべきだ、というやり方で経営していました。
クラウドテックなどは、SES(システムエンジニアリングサービス)事業でギークスやレバレジーズという大手がいたので、内心では無理だろうと思っていましたが、見事に立ち上がって、今では粗利の半分くらいを生み出しています。
そのような形で、とにかく複雑にやっていました。
組織の数値の事実を示すと、29名で上場して、9カ月で100名中途採用して、1年後に新卒を30名採用するという無茶なことをやって、2年連続で離職率が30%を超えました。
しかしその100名採用の中からホームラン事業が生まれて、プラットフォームと同じくらいの粗利を生み出せています。
さらにその中から、取締役1名と執行役員4名が出てきています。
新卒30名は割と残っていて、その中からリードデザイナー、プラットフォーム責任者、マーケ責任者、子会社社長が生まれています。
注意すべきは、ここでできた文化は、創業メンバーがほぼ持っていない文化だということです。
③黒字化期:ミッションカードによるコア形成+“Be Agile”
吉田 そこで、誰にでも通じる共通言語を握るためにモチベーションクラウドを導入しました。
別に田中さんの会社からお金をもらっているわけではありません(笑)。
組織の状態がひどいことの合意を行い、下方修正90%を切るリスクがありましたが、そこから皆で頑張ったら業績が6%改善しました。
その時に、皆が下方修正90%を切ることは避けたいという目標は合意できていたことが分かったのです。
でもなぜか100%の目標の時は皆、頑張れなかったのです。
そこで「100%の目標」と「90%の目標」の定義が皆の中で違っているのだと分かり、目標の再定義を行いました。
そのように皆の認識がずれていたら、一つひとつ言葉の定義をしていきました。
エンゲージメントスコアの高いチームリーダーに学ぶ
モチベーションクラウドのAAAチームマネージャー(※)が5人いて、その5人に共通する価値観を集めたら、それは私が当初思っていたものと180度違うような考え方でした。
▶編集注:モチベーションクラウドでは、従業員エンゲージメントの調査結果から判定されるエンゲージメントスコア(従業員エンゲージメントの偏差値)を元に、対象組織をAAA~DDの11段階で判定します。
その価値観とは、例えば「結果が出る出ないにかかわらず個人を承認する」というものです。
私が受けた営業の教育は、「目標を達成したら認められる」というものでした。
でも、伸びているマネージャーに共通する価値観は、別に達成などではなくて、まず「あなたは認められた存在だ」というアプローチなのです。
そのような点が全く違っていたのですが、そうした価値観を積極的に取り入れていきました。
「ミッションカード」と呼ばれるものが社内で配られていて、3カ月ごとにアップデートしています。
これがまさに「Be Agile」で、それ自体がカルチャーのプロダクトであり、全員でエンジニアリングしていくものなのです。
この中の言葉で、何がピンとこないか、何がピンとくるかをフィードバックしてもらいながら、言葉をブラッシュアップしていっています。
目に見えるものには限界があり、未来は不確実である
田中 ありがとうございます。
ビジネスモデルによって冒頭お伝えしたような組織をつくり、さらに事業のステージに合わせて、環境変化に適応するように組織をうまくアジャストさせてきているということでしょうか。
吉田 はい、そんな感じです。
田中 私たちが組織論を語るとき、しばしば生物学的な表現を使い「分化」と「統合」との両軸で組織を例えます。
ここで言う「統合」とは、吉田さんが最初の頃(未上場ベンチャー期)にやっていた、組織をぐっと1つにまとめてマネジメントしていくことになります。
逆に、環境変化に合わせて組織を割って「分化」させることも必要で、その両者を行き来させながら組織マネジメントをしていくことをお伝えしています。
まさに吉田さんの場合、最初が統合で、途中で分化し、そして再度統合し直しているという印象を受けました。
吉田 組織のコンサルティングカンパニーとしては、そのようなフレームが大切なのですね(笑)。
田中 フレームで整理しないといけませんので(笑)。
写真左から、クラウドワークス吉田さん、リンクアンドモチベーション田中さん
吉田 先ほど塩田さんもおっしゃっていたように、メタ認知の構造が常に続くということです。
今現在の自分というものに対して、「世界全体とのつながりの中で、見えていない部分が常にある」ということの繰り返しです。
だから、未来において正しいことはほとんど、現段階の自分には分かっていないのです。
その意味で、塩田さんのおっしゃることはよく分かります。
エフェクチュエーションのスキームは、そもそも未来とは不確実だという合意を取っているので、役に立っています。
何をきっかけに組織戦略を「切り替える」べきか?
田中 1つだけ質問したいのですが、組織のマネジメントの方向性を切り替えようと思われるきっかけには何があるのでしょうか?
吉田さんはこれまでに3つ切り替えていらっしゃるとのことですが、「ここを見て舵を切っている」というような、何か大事にされているポイントはありますか?
クラウドワークス 代表取締役社長 兼 CEO 吉田 浩一郎さん
吉田 上場後は求心力が全く無くて、役員も含めて全員が社長批判ばかりしているという時代が2年くらいありました。
でも、僕はそこでただ待っていました。
結局最後は、批判していた皆が、「批判ばかりしていてもしょうがないので、社長、話しませんか?」と言ってきたのです。
「社長と話さないと、これ以上無理です」となりました。
でも、批判していても辞めないということは、何かしら甘えて期待をしているわけです。
その部分を本人が事業を通して認知して、ここから先は、組織として合意していかないと何もできないことに気付いたのです。
塩田 自分たちで気付くまで待つことが、一番重要なポイントですね。
途中で手助けしたくなりますよね。
そうすると、そのチームの人たちは、必要性などを最後まで受け取ったことにならないのです。
そこがすごいと思います。
CW吉田さんが語る、事業解散時の「感情の分かち合い」
写真左から、アカツキ塩田さん、ネオキャリア西澤さん、クラウドワークス吉田さん、リンクアンドモチベーション田中さん
吉田 先ほど示した事業の中で、「ワオミーだけ3〜4カ月社長直轄の時期あり」とありますが、まさにそこは、先ほどの塩田さんの話になっています。
ワオミー(WoW!me)の事業解散の時に、皆の気持ちをシェアするミーティングをしたのですが、あるエンジニアが「ワオミーに関わって、社長の意思決定で納得がいったことは1つもありませんでした」と言ったのです(笑)。
1回関わったらそんなフィードバックだったのです。
塩田 なるほど、それを自分で受け止めたのですね。素晴らしいですね。
吉田 それですごく傷ついて、取締役に「あれ、ひどくない?」と言ったら、「吉田さん、以前の吉田さんはもっと怖かったので、ああいう気持ちはそもそもシェアされなかったのですよ」と言われたのです。
「シェアされただけマシです」と言われました(笑)。
西澤 成長しているということですね(笑)。
塩田 リーダーというのは無意識に、耳の痛いことは言わせないようにしてしまいますよね。
ですから、それが言える組織は、相当器が大きいと思います。
良かったですよね、嫌われているところが表面に出てきて(笑)。
それが進化の証だったということです。
吉田 何か、精神的な面をオーナーがシェアするセッションですね(笑)。
田中 冒頭で塩田さんがそのようなテーマから入られたので。
ありがとうございます。では続いて、ネオキャリアの西澤さん、お願いします。
(続)
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続きは 5.「ボトルネックは僕(社長)だった」ネオキャリア西澤さんが語る、会社急成長のきっかけ をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美
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