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4. 宇宙農業の“元素循環システム”は、エコロジカルな地上農業の究極形

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『テクノロジーによって「農業」「食」「健康」はどう変わっていくのか?』全12回シリーズの(その4)は、インテグリカルチャーの羽生さんが「宇宙農業」を解説します。月面基地などの閉鎖システム内で、藻類の光合成と動物細胞の培養を循環させる究極の農業。そんなSFのような取り組みが、実は現在JAXAのプロジェクトとして進行しているのだとか。 ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2019 プレミアム・スポンサー Honda R&D Innovationsにサポートいただきました。


【登壇者情報】
2019年2月19〜21日
ICCサミット FUKUOKA 2019
Session 4F
テクノロジーによって「農業」「食」「健康」はどう変わっていくのか?
Supported by Honda R&D Innovations

(スピーカー)
串間 充崇
株式会社ムスカ
取締役/Founder

羽生 雄毅
インテグリカルチャー株式会社
代表取締役

福田 真嗣
株式会社メタジェン
代表取締役社長CEO

安田 瑞希
株式会社ファームシップ
代表取締役

(モデレーター)

井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO

『テクノロジーによって「農業」「食」「健康」はどう変わっていくのか?』の配信済み記事一覧


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最初の記事
1. ライフスタイルの多様化で、農業は「都市部集中」「個体管理」にシフトする

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3. 細胞農業が実現すれば、培養槽で“魚の切り身”が泳ぐ光景が見られる?

本編

JAXAプロジェクトで「宇宙農業」の共同研究を実施

羽生 この方法を突き詰めていくと、閉鎖系で大量に細胞培養ができるのであれば、「宇宙農業」が実現するのではと考えています。

この図は、小惑星ではなく彗星を掘っているイメージです。

小惑星は掘っても金属と酸素しか取り出せないので、炭素と窒素はどうしたらよいかと考えました。

そこで、彗星を掘ればいいと思い付いたわけです。

井上 もう「なるほど」とも言えないですよね(笑)。

写真左から、井上さん、串間さん、安田さん、福田さん、羽生さん

羽生 食べ物は産業資源としてのバイオマスとも考えられるので、この技術でバイオプラスチックも作れることになります。

井上 宇宙でつくったものは最終的に地球に持ってくるのですか、それとも宇宙空間で使うのですか?

羽生 どちらもありえます。

真ん中にマスドライバーが付いているので、どこへでも出荷できます。

井上 真ん中にマスドライバーが付いている?

羽生 はい。惑星軌道上や人工衛星の周回軌道上に物資を大量輸送するための、電磁加速器のマスドライバーですね。

2018年11月に発表させていただきましたが、JAXA(宇宙航空研究開発機構)宇宙探査イノベーションハブのプロジェクトとして、東京女子医科大学の清水達也先生を研究主任とする共同研究を始めることになりました。

東京女子医大とインテグリカルチャーがJAXA宇宙探査イノベーションハブのプログラムに採択、細胞培養技術で宇宙開発における食料問題の解決を目指す(PR TIMES)

藻類と動物細胞の共培養系をつくるという、先ほど示したタワーの原型となるコンセプトを具現化しようとする研究が、実際に始まっています。

井上 羽生さん、そうすると本当にこの図のようなものをつくろうとしているわけですか?

羽生 ええ、つまり、そういうことです。

宇宙農業は「エコ」で「省資源」な農業の究極形

羽生 先ほどの図は月面施設のイメージですが、次の新しいCGでは工場の中身をお示しします。

工場の中で、藻類細胞の光合成と動物細胞の培養をしています。

宇宙農業というものは、考えてみると元素循環システムなのです。

農業において「エコ」や「省資源」をどう実現するかという問題は、突き詰めると、「いかに元素循環システムを構築するか」になります。

それを具現化した一つの形が、宇宙農業だと思います。

宇宙農業は、エコを目指したときの究極形の一つです。

井上 皆さん、大丈夫ですか? 話についてきていますか?

福田 会場を代表して、一つ質問してもよろしいですか。

これによってどんな課題を解決するのでしょうか?

世界的な肉の需要増。食料安全保障の点でも注目

インテグリカルチャー株式会社 代表取締役 羽生 雄毅さん

羽生 私たちは普段何気なく肉を食べていますが、実は肉をつくるには、ものすごく大量の環境資源を使っています。

世界的に肉の需要がますます増えている状況で、森林破壊など、資源を食い潰すことによってなんとか肉食が成り立っている状態です。

このままでは全く資源が足りず、サステナブル(持続可能)ではありません。

実際に肉が不足してきていて、2〜3年前に中国がアメリカから肉を輸入すると言い始めたとたん、牛肉価格が急激に上昇しました。

そのため日本が買い負けてしまうなど、ある意味で食料の取り合いのような状況がすでに生まれています。

中国の動向だけでこのような影響が出ていますが、この後、インドやアフリカも同じような状況になることが予想されます。

気候変動などの要因も絡んでくるので、食料安全保障の観点から食料自給率に敏感になっている農水省も気にしています。

井上 このCGのような世界は「もうこうなるに違いない」という感じなのでしょうか?

羽生 「こんなものができるといいなあ」という感じです。

培養肉のみならず、コスメやサプリの商品開発も

羽生 ここで私たちの技術面の強みをご説明させていただきたいと思います。

弊社の技術は一言で言うと、「汎用大規模細胞培養技術」つまり細胞を大量に培養する技術です。

糖分とアミノ酸を入れると、細胞が出てくるシステムです。

そのシステムの究極のアウトプットとして肉があるわけですが、そこに至る手前のところに、例えば、コスメ、サプリ、培養細胞、有用物質などがあるので、このようなものから商品化していこうと考えています。

井上 僕ら人間の体は、37兆個ぐらいの細胞でできていると言われています。

例えば筋肉の細胞を取ってきて細胞培養すれば筋肉になるので、それを発展させて肉を作っていくということですよね?

羽生 そうです。

井上 その過程では、細胞が生産する有用物質があるので、それをコスメやサプリとして販売すると。

そうした細胞培養システムの究極形をつくっているのが、このCulNet System(カルネットシステム)ということですね。

羽生 はい、そうです。

それに向けてまず、バイオ試薬や食品グレード培養液をつくっています。

実際に市場に出すためには、口に入れるためのものを培養するのか、カバンや靴用の革を培養するのか、毛皮を培養するのか、それぞれ求められる培養液のグレード(品質)は異なりますが、そのすべてのベースになる「食品グレード培養液」をつくって、最初のプロダクトして出しています。

(続)

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続きは 5. 世界に広がる培養肉市場。ベジタリアン・ヴィーガンの反応は? をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/小林 弘美/戸田 秀成

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