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『テクノロジーによって「農業」「食」「健康」はどう変わっていくのか?』全12回シリーズの(その3)。細胞培養による“人工肉生成”に挑戦するインテグリカルチャーの羽生さんが、未来の「細胞農業」を解説します。培養槽で魚の切り身が泳ぐ姿……ちょっと怖い気もしますが、そんな未来は本当に訪れるのでしょうか? ぜひご覧ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2019 プレミアム・スポンサー Honda R&D Innovationsにサポートいただきました。
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【登壇者情報】
2019年2月19〜21日
ICCサミット FUKUOKA 2019
Session 4F
テクノロジーによって「農業」「食」「健康」はどう変わっていくのか?
Supported by Honda R&D Innovations
(スピーカー)
串間 充崇
株式会社ムスカ
取締役/Founder
羽生 雄毅
インテグリカルチャー株式会社
代表取締役
福田 真嗣
株式会社メタジェン
代表取締役社長CEO
安田 瑞希
株式会社ファームシップ
代表取締役
(モデレーター)
井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO
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最初の記事
1. ライフスタイルの多様化で、農業は「都市部集中」「個体管理」にシフトする
1つ前の記事
2. 植物工場野菜は「お日様で育った野菜」への根強いニーズにどう応えるのか
本編
井上 植物工場の話から、次は細胞培養による「細胞農業」の話に移ります。
先に言っておきますと、変態的と言えるほどマニアックな話です。
それでは羽生さん、自己紹介とともに、やっていることを思う存分話してください!
「細胞培養で肉をつくる」インテグリカルチャー
羽生 雄毅さん(以下、羽生) はい。インテグリカルチャーの羽生(はにゅう)と申します。
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羽生 雄毅
インテグリカルチャー株式会社
代表取締役
2010年、オックスフォード大学博士(化学)、東北大学多元物質科学研究所、東芝研究開発センター、システム技術ラボラトリーを経て、2014年、細胞農業の実現に向けて研究者や学生数名とともに純肉の研究開発の有志団体”Shojinmeat Project”を立ち上げる。 2017年、米国シンギュラリティ大学主催の”Japan Global Impact Challenge”に優勝、シリコンバレーでのGlobal Solutions Programに日本人として初めて参加。純肉の事業化に向けて2015年にインテグリカルチャー(株)を設立、代表取締役を務める。
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私たちがやっていることは「細胞培養で肉をつくること」ですが、その詳細を新しいスライドを交えて紹介します。
次のスライドをお願いします。
井上 待ってください。まず、この絵を説明してくださいよ(笑)。
羽生 この絵は、タワーの中で肉などを培養しているイメージです。
その周りには、例えばユーグレナ(ミドリムシ)を培養する池のようなサポート設備もあります。
井上 石垣島にある、ユーグレナ社の工場にある培養槽のようなものですね。
羽生 はい。ここで藻類を培養して光合成を行っています。
というのも、肉を培養するといっても、もともとの化学的エネルギーはどこから来るのかという議論に帰結してしまいます。
つまりどうやって培養液を作るのかという話ですが、それを行っているのが、周りにある藻類プールです。
しかし、人工光合成もありえると思っています。
究極的には、太陽光パネルもしくは核融合発電所があって、そこから電気エネルギーを注入して、電気化学的に有機合成をするような培養液の作り方もありえます。
また、中央のタワーの中では動物細胞の培養を行っていますが、考えてみると植物でもいいわけです。
というのも、動物細胞から肉をつくる技術というのは、植物細胞でやれば、植物細胞からそのまま桃だけをつくってしまう技術にもなりえます。
「桃栗三年柿八年」と待ってはいられないので、2週間で桃だけ培養してしまえばいいじゃん、という発想です。
井上 ちなみにこれは、日本という想定ですか。
羽生 どこでもいいのですが、一応、日本がいいかなと思っています。
ちなみに、あそこの池の横に、チャレナジーさんの風車が一部並んでいます。
井上 ああ、本当ですね!垂直軸型マグナス式のものですね。
羽生 タワーの横に穴が開いていますが、あの中からドローンが飛び出して……
井上 次にいきましょう!そろそろ(笑)。
培養細胞からつくった「培養レバー」の味は?
羽生 では、今やっている事業のコンセプトを示します。
簡単に言うと、動物から細胞をもらってきて、それを増殖させて肉にする、ということをやっています。
そして実際につくってみた「培養レバー」がこちらです。
井上 おいしそう!
羽生 味については、コショウの振り方次第かなという感じでした。
美味しいかまずいかはともかく、少なくとも食べたときに「あ、これ食べ物だな」と感じられたので、それだけでもかなり大きなことだと思います。
井上 「レバーだな」と感じたわけですか。
羽生 血の味がしないので、レバーとは少し違いますが、少なくとも「何らかの肉。肉っぽい何か」という感じです。
井上 待ってください。確認しますが「何らかの肉っぽい何か」というのはポジティブなのでしょうか?
羽生 少なくとも、食べた瞬間に吐き出してしまうような体の反応は起きないので、そこが一番重要かなと思います。
井上 確かにそうですね。なるほど。
細胞農業の実現に向けた国内外の動向
羽生 次は、実際に培養施設をつくったら、このようになるだろうと考えているものです。
井上 これは、想定ですか?
羽生 想定です。これは自分で作ったCGです。
バーチャルリアリティーでも見られますので、YouTubeで探していただければと思います。
▶火星培養食糧工場 Shojinmeat Nirvana Alpha VRツアー(YouTube)
これが実現するとどのような世界になるのか、もう少し説明を加えた図を示します。
一部の研究結果によると、(細胞農業の実現により)水の消費マイナス95%、土地の消費マイナス98%という試算も出ています。
▶上記グラフは Tuomisto HL & Joost M:Environmental Impacts of Cultured Meat Production. Environ Sci Technol, 45:6117-6123, 2011 より引用
日本の食料自給率改善の決定打にもなりうるのではないかということで、農水省にある「Team 414」という若手官僚チームもエキサイトしています。
▶日本の食のこれから。農水省の若手職員チーム「Team 414」の描く未来。(マイナビ農業)(参照:Team 414によるPDF資料)
弊社も農水省の官民ファンドであるA-FIVE(株式会社農林漁業成長産業化支援機構)から出資を受けています。
つい2日前に、ニューズウィークに「日本、オランダ、イスラエルは政府が投資して進んでいるのに、アメリカは何をしている」という内容の記事が出たくらい、色々働きかけて成果が上がってきた感じがします。
▶日本、オランダ、ついにアメリカも 培養肉の時代がやって来る(ニューズウィーク日本版)
将来的には、培養槽で“魚の切り身”が泳ぐ光景も?
羽生 この培養技術は、魚にも適用できます。
マグロとかウナギとか、魚ではありませんがクジラなどにも適用可能ということです。
井上 マグロそのものではなく、マグロの細胞を培養するということですね?
羽生 タンクの中で細胞培養をするわけですが、そうするとタンクの中で“切り身”が泳いでいる景色が見られることになります。
井上 え、頭を混乱させないでくださいよ(笑)。
切り身が泳いでいるとはどういうことですか?
羽生 正確に言うと“切り身”である必要はないです。
しかし良い肉を作るためには、いわゆる筋トレが必要になります。
何らかの形で筋肉をピクピクと収縮させる必要があるわけです。
井上 ああ、なるほど。
羽生 電気刺激でピクピクさせるためにSIXPAD(※)のようなものを使うことになるかなと思っています。
▶編集注:MTG社が販売する、電気刺激によって筋肉トレーニングをサポートする製品。いわゆる「EMS腹筋ベルト」。
井上 つまり、培養槽の中の細胞が電気刺激でピクピク動いているのを、「切り身が泳いでいる」と言うわけですね(笑)。
羽生 はい。
井上 分かりました。いや、分かるんですけど、なんだろな(笑)。とにかくありがとうございます。いやあ、すごい世界だなあ……。
(続)
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続きは 4. 宇宙農業の“元素循環システム”は、エコロジカルな地上農業の究極形 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/小林 弘美/戸田 秀成
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