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歴史ファンのみなさんお待たせしました、シーズン4に突入した「歴史から学ぶ『帝国の作り方』」、今回のテーマはプロイセンです。全7回シリーズの第6回目は、ここまでの議論を経て、会場からのさまざまな質問に答えます。なかでも日本を縛る制約条件を問う質問から、日本で「かわいい」が重視されるのは、生存戦略であるからという議論に発展します。あなたの企業の生存戦略は何から生まれていますか? ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回300名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2022 プレミアム・スポンサーのM&Aクラウドにサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2022年2月14〜17日開催
ICCサミット FUKUOKA 2022
Session 5D
歴史から学ぶ「帝国の作り方」(シーズン4)
Supported by M&Aクラウド
(スピーカー)
宇佐美 進典
株式会社CARTA HOLDINGS
代表取締役会長兼CEO
北川 拓也
楽天グループ株式会社
常務執行役員 CDO(チーフデータオフィサー) グローバルデータ統括部 ディレクター
(登壇当時)
小嶋 智彰
ソースネクスト株式会社
代表取締役社長 兼 COO
深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役
山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役社長
(モデレーター)
琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)
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▶「歴史から学ぶ「帝国の作り方」(シーズン4) 」の配信済み記事一覧
連載を最初から読みたい方はこちら
最初の記事
1.シーズン4のテーマは、明治期の日本が手本とした「プロイセン」
1つ前の記事
5.プロイセンから続いている、ドイツの「弱者の戦略」
Q 実はドイツは地政学的に有利とも言えるのでは?
琴坂 さて、質問が来ました。
「ハートランド(※) (ピボットエリア)に近接しているという意味では、地政学的には有利な位置にあるとも言えるのではないか?」という質問です。
▶編集注:Part.5で、ドイツはイギリス、フランス、イタリア、オーストリアに囲まれ、東にロシアがあり、地理的条件が最悪と語られた。「ハートランド」は、地政学の用語。ハルフォード・マッキンダーが『デモクラシーの理想と現実』の中でユーラシア大陸の中核地域を中軸地帯と呼んだことに始まり、後にハートランドと改められた(Wikipedia)。
ど真ん中にいるというのは、リスクでもありオポチュニティでもあったのではないかということですね。
山内 ヒトラーがやろうとしたのは、まさにそうですよね。
ロシアを獲ればハートランドを獲ることになるので、圧倒的に強くなれる。
第二次世界大戦時、ドイツの対ロシア戦は他の戦争と全く違って、根絶やしにしようとしたのです。
ですから、2,000万、3,000万という圧倒的多数の人が死んでいます。
この死者数は他の戦争と比べても、桁が違います。
「ロシアを根絶やしにし、ゲルマン民族がその土地を獲るのだ」という、幻想というか勘違いがあったということです。大迷惑ですよね。
深井 植民地にしようとしたのですよね。
北川 大日本帝国も同じことを考えていた?
深井 大東亜共栄圏は少しニュアンスが違いますね。
山内 プロイセンも日本も近代化が遅れた帝国でしたが、意外と強かったので大変なことになったのだと思います。
近代史においては、ゲルマン民族も日本民族も意外と強かったことがポイントではないでしょうか。
Q 日本を縛る制約条件とは?
琴坂 これも良い質問です、「この経路依存性(※) の法則の観点から、日本を縛る制約条件は何だと思いますか?」
▶編集注:過去の経緯や歴史によって決められた仕組みや出来事にしばられる現象のこと。
深井 日本の歴史を概観して感じる制約条件というか、隠された前提条件は…色々あるのですが、まず、リーダーが使えないのです。
無能だという意味ではなく、日本は、強いリーダーが引っ張って戦うという経験をしたことがないのです。
北川 確かに。
深井 危機が来て、リーダーがいないけれどみんなで頑張ります!というのが、社会的に一番パフォーマンスが高くなる状況だと思います。
琴坂 確かに。
深井 戦後復興とか、東日本大震災のボランティア活動とか、ああいう場面で世界最高のパフォーマンスをする。
でも、一人の強いリーダーに引っ張られてどこかの国を倒す、ということは一度もしていません。
なぜかと言うと、これが隠された条件だと思うのですが、日本は極東にあって、誰も用のない国だったからです。
日本より東には何もないので経由することもないし、資源もないと思われていた、つまり誰も興味がないので攻めてこなかったのです。
どこも攻めてこないというのは外敵が存在しないということで、だから日本史はゆるいです。
琴坂 そう、ゆるいですよね。
ヨーロッパの百年戦争(1337〜1453年にイギリスとフランスとの間で断続的に行われた戦争)や薔薇戦争(1455~1485年のランカスターとヨーク両王家の間で戦われたイギリスの内乱)を思うと、ゆるいです。
外敵が存在しない状況での一番の脅威は、仲間はずれにされること
深井 ルール設計も、中国に比べて日本の国家ルールはゆるいです。
ルールはゆるいけれど、共同体のモラルのレベルがすごく高いです。
なぜなら、外敵が存在しない状況において一番の脅威は、仲間はずれにされることです。
琴坂 それは真理ですね。
深井 だからこそ、仲間はずれにされないためのインセンティブ設計がされていますし、日本語は色々なところで感覚を共有します。
琴坂 これは僕にとって、過去4シーズン中最大の学びですね。
日本において、外敵に攻められない状況での最大のリスクは、仲間はずれにされることだった。
これは、この3,000~4,000年の間に人が経験してきたこと、僕らの統治機構、意思決定、民族性に相当大きな影響を与えている気がしますね。
深井 日本が、かわいいキャラクターやアイドルが得意なのも、それが理由だと僕は思っています。
かわいさを持つことが、日本人の生存戦略なのです。
外敵がいない場合、農業をしている人が天災以外で一番怖いものは仲間はずれです。
かわいい人、かわいがられる人は、仲間はずれにされないです。
地政学的には孤島に近いデジタルの世界
北川 急に話が飛ぶのですが、インターネットにおいて、Web 1.0、Web 2.0、Web 3.0という推移の中で、ウェブ世界における生活がだんだん重要になってきました。
▶「Web 3.0」〜ブロックチェーンが紡ぐ新しいWebの世界〜(Trade Log)
地政学的に言うと、デジタルの世界は、日本のような孤島に近いのです。
つまり、どのリアル世界とも接していない、新しく創られた孤島です。
今後Web 3.0を作っていく上で、みんなが日本人の精神を持ち始めるのではないか、と今の話を聞いていて思いました。
例えばアメリカ人も、日本のアニメキャラを使ってアバターを作っています。
孤島であるデジタル世界で、嫌われない、仲間はずれにされないために「かわいい」が正義になっていて、アメリカ人も、日本人と同じ精神構造になっているのではと思います。
琴坂 なるほどね。
北川 地政学の観点から見ると、今、激変が起こっています。
これまでは、近接国と戦争をする必要がありましたが、インターネットの登場によって、世界で一番儲ける会社がGAFAになりました。
儲ける国というのがインターネット世界に移った今、たとえドイツが物理世界で敵に囲まれていたとしても、今度はインターネット世界でどう経済的に勝ち抜くかという戦いになっています。
経済学に重要な影響を及ぼす地政学のコンセプトが、劇的に変わったと思うのです。
これからどう戦うか、ですね。
日本は東のほうでひっそり好きなことをやればいい
山内 北川さんのお話にあったように、個人的には、Web 3.0にはめちゃくちゃ期待しています。
でも、「結局、ドイツや日本はどうしたら良かったのか?」というのが僕のセントラルクエスチョンなのです。
昔みたいに、生産手段が土地しかないので、武力で帝国化して奪う必要があり、総力戦のためには富国、経済力が重要だとすれば、ドイツや日本という遅れた資本主義国には、勝ち目がないですよね。
経路依存性の話に戻ると、大日本帝国陸軍と戦後に成長した「Japan as No.1」の一部メーカーこそが特殊であって、それらを除けば2000年くらい、極東でひっそりとやっていたわけです。
琴坂 そうですね(笑)。
山内 だから日本は東のほうでひっそり、好きなことをやっていればいいのではと思っています。
インターネット世界についても、最初の思惑とは違って帝国主義化し、GAFAMが台頭しましたが、いよいよWeb 3.0により、ひっそりやれるようになるのではないでしょうか。
(続)
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続きは 7.Web 3.0の時代に日本が、企業が取るべき戦略とは?【終】 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸
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