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5.マイノリティ側からマスカルチャーに訴えるヘラルボニーの意見広告

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ICC FUKUOKA 2022のセッション「『サステナブル』『ダイバーシティ』はマーケティングのメインストリームになるのか?」、全8回の⑤は、2020年に話題を集めたヘラルボニーの意見広告について紹介します。いかに問題提起になるアクションを考え、国会議事堂の弁護士会館の前に掲出するに至ったのか、その裏側を松田さんが語ります。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2022 プレミアム・スポンサーのリブ・コンサルティングにサポート頂きました。


【登壇者情報】
2022年2月14〜17日開催
ICCサミット FUKUOKA 2022
Session 4F
「サステナブル」「ダイバーシティ」はマーケティングのメインストリームになるのか?
Supported by リブ・コンサルティング

(スピーカー)

工藤 萌
株式会社ユーグレナ
執行役員 ユーグレナヘルスケアカンパニー Co-カンパニー長

深井 喜翔
KAPOK JAPAN株式会社
代表取締役

松田 文登
株式会社ヘラルボニー
代表取締役副社長

リュウ シーチャウ
レノボジャパン合同会社
CMO マーケティング統括本部 統括本部長 / NECパーソナルコンピュータ株式会社 コンシューマ事業本部 マーケティング部長

(モデレーター)

山崎 大祐
株式会社マザーハウス
代表取締役副社長

『「サステナブル」「ダイバーシティ」はマーケティングのメインストリームになるのか?』の配信済み記事一覧


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1.「サステナブル」「ダイバーシティ」で社会に挑む企業が集結、事業を語る

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4.中古・回収素材のリメイクバックを選んで買う若い世代(マザーハウス山崎さん)

本編

意見広告に込めたヘラルボニーの想い

松田 はい、これは国会議事堂の弁護士会館の前に初めて出した、意見広告です。

山崎 これはチャレンジングですよね!

松田 バンクシーへのオマージュで、障害者という言葉をシュレッダーにかけている様子を広告にしました。

この国の障害は #障害者という言葉 だ。ヘラルボニーが異例の意見広告に込めた痛烈なユーモア(Forbes Japan 2020年2月21日)

これは、安倍元首相が、「シュレッダー処理をしたのは、障害者雇用の職員でした」と答弁したからです。

特に海外の企業では、会社に人格を持たせますよね。

例えばNIKEは人権問題に、パタゴニアは環境問題に取り組んでいます。

なぜナイキは広告を通じて人権問題を訴えるのか(ALTERNA 2020年12月30日)
パタゴニアの企業理念が「地球を救うためにビジネスを営む」に変更。その深いワケとは?(HuffPost 2019年06月25日)

僕らヘラルボニーは、障害=欠陥ではなく、「違い」や「個性」に変えていこうとしている中で、自分たちが違うと思ったことに対してはアクションを取りたいと考えました。

結局のところ、それが一番ファンを増やす施策だと思っています。

「シュレッダーにかけたスタッフが障害者雇用であったことを宣言したのは、それが国民に向けた1つの言い訳として成立すると判断したからと推測する。」

「この国のいちばんの障害は『障害者』という言葉だ。」

「#障害者という言葉」というハッシュタグを使って一つのキャンペーンにし、色々なところで拡散してもらいました。

僕たちは「障害」という言葉を好きで使っているわけではないけれど、この言葉がないと伝わらないというジレンマを感じています。

そこで、この言葉そのものへの問題提起になるアクションにしようと考えました。

過去からこれまでに、「知的障害」を表現する言葉は変わってきています。

僕らが、その言葉を本当に変える存在になりたいという気概も込めたアクションです。

こうしてマイノリティ側からマスカルチャーに対して伝えることが、20~30代には刺さると思いますし、それに対して熱狂的なファン層が増えると思うので、何かあればアクションをしていきたいと思っています。

リュウ ちなみに、どんな言葉に変えたいのですか?

松田 ああ、その質問は困りますね(笑)。

リュウ (笑)。

松田 海外だと、“special needs”などと表現することもありますね。

例えば、「異彩者」なんてどうでしょうか。

ちょっと自分の会社とつながりを持たせていますが(笑)。

リュウ 良いですね!

山崎 「異彩を、放て。」(※ヘラルボニーのミッション)は良い言葉ですよね。

松田 障害のある方にとっては、このラベリングがあることが、セーフティネットになっていると理解していますが、この言葉の持つネガティブな力もとんでもないと思うので、それについて色々と議論ができる機会があればいいなと思います。

本当の意味でのダイバーシティ発信に、多くの企業は消極的

山崎 これは政治に対するチャレンジでもありますよね。

松田 はい。

山崎 日本では、政治が絡むと大企業が嫌がることが弊害になり、意見広告を出しにくいこともあると思っています。

ダイバーシティがリアルになっていない理由も、そこにある気がしています。

大きな傘としてダイバーシティを謳うのは問題ないので、みんなダイバーシティを謳いますが、本来は色々な角度から発信する必要があります。

つまり、ダイバーシティという概念の構成要素の価値の代弁者でなければいけないのに、政治問題になりがちなので、多くの企業や団体はやりたがらないのが実情です。

これは、LGBTQの問題でも同じだと思います。

この意見広告を出した後、大企業側から「御社と取り組みをしづらくなった」のような声はなかったのでしょうか?

松田 この意見広告自体は、そういう事態にはならなかったですね。

むしろ、自民党以外の政党から、「会いたい」という連絡が非常にたくさん来ました(笑)。

山崎 そうなんだ!

深井 なるほど。

工藤 ポジティブな連絡ですか?

松田 はい、「一緒に何かアクションをしたい」というような連絡ですね。

ただ、会社からの発信に政党の色はつけたくはないので……。

山崎 リアルな話ですね(笑)。

松田 はい(笑)。

山崎 他にポジティブな反応はありましたか?

松田 これは一つのキャンペーンにしたのですが、Forbesとバズフィードジャパンが参加してくれました。

あの日、僕は兄の存在を隠した。「障害者」を言い訳にさせないために(BuzzFeed News)

もともと、安倍元首相のこの発言に対し、「その発言は間違っているだろう」と海外メディアは大々的に報じていましたが、日本のメディアは報じていなかったことへの違和感、しこりがありました。

それで彼らに記事にしてもらい、ハッシュタグを使ったキャンペーンにしたことで、大きく広がりました。

会社としての発信でしたが、結果的に売上に直結しましたね。

山崎 売上につながったのですね。

松田 はい、共感していただけた結果、ファンが増えたのだろうと感じます。

双子だからこそ強くなったメッセージ性

深井 この問題の発言が起きてから、実際に行動するまで非常に早かったですよね。

松田 はい、問題が起きた後、自分たちが何か行動すべきだと考えました。

僕たち双子で運営しているツイッターアカウントがあるのですが、弟(松田 崇弥氏)がツイートした瞬間に僕はツイートを書いていて、弟がしたツイートと、その3分後に僕がしたツイートは全く同じ内容でした(笑)。

松田崇弥・文登(双子起業家)|ヘラルボニー(Twitter)

山崎 大事な話ですが、マザーハウスも僕と山口(絵子)の2人が代表ですが、こういった、意見の分かれる社会問題については、2人のほうが強いです。

なぜなら、2人の間で議論ができるし、1人だとツイートしただけで終わる内容でも、2人いればリツイートし合うこともできるからです。

議論することで、1人の主観的な意見ではないことも見せられるので、すごく重要だと思います。

だから、双子はずるいですよ(笑)。

松田 確かに。

リュウ だからこそ、こういう意見広告も出せたのかなと思います。

メッセージ性の強いものは嫌だと思う人もいるかもしれませんが、ものすごくファンを作ります。

Black Lives MatterでもNIKEが似たアクションをしたように、海外だとよくある事例ですが、日本ではあまりないです。

アメリカの「Black Lives Matter」運動が過熱、ナイキやマークなどがメッセージ発信(FASHIONSNAP.COM)

すごく素敵なことだけど、なかなか意思決定できないという問題があるので、もっと増やしていきたいですよね。

ヘラルボニーの場合、双子での経営がソリューションの一つだったのかもしれません。

松田 レノボくらいの規模になれば、相当躊躇すると思います(笑)。

山崎 とは言いつつも、後でレノボの事例も紹介しますから(笑)。

松田 そうですね。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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