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洋野町から世界へ!うに再生養殖で地域と水産業の未来を創る「北三陸ファクトリー」(ICC KYOTO 2022)

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ICC KYOTO 2022 CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けてに登壇いただき見事優勝した、北三陸ファクトリー 下苧坪 之典さんのプレゼンテーション動画【洋野町から世界へ!うに再生養殖で地域と水産業の未来を創る「北三陸ファクトリー」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回300名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターはMakuakeです。

【速報】うにの再生養殖で水産資源の未来を創る「北三陸ファクトリー」がクラフテッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2022)


【登壇者情報】
2022年9月5〜8日開催
ICC KYOTO 2022
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Supported by Makuake

下苧坪 之典
株式会社 北三陸ファクトリー
代表取締役 CEO

1980年岩手県洋野町生まれ。大学卒業後、自動車ディーラー、生命保険会社を経て帰郷。2010年に水産ローカルベンチャー「株式会社ひろの屋」を創業。その後3.11で洋野町が大きく被災。新たに「地域と水産業の未来を創る」というミッションを掲げ、2018年に戦略的子会社「株式会社北三陸ファクトリー」を設立。 2022年養殖×藻場再生で、日本と世界の海洋問題を解決するNPO法人MOOVAを設立。朝日新聞出版誌「アエラ」日本を突破する100人(2014年)。はばたく中小企業・小規模事業者300社(2016年)。地域未来牽引企業(2018年)。東北ニュービジネス協議会東北アントレプレナー大賞(2021年)


下苧坪 之典さん 北三陸ファクトリーの下苧坪(したうつぼ)と申します。

本日は、岩手県の洋野(ひろの)町という人口15,000人足らずの小さな町から、やって参りました。

岩手県洋野町だけに存在する「うに牧場®

岩手県洋野町には、世界で唯一のものがあります。

それが、世界で唯一の「うに牧場®」で育つキタムラサキウニです。

洋野町のうに牧場®で育つキタムラサキウニは生産量が本州において水揚げ第1位です。

うに牧場® (北三陸ファクトリー)

このうに牧場®を活用し、1年から4年のサイクルによって持続可能な仕組みで作り上げられるキタムラサキウニですが、うに牧場は約55年前に、先人が創りました。

国際規格を保持した工場でうに製品を開発、加工

私たちの存在意義、それは地域と水産業の未来を創ることです。

昨年2021年春、私の生まれ育った地元・洋野町に、新工場を竣工しました。

弊社工場では、国際規格をすべて保持しており、どの国へも輸出できる体制を整えております。

本社工場で、「洋野うに牧場の四年うに」を中心とした生うにを基軸としたうに製品を創っております。

皆さん、うにはお好きでしょうか?

本日は、「洋野うに牧場の四年うに/ UNI&岩手産バターSPREAD」を、審査員の皆さんにぜひお召し上がりいただきたいと思います。

こちらの製品は、第21回岩手県水産加工品コンクールにおいて、最高賞「農林水産大臣賞」を受賞し、2021年、天皇陛下にも献上させていただきました。

令和元年度岩手県水産加工品コンクール受賞結果(岩手県)

この最高に美味しいうにバターを、お召し上がりいただきたいと思います。

私はこれまで、うに製品を約6年間、国内外で販売してまいりました。

身入りの悪いうには1個5円をかけて捨てられている

世界の海、世界の市場を見てきた中で、地元・岩手、東北、そして日本の水産において大きな課題にぶち当たりました。

担い手不足、資源管理、産地偽装、魚価低迷、魚食離れ、温暖化、DX……そして、本日の本題である、「磯焼け」です。

磯焼けというのは、海の中の海藻すべてが焼き尽くされて、岩がむき出しになり、海藻がまったくなくなってしまうことなのです。

第3章 磯焼けとは(水産庁)

こういった海に生息するうには、まったく中身が入っていません。

磯焼け海域に生息する「磯焼けうに」は、水揚げをされたあと製品化できず、産業廃棄物として1個あたり5円をかけて捨てられているのです。

うにの再生養殖とは

だからこそ、私は産廃として捨てられるうにを再生し、製品レベルに品質を改善するための養殖技術が必要だと思い、6年前に「北海道大学」の門を叩きました。

浦 和寛准教授が、基礎研究で約15年間積み上げてきた「うに養殖技術」を学び、うにが美味しくなるための「餌」、うにを美味しく育てるための「カゴ」、そしてうにそのものを最高品質にし、価値のある水産物として再生するための仕組みを創り、特許を取得しました。

うにの餌は北海道大学、日清丸紅飼料らとの共創コンソーシアムで開発をし、餌のみならず、カゴについても北海道大学らとの共創で特許を取得しました。

たった2カ月の再生養殖で100倍の価値を生み出す

カゴにまったく身が入っていない「磯焼けうに」を入れ、開発した餌「HAGUKUMU-TANE®」を給餌し、2カ月間で出荷レベルまで育てます。

私たちは、短期間の「再生養殖」で100倍の価値を生み出します。

1個あたり5円をかけて捨てていたうにが、たった2カ月で500円に生まれ変わるのです。

うに殻の活用で磯焼け海域の藻場を再生する

また、私たちはサステナビリティへの配慮として、産業廃棄物となるうに殻を活用した事業も推進しております。

廃棄料のかかるうに殻を、天然ゴムと混ぜ合わせ、堆肥ブロックとして海の中に沈めて、昆布等の海藻の種を植え付けることで、磯焼けにより減少してしまった海藻を再生する取り組みも行っております。

「藻場再生」の取り組みの先には、CO2クレジット取引が待っています。

J-クレジット制度(経済産業省)

ブルーカーボン造成によるCO2クレジット取引で生まれた収益を、生産面に還元し、循環型の経済を創っていく――現在、我々は、北海道から三陸沿岸で、海の未来づくりに取り組んでいます。

ブルーカーボンについて(みなと総合研究財団)

水産物の産地偽装を防ぐトレーサビリティシステム

先日、外国産アサリを熊本県産として販売した、「アサリ産地偽装問題」がありました。

外国産アサリを熊本産と偽装 福岡の2業者で6千トン 山口でも発覚(朝日新聞 2022年8月9日)

サステナビリティだけではなく、「トレーサビリティ」も大切なのです。

いつ誰がどこで採ったかわからないものを売るのは、もうやめましょう。

いつ誰がどこで採ったものか正確に分かるように、日本人として誇りを持って、国内外の人に一次産品を販売していく、私が水産業の未来を担っていく上で、大切にしていることです。

うに再生養殖を洋野町から世界へ

これまで、そしてこれからの活動を通して、私たちは30年後の水産業のあるべき姿を創って参ります。

これから先、海藻の減少と共にうにの生産量は大幅に減っていきます。

しかしながら、世界におけるうにの需要は、世界の富裕層の増加に伴い高まっていきます。

「うに再生養殖」と「藻場再生」に取り組むことで、サステナビリティに配慮し、持続可能な水産業で生産された水産物を取り扱うブランド企業として、日本のみならず世界で展開していきます。

実は、知られていないのですが、オーストラリアは世界3位のうにの水揚げ量ですが、水揚げされたうにはまったく中身がない品質の悪いものがほとんどです。

オーストラリアの自治体から、オーストラリア国内での展開に期待を持たれています。

今後は、オーストラリアやニュージーランドのみならず、EUでも、うに再生養殖技術を生かし、世界のグルメなお客様の胃袋を、素晴らしい水産物で満たし、新しい水産業のモデルを確立していきたいと考えております。

2030年までのロードマップです。

ローカルからグローカルへ、北三陸ファクトリーではリジェネラティブ(※)シーフードで地域と水産業の未来を創っていきます。

▶編集注:リジェネラティブ(Regenerative)とは、「環境再生」と訳され、自然環境をよりよい状態に再生させることを目指す考え方。

ご清聴ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/原口 史帆/正能 由佳/戸田 秀成/中村 瑠李子

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