【NEW】ICC サミット FUKUOKA 2024 開催情報詳しくはこちら

「シーベジタブル」は、藻場の再生で、海藻の新たな食文化と産業をつくる(ICC FUKUOKA 2024)

カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式X(旧Twitter)をぜひご覧ください!
新着記事を公式LINEで配信しています。友だち申請はこちらから!
過去のカタパルトライブ中継のアーカイブも見られます! ICCのYouTubeチャンネルはこちらから!

ICC FUKUOKA 2024 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただき3位に入賞した、シーベジタブル 友廣 裕一さんのプレゼンテーション動画【「シーベジタブル」は、藻場の再生で、海藻の新たな食文化と産業をつくる】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2024は、2024年9月2日〜 9月5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。

【速報】元こども兵の社会復帰支援「テラ・ルネッサンス」と、思いやりをつなぐ遺贈寄付「日本承継寄付協会」がソーシャルグッド・カタパルト同率優勝!(ICC FUKUOKA 2024)


【登壇者情報】
2024年2月19〜22日開催
ICC FUKUOKA 2024
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ

友廣 裕一
合同会社シーベジタブル
共同代表
HP | X(旧Twitter)

大学卒業後、日本全国70以上の農山漁村を訪ねる旅へ。東日本大震災後は、宮城県石巻市・牡鹿半島の漁家の女性らとともに「ぼっぽら食堂」や「OCICA」などの事業を立ち上げる。 2016年に共同代表の蜂谷潤と共に合同会社シーベジタブルを創業。世界初となる地下海水を利用した青のりの陸上栽培を開始。障害のある方や高齢の方々と共に香り高い青のりを栽培。現在は海面での栽培にも力を入れており、30種類以上の海藻を手掛けている。 多様な専門性を持つ研究者に加え、料理人たちも仲間となり、今まで流通してこなかった美味しい海藻の陸上及び海面での生産から、新たな食文化づくりまで行っている。


友廣 裕一さん 皆さん、こんにちは、合同会社シーベジタブル共同代表 友廣 裕一と申します。

シーベジタブルは、海藻の種苗生産に関する研究・技術確立から、実際に生産して、料理開発まで行っている、スタートアップ企業です。

日本は海藻食文化の最先端

現在、海藻は、世界のトップシェフの方々の注目を集めています。

昨年(2023年に)行われた、期間限定ポップアップレストラン「noma Kyoto」では、我々の海藻を使った「海藻しゃぶしゃぶ」というメニューが登場し、話題になりました。

海藻しゃぶしゃぶ @NOMA KYOTO 2023.03.17(SEA VEGETABLE COMPANY)

スペインやフランスの星付きシェフの方々も、海藻の料理方法を学びたいとして、度々、日本へ視察にいらっしゃっています。

ところで、皆さん、日本の沿岸海域には、どれほどの種類の海藻が生えているか、ご存じでしょうか。

実は、日本の海域だけで、約1,500種類の海藻が生えており、すべて毒がない、つまり、食用になると言われています。

また、現在、日本国内では、50種類の海藻が食べられていると言われています。

これほど海藻を食べている国は世界中ほかになく、こういった海藻の食文化は、日本が圧倒的に最先端であるため、世界中から注目されています。

海藻の生産量が激減する現状

しかしながら、今、国内の海藻の現状は、非常に悲しい状況にあります。

たとえば、国産海苔の生産推移をみると、直近18年間で50%減、天然真昆布に関しては、直近9年間で99%減です。

天然すじ青のりの収穫量にいたっては、主要産地であった高知県の四万十川の収穫量が激減し、2020年度は0kgになりました。

就労機会が得づらい人たちが活躍する生産現場

「こういった、天然すじ青のりの状況を、どうにかしてほしい。海藻の食文化を守ってほしい」と、お声がけをいただいて立ち上がったのが、我々の会社です。

元々、すじ青のりという海藻は、天然海域においては汽水域でなければ育たないため、陸上で栽培する技術を我々が確立し、このように水槽を海沿いに並べて栽培しています。

汽水域とは、河口や湧き水のある海中など、塩水・淡水の両方から構成されている水域のこと。

現在、こういった拠点を、北は岩手県から南は熊本県まで、7拠点ほど運営しております。

これらの水槽を洗うことが、栽培には非常に大事なのですが、とても大変な作業です。

高品質な製品を作るためのパートナーを探していく中で、障がいのある方々や、65歳以上のご高齢の方々が中心に働いてくださるようになりました。

現在も、そういった方々が100人以上も就労してくださって、高品質の青のりを作ることができています。

食害による海藻の減少で水産資源量が減っている

青のりに関しては安定して供給できるようになったのちに、我々は、日本中の海をずっと潜って調査してきました。

年間100回ほど、北海道から沖縄県まで、様々な海を回る中で、海藻の資源量がすさまじい勢いで激減していることがわかりました。

「磯焼け」という言葉を耳にされたことがあるかと思いますが、こちらのスライドにおける、左側の写真のような風景が、右側の写真のようになってしまう原因の大半が、食害なのです。

磯焼け現象(環境科学技術研究所)

海藻が生えなくなっているわけではなく、次々と食べられてしまっている、このような風景を数多く見てきました。

本当に急速に増えていて、こういった風景を見るたびに、「どうにかしなければいけない」という思いを新たにしてきました。

こちらのグラフは、国内の海藻が茂る面積、いわゆる藻場面積の推移です。

次々と減っており、年間2,000ha以上も減少していると言われています。

魚が獲れない、イカが獲れない、貝が取れないといった報道を、よく耳にされるかと思いますが、実はこれらの問題はすべて、海藻減少による影響とつながっているのです。

生態系の底辺を支えている海藻がなくなると、水産資源量は次々と減っていきます。

ですから海に海藻がある状態を増やさなければならないのですが、天然藻場を増やそうと思っても、食害が原因のため、うまくいかないのです。

30種以上の海面養殖できる種苗生産に成功

このような状況下で、我々が今できることとして考えているのが、海で海藻を栽培する「海面養殖」という方法です。

これまでも、「海面養殖」は行われていたのですが、実は、海藻の種苗生産が成功していた海藻は、ワカメ、昆布、海苔、もずくといった数種類のみでした。

そのため、漁師の方々が海藻を育てたいと思っても、その4種類しか育てる選択肢にあがりませんでした。

これら4種類が育ちやすい海域は、しっかりと活用されていたのですが、それ以外の大半の海域は、まったく活用されていませんでした。

そういった状況に対して、我々のところには海藻研究者が多く集まっており、10カ所以上の自社ラボで、30種類以上の海藻の種苗生産に成功しています。

その結果、日本中の未活用の海を海藻で埋め尽くすことができるのではないかと考えています。

ヒット商品ひとつで1年間に減少する藻場を再生できる

また、各地に存在したローカルな海産食文化も、現在、次々と失われています。

海藻が獲れなくなり、食文化も消えていく――その現象も、海藻の栽培方法を確立させたことによって、続々と復活させることができています。

某小売チェーンでは、オキナワモズクを、年間1,000トン販売しています。

いわゆる、もずく酢です。

仮に、同程度のヒット商品ができたとして、もっと美味しい種類のモズクを1,000トン作ろうとすると、2,000haの海に、海藻を繁茂させることができます。

こちらの2,000haという数字が何を意味するかと言いますと、実は、1年間の藻場の減少面積と一致するのです。

1つのヒット商品を作るだけで、こういった藻場の減少を食い止められるようなインパクトがあると考えています。

一方で、海藻を海で栽培する海面養殖によって、生態系にどれほどの影響があるかについて、これまで誰もエビデンスを取ってこなかったのですけれども、こちらも現在取り組みはじめています。

海藻があることで、小型生物が増加し、魚などが増えていくということが、わかってきました。

我々は、海藻を栽培できる場所も、漁師も、技術も確立できてきたので、あとは、出口さえできれば、良い循環をしていくモデルが見えてきました。

日本人の海藻消費量が減っている

ところが、海藻の消費量は、非常に減っています。

日本人の1人あたり1日の海藻消費量は、平成の20年間で、約40%も減っているのです。

我々の仮説としては、海藻の食文化が進化してこなかったことが、課題なのではないかと考えています。

要は、これまで、海藻は和食でしか使われてこなかったため、和食を食べる頻度が下がれば下がるだけ、海藻の消費量が減っていく、ということです。

生産量も減っていますが、消費量も激減しているのが、海藻の現状です。

海藻は洋食やスイーツでも活用できる

しかし、本来、海藻は食材として髙いポテンシャルがあります。

洋食でも、スイーツでも活用できる食材なのです。

我々は、そういった海藻の可能性を、押し広げたいと考えています。

弊社内には、シェフが3人おり、リーダーの石坂秀威は、デンマークにあるレストラン「noma(ノーマ)」の姉妹店にあたる「INUA(イヌア)」というレストランで、料理開発のスーシェフとして活躍していました。

昨年(2023年)の「noma Kyoto」にも、弊社から出向という形で、料理開発の段階から関わっていました。

「INUA(イヌア)」出身のシェフ3人が、社内のテストキッチンで、日々、海藻の料理開発を行っています。

その結果、今までになかった、様々な保存方法やスイーツ、大豆を使わずに生の海藻を使った醤油やドリンクなど、新しいものが、次々と生まれてきています。

▶編集注:審査員席には海藻タルトが配布されました。

食を豊かに、海のまわりに仕事をつくり、海を豊かに

海藻の課題を解決できるのは、世界中で我々しかいません。

これは、まったく大げさではなく、プレイヤーも研究者も全然足りていないため、我々は海藻の種苗の研究から、最後の開発まで、すべて行っているという状況なのです。

海藻の新たな食文化を我々が作っていく、そして、新たな産業を作っていきたいと考えています。

皆さんの食卓に新しい美味しさを届けて、皆さんの食卓が豊かになる、海のまわりに多くの仕事が生まれて、その結果、海の生態系が豊かになっていく――そのような挑戦をしていきたいと思っています。

しかしながら、我々のみでは、あまりに無力なため、皆さんのお力をお借りしたいと思っております。

最後に、すでに召し上がられた方もいらっしゃるかと思いますが、海藻のタルトについて、お話しさせてください。

元々、沖縄の海で食べられていた「スーナ」という、食感が非常に特徴的な海藻を使用しています。

現在、「スーナ」は獲れなくなってしまったため、食文化も消えてしまっていますが、このように栽培技術を確立することで復活させることができました。

今までなかった新たな食感を楽しんでもらうことで、皆さんの食卓が豊かになるイメージをしていただけたらと思っております。

ご清聴ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式X(旧Twitter)をぜひご覧ください!
新着記事を公式LINEで配信しています。友だち申請はこちらから!
過去のカタパルトライブ中継のアーカイブも見られます! ICCのYouTubeチャンネルはこちらから!

編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/中村 瑠李子/戸田 秀成

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!